大人が読む児童書「ちびっこカムのぼうけん」 3 北斗のひしゃくに銀河の水が満ちるとき
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
カムは、湖のそばにたち、金のユビワを北にむかって、三ど大きくふりました。かあさんのびょうきをなおすイノチノクサをもとめて、火の山にすむ大オニ・ガムリイと対決するカム。リズム感あふれる文章でつづる、スケールの大きなファンタジー。(「BOOK」データベースより)
「ちびっこカムのぼうけん」 1 家庭用ゲーム機が広まるよりもはるか前に
「ちびっこカムのぼうけん」 2 広大な北の大地を、カムと一緒に旅をする
大ワシの巣におっこちたカムは、ひなたちと仲良くなります。
(ここのひなたちが、すっごく、すっごく、かわいいです)
ひなたちと仲良くなったことで、大ワシのおかあさんともうちとけたカム。
将を射んとする者はまず馬を………いや、何でもありません。
カムはオオワシから、黒い湖の魔法で白い花にされてしまったチャピナという女の子のことを聞きます。
でたヒロインー!
お父さんを助けるのも、チャピナを人間の姿に戻すのも、すべては、冒頭で出た、「ガムリイの金のユビワ」を手に入れることが肝心です。
(ガムリイがRPGシリーズ1のラスボスです)
カムは、とりあえず黒い湖へと向かって様子を見ることにします。
黒い湖のほとりで眠ってしまったカム、ユキフクロウたちが集まってカムの周囲でささやきます。
北斗の大ヒシャクに、銀河の水がみちるとき──
すべては670年前から定められていたこと──
カムは眠ってしまっていて聞けませんでしたが、白い花になってしまったチャピナは聞いていたのでした。
◇
ちびっこカムは二部構成です。
「火の山のまき」
火の山のガムリイをやっつけて、チャピナやプルガを助けるまでが半分。
「北の海のまき」
ガムリイにはじかれ、南の海でシロクジラになってしまったお父さんを助けるまでが半分。
この、すごい速さでゲーム実況を見るように進んで来た、どんな極上のRPGにも負けないストーリーのちびっこカムの物語。
わずか60ページたらずで火の山のガムリイ(第一部ラスボス)のもとへたどりつきます。
はやい。
火の山に登って行くときの描写の美しいこと!
このとき、天をおおってたちのぼる、けむりのはしらが、風にへしおられて、さっとなびくと、それまでかくれていた、大空の星のすがたが、くっきりとあらわれました。
くらい夜空にかがやく、北の七つ星。北斗の大ヒシャクが、いま、この火の山のま上に、ぐっとかしいでいました。
これまで、交流を持ってきたNPCキャラクターたち、どうぶつたち、クマたち、オオワシたち、ジネズミも、みんな手伝います。
そして、カムは三日月にのぼって足をかけ、北斗のひしゃくにかけたロープをひっぱり、火の山の釜へ銀河のしずくを落とそうとする……。
ものすごいスケール、ものすごい迫力です。
それでまだ半分!
これで半分!
ゲーム実況でご紹介してきましたけど、ひとつひとつの動物たちのキャラ立ちぐあい、気持ちの揺れと、展開へのつながりが、余計なものは削ぎ落されたかのようにスムーズで、完璧に洗練されています。
子どもたちが目を止めてしまうことがありません。
これほど駆け足でいるようにありながらにして、魔のイバラのやぶが囁く恐ろしい歌や、プルガが石になってしまうときの描写は、まるで自分が石になってしまったかのように冷たく恐ろしいですし、大ワシのひなはたまらなく可愛いし、黒い湖を見て、しずかで黒いかあさんの目だと言うカムなど、随所随所がすばらしいです。
◇
これからどうなったのか、それからお父さんを助けるためにゆく第二部、これまたすごい迫力なのですが、ぜひ図書館などで確認していただくとして…。
絵がまたとても素敵です。
かけつける子グマたち。可愛かったです。
ゴールデンカムイもそうですけど、お料理のシーンは魅力的です!
このカムの手つきが忘れられないです。シチューが好きになったのはこの絵からだったと記憶しています。
挿し絵の中でも、とてもちっちゃいひとこまです。
◇
個人的にほぼ、確信しているのですが、日本がこれほどストーリー性にすぐれた名作RPGを次々に打ち出しているのは、黄金期のすばらしい児童書をお手本にしているからだと思います!
RPGがトールキンをお手本にしているというのはよく言われていることですが、いまパッと思いつく、RPGっぽいお話といえば
トールキンの「ホビットの冒険」(指輪物語シリーズよりも王道・基本のRPGっぽいです)」を筆頭にして
「プリデイン物語シリーズ」、「宝島」、「チポリーノの冒険」、「ガンバの冒険シリーズ」、「龍の子太郎」、「銀のほのおの国」、「エルマーのぼうけん」、「大どろぼうホッツェンプロッツ」 などなど…。
ぱっと思いついただけなので、絶対にまだあるはずのですが…。
翻訳ものも訳文にすぐれていますし、国産ものも全然負けていません。
(「ガンバシリーズ」「龍の子太郎」「銀のほのおの国」が国産です)
文章がすばらしいのと同時に、構成がしっかりしていて、起承転結もわかりやすいです。
子どもたちを物語の世界のぼうけんに引っ張りだすために、どうすればいいか、細部にまで心をくだいているので、これほどまですばらしいのだと思います。
◇
児童文学には、一話完結のエピソードをつらねているものと、1本の骨太なストーリーを追って一冊の本となっているものとありますが、RPGは後者の方に分類されるでしょう。
また、もっと昔をたどれば、昔話、神話の世界に行きつきます。
これらのお話のルーツとしてあるのは、「むかし話」の冒険譚です。
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これらの物語のすぐれているところは、面白い面白いだけで終わらせない、人生哲学や、苦しい厳しい、つらい現実や、「子供の目線から見た大人たちの現実」の一面もきちんと描いている所です。
本を好きになって欲しいという一念が貫いて作られているので、「ゲームを買ってもらおう」というのとは少し違います。
しかし逆転の発想として、どんな時代でも人が「物語を求める心」というのは変わりませんから、ゲームから小説に行ったってぜんぜんいいわけです。
そのとき、かつてゲームのストーリーの運びのお手本となったすぐれた児童書がこんなにあります、というのが私の言いたいことなわけです。
本を読んで欲しいとき「ゲームっぽいよ」と言って与えるとか、ぜんぜんアリですよね!
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「絵本から本へ→小説へ」という流れのもとにある児童文学というジャンルですが、神話、絵本、むかし話、大人の小説、これらのすべてをつなぐ中間点に存在します。
どの方向へでも進めるという、まさにキーとなり、歯車となって子どもたちへあらゆる方向性の道を示すものですので、大切にしていかねばならないと思うわけです。
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ひっこみじあんで、気のいいホビット小人のビルボ・バギンズは、ある日、魔法使いガンダルフと13人のドワーフ小人に誘いだされて、竜に奪われた宝を取り返しに旅立ちます。北欧の叙事詩を思わせる壮大なファンタジー。
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ロイド・アリグザンダーによるファンタジー小説「プリデイン物語」第一巻。農場の生活に不満を抱く青年、タランはある日、予言の力を持つ豚ヘン・ウェンを追って、森の中でギディオン王子に遭遇する。
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ジム少年は,トレローニさんや医者のリヴィシー先生とともに,海賊フリント船長がうめた莫大な財宝を探しに出帆する.ぶきみな1本足の海賊シルヴァーの陰謀にまきこまれ,はげしい戦いが始まる….手に汗にぎる海洋冒険小説の名作.
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ここは野菜とくだものたちの暮らす国。玉ねぎ一家の長男坊チポリーノが、無実の罪で牢屋に入れられてしまった父チポローネを救いだそうと大活躍。仲間たちと力をあわせて、国をおさめているわがままなレモン大公やトマト騎士とたたかいます。語りの名手ロダーリの書いた明るくゆかいな冒険物語を、歯切れのよい新訳で。
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ガンバの冒険シリーズ 冒険者たち/グリックの冒険/ガンバとカワウソの冒険の三冊セットのなります。
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よみがえったトナカイの首領はやてを追って、たかしとゆうこの旅は始まった。人はなぜ、他の生きものの命を奪わなければ生きられないのだろう。重たい問いを抱きながらふたりは、動物たちの国の壮絶な戦いに立ち会う。
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エルマーのぼうけん
ルース・スタイルス・ガネット (著)
ルース・クリスマン・ガネット (イラスト), わたなべ しげお (翻訳), 子どもの本研究会 (編集)
年取ったのらねこからどうぶつ島に囚われているりゅうの子どもの話を聞いたエルマーは、りゅうの子どもを助ける冒険の旅に出発します。どうぶつ島ではライオン、トラ、サイなど恐ろしい動物たちが待ちうけていました。エルマーは、知恵と勇気で出発前にリュックにつめた輪ゴムやチューインガム、歯ブラシをつかって、次々と動物たちをやりこめていきます。エルマーはりゅうの子どもを助け出すことができるのでしょうか?
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「大どろぼうホッツェンプロッツ」「大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる」「大どろぼうホッツェンプロッツ三たびあらわる」の全3巻完結セットです。
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『不死身の杉元』日露戦争での鬼神の如き武功から、そう謳われた兵士は、ある目的の為に大金を欲し、かつてゴールドラッシュに沸いた北海道へ足を踏み入れる。そこにはアイヌが隠した莫大な埋蔵金への手掛かりが!? 立ち塞がる圧倒的な大自然と凶悪な死刑囚。そして、アイヌの少女、エゾ狼との出逢い。『黄金を巡る生存競争』開幕ッ!!!!
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