大人が読む児童書「トム・ソーヤーの冒険」 3 関わるとろくなことが起きない。いぬやねこの受難。
今日、ご紹介するのは児童書です。
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今日の一冊
ミシシッピ川沿いの小さな村を舞台に,わんぱくな少年トムが浮浪児ハックを相棒に大活躍するゆかいな冒険物語.因習にとらわれがちな大人たちの思惑をよそに,自然の中で自由にのびのびと生きる子どもたちを描く少年文学の名作.
「トム・ソーヤーの冒険」を、初心に帰って読んでみようかなあという話
さてトムは、「夢中で愛していると思っていた」エイミー・ローレンスを棄てて、ベッキーに鞍替えしてしまうわけですが、ここは別記事で説明したので省くとして、細かい所で、子どものあるある描写が続きます。
ちょっとおばさんが冷たくしただけで、スネまくり、今すぐ病気で死にかけたらおばさんは後悔して謝るだろうかと考えたり(あるある~~!!)
月曜日の学校がイヤで、体じゅう痛い所がないか調べてみて、病気のふりをしてみる。(あるある!!)
トムが顔を洗う所が傑作です。
まるでお面みたいで、きれいになっているのは、あごのところまでだった。それから下は、水をそそがぬ暗黒地帯のひろがりで、これが前のほうはずっと下まで、うしろのほうは首のまわりまでつづいている。
どんだけきたないんだ~!!
◇
ベッキーにアピールするためのカード事件が終わった後で、牧師さんのお説教に入るのですが、これは、子どもたちにとっては「校長先生のお話☆」だなあ。
牧師は、聖書を取りあげ、ある題目について、つまらないお説教を始めたが、なんとも、だらだらしているので、あちらでもこちらでも、舟をこぎだす頭の数が多かった──
そのまんまです。
つまらなくなったトムは、どこから出してきたやら、箱に入れてあったかぶと虫で遊びはじめます。
「かみつき虫」という名前のとおり、このかぶと虫は出されるなりいきなりトムの指にかみついたので、ふりはなして虫は通路に飛んで行ってしまいました。
ここだけでも笑えます。
みな、(つまらないので)この虫に注目するのですが、「そこへ一匹のむく犬が、ぶらぶらやってきた」
いやな予感しかしない。
犬はそのかぶと虫の上に座り込んでしまいます。
とたんに、けたたましい悲鳴をあげて、むく犬は通路をかけだした。悲鳴はつづき、犬は走りつづけた。犬は、祭壇の前でまがり、べつの通路を、こんどは入口のほうへ向かって走った。
妹子も読んでもらった子たちも、みんな涙が出るほど笑った箇所です。
やがて、犬は、ただ一団の毛がはえた彗星となって、光りかがやき、まっしぐらに、その軌道を走りまわっていた。
妹子「この表現すごくない!?彗星となってだよ!?どんだけ走ってんの!どうやってこんな表現思いつくの?」
わたし「ひたすら犬がかわいそうだけど笑えてしまう。痛かっただろうね~」
妹子「彗星って……」
◇
このあたりはベッキーを口説くやりとりが多いです。
犬が暴れたのも、日曜学校でベッキーにアピールしたあとでしたし、学校ではベッキーに愛してるとか愛してないとか、エイミーの方を愛してるとか愛してないとか、キスしたとかしないとか、嫉妬とか涙とか、そういう話です。
妹子はすっかり呆れて、ここでいったん投げ出してしまいました。
妹子「こいつら一体何をしてんの?むちで叩かれるって書いてるけど、叩いていいと思うわ!そもそもベッキーもなんでこんなにすぐなびくの?ガムをかわりばんこに噛むって汚くない!?」
10歳のリア充生活はすっかりトムに対する印象を悪くしてしまいました。
しかし、それこそ!
それこそわかってほしかった所なので!
私はすごく満足しました。
いやいや、そうだよねー。こいつ何なの?って思うよね!
しかし、いったんベッキーと仲たがいをしてからがおもしろいので、そこも読んでもらわないと困ります。
ちゃおの漫画のように、これからもああだこうだとベッキーとの駆け引きが続くのだと思って腐っている妹子をなだめすかして、続きを読んでもらいました。
トムは、ベッキーがどうして怒っているのかさっぱりわかりません。
前カノがいたにしても、そっちは捨ててそっぽを向いて全力でベッキーに心を傾けているわけなのだから、何が悪いのかわからないというのです。
「世界じゅうでいちばんいいことをしてやったのに、ひどい扱いを受けた」とか書いてあって、また妹子が投げ飛ばしそうになりました。
ついにトムは、愛を棄てて、名誉の世界に生きることにしました。
軍人になって、英雄になるのだ!ということらしいです。
◇
愛をあきらめて、友達と賑やかに英雄ごっこ(ロビン・フッドでした)をして遊んだあとに、ハックルベリー・フィンと夜中の墓地に行く冒険がはじまります。
この、スパッと忘れて友達とゆかいに遊んだりするところがまた、微妙にムカつきます。
彼女と喧嘩した男性が、気晴らしに飲みに出かけてるようなイメージです。
しかし、この後にはとんでもなくろくでもない、大事件が待っていたのでした…。
夜中の墓地に行くのは、肝試しをするのではなくて(多少はその意図もあるでしょうが)、しんだねこを持って行き、いぼを取ってもらおうということのようです。
「悪魔は死がいについて行く。ねこは悪魔について行く。いぼはねこめについて行く。これでおしまい、縁切りだ!」
この墓地で、ハックルベリー・フィンとトム・ソーヤとは、殺人事件を目の当たりにしてしまうことになります。
死体を墓地まで持ってきた、医者のロビンソンさん、アル中のマフ・ポッター、そして、白人とインディアンの混血のインジャン・ジョーです。
殺されたのは医者のロビンソンさん。
インジャン・ジョーの逆恨みです。ずいぶん前に、冷たくされ、浮浪罪で牢屋に入れられたことがあるからとのことでした。
アル中でちょうど気絶していたマフ・ポッターに、罪がなすりつけられ、彼は逮捕されてしまいます。
このインジャン・ジョー、かつての名作アニメ版では「インディアン・ジョー」だったらしいのですが、だんなはこのジョーのことを、ガンバの冒険のノロイと同じぐらい、幼少期のトラウマとしておそれていました。
何やら、夢に出るぐらい怖かったらしいです。
この恐ろしい体験ですが、ずいぶんあとまで引っ張ります!
マフ・ポッターが冤罪で逮捕されてしまうのですが、牢屋に入ったまま、ずっと放置です。
トムはハックと、このことを誰にも話さないという誓いを立てるのですが、しばらく夜には夢でうなされます。
しかし、子供の適応力の速さよ…。
元気な少年がいつまでも、苦しめられたりはしていません。
これがまたリアルです。
もちろん、心のどこかには残っているのですが、日常生活とさまざま、思いつく遊びですぐに押し出されてしまうのです。
この陰鬱な気分を吹き払ってくれたのは、ねこです!
トムが陰鬱になって何かに苦しめられていることを心配したおばさん、変な鎮痛剤を処方してトムに飲ませるのですが、これがまた味が最悪だった(らしい)ので、トムは「床板の割れ目に治療をほどこして」いました。
(こっそり捨てていたんですね)
そこにねこがやってきて、いかにもほしくてたまらないような、ちょっとなめさせて欲しいようなしぐさをします。
もはや恒例。嫌な予感しかしない。
トムは一応、やめとけよと忠告するのですが、ねこがねだるので、口に流し込んでやります…。
ピーター(ねこ)は、二ヤードばかり空中にとびあがった。ときの声をあげ、部屋じゅうぐるぐるかけまわった。(略)部屋の中を、ものすごい、いきおいで走り回り、めちゃめちゃにひっかきまわし、あたるをさいわい、みなぶちこわした。ポリーおばさんがかけこんできたときは、つづけざまに、とんぼがえりをうち、さいごのばんざいを叫んで、あいていた窓から、まだ、残っていた植木鉢を足にひっかけて、とびだして行くところだった。
ね、ね、ねこ…!
かわいそうに…!!
いぬもねこも、とんでもない目にあってます。
かぶと虫に噛まれたいぬといい、死んだねこといい、いぬねこの扱いがひどいです。
でも笑ってしまいます!!
しかしおばさん、心から反省しました。
ねこにひどいことは、子どもにだってひどいことだったのだとわかったのでした。
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ポリー伯母さんに塀塗りを言いつけられたわんぱく小僧のトム・ソーヤー。転んでもタダでは起きぬ彼のこと、いかにも意味ありげに塀を塗ってみせれば皆がぼくにもやらせてとやってきて、林檎も凧もせしめてしまう。海賊ごっこに幽霊屋敷探検の日々を送る中、ある夜親友のハックと墓場に忍び込んだら……殺人事件を目撃! 永遠の少年時代がいきいきと描かれた名作を名翻訳家が新訳。
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ミシシッピ川沿いの小さな村を舞台に,わんぱくな少年トムが浮浪児ハックを相棒に大活躍するゆかいな冒険物語.因習にとらわれがちな大人たちの思惑をよそに,自然の中で自由にのびのびと生きる子どもたちを描く少年文学の名作.
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いつもはちゃめちゃなトムは、宿なしハックを相棒に、毎日いたずらざんまい。そんなある日、真夜中の墓場で事件を目撃してしまって!? 世界中があこがれた、冒険と小さな恋の名作が、つばさ文庫に登場!
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トム・ソーヤの冒険 宝さがしに出発だ! (集英社みらい文庫)
マーク・トウェイン (原著), 亀井 俊介 (翻訳), ミギー (イラスト)
トムと胸のすく冒険の旅に出よう!いたずらをしたり、海賊になったり、宝探しをしたり……世界一のわんぱく少年トム・ソーヤが、親友のハックとともに冒険をくりひろげる。ワクワクがとまらない、トムの青春物語。
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トム・ソーヤーの冒険 (新装版) (講談社青い鳥文庫)
マーク・トウェーン (著), にし けいこ (著), 飯島 淳秀 (翻訳)
19世紀のアメリカの田舎町、セント・ピーターズバークを舞台に、わんぱく少年トムは所せましと、いたずらをして、みんなを困らせます。その毎日は冒険でいっぱい。 あるときは、家出をして、ジャクソン島でキャンプをして、あげくのはてに、自分たちの葬式に帰ってきたり、またあるときは、夜中の墓場にしのびこみ、殺人現場を目撃したり……。そして最後には、仲間のハックといっしょに洞窟で財宝を発見!
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今まで知らなかったハックがここにいる。原書オリジナル・イラスト174点収録。柴田元幸がいちばん訳したかったあの名作、ついに翻訳刊行。
公開されている「トム・ソーヤ」英語原文です。
「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492
◆プロジェクト・グーテンベルクについて
☞Wikiの説明ページ
プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリカ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館。
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