大人が読む児童書「トム・ソーヤーの冒険」読了 5 やっぱりその話でもちきりだ~ゲスのインパクトはすごかった
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ミシシッピ川沿いの小さな村を舞台に,わんぱくな少年トムが浮浪児ハックを相棒に大活躍するゆかいな冒険物語.因習にとらわれがちな大人たちの思惑をよそに,自然の中で自由にのびのびと生きる子どもたちを描く少年文学の名作.
「トム・ソーヤーの冒険」を、初心に帰って読んでみようかなあという話
2 自分の子じゃない子供を育てるということ
3 関わるとろくなことが起きない。いぬやねこの受難。
4 冒険とあらし、その文章表現のすばらしさ
あらしが終わり、家に帰ってから、おばさんとトムは優しい仲直りをします。
妹子はまだ、余韻に浸っているようです。
妹子「この表現がすばらしすぎるわ。『あらし』ってここにでてくるまで書いてないんだよ!」
そもそも、トム・ソーヤの読み返しをしてみようと思ったのは、妹子がこのあらしの表現を読んで感動しているとき、こんな風に言ってきたからでした。
妹子「お母さんさあ、トム・ソーヤのあんなとこ(トムのゲス男なところ)ばかり書いて、もっとちゃんと紹介しないとだめなんじゃないの?」
ずいぶん、ベッキーとのやりとりにムカついていた妹子なのに、これはまた、意見が180度転換です。
それほど、ぼうけんとあらしの部分はすごかったということです。
妹子「あんなんじゃ薄っぺらすぎるわ。適当すぎるでしょ。ちゃんとレビューしなきゃだめでしょ!」
そうかそうか。
やっぱり、トムが最初から最後までゲスだと思っていたのはわたしくらいだったかな。
◇
さて、仲直りをしたいベッキー、トムの周囲をウロウロしはじめます。
まあ、以前の記事でも書いたのですけど、トムは敏感にこのベッキーの心を察知しました。
これは、かれの心の中にあるいやしい虚栄心を、ひどく満足させた。だから、トムは心をひかれるどころか、ますます「気どって」しまい、いっそう、おまえなんぞ知らないよという態度をとるようになってしまった。
今読んでも、恋のかけひきや男性心理に関してもお手本教書みたいだなあと思います。
あらゆる人間模様が盛り込まれています。
ベッキーは、トムがエイミーとばかり話していることに気が付きます。
ベッキー、「胸がしめつけられ、かっとなり、おちつけなくなってきた」
確かに、妹子の言う通り、あらしを「あらし」と書かなかったように、「嫉妬」って書いてないな。
子どもにとって、はじめての感情、はじめて見る景色は、名前がついていないのかもしれない。
すごい!
ベッキーは力をふりしぼって、男子も女子も招待するピクニックを企画して周囲の注目を集めようとするのですが、トムはエイミーと話しながらまったく興味を示しません。
さて休み時間、引き続きベッキーに見せつけてやろうとして、トムがエイミーと仲良くしていると…。
あろうことか、ベッキーは校舎のうしろの小さいベンチに、アルフレッド・テンプルとなかよく腰かけて、いっしょに絵本を見ていたのだった──本の上に二つの頭をすりよせて、すっかり夢中になっているので、ほかのことは、なんにも気がつかないといったようすだった。
阿呆な虚栄心のため、ベッキーが作った仲直りのチャンスを自分でつぶしたトム。
エイミーと会話が何もかもいやになってしまいます。
トムは、エイミーにはもう我慢ができなくなり、「どうやったら厄介払いができるんだろう?」なんて考えています。
りっ…リアルぅ~……。
妹子「さいてい。やりすぎ。エイミーぬかよろこびやん」
わたし「そうなんだよ。わかってくれて嬉しいよ」
妹子「さっきまで素晴らしい文章に感動してたのに。さいていだわ」
ベッキーもあまり幸せではいられませんでした。トムが見にこなくなると、すべてがおもしろくなくなります。
妹子「おまえが最初にエイミーと見せつけしたんだから、ベッキーがだれと仲良くしちゃってもいいじゃん。今更なんなんだよ」
ベッキー「(あて馬くんに)あっちへ行ってちょうだい。かまわないで!あんたなんて、きらい!」
妹子「ほんとにさいてい!きもちわるい!」
わたし「あて馬合戦だからね。誰も得をしないというみにくい争いだね…」
妹子「ベッキー、さいていやん。ひどすぎるわ。とどめをさしたやん」
わたし「ゲスな話だからこそ面白いともいえる」
妹子「まあ聞いてよ。(やきもちが)『まっかにもえてトムの血管をかけめぐる』だよ!?すごくない!?」
やっぱり文章には感心してるようです。
妹子「こんなに文章いいのに、なんて残念なおはなしなんだよー!!」
わたし「いや、トム・ソーヤはたくさん訳が出てるから、あれこれ読んでみてわかったけど、子ども向けはこのベッキーのやりとりはもっとふわっとしてる。トムとベッキーのゲスぶりを柔らかく隠すようにしてる。でもね、この人のように、忠実以上に、ゲスをむしろ強調して訳してるのが、かえっておもしろみをましているという、逆転現象が……」
妹子、すでに聞いていないです。
続きをガンガン読んでいます。
わたし「トム・ソーヤは途中のすてきな冒険がほんとに面白くてねえ。総合的にみて、ちりばめられたベッキーイベントがね」
妹子「ベッキーイベントとかいうな」
◇
妹子「『あっちへ行ってちょうだい、あんたなんかきらいよ』だって。何て哀れな……。かわいそうすぎる」
まだそこを読んでたのか。
ていうか、もしかして読み返してる!?
妹子「エイミーはてんでばかだけど、アルフレッドは気付いたんだよ。あてうまだってこと!もうこれさ、フィクションじゃないもん。現実の恋愛だよ。ふたりのしっとと浮気がやばい」
トムとエイミーとベッキーとアルフレッドの愛と憎しみの軌跡を見せられて、大人の階段を一つあがってしまったのだろうか。
まるで海外ドラマの先が気になる四角関係展開みたいです。
トムとベッキーのこのお騒がせ迷惑カップルのふたりは、ベッキーの失敗をトムがかばうことによって復縁するのですが、妹子はぜんぜん感心してません。
妹子「そんでまたベッキーがさ、彼女になったら、別のかわいいおんなのこにいっちゃうんだよこいつ!」
わたし「それは思った。エイミーが捨てられたように、ベッキーもいつか捨てられるんじゃないかなって思った」
これは妹子には言いませんでしたが、なまぐさい話ですけど、ベッキーは、地方における実力者のお父さんが後ろ盾にいますので、そう簡単に捨てられそうにない気がします。
荒唐無稽な物語であるようでありながら、リアルすぎる恋愛模様を入れることで、ちょっと忘れることのできない作品となっています。
◇
ここから二章ほど、トム・ソーヤにしてはあまり面白くはないけれど、面白さのレベルが高いのでそれだけでも十分に面白いエピソードがつづきます。
途中で、病気が流行り、皆の間を一種の熱病のような改宗騒動が起きるところなど、まるでコロナ騒動を見ているようでした。
恐れによる集団ヒステリーです。
(まだ終わっていないかもしれませんが)
たぶん、トムの物語はここから始まります。
すべての今まで張り巡らせていた伏線は回収され、心の重荷だった殺人事件の目撃も、実にドラマチックな法廷劇を経て、解決をみることになります。
逃げたインジャン・ジョーの影、宝さがし、鍾乳洞の洞窟──。
しかし、やはりトムのこの驚くべき楽しい物語を、ぜんぶ紹介してしまうのはよくないなと思うので、ここでいったん終わりにしておこうと思います。
最後の記事が、やっぱりトム♡ベッキーの紹介になってしまったのが、残念というか、さもありなんというか……。
ここまで紹介して、読んでみてもらえた人ならばわかると思うのですが、もうやめることなんて出来ません。
読み出して、最後まで突っ走るしかないのです。
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ポリー伯母さんに塀塗りを言いつけられたわんぱく小僧のトム・ソーヤー。転んでもタダでは起きぬ彼のこと、いかにも意味ありげに塀を塗ってみせれば皆がぼくにもやらせてとやってきて、林檎も凧もせしめてしまう。海賊ごっこに幽霊屋敷探検の日々を送る中、ある夜親友のハックと墓場に忍び込んだら……殺人事件を目撃! 永遠の少年時代がいきいきと描かれた名作を名翻訳家が新訳。
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ミシシッピ川沿いの小さな村を舞台に,わんぱくな少年トムが浮浪児ハックを相棒に大活躍するゆかいな冒険物語.因習にとらわれがちな大人たちの思惑をよそに,自然の中で自由にのびのびと生きる子どもたちを描く少年文学の名作.
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いつもはちゃめちゃなトムは、宿なしハックを相棒に、毎日いたずらざんまい。そんなある日、真夜中の墓場で事件を目撃してしまって!? 世界中があこがれた、冒険と小さな恋の名作が、つばさ文庫に登場!
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トム・ソーヤの冒険 宝さがしに出発だ! (集英社みらい文庫)
マーク・トウェイン (原著), 亀井 俊介 (翻訳), ミギー (イラスト)
トムと胸のすく冒険の旅に出よう!いたずらをしたり、海賊になったり、宝探しをしたり……世界一のわんぱく少年トム・ソーヤが、親友のハックとともに冒険をくりひろげる。ワクワクがとまらない、トムの青春物語。
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トム・ソーヤーの冒険 (新装版) (講談社青い鳥文庫)
マーク・トウェーン (著), にし けいこ (著), 飯島 淳秀 (翻訳)
19世紀のアメリカの田舎町、セント・ピーターズバークを舞台に、わんぱく少年トムは所せましと、いたずらをして、みんなを困らせます。その毎日は冒険でいっぱい。 あるときは、家出をして、ジャクソン島でキャンプをして、あげくのはてに、自分たちの葬式に帰ってきたり、またあるときは、夜中の墓場にしのびこみ、殺人現場を目撃したり……。そして最後には、仲間のハックといっしょに洞窟で財宝を発見!
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今まで知らなかったハックがここにいる。原書オリジナル・イラスト174点収録。柴田元幸がいちばん訳したかったあの名作、ついに翻訳刊行。
「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492
◆プロジェクト・グーテンベルクについて
☞Wikiの説明ページ
プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリカ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館。
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