~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「子じか物語」 1 途中から読んだってかまわない。いきなりネタバレから入る、トラウマのラストシーン

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

仔鹿物語
マージョリー・キナン ローリングズ (著), 土屋 京子 (翻訳)

19世紀後半のフロリダ。人里での摩擦を避け、矮樹林が広がる土地で厳しい開墾生活を送るバクスター一家。ある日、父ペニーがとっさに撃ち殺した雌ジカの傍らに、母を失った仔ジカが立ち尽くしていた。息子ジョディは仔ジカに魅了され育てたいと両親に懇願する…。

 

 

先日まで紹介した「トム・ソーヤ」中途半端に終えてしまいましたが、このお話は、少年少女文学全集では、「子じか物語」とセットになっています。

 

この本では、子じか物語の方を先に載せていますし、扉絵も子じかです。

 

たぶん、子どもたちにとっては、間違いなくトム・ソーヤの方がウケるでしょうし、子じか物語の方が難しいんじゃないかなあ…。

 

それをあえて、先に持ってきているところが、読んで下さいね!!という編集の心が見えるようです。

 

わたしも、トム・ソーヤを10回ぐらい読み返したとすれば、子じか物語は2回ぐらいかもしれません。
それでも、このお話は本当に読んでよかったと思うし、読んでもらいたいなと思います。

 

 

トム・ソーヤよりも六十年ほどあとの時代に書かれた、アメリカの開拓時代を描いた作品です。

 

主人公は開拓地に住む一家の一人息子、ジョディ。
お父さんとお母さんと、ジョディの三人暮らしです。

 

トム・ソーヤとびっくりするほど、生活に違いがないことに驚きます。

 

アメリカは広いですから、土地によって雰囲気が違うと思われますが、トム・ソーヤの舞台はミシシッピ川沿いのミズーリ州ハンニバルというところだそうです。

 

 

子じか物語の方はフロリダ州
山間部の方の貧しい農民の生活を描いていると書かれています。(後書きを参照しました)

 

 

トム・ソーヤの方が豊かな生活であるように感じます。
村は小さいと書かれていますが、人が多く活力がありますし、学校に子どもも多いです。

 

子じか物語のジョディは、家と家がとても離れていて、周囲にはほとんど遊ぶ子どもがいません。
物資を買いに行く街は別ですが、一家は孤独な生活です。

 

この孤独が、ジョディと子じかの結びつきにもつながります。

 

西部開拓を描いた名作「大草原の小さな家」のインガルス一家は、ウィスコンシン州カンザス州・ミネソタ州サウスダコタ州のようですが、これらはすべて北米です。

 

広大なアメリカの大地を北から、インガルス一家、トム・ソーヤ、子じか物語のバクスタ一家、とほぼ縦に横断しています。

 

 

今、昔の名作アニメ「子じか物語」は見るのが困難らしく、NHKアーカイブでも公開されていません。

 

フィルムが残っているのかどうかもわかりません。

 

名作アニメの中でも、ラストシーンはトラウマと言われているようです。

 

わたしはアニメの方を見ていないのですが、最初から壮大なネタバレになってしまいますが、子じかは飼っていた一家の手で殺されてしまいます。

 

子どもの頃は可愛がって育てていても、害獣となってしまった若い鹿を、農地の開拓をする貧しい暮らしの一家が無視することはできなかったのでした。

 

この厳しい結末を、名作アニメできっちりやったことは、尊敬に値すると思います。
お話を読んでいれば、それ以外の選択肢がないことはよくわかります。

 

なら最初から飼うなよ!

という思いが出てくるのもわかります。

 

でも原作を読んでいれば(たぶん、名作アニメを見ていても)、飼うことになった理由も、子じかを可愛がって育てた過程も、結末も、すべて説得力をもって迫ってきます。

 

子どもも、現実の中に生きていることは間違いなく、苦い結末をしっかり目をそらさずに描きながらも、子どもの心に寄り添い、子どもの心を痛いほど理解して書かれている描写には胸を打たれます。

 

 

この本、いまは子ども用の訳本としても出回っておらず、光文社さんの大人向けの全訳しか出版されていないようです。

 

わたしが読んだこの「少年少女」バージョンは、5分の2ほどの抄訳になっているそうです。

 

それでも、手を抜かない「少年少女」バージョンのこと。
序盤はすべて、開拓時代のアメリカの自然描写に費やされます。

 

美しい自然の描写の中で、主人公ジョディはいずれ子じかフラッグの親になるであろう雌じかに会いますが、序盤はただひたすら開拓の中の生活の描写、描写なので、子どもにこれを頭からしっかり読めと言っても厳しいものがあるように思います。

 

自然描写が終わってからは、開墾地の人たちとの荒々しい交流です。
仲良しの一家もいれば、荒くれ者の兄弟一家もいます。

 

私はめくってはやめ、(トム・ソーヤに行き)、まためくっては(トム・ソーヤに行き)…とするうちに、興味を引かれた部分から読み始めました。

 

その興味のある部分とは、子じかを養うことになった原因の部分でした。

 

ちょうどページの最初にあります。

 

そのとき、まったくふいに、野ぶどうのつるの下から、一匹のがらがらへびが、ペニィ(ジョディの父)にとびかかりました。ジョディの目には、何かかげのようなものがさっとひらめいたようにみえました。それは、いわつばめよりも、もっとすばやく、おそいかかるくまのつめよりも、もっと正確なとびつきかたでした。

 

お父さんが毒蛇に噛まれたのです。

 

すごい臨場感です。
もう、目を離すことができませんでした。

 

へびを殺してから、傷口を調べるまで、静かでひたすら正確な描写が続きます。
そんな中で、お父さんがもらした「おれは、死ぬかもしれない」というひとことに、鳥肌が立ちます。

 

子どもであるジョディはどうすることもできません。
ただひたすら、見守るしかありません。

 

そんなとき、草むらをかきわけて、一頭の雌じかが現れました。

 

お父さんは、その雌じかを撃ち殺し、「ジョディに命じて、狩猟用のナイフで雌じかの腹を切り裂いて、肝臓を切り取らせました」
肝臓を傷口にあてると、毒を吸ってくれました。

 

肝臓は、みるみるうちに、どくどくしい緑色に変色していきました。
肝臓のつぎに心臓を、それから、さらにべつの新しい肉切れを、ペニィは、いくども、いくども、きず口にあてがいました。

 

「子じか物語」で最初にわたしが読んだのはここのシーンでした。

 

へびにかまれた所から、ここまで3~4ページ。
もうページをめくるしかなく、いったいどうなるのか、気になって気になって、先をどんどん読んでいきました。

 

ちょっと忘れられません。

 

読んでいくと、この危険な道の探索が、いなくなったぶたを探すためであったこと。
のぶたは、どうやら荒くれ者の一家が盗んだらしいこと。
盗んだ一家が、手をつくして助けてくれるところ。

 

などなど、どれも引き込まれるようにどんどん読んでいきました。

 

子じかがのこされて、大きな目を見張ってじっと見ています。

 

 

 

 

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子鹿物語 (こども世界名作童話)
マージョリー・キナン ローリングス (著)
まだらめ 三保 (著), 村井 香葉 (イラスト)

開拓地にすむジョディと子鹿のフラッグの成長と心の交流を、自然のきびしさ豊かさをとおして描きます。愛されつづける感動の名作。

 

 

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トム・ソーヤーの冒険
マーク トウェイン (著), T.W.ウィリアムズ  (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ミシシッピ川沿いの小さな村を舞台に,わんぱくな少年トムが浮浪児ハックを相棒に大活躍するゆかいな冒険物語.因習にとらわれがちな大人たちの思惑をよそに,自然の中で自由にのびのびと生きる子どもたちを描く少年文学の名作.

 

 

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ハックルベリー・フィンの冒けん
マーク・トウェイン (著), 柴田 元幸 (翻訳)

今まで知らなかったハックがここにいる。原書オリジナル・イラスト174点収録。柴田元幸がいちばん訳したかったあの名作、ついに翻訳刊行。

 

 

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大草原の小さな家 ―インガルス一家の物語 2
ローラ・インガルス・ワイルダー (著), ガース・ウィリアムズ (イラスト), 恩地 三保子 (翻訳)

「大きな森」をあとにして、インガルス一家は新しい土地を求め、インディアン・テリトリイへ幌馬車で旅立つ。ローラ6歳から7歳までの1年間の物語

 

 

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大草原の小さな家 ―インガルス一家の物語 2
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「大きな森」をあとにして、インガルス一家は新しい土地を求め、インディアン・テリトリイへ幌馬車で旅立つ。ローラ6歳から7歳までの1年間の物語

 

 

 

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