今日の一冊「マーシャとくま」 支配の力とは、筋肉だけによるものではないっ💪
今日、ご紹介するのは絵本です。
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今日の一冊
森で迷ったマーシャは、クマにつかまりますが、なんとかクマをだまして家に帰ります。 賢い少女の機転の鮮やかさと、どこか憎めない親しみのわくクマのやりとりがゆかいな、ロシアに伝わる民話です。
図書館に二冊並んで置いてあって、甲乙つけがたく、仕方なくどちらも借りてきました。
何しろ片方は、定評あるうちだりさこさん訳で、もう片方は大好きな片山健さんの絵です。
これも教科書に載っていると、はじめて知りました。
◇
マーシャという女の子が森でみなとはぐれてしまい、くまの住みかに迷い込んでしまいました。
くまはよろこんでマーシャを捕まえ、家で働かせることにしました。
拉致監禁、なんて言ってしまっては不謹慎かもしれませんが、ちょっとぞっとするお話です。
このモチーフは、昔話には非常に多くて、よく色んな子どもが捕まっています。
知らない人について行ってはいけませんよ!
と、注意することもできますが、では捕まってしまったらどうするか。
このお話は機転をきかせ、頭を働かせ勇気を持ち、くまを出し抜いて脱出する。
そういうお話です。
◇
ちょっと不思議なのは、くまはお昼にずっと留守にしているのに、マーシャは外に出られないことです。
まず、村までの道がわかりません。
地理を調べるよりもマーシャは、くま本人に連れて行かせる手立てを考えました。
あと、くまは村まで行けるのに、一度おじいさんとおばあさんの家に戻ってしまうと、くまは手出しができなくなるというのも不思議です。
目に見えない、力が及ぶエリアのようなものがあって、そこを一旦超えてしまうともうどうすることもできなくなる、というような……。
排他的経済水域のような、影響の及ぶ範囲のようなものがあり、マーシャはくまエリアを抜けて、おじいさんおばあさんエリアに入ってしまえばもう無事なのです。
◇
さて、マーシャがうまいこと思いついて、くまに村に届けさせた「おまんじゅう」
うちだりさこさん訳では、おまんじゅう。
三木卓さん訳ではおかしになっています。
もしかすると、ピロシキだったのかもしれません。
(ピロシキ版を読んだことのあるかたもいるみたいです)
◇
影響力の及ぶエリアだけではなくて、マーシャは、くまのおうちで暮らすうちに、くまに対して逃げる以外のことでは、奇妙な影響力を持ち始めています。
「おまんじゅう」または「おかし」を村に持って行き、おじいさんとおばあさん(両親?祖父母?)にあげるというのは、
「無事でいますし、幸せに暮らしていますよ」
と言って二人を安心させるためであり、もう自分に逃げる意思はないのだと熊に主張しているようにも見えます。
でないとくまがおとなしく持って行く理由もないですし。
くまもくまで、そう言われるとおとなしく持って行ったり、途中で腰をかけようとするとマーシャに叱咤されて、仕方なくまた歩き続けます。
このあたり、わりと単純でお人よしなこのくまを、マーシャは操るだけの強さ賢さを持ち合わせています。
力関係とは、肉体の強さのみにあらず!
と、言っているような、昔ながらのお話です。
◇
三木卓さん版の方のあとがきに、神宮輝夫さんがあとがきを書かれていました。
こういう、【おうちのかたへ】っていうのがいいんですよね。
マーシャは素直で、しかも頭のよいすてきな少女です。くまは悪役のはずですが、どこか正直で性格がすれていなくて親しみがもてます。そして、話の組み立てがわかりやすくて、おしまいまであきません。長い間、多くの人たちが語り、多くの人たちが楽しんで耳をかたむけた証拠でしょう。
この二冊、翻訳も絵も甲乙つけがたく、どちらも良い作品でした。
途中にマーシャがくまを叱咤するキメぜりふがあるのですが
三木卓さんバージョンでは
見えるよ、見えるよ。
切りかぶなんか、だめ。
おかしなんか、とんでも ない!
おばあちゃんへ もって いけ、
おじいちゃんへ もって いけ!
うちだりさこさんバージョンでは
みえるわ みえるわ!
きりかぶに こしかけちゃ いけないわ。
おまんじゅうを たべちゃ いけないわ。
もっていくのよ、おばあさんに!
もっていくのよ、おじいさんに!
でした。
このような読み比べもなかなか楽しいものでした。
今は、外国語教育が早くなっていますから、自分ならどう訳すか?というのを考えるよう、うながしてあげるのも、かえって日本語教育にも有効かもしれません。
◇
三木卓さんは、「がまくんとかえるくん」シリーズで有名なかたです。
とてもよいお話なので、どこかでまた、ぜひ紹介したいと思います。
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森で道に迷ってしまったマーシャは、森の奥深くに住む大きなくまにとらわれてしまいます。くまのところから逃げだす方法を、マーシャは考えに考えて、いいことを思いつきます。マーシャはおまんじゅうを焼き、つづらを出してきます。さて、これらをいったいどうするのでしょう。女の子が智恵を働かせて無事に家にもどってくるまでを、力強いデッサンと重厚な色彩で描いた美しい絵本です。
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ある日マーシャは村の女の子たちと、森へきのこをとりに出かけます。ところがはぐれてしまい、日が暮れて森の奥にあった小屋をたずねると大きなクマの家でした。そのままクマの家で働かされるようになったマーシャは、クマをだまして村へ帰るいい方法を思いつきます。利発なマーシャはかわいい民族衣装に身を包み、“ピロシキ”“ペチカ”などのロシア独特の文化や風景が描かれた、美しい絵本です。
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アーノルド・ローベルの作品で、「がまくんとかえるくん」シリーズです。2人の親友の冒険を描きます。5〜8歳向け。Tsai Fong Books, Inc.
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がまくんとかえるくんの物語「よていひょう」「はやくめをだせ」「クッキー」「こわくないやい」「がまくんのゆめ」の5編を収録。ニューベリー賞受賞作。
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