大人が読む児童書「モグラ原っぱのなかまたち」3 読了 原っぱは子どもたちにとって広がる世界のとびら。
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ちびのあきらと、でぶっちょのなおゆき、背の高いかずおと、くりくりっとした目のひろ子、2年生の4人は、大の仲よし。電気掃除機で虫をつかまえたり、池にいかだをうかべたり、いつも元気であばれまわるモグラ原っぱに、ある日、ダンプカーが土を運んできて……。大人社会の利害に無関係ではいられない子供たちの生活を鋭く見つめる、古田足日の意欲的童話。
「モグラ原っぱのなかまたち」1 ふんわりとした優しい空気の中で、いきなりクレーマー案件。
「モグラ原っぱのなかまたち」2 現代っ子が読んで、面白いものはおもしろい!
ときどき、ヒロイン枠のひろ子が女の子らしさを垣間見せて、男子たちをドキッとさせたりもしますが、まだ男女の境目があいまいな二年生のこと。
まだまだ無邪気に遊んでいます。
そんな中で、乱暴者の一郎君というのが出て来るのですが……。
妹子「でたツネタ系!ひねりつぶしてやりたいやつ!」
わたし「言うと思った」
ツネタというのは、神沢利子さんの「くまの子ウーフ」に出てくる友達(?)の男の子で、実にイヤな奴です。
妹子はツネタが大嫌いで、前も書きましたが、憎しみをこめてツネタの名前の上をツメでひっかいていました。
なので、ちょっとイヤな感じの悪役っぽい子が出るとすぐに
「でたツネタ」
と言います。
でも、この一郎くんはちょっと毛色が違います。
いまは一番あれこれ言われる所だと思いますが、「好きだからいじめちゃってる」という奴です。
これは、今となってはすごい炎上・論争を呼び起こしてしまうネタだと思います。
現に先日もさかんに議論を戦わせているのを見ました。
がまあ、こちらではとても健康的に、自然な感じでお話は進みます。
一郎くんは「僕だってひろ子ちゃんと遊びたかったんだあ」と言って号泣してしまいます。
(まあまあ、どんだけ?そこまで?と言うほど、さんざん四人組にひどい目にあった後です)
ひろ子は、そのあまりの直球の言い訳に少しドキッとして、それから一郎とも友達として遊ぶことができるようになったのでした。
「自分だって遊びたかった」
ここまでキッチリと、自ら申告した子はあまり見ないかもしれません。
それがかえって良かったんだと思います。
普通は、わけもわからずただいじめられて、ひたすら相手が嫌いになって終了です。
もしくは、生理的嫌悪感を少しでも感じていたらもう完全アウトなので、非常にに難しい問題です。
しかしだからといって、生理的嫌悪感なく、友達に移行できた運のよいパターンまで排除するのはちがうのではないでしょうか…。
と、遠慮がちに主張してみます。
なかなか、古田足日さんはうまい言い方をしています。
「そういうこともある、ということをひろ子は知った」という風に、可能性の一部としてある、と書いてます。
他の男子三人「あそびたいならあそびたいって言えばいいだけなのに。へんな奴」
妹子「うっわ、こいつら小学生かよ!……って思ったけど小学生だったわ~!」
すごい真剣な顔の妹子「くしゃみ発生器……(すごい考えてる)くしゃみはっせいきね?くしゃみ………」
わたし「作らないでね」
妹子「エッ?(・∀・)」
◇
元気に読んでいた妹子、終盤に従って、次第に静かになっていきました。
世界に入り込んでしまったからでもあるのですが
(そこに行くまでが長いです)
やっぱり、最後はしんみりしてしまうだろうな。
モグラ原っぱは、子供たちにとって世界のとびらです。
あらゆるものになれますし、あらゆる遊びがあります。
海賊にだって、なれるのです。
そんなモグラ原っぱは、団地を作るための再開発によってなくなってしまうことになりました。
妹子「はあーーー」
妹子「すごい。」
妹子「森林資源について熱く語っている。すごい。二年生なのに……」
妹子「森林資源は残すし、経済も発展するって道はないの?どっちも利益はあるんだから……」
妹子はどうやら、自分なりにWinWinの方向性を探っているようです。
◇
最後まで読んでから、閉じてため息をついて、そのまま眠ってしまったので、そのままにしておきましたけど、このモグラ原っぱのなくなってしまった過程は、自分としてはとても懐かしい思い出と結びついていて、あまり冷静ではいられません。
近所にあった、自然豊かな昔ながらの山林の中に、美しい小川がありました。
割と住宅街の中にあって、そこだけ奇跡のように取り残されていた自然の宝庫でした。
住宅街の中ではあるので、そこまで深い森ではなくて、人の目もゆきとどき、なお、動植物、魚がいるという素晴らしい場所でした。
でも、再開発によって、そこは「自然公園」に作り替えられてしまったのです。
広い、ウォーキングが出来る道と平らな芝生、そしてコンクリートで安全に作り固められた小川と、きれいに整地され、草花が植えられた土手です。
何せ九州の田舎のこととあって、その再開発計画を企画したり工事をしたりする中には、親戚や知り合いがたくさんいました。
文句を言う事もできずに、黙っているしかなかったですけど、わたしもこの四人組のように、本当は抗議したかったです。
市役所づとめの友達が
(わたしにエヴァだのイクニだの布教した有名武将の末裔の娘さんですが)
「あんな素晴らしい、奇跡みたいに残されている自然の宝庫を潰してしまうなんて間違っている!本当にこの計画は最低だし、失われたものはもう戻ってこない!」
と怒っていたのを、今でも思い出します。
わたしはまだ、かつてあった奇跡のようだったあの美しい小川を覚えていますし、今郷里に帰ってそこを通るたびにやるせない気持ちになります。
ビルの中に樹があっても、それはモグラ原っぱではない。
兄助も妹子も、そういう遊びをそもそも知らない。
◇
寝ていたみたいだった妹子がこんなことを言って来ました。
まだ考えていたんだな。
妹子「学校の授業でいま、不便のいいところってのを勉強してるんだよね。そういうところだよね。経済の事を考えれば仕方ないんだろうけど、森林資源も大事だからね」
あの喪失感は、実際に遊んでた人間じゃないとわからないのかなと思っていました。
古田足日さんは、この喪失感を知っているし、この本の中でそんな気持ちに寄り添ってくれました。
でも、未来の子どもたちも、この本を読むことで、キャンプや川べりや、少し自然の残った場所に行ったときに、このどきどきや、失われてしまう切なさを、少しでも思い出してもらえればいいなあ。
自然いっぱいの原っぱの中で、自由自在に遊ぶという体験を、少しでも味わってもらえたのらいいなあ、と思いました。
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お昼寝前に、ミニカーのとりっこでけんかをしたさとしとあきらは、先生に叱られておしいれに入れられてしまいます。そこで出会ったのは、地下の世界に住む恐ろしいねずみばあさんでした。 ふたりをやっつけようと、追いかけてくるねずみばあさん。でも、さとしとあきらは決してあきらめません。手をつないで走りつづけます―。
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からだは大きいのに泣き虫の1年生のまさやと、からだは小さくてもしっかりしている2年生のあきよ。ふたりの友情と自立の物語。
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カミイは紙のロボット。いたずらでわがままで泣き虫ですが力もち、幼稚園に入って大さわぎをおこします。集団生活での子どもの心理を巧みにとらえた作品。
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タケシたち6人は、お金をもらってかわりに宿題をやってあげる“宿題ひきうけ株式会社”をつくりました。やがてみんなは考えだします。何のために勉強するのか…。リニューアルにあたって、イラストも新しくなりました。
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「くまの子ウーフ」の物語は、1969年の刊行以来、小学校の教科書をはじめ、さまざまな形で読み継がれてきたロングセラーです。卵を割ると、必ず卵が出てくることに感心し、自分が何でできているか真剣に考えるウーフ。子どもたちはウーフとともに考え、発見の喜びに目を輝かせてきました。また、命のふしぎと生きることの本質をあざやかに描いた物語は、幅広い層の読者の共感を集めてきました。時代を経てますます輝きを増すウーフの世界をたっぷり味わえる「くまの子ウーフの童話集」を、コンパクトなサイズにリニューアルしてお届けします。
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