大人が読む児童書「トムは真夜中の庭で」 1 名作児童文学の中に必ず名前が上がる、名作中の名作
今日、ご紹介するのは児童書です。
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今日の一冊
知り合いの家にあずけられて,友だちもなく退屈しきっていたトムは,真夜中に古時計が13も時を打つのをきき,昼間はなかったはずの庭園に誘い出されて,ヴィクトリア時代のふしぎな少女ハティと友だちになります.「時間」という抽象的な問題と取り組みながら,理屈っぽさを全く感じさせない,カーネギー賞受賞の傑作です.
「トムは真夜中の庭で」は、どんな児童書のおすすめにも、必ず入ってくる、名作中の名作です。
二十七章もあり、文庫でかなりの厚みがあります。
開いてみるとわかりますが、文字もかなりギュッと詰まっていて、訳も硬派です。
いまの軽い会話の多い文に慣れた子供たちには、一見して難易度が高いのではないか?と思われる大長編です。
ですが、この本を勧めた子が、まるで吸い込まれるように夢中になってしまうのが、ほんとうに不思議です。
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もう何度も読み返していますが、レビューを書こうと思ったのは初めてです。
今回初めて、紹介することを目的として開いてみたところ、今まで気づかなかったことに、1番最初のページに、イギリスロンドン近郊の地図がついているではありませんか~!
あんなに読んでいたのに、どうしてスルーしていたんだろう。
ハティとトムが遊んだ場所やスケートした場所など、こんなふうにちゃんと地理に基づいたものだったんだ。
なんとなくこの「トムは真夜中の庭で」という作品は、自分自身の夢と目で見た景色が一緒になったように、肉体と心の一部分に属しているような、そんな感じがあります。
トムとハティは現実のイギリスのどこかの地区にいるのではなくて、その「特別な場所」に居るという感覚です。
だからたぶん、無意識のうちに見ないようにしていたんだと思います。
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今回は、これまでとは違って、序盤だけをレビューしていこうと思います。
本をあれこれ読んで来た中で、自分にとっても、子どもにとっても、本というものの「導入部分」「読みはじめの部分」がいかに大事なのか、身に染みてわかっています。
よい本は、書き出しから違ってる、おもしろい……とよく言われているのを見ますが、そんなことありません!
そもそも良い本というのがあるのかどうかもわかりません。
ただ、長く読み継がれているか、そうでないかはあります。
そして、長く読み継がれている本の多くが、序盤はわりと退屈です。
読むのに多大なる努力とエネルギーを必要とします。
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名作と呼ばれているから読んでみてやったけど、これ一体何なんだよ~、どこまでこれに付き合わされるんだろう
と思いながら、しぶしぶ読み始めたり、よっぽどヒマでもないとこんなの、読まないわ……と思ってページをめくりはじめる。
それが、ある特定の位置を過ぎた時から、ぴりっと、電気が走るように、何かが変わった!と感じる。
どんどん吸い込まれるように夢中になっていき、ついにはご飯も眠ることも忘れ、(わたしが妹子にやいやい言っているような)人の手、親の手なんてかりる必要もないほど、わきめもふらずに読み進めたくなる。
そういうものであることを、読んだ人たちは知っているので、冒頭が退屈でも、読め読め読め!と言い続けるのです。
名作とはそういうもの。
本とは、新しい街に行って、新しい景色を見て、知らない人に出会い、深く知り合うのに似ています。
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冒頭が入り込みにくいというのは、これです。
主人公トムが、とにかく最初から、ひどく不機嫌なのです。
ブスッとして、膨れてて、とげとげしくて、とにかくイライラしています。
しかし、これは理由がありました。
トムとピーターはなかよしの兄弟、夏休みになんと弟のピーターがはしかになってしまいました。
隔離のために、トムはおじさんのうちに預けられることになったのです。
夏休みのために立ててていた計画も全部パーになってしまい、トムはブーたれています。
この預けられる先の、「グウェンおばさんとアランおじさん」
多分、トムとピーターのお母さんの妹、アランおじさんはその夫という認識でいいのかな?
トムはこのアランおじさんが好きじゃないし、と書いてるのですが、読んだ私も何度よんでもこのアランおじさん嫌いです。
悪い人じゃないですけど、絶対付き合いたくないタイプです。
このアランおじさんは、この「トムは真夜中の庭で」に出てくる数々のイヤなおとなの中でも、二番目にイヤな奴です。
おばさんはいい人なのですが、おじさんの前ではまったく役に立ちません。
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一章めでわかることを、順番に箇条書きにしてみます。
・トムとピーターは仲良しの兄弟。
・弟のピーターがはしかになったので、トムはおじさんの家に隔離されることになった。
・庭で遊ぶ計画を立てていたのにパーになった。
・おじさんとおばさんの家はアパートの一室で、遊べそうな場所がない。(庭もない)
おじさんの車で、トムは隔離場所のアパートへ向かうのですが、とにかく不機嫌です。
しかし、トムも感じ悪いけど、おじさんもつまんない人なので、イヤだろうなという気持ちがひしひしと伝わってきます。
アパートにつきました。
・アパートは、昔の大邸宅を無理やりに改造しているので、ちぐはぐな感じがする。
・アパートのロビーの役割をしている入り口のホールには大きな振り子時計がかかっている。
・この時計は3階に住んでいる大屋のバーソロミューおばあさんのもの。
・グウェンおばさんの料理は美味しい。
・窓には赤ちゃんのような子供が落っこちないように横木が渡してあり、トムはすねる。
ここで重要なのは、文字からイメージを浮かび上がらせることです。
大邸宅を改造したアパート。
これ重要です。
昔は、大きな一つの家だったのです。
しかし、いまは集合住宅になってしまっているので、一般的なマンションをご存じの方ならわかると思うのですが、郵便受けがあり、荷物もそれぞれに届きますし、なんらかの共用物がおいてあったりします。
うちではよく、頼んだあとの洗った寿司桶が置いてありますが、ここでも、牛乳びんの回収ボックスが置いてあったりします。
そういうのが、イギリスの大邸宅、マナーハウスという感じではないですが、大きかった「おやしき」の雰囲気をすべてぶち壊し、雑然とごみごみとした印象になってしまっているようです。
しかも、周囲は住宅地。
どこもかしこも、コンクリートジャングルです。
まったく遊べるような緑のある場所がありません。
前から何度も読んでいて思ったことですが本当に牢獄に来たような気分です。
二章で、話が静かにですが、大きく動きはじめます。
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ロンドンに暮らすベンの夢は犬を飼うこと.誕生日に,約束していた犬のかわりに刺繍の犬の絵をもらって失望したベンは,想像の犬を飼いはじめる.やがて引っ越しを機に念願の犬を手に入れるが,それは想像の犬とあまりにも違っていた…….少年の心の渇望と,葛藤を乗りこえる姿をくっきりと写した傑作.[解説・小川洋子]
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子どもの日常生活におきる,小さいけれど忘れがたい不思議なできごとの数々.『トムは真夜中の庭で』の作者による,夢と現実の世界を行き来する印象的な短篇8編をおさめる.
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ハヤ号セイ川をいく (講談社青い鳥文庫)
フィリパ=ピアス (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 足沢 良子 (翻訳)
セイ川を流れてきたカヌーを見つけたデビットは、その持ち主のアダムと友だちになり、カヌーにハヤ号と名まえをつけた。2人は、アダムの家に伝わるなぞの詩から、かくされた宝を探し出そうとする。――カヌーで結ばれた2人の少年の、夏休みのすばらしい冒険と友情をえがいたイギリス児童文学の名作。カーネギー賞受賞作家、フィリパ・ピアスのデビュー作をエドワード・アーディゾーニの絵で。
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養い親のもとを離れ、転地のため海辺の村の老夫婦にあずけられた少女アンナ。孤独なアンナは、同い年の不思議な少女マーニーと友だちになり、毎日二人で遊びます。ところが、村人はだれもマーニーのことを知らないのでした。
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アンナは海辺でマーニーという不思議な女の子に出会う。仲良しなのは二人の秘密。けれど嵐の日マーニーが消えてしまい……。愛と友情、成長を描く感動の物語。越前敏弥、ないとうふみこによる新訳で登場!
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この世には目に見えない魔法の輪がある。海辺の村の誰も住んでいない湿っ地(しめっち)屋敷。心を閉ざした少女・杏奈の前に現れたのは、青い窓に閉じ込められた金髪の少女・マーニーだった。
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マチルダばあやといたずらきょうだい | 月曜日に来たふしぎな子 | よるくま |