~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「とぶ船」2 古い、うすぐらい小道のうすぐらい店に魔法は待っている

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

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今日の一冊

 

とぶ船
ヒルダ・ルイス (著), ノーラ・ラヴリン (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ピーターがある日、うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は、なんと魔法の「とぶ船」でした。ピーターたち4人きょうだいはこの船で、エジプトやウィリアム征服王時代のイギリス、北欧神話の世界にまで冒険旅行をします。

 

 

大人が読む児童書「とぶ船」 児童書は世界へのとびら

 

物語は、四人兄弟姉妹の長兄、ピーターの歯いたからはじまります。
訳は石井桃子さん。

 

歯のいたいことから、何かとてもすてきなことがおこるなんて、誰にも考えつけないでしょう。でも、こんどだけは、ほんとにそうなったのです。

 

よく構成の似ているネズビット作品ですと、何となくめちゃくちゃになるぞ臭が強いとでも言いますか、たぶん作者がおもしろい人で、いたずら好きなのでしょう。

もう、笑って笑って涙が止まらなくなるけど、主人公の本人たちは大弱りで困ってしまう、という風があります。

 

ナルニア国の四人姉妹は、作者の敬虔なキリスト教の考え方が投影されていて、正しい事とは、あやまちとは、という雰囲気があります。

アーサー・ランサムは……(笑)
アウトドア!ぼうけん!子供だけでアウトドア!です。

 

それぞれの作品に、それぞれの色があります。
この「とぶ船」は、何かワクワクする、すてきなことが起きるぞ!という予感でいっぱいです。

 

作者がおとな向けの歴史小説を書かれていると読んで、なるほどという思いです。

このとぶ船は、想像力のつばさです。

運んでいって、実際に見せてくれる、いわばドラえもんのタイムマシン。
それが「船」だというところがまたすてきです。

 

 

その「船」がピーターの手に入るようになったいきさつはこうです。

 

・お母さんが病気で入院することになった。
・ピーターが歯痛になった。
・お母さんが連れて行くことができないので、お父さんが責任をもって一人で行くことができるか?とたずね、ピーターはひとりで歯医者に行ってみることになった。

 

この、「お母さんが病気で入院することになった」にご注目です。
あとで関わってきます。

 

ピーターは、この一人で歯医者に行く際に、お父さんからおこづかいを支給されています。
原文では1シリング。
石井桃子さんは、「50円」と訳されています。

 

・バス代50円(25円×2)
・お茶代50円(ペットボトル代金のようなものと考えたらよいでしょうか)
・ごほうび50円
・自前のおこづかい25円(自分で何か買うかもしれないと思って持って行きました)

 

まずピーターは往復切符を買い忘れました。
持っているのは片道切符。

 

お父さんは、往復切符を買えば、「バス代は45円ですむはずだ」と言いました。
なので、5円は返さないといけないです。

訳文の方だとなんとなくふわっとしているので、往復切符を買っても買わなくても大丈夫なんじゃないか、どっちでもいいんじゃないかという感じですが、原文では「distinctly」という一言が入っており、5円は返すものとして明確だということになっています。

 

この5円が非常に重要な役割を果たします。

 

 

ピーターはゆうかんに歯の治療を済ませましたが、さておこづかいをどう使うかです。

ピーターの持っているおかね
バス代残り25円+お茶代50円+ごほうび50円+こづかい25円=150円

 

しかし、「バス代残り25円+お父さんに返す5円=30円」は、とっておかねばなりません。
つまり、ピーターが自由に使っていいお金は120円までです。

 

どうしようかと思って、商店街をぶらついていたピーター。

 

そこで、海岸へいく、さいしょの角を曲がりました。それは、古い家がぎっしりならんだ、せまい、すこしうすぐらい通りでした。

 

いまでも歩いている時、 こう言う通りに出会うとドキドキします。
このうすぐらい通りにある、うすぐらい小さな店。

 

うすぐらい、小さな窓からのぞいた中に、ピーターは「それ」を見つけました。

 

二十センチもないほどの、黒っぽい木で出来た小さな船。
両方の船べりにかかった、丸い盾と、船首飾りは金色に塗ったイノシシの首です。

 

「かたほうの目に黒い眼帯をかけた」、お年寄りが出てきて迎えます。

 

この小さな船の値段は、
「いまもっている金ぜんぶと──それから、もうすこし」
でした。

 

ピーターは、持っているお金、150円をすべて出して、その船を買い取ります。
その150円の中には、お父さんに返さなければいけない5円と、帰るためのバス代25円が含まれていました。

 

5円と言えど、お金はお金。

 

注釈によると、「1953年間の岩波少年文庫初版のままにしてあります」とのことです。
思い入れがある本なので、嬉しいですが、今の金銭価値に変換しても別に構わないような気もします。

 

しかしこのたったの5円が、例え5円であろうとも、自分が持っているべき以上のものであったという、この感覚がすごく大事です。

 

このお金のやりとりと、子供の頃の対価のお話がそれはそれは大好きでした。

なので、岩波さんが変えずにこのままにしておいてくれたことを感謝します。

 

 

ピーターはその5円はほかの兄弟たちに借りることにして、とりあえず海伝いに近道を走って帰ることにしました。

 

この不思議な船はよくよく観察して20~22センチほどはあるのに、それより小さいポケットにスルッと入ってしまいます。

 

気になって測ってみました。
岩波の少年文庫は、四六版と呼ばれる128✕188mmのもののようです。

 

この、心もち大きめな岩波のより、さらに 5センチほども大きいとなると、 これはカバンに入るけれど 確かにポケットには入らないでしょう。

こういう冷静な分析を出来るところが、 大人になってから読む醍醐味です。

 

 

新しいおもちゃに夢中になったピーター、海岸を行く時に忘れてはならないことを忘れていました。
満潮です。
潮が満ちてきて、ピーターめがけて押し寄せてきました。

 

妹子「これほんとにトラウマ。こわい」

 

ピーターが絶望して、うちに帰りたいと口走った時、ポケットの中で何かがもぞもぞ動きました。
あの船が魔法のように大きくなってピーターを乗せ、うちまで飛んで帰ってくれたのです。

 

この不思議なシーンはとても静かに言葉なく、描写だけで推移します。
なのでより一層魔法であるという感覚が強いです。
それも静かで強力な、何かとても不思議なことが起きている。

 

そしてそれは正当な対価、少し無理をして払って手に入れたものである、ということです。

 

 

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The Ship That Flew (English Edition)
Kindle版 英語版 Hilda Lewis (著), Beebliome Books (編集)

The model Viking ship lay in the window of a little old shop in an unfamiliar back street, and Peter, on his way to the dentist, lost his heart to it at once. It cost him all the money in hist pocket, including the fare home. That was how he came to take the way along the beach which led him into grave danger, but also opened his eyes to the magic properties of the little ship in his hand—the ship that flew.

 

 

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砂の妖精
イーディス ネズビット (著), H R ミラー (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ロンドンから田舎に移り住んだ子どもたち4人。彼らは砂の中に棲んでいるサミアドという不思議な妖精に出会います。その魔法の力で空を飛んだり、巨人になったり…愉快な冒険物語。

 

 

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「ナルニア国ものがたり」全7冊セット
C.S.ルイス (著), 瀬田 貞二 (翻訳)

押入れやクローゼットを開けたとき、この向こう側に行ってみたいと、ふと思うことがある人。それは『ナルニア国ものがたり』をかつて夢中になって読んだ人にちがいない。第二次世界大戦中のイギリスの片田舎。ロンドンから疎開してきたピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィの4人きょうだいが学者先生のお屋敷を探検するところから、この壮大な物語は始まる。

 

 

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ツタンカーメン (全4巻)
山岸凉子(著)

「我は汝を王と成さしめる者なり」。1903年エジプト。封印されたファラオの墓発掘に挑むハワード・カーターはテントの中で枕元に立つ金のサンダルを履いた男から不思議な言葉をかけられた。彼の人生をかけた挑戦が、始まりを告げる。ツタンカーメンの王墓発掘を描く冒険歴史ミステリー。

 

 

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飛ぶ教室
エーリヒ ケストナー (著), ヴァルター・トリアー (イラスト), 池田 香代子 (翻訳)

ボクサー志望のマッツ、貧しくも秀才のマルティン、おくびょうなウーリ、詩人ジョニー、クールなゼバスティアーン。個性ゆたかな少年たちそれぞれの悩み、悲しみ、そしてあこがれ。寄宿学校に涙と笑いのクリスマスがやってきます。(「BOOK」データベースより)

 

 

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火の鳥と魔法のじゅうたん
イーディス ネズビット (著), H.R.ミラー  (イラスト), 猪熊 葉子 (翻訳)

ロンドンに住む5人の兄妹は子供部屋のじゅたんを焦がしてしまい、新しいじゅうたんを買ってもらったら・・・なかには不死鳥の卵が・・・空飛ぶじゅうたんと不思議な力を持つ不死鳥と数々の冒険をするのですが、願いはかなえられるけど、意外な結果に・・・日常にふとまぎれこんだ「魔法」を楽しく描くネズビットの傑作

 

 

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火の鳥と魔法のじゅうたん
イーディス ネズビット (著), H.R.ミラー  (イラスト), 猪熊 葉子 (翻訳)

ロンドンに住む5人の兄妹は子供部屋のじゅたんを焦がしてしまい、新しいじゅうたんを買ってもらったら・・・なかには不死鳥の卵が・・・空飛ぶじゅうたんと不思議な力を持つ不死鳥と数々の冒険をするのですが、願いはかなえられるけど、意外な結果に・・・日常にふとまぎれこんだ「魔法」を楽しく描くネズビットの傑作

 

 

 

 

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