大人が読む児童書「黒ねこのおきゃくさま」 ねこの絵選手権優勝の盾を贈呈したい。
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
冬の嵐の晩、貧しいひとり暮らしのおじいさんのもとに、一ぴきの黒ねこがやってきました。やせ細り、びしょぬれになってふるえている黒ねこを哀れに思ったおじいさんは、わずかばかりのミルクとパンを全て与え、さらにはとっておきの羊の肉までやってしまいます。そればかりか、残っていたまきをすべてだんろにくべて、黒ねこをあたためてやるのでした。そして翌朝、奇跡はおこりました……。
ルース・エインズワースの、絵本と本の中間といったハードカバーの本です。
あんまり猫がかわいいので。
あまりにもこの絵がかわいいので。
手に取ってから、しばらく話よりも、あまりの絵のかわいさにじっと見とれてしまいました。
◇
海外の人って、猫を書くのそんなに上手じゃないような気がします。
ごく少数の例外を除いて、そのリアルな例外も、どちらかというと目のキツさもきちんと写生してますし、でなければトムとジェリーのトムみたいな感じです。
これは、すごい。
猫のかわいさが、わかっていすぎる。
と思って見てみたら挿し絵は、山内ふじ江さん。
日本人だったー!
日本人は、世界に類のないねこずきで、浮世絵にもねこの絵がたくさん残っていると聞きますが、(ちょっと真偽はわかりません)この挿絵を描いたかたは、相当に猫の絵の名手です。
ほんとうに猫です。
◇
絵がかわいいという話はここまでにして、このお話です。
貧しいおじいさんが1人暮らしをしています。
孤独な独居暮らし。
寒くて年を取って体が弱っています。しかもお金もありません。
人生はつらい。
しかしおじいさんは今日は土用の晩であることを思い出しました。
おじいさんは、思い出して、にっこりしました。すると、やせこけた
土 いろの顔が、まるで、しなびたリンゴの皮のように、しわくちゃになりました。
一週間に一度だけ、肉のごちそうと、寝る前にミルクにひたしたパンを食べるのだそうです。
なんて素敵な表現でしょうか。
さすがルース・エインズワース。(ねこと、作者の名前で選びました)
「ミルクにひたしたパンは、体をとってもあたたかくしてくれるそれで、ようくねむれるんだ」
こ、これは……。
先に猫の絵を見ちゃってるので、読めたなという感じはします。
先に見なきゃ良かったような、見てもあんまり変わらないような、とにかく可愛いとしか感じません。
扉の向こうで鳴き声がします。雨風のひどい日です。
聞き違いではありません。またなきごえが聞こえました
おじいさんは痩せた黒猫を招き入れました。
このびしょ濡れの様子!タオルにくるまれた様子!
(猫の絵のことばかり書いてますが、おじいさんの様子、貧しいながらも整った家の中の様子、暖炉の火など、とてもすばらしいです)
おじいさんはミルクをやり最後に残っていた分のパンもちぎってひたして、すべてあげてしまいます。
猫は舌なめずりをしながらあちらこちらを物色し、今度はどうやら肉に気がつきました。
おじいさんこれも、全部猫にやってしまいました。
◇
さらに今度は食器棚に残っている骨です。
おじいさんせめて骨くらい取っておいて後でだしをとってスープを作ろうと思って撮っていたものです。
猫にやってしまうんだろうなとは思っていましたが、ちょっと予想外に何もかもしゃぶり尽くされたというか、ここまですべてあげてしまうと、何とも言えない気持ちになります。
猫はもうひもじそうな骨と皮ばかりの猫ではありません。
ちょっと不思議な感じがします。
毛はやわらかく、ふさふさになり、ひげはぴんとはって、りっぱになりました。しっぽはふくらみ、さっきの二倍になっていました。…?
わずか一食、食べたばかりでこんなになるものだろうか。
◇
今度は薪です。
震えている猫を温めるため、おじいさんあるだけの薪を残らず全部、使ってしまいました。
おじいさんは、とてもしあわせでした。まきがぱちぱちもえて、時計がかちかちなって、おきゃくさまは、のどをごろごろならしています。なんて心地がいいんだろう。なんてしずかな気持ちだろう。なんて心がいっぱいなんだろう。おじいさんは、おなかがぺこぺこだったのも、すっかり忘れてしまいました。
すべてがなくなったはずなのにこの満たされた気持ち。
おじいさんは寝床に入って、なくなったもののことはもう考えないことにしました。
読んでいるこちらまで満たされます。
朝起きて、外は雪で覆われています。
食べるものもなく、薪ももうないおじいさん。
猫は外に出ようとする仕草を見せます。
◇
黒猫は堂々と外に出て行き、その姿はまるで女王さまのように立派に見えました。
ここで猫はふりかえり、
「なぜわたしをおいだして、とびらをしめてしまわなかったのですか?」
と人間のように尋ねます。
確かにこの猫は、何か不思議な妖精か何かです。
猫が去って行った後も、雪の上に足跡はありませんでした。
おじいさんが戻ってみると、ミルクがたっぷりとありパンもあり肉もあり、薪もなぜか、山のようにありました。
この家に、二度と食べ物も薪も、尽きることはありませんでした。
◇
不思議な物語です。
昔話風の仕立てにしてありますが、これは小さな小説です。
分かち合うことの喜び幸福、心の豊かさを描いています。
しかし何にもまして猫があまりにも可愛いです。
でも可愛いだけじゃなくて神秘的なところがまた良い。
最後に外へ去っていく猫はこちらが「愛してお世話してあげる」存在ではありませんでした。
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子スズメはお母さんから飛び方を教わりました。羽根をぱたぱたやっているとちゃんと空中にういているので、子スズメはおもしろくなってどんどん遠くまで飛んでいきました。そのうちに羽根が痛くなったので休もうと思いましたが、ようやく見つけた巣にはカラスやヤマバトやフクロウがいて、中に入れてもらえません。やがてあたりは暗くなって……。骨格のしっかりした物語絵本です。
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まっ白な毛のしおちゃんと、白に灰色の混じるこしょうちゃんは双子の子猫、何をするのも一緒です。ある日、どちらが高いところに登れるか競争をして、庭の木のてっぺんから、下りられなくなってしまいました。鳥や飛行機に鳴いて助けを求めても、だれも来てくれません。でも夜になると、お母さんが迎えにきてくれました。お話の名手・エインズワースによる、張り合う子猫たちのおかしさとお母さん猫のあたたかみが感じられる作品。
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ちいさな ろば
ルース エインズワース (著), 酒井 信義 (イラスト), Ruth Ainsworth (原著), 石井 桃子 (翻訳)
ちいさなろばは、昼間遊ぶときも夜眠るときもひとりぼっちです。クリスマスイブにプレゼントを配る手伝いをしたろばに、サンタクロースは、「あしたの朝、なにかがおまえを待ってるよ」と言います。クリスマスの朝、ちいさなろばを待っていたものは……。『こすずめのぼうけん』『黒ねこのおきゃくさま』など、子どもの心をとらえるお話の名手、エインズワースの原作が、格調高い訳文と絵で、美しい絵本になりました。
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ねこのお客 (岩波少年文庫(1055)―かめのシェルオーバーのお話 1)
ルース・エインズワース (著), 河本 祥子 (翻訳)
キャンディおくさんの家で暮らしている牛や犬,ねこなどの動物たちは,ある朝庭でカメを見つけて大騒ぎ.いったいどこから,どうやってやってきたのでしょう.じつはこのカメは,長い時間をかけて,ゆっくりゆっくり世界をまわりながら,たくさんの物語を集めてきたのです.カメはその中から,こわい話ふしぎな話を語ります.
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赤い機関車ホブ・ノブは、こひつじ、いぬ、ねこ、あひる、めんどり、しちめんちょうを乗せて、遊園地へ向かいます。途中、真っ暗なトンネルに近づくと、動物たちは怖がって大騒ぎになりました。ホブ・ノブはトンネルの中で汽笛を鳴らし、明るい火の粉をたくさんはきだして、みんなを安心させます。そしてホブ・ノブと動物たちは、遊園地で楽しく過ごしました。繰り返しのきいた簡潔なストーリーが、幼い子どもの心を満たします。
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リゼットおばあさんの家に住んでいる子ねこのぴっちは、ほかのきょうだいたちとはちがうことをして遊びたいと思いました。ところが、アヒルのまねをして池で泳ごうとして、おぼれてしまいます。
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長いあいだ小型版で親しまれてきた、人気者のかわいい子ねこのぴっちが、迫力ある美しい大型絵本にうまれかわりました。読みきかせにもぴったりの大きい画面で、動物たちの表情をお楽しみください。
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リゼットおばあさんの家に住んでいる子ねこのぴっちは、他の兄弟たちとは違った遊びをしようと思いました。アヒルの真似をして池で泳ごうとしますが…。
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