~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「ムギと王さま」4 支配もせず、支配もされず、所有せず、所有されず。

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

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今日の一冊

 

ムギと王さま
エリナー・ファージョン (著),
エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

幼い日,本のぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短篇集

 

大人が読む児童書「ムギと王さま」1 理想的な読書垢にとっての環境とは

2 ツンがなくデレもない。媚びてないのでもなくサバサバでもない属性とは。

3 時間のむだはカネのむだ。その価値観を覆したのは、たった一つの笑顔とことば

 

「ムギと王さま」の中で一番好きなのはやはり「パニュキス」。

特別な作品です。

 

2018年に、もう削除してしまいましたが別ブログの記事でUPしていたのですが、それも12月31日でした。

 

 

山岸涼子が短編でファージョンをモデルにした話を書いていて、私以外にもこの話が好きな人がいたのかと思い、とても嬉しく思いました。

こちらの自薦短編集に入っていますが、今はもう絶版で、古本しか出回っていないようです。
シュリンクス・パーン (文春文庫)  山岸 凉子 (著)

主にギリシャ神話をもとにした話が入っており、どれも繊細な絵が非常に美しいです。
今後の、電子書籍化に期待します。

 

しかし、この山岸凉子版「パニュキス」

 

石井桃子さん訳の「ムギと王さま」の中の一篇の「パニュキス」がもとになっているのですが、これ言及している、ネットでのブログなり、記事なりへの記述がまったく見つけられず……。

 

山岸涼子さんの漫画で言及されるアンドレ・シェニエのパニュキスの訳文は、石井桃子さんの訳そのままです。

 

もしかして、エリナー・ファージョンの「パニュキス」の翻案であることを知らない人がたくさんいるのではないか?と思いました。

 

石井桃子さんがあとがきで書かれていますが、「パニュキス」を入れずに出版した版で、原作を読んだと思われる複数の人から「なぜ入れないのか」とおたよりが届いたとのこと。

入れることが出来てよかったと書かれています。

 

そしておそらくは、翻案された山岸涼子さんにとってもそうだと思います。

 

「パニュキス」はどこか特別な物語です。

 

 

山岸涼子さんの「パニュキス」は、その美しい繊細な絵でエリナー・ファージョンの人生を下敷きにしながら、兄ハリーに対する少し特殊な愛情の加味を加えて、最終的に愛する人とめぐり合えたという結末にしてあります。

 

実際のファージョンは、愛する人もいたようですが、一生打ち明けることはなく、生涯独身を貫いたと伝記に書かれていました。

 

山岸涼子さんの「パニュキス」を読んだ時には、作者に対するわたしの想像を補完してもらえたようでとても嬉しかったのですが、それにしてもやはり「パニュキス」と言う作品にはどこか、翻案やオマージュ作品が超えることのできない、原作の持つ強い力が存在します。

 

自分の作品の中では恋愛が成就して、成熟しておとなとなり、幸せになって欲しいという心すら届かないほど、特別に強い力が。

 

 

この作品「パニュキス」は、フランスの詩人、アンドレ・シェニエの詩をもとにしています。
シェニエは、フランス革命の時代の詩人で、恐怖政治が終わる三日前に断頭台に消えています。(ウィキペディアより)

アンドレ・シェニエ - Wikipedia

 

この作品も、このシェニエの詩からはじまっています。

 

noteで交流させて頂いている、「ひよこのるる」さんに教えて頂いたのですが、アンドレ・シェニエのパニュキスの詩の原文がウィキにUPされていました。

 

また、Gutenbergにも公開されていました。

(フランス語です。)

www.gutenberg.org

 

 

フランス語、日本語、英語の「パニュキス」の詩を並べてみます。

 

石井桃子さん訳

ファージョンはこの詩を、フランスに行ったときに買い求めた本の中に見つけたと書かれていたので、おそらくはファージョン自身がシェニエの詩を訳したのかと推察されます。

ああ、パニュキス、きみは、ぼくをすきにならずにいられない!
おなじところに住む、ぼくたちは、おなじ年。
ごらん、ぼくは、こんなに大きい!
きのう、ぼくは、ぼくの小ヤギのわきに立った。
ポリュデウケースとアテーネの名にかけて、ぼくはいう、
小ヤギの角のさきは、ぼくの髪の毛にとどかなかった!
ぼくは、木の実で、青い青いカブト虫を入れる箱を、きみにつくってやった。
その箱のうらがわには、とてもやわらかいヒッジの毛を入れた。
けさ、海べの水たまりで、ぼくは、きれいな貝を見つけた。
それに、ぼくらは土を入れ、花を植えよう。そうだ、植えよう。
ぼくは、小さな木の皮を池にうかべて、船隊の動くところを見せてあげるよ。
家の新人はおとなしい。だから、夕方、きみを犬の背にのせ、
ぼくが先に立ち、そのしずかな馬をひいて、家にちゃんとつれてかえってあげるよ。

 

ファージョン「The Little Bookroom」より、英語原文

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Gutenbergより、「PANNYCHIS」の部分

f:id:WhichBook:20211130164533j:plain

 

Gutenbergのテキストを、Google先生に読み上げてもらったら、「パニュキス」を「パニュスィー」と発音していました。
ずいぶん違うイメージです。

 

Gutenbergにある、アンドレ・シェニエの詩には、何と続きがありました!
もし興味のあるかたは、ぜひ見て読んでみてください。

 

 

パニュキスは5歳の女の子。

 

ちいちゃい妖精じみた子どもで、はだは、白いきぬのよう。手足は、花のくきのようにやさしく、うす金色の髪の毛は、とてもやわらかくて、風が吹くと、光のすじのように頭のまわりにもつれました。

 

パニュキスのいとこ、キュモンは、パニュキスが大好きで、とても大事にしています。

 

キュモンは何とかして、パニュキスを独占しようとし、あらゆる害から守ろうとして苦心します。
しかし、肝心のパニュキスはまったくそんなキュモンの気持ちには無頓着なのでした。

 

これは少し独占欲とは違う気がします。

 

山岸凉子が描いたような、純粋であろとするあまりお互いの黄金を削り取ろうとするという種類のものではなくて、自然界に存在する美しさ、目にし耳にする、奇跡のような瞬間を自分の中に取り込み、発露しようとする詩人の、創作欲のようなもの。
と感じました。

 

しかし、パニュキスは所有できるような対象ではありませんでした。

 

パニュキスの心は、自由でした。パニュキスは、世界にむかって大きな声で笑いました。生きることは、喜びでした。何ものも、手ににぎりしめはしませんでしたが、パニュキスは、すべてのものをもっていました。

 

支配もせず、支配もされず、所有せず、所有されず。
パニュキスは、世界に存在する美しさそのものです。
一体化しており、分けることはできない。

 

今は、パニュキスがいなくなるのをおそれる気持ちが、よくわかります。
大切なものを失うおそれ、不安です。

 

キュモンの心配をよそに、パニュキスはいとこの手を振り払って消え、笑い声と「もっとたのしそうに!」というこだまのような声だけが残るのでした。

 

 

最初はパニュキスが消えてしまったすべてをおそれ、憎んだキュモンでしたが、時間がたつにすれ、次第におそれを忘れて、ふたたび世界を愛することができるようになりました。

 

でも、キュモンは、妻にも、子どもにも、まだ話したことがありません。人生には、よくそうしたことがおこるものですが、生きることが、あまりにも重荷になったとき、世のさまざまなものの美しさが、空や草や、木や岩や、湖や海や、光や闇のなかから、とつぜん、キュモンの上にせまってきて、パニュキスの笑い声が、かの女が、じぶんの手をふりはらったときとおなじくらいはっきりきこえ、かの女の声が、天から、地から、「もっとたのしそうに!もっとたのしそうに!」と、よびかけることのあるのを。

 

...But he never told even his wife and children that often, when life seemed too heavy to be borne, as life so often does, the beauty of things rushed in upon him unawares, from the sky and the grass, the trees and the rocks, the fresh water and the salt, the light and the dark, and he heard as clear as in the moment when she broke from him the lovely laugh of Pannychis, and heard her call to him from heaven and earth, 'Look happy! look happy!'

 

 

パニュキスがキュモンに語りかけた「もっとたのしそうに!」ということばは、常に私を支え続けてきてくれました。

 

今回、「ムギと王さま」を読み返してみて、忘れかけている大切なことを取り戻せたような気がしました。

 

他にも、「ねんねこはおどる」「サン・フェアリー・アン」「ガラスのクジャク」「レモン色の子犬」「モモの木をたすけた女の子」「天国を出ていく」

 

どれも大好きなお話ばかりです。

特に、名前を冠している「ムギと王さま」をぜひ読んでみてもらいたいです。

 

 

 

 

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The Little Bookroom (English Edition)
英語版 Eleanor Farjeon (著), Edward Ardizzone (イラスト)

A girl sits in a dusty room, crammed to the rafters with books. Sunlight dances on the covers, between which are stories of magical worlds and faraway places, lands of princesses, kings, giants, and real children too. Eleanor Farjeon was that girl, who was so enchanted by her little bookroom that she recreated it by writing this wonderful collection of short stories

 

 

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シュリンクス・パーン (文春文庫―ビジュアル版) 文庫 – 1997/6/10 山岸 凉子 (著)

ギリシャ神話の妖精シュリンクスに恋をしたパーンは山羊の耳と脚を持つ牧神。妖精の可憐と牧神の奔放を融合させて新たに山岸神話を創造した表題作ほか、怪しの世界を描く四篇を収録。

 

 

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エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする
エリナー ファージョン (著), シャーロット ヴォーク (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

少女エルシー・ピドックは,妖精になわとびの秘術を習い,誰にも負けない名手になった.長い時が経ったある日,この村をおそった危機に,おばあさんのエルシーが立ち向かう.有名なお話が美しい絵本に.

 

 

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リンゴ畑のマーティン・ピピン
エリナー・ファージョン (著), リチャード・ケネディ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

恋人から引き離されてリンゴ畑の井戸屋形にとじこめられている少女ギリアンを,6人の娘たちが牢番として見張っています.陽気な旅の歌い手マーティン・ピピンは,美しく幻想的な6つの恋物語をくりひろげて娘たちの心を奪い,首尾よく牢屋のかぎを手に入れます.ファージョンが作家としての地位を確立した傑作

 

 

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リンゴ畑のマーティン・ピピン
エリナー・ファージョン (著), リチャード・ケネディ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

恋人から引き離されてリンゴ畑の井戸屋形にとじこめられている少女ギリアンを,6人の娘たちが牢番として見張っています.陽気な旅の歌い手マーティン・ピピンは,美しく幻想的な6つの恋物語をくりひろげて娘たちの心を奪い,首尾よく牢屋のかぎを手に入れます.ファージョンが作家としての地位を確立した傑作

 

 

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銀のシギ
エリナー・ファージョン (著), E・H・シェパード (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

気だてはいいが食いしんぼうの粉屋の娘ドルが、小鬼のたくらみで王さまの妃になりました。妹のポルが銀のシギの助けを借りて、姉の危機を救います。素材は昔話の「トム・ティット・トット

 

 

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町かどのジム
エリノア ファージョン (著), エドワード アーディゾーニ (イラスト), 松岡 享子 (翻訳)

デリーが物心ついてからというもの、ジムはいつでも街角のポストのそばに座っています。むかし船乗りだったジムは、デリーにいろんな場所の話をしてくれます…。1965年学研刊の名作をアーディゾーニの挿絵で。

 

 

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マローンおばさん
エレノア・ファージョン (著), エドワード アーディゾーニ (イラスト), 阿部 公子 (翻訳), 茨木 啓子 (翻訳)

森のそばで、ひとり貧しく暮らしていたマローンおばさんのもとに、すずめや、ねこや、きつねたちが訪れ、おばさんは、貧しい中から彼らに必ず何かを分け与えた。読み継がれる有名な詩を邦訳して紹介する。

 

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

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