~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書?「ミツバチ娘セネマー」 2 あまい言葉に気を失う王子さま

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

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今日の一冊

 

新編 世界むかし話集(7)インド・中近東編

山室静 (編集) 形式: Kindle版

世界宗教といわれるものはすべてこの地域で発生し、砂漠あり氷河あり、人類の往きかよう十字路。おびただしくある説話から昔話のインド起源論が風靡したことさえあった。ともあれ、この地域が昔話の宝庫であることは間違いない。
<インド> 青い山犬 / 三人のいたずら者 / 他十二編 
<イラン> お百姓と三人のいたずら者 / アリ・ムハメッドのお母さん / 他五編 
<アラビア> ダマスクスの商人カシムの話 / 二人のごろつき / 他四編 
<トルコ> 笑いリンゴ泣きリンゴ / どろぼうの名人 / 他六編 
<イスラエル> 巡礼と彼のロバ / なまけ者の国 / 他五編

 

大人が読む児童書?「ミツバチ娘セネマー」 1 ミツバチを生む。文字通りです。

 

わたし「おかあさんも久しぶりに読み返してみたけど、なんで違和感持たなかったんだろうか。意味が分からないぐらいやばいね。これはもう、この洗濯女さんが新たな女王蜂だね」
妹子「ミツバチをそのまま産んだの?それとも……」
わたし「そこ考えたらだめ!」

 

不幸な女は、籠にミツバチをつめて裏庭へもってゆき、そこに捨てて、ただ一ぴきだけを部屋の隅に隠しておいたのです。

 

わたし「すてたな」
妹子「わたしでもそうするわ」

 

何しろ二千か三千びきです。
しかし、神様に願ったのをぜんぶ捨てるのは気が引けたのか、このお母さん、一匹だけ隠しておきました。

 

そこでみつばちの巣を作って、みつを集めて売りましたみたいな話にもなりませんでした。

 

そもそも論で、子どもをこれほど願っているのに、お父さんとかだんなさんとかの存在が一切出てこないのもちょっと不思議と言えば不思議です。
この世界に、生殖の仕組みとか社会の構造とかそういう概念は存在しません。

 

 

残されたこの一匹、なかなか優秀です。
さすが働き者のみつばち。

 

洗濯女が外へ仕事にでてゆくと、そのミツバチはブンブン飛びまわって、食事をこしらえたり、掃除をしたり、洗いものをしたりしてあらゆる家事をかたづけると、また隠れ場所に飛びもどったのでした。


妹子「おかしいだろ」
わたし「いや、ありえない。すごい」

 

洗濯女は不思議がりますが、謎は解けないままわかりません。
これは声に出して読んできかせていると、「ブンブン飛び回って」「こしらえたり」「飛びもどった」などがとてもユーモラスでおもしろいです。

 

 

そしてここに、唐突に王子さまが現れました。

 

こ、このみつばち、女の子だったのか~!
…というところだけは、何となく誰も(妹子も私も、読んできかせて他の子どもたちも)違和感を持たないのが面白かったです。

 

みつばちの働きバチはメス、というのは深くしみとおっているようでした。

 

それより、唐突に王子様が洗濯女のうちに来るというすばらしいご都合展開です。状況はこうです。

 

ある日、洗濯女は王子さまの衣装の洗濯を引きうけてきて、それを洗うために川へでかけました。ところがそのあいだに、王子自身が家へやってきて、じぶんの衣装をもどしてくれといいました。

 

家には、ミツバチしか残っていなかったので、この娘が母の洗濯女の代わりに王子さまに応対しました。

 

ミツバチは扉のうしろから、「あなたはどなたですか?」と、声をかけました。王子が「ぼくは洗濯のおばさんを訪ねてきたんです。」と答えると、ミツバチはいいました──。

 あなたの洗濯女は川へ行っていますわ
 ──ちかってわたしいいますけど──
 そして下着をきれいに真白まっしろに洗ってますの
 ──ちかってわたしいいますけど──
 あの人が夕方帰ってきたら
 ──ちかってわたしいいますけど──
 くわしくお話するでしょうよ
 ──ちかってわたし申しあげますわ!

その甘い言葉が王子の心にしみとおったので、思わず王子は気が遠くなって倒れました。

 

妹子「なんでだよ!」

 

二・三千匹のミツバチを生むだとか、せっかくお願いしたのに裏庭に捨てたりだとか、ミツバチ(1ぴき)だけど洗濯や料理ができるとか、王子様がやってくるなり気を失うだとか……。


ついていくのに精いっぱいです。

 

わたしが読んでいたときは、どちらかというとこの唐突な詩(みたいなもの)
 ──ちかってわたしいいますけど──
の繰り返しが、(気絶した王子ではないですけど)、それこそ深く記憶に刻まれて消えませんでした。

 

何とも不思議なお話です。

 

 

ぜんぜん、これだけでは終わりません。

 

気絶した王子は、外で待っていて不審に思った大臣の息子に助けられました。

 

ここで、この家の感じが
 (屋内)ミツバチ |扉| 王子 |扉| 大臣の息子(たぶん外)
という感じであることが何となくわかります。

 

そして、洗濯女の家といえども、女性が応対したときは、簡単には開けないんですね。
中の女性の声だけ聴いて気絶する王子。

 

 

大臣の息子は何があったのか聞きますが、王子は「なんでもないよ」なんて言ってます。
もしかすると、大臣の息子も彼女を気にするのがイヤだったのかもしれません。


しかし、ここからもまた、怒涛のツッコミどころ満載の展開になっていきます。

 

しかし、王子はお城へ帰ると、お母さまのお妃にいったのです。「洗濯女の娘をぼくの妻に迎えて下さい。でなければ、ぼくはどこかへ行っちまいます。」
お妃はおっしゃいました。「まあ、おまえ、気がちがったのかえ!どうして洗濯女の娘などを、国のもう一人の女王にできますか?」
「そうですか。そんならぼくは死ぬだけです。」と、王子はいいました。

 

妹子「『どこかにいっちまいます』とか!『そんなら僕は死ぬだけです』!笑える!」
わたし「お妃さまも『気がちがったのかえ』とか地味にじわじわくる」

 

みつばち娘の「ですわ」とか、お妃さまの「かえ」とか、昭和な言葉づかいだとは思うのですが、違和感よりも面白さ満載です。

 

 

お妃さまはついに根負けして、洗濯女のところに使者が行きました。
このとき使いをしてたずねたのは、女性の女官たちです。

 

洗濯女が困惑すると、壁からみつばちが飛び出してきました。
ここでやっと、洗濯女も自分の娘を娘だと(みつばちだけど)認めます。
これまでお手伝いしてくれていたのは、実の娘(みつばちだけど)だったのです。

 

女官たち「あなたが話をなすったのは、若い娘ではなくて、ミツバチでしたよ。」
王子「そんなことはかまわん。ぼくは彼女と結婚するんだ。」

 

 

昔ばなしの中には、実に色んなパターンの異種婚がありますが、これはなかなか、いちずにぜったい何があっても気持ちを変えない王子さまです。

 

だいたいにおいて、困惑しつつ結婚生活をしていてだんだんほだされていくとか、夜だけは人間になるので結婚生活が成り立つとか、そういう感じが多いのですが、この王子は、小さかろうがミツバチだろうが、いっさい問題にしていません。

 

私も、「これは王子が実際にミツバチ娘を見ていないからではないだろうか?」なんて思っていたのですが、読み返してみるとこうです。

 

そこでみんなは婚約式の準備をしました。二つのソファを重ねて、その上にミツバチをのせ、金の刺繍をした布地で飾って、婚約をとりきめたのでした。婚礼は一週間後にあげることにきまりました。

 

ということは、王子はばっちり……その、体が小さいとか、容姿?とか……?承知の上なわけです。
で、婚約式の終わった王子の行動といえば、こうです!

 

王子はひどく惚れこんでいたので、この一週間が早く過ぎるように、なにかしなくてはならないと思い、狩りにでました。

 

妹子「どんだけだよ!落ち着かないのかよ!」
わたし「いやぁ……、待ちきれなかったんだろうね……」

 

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新編 世界むかし話集 (全11巻) Kindle版 山室静 (Editor)

 

 

 

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新編 世界むかし話集(1)イギリス編 (現代教養文庫ライブラリー) Kindle版 山室静 (編集) 形式: Kindle版

ムーミン」やアンデルセン童話など、北欧・児童文学の研究・翻訳に生涯携わり、子供たちには夢を、大人にはやすらぎを与え続けた著者・山室静の世界むかし話集第1弾。
<イングランド>ネコの王さま/カメの遠足/最初のバナナ/三びきのクマ/ロンドン橋の上で/ジャックと豆の木/他8編
<コーンウォール>ベッチィ・ストーグの赤ちゃん/頭から下に向かって/他3編
<スコットランド>ヒース酒の秘密/詩人トマスの話/他5編
<ウェールズ>長すねグウィスの嘆き/他3編
<アイルランド>白いマス/笛吹きとプーカ/他9編

 

 

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新編 世界むかし話集(2)ドイツ・スイス編 (現代教養文庫ライブラリー) Kindle版 山室静 (編集) 形式: Kindle版

これまで家庭で語られていただけの昔話が、今日のように文化的宝と認められるようになったのは、グリム兄弟の『家庭と子供のための童話集』の刊行によるところが大きい。
本書は「ヘンゼルとグレーテル」「白雪姫」などのグリム童話を中心に、オーストリア、スイス、オランダ諸国の昔話を多数収める。
<ドイツ> カエルの王子/ヘンゼルとグレーテル/オオカミと七ひきの子ヤギ/いばら姫/他21編
<オーストリア> 永遠の国へ行った花婿/ハシバミの枝/他3編
<スイス> 三つの言葉/ローツェ氷河はどうしてできたか/かわいい小鳥/他5編
<オランダ> スタフォレンの奥方/飛びゆくオランダ人/他3編

 

 

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新編 世界むかし話集(3)北欧・バルト編 (現代教養文庫ライブラリー) Kindle版 山室静 (編集) 形式: Kindle版

他のゲルマン諸国では、神話詩や英雄伝説キリスト教の影響で失われたが、北欧ゲルマン人はすこぶる詩歌を愛し、それが語り伝えられている。北欧の民話が豊かであるのは、そのような伝統を受け継いでいるからである。
<デンマーク> 辛抱づよい奥方/十一羽の白鳥/小さい野ガモ/他8編
<スェーデン> 跳ぶ巨人/水の精(ネック)と少年名/スコールンダ山の巨人/他7編
<ノルウェー> 北風のくれたテーブルかけ/海の水はなぜからい/他8編
<アイスランド> 雌牛のブーコラ/アザラシの皮/他6編
<フィンランド> 七人兄弟/ほうきつくりの老人と王さま/他5編
<バルト諸国> 年越しの晩/欲ばりの王さま/他7編

 

 

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新編 世界むかし話集(4)フランス・南欧編 (現代教養文庫ライブラリー) Kindle版 山室静 (編集) 形式: Kindle版

早くからギリシャ・ローマ文明に触れ、常にヨーロッパの先進地域であったため、フランスは洗練と、世界伝播の揺籃となる。1697年にペローが昔話集を出すに及んで、世界ははじめて昔話の楽しさを認識するに至った。
<フランス> 赤ずきん/サンドリヨン(シンデレラ)/長靴をはいた猫/他13編
<イタリア> コンスタンチノと彼のネコ/たんすの中の娘/太陽と月とターリア姫/魔法使いとおろかな弟子/他9編
<スペイン> 食いしんぼうの女/世にもめずらしい宝物/三本のナデシコ/他5編
<ポルトガル> ロバの耳をした王子/ネコのしっぽ/イチジクの木/魔法の鏡/他2編
<地中海の島々> 胡椒っ子/ソロモンの忠告/好奇心の強い女/この世の花/他2編

 

 

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新編 世界むかし話集(5)東欧・古代編 (現代教養文庫ライブラリー) Kindle版 山室静 (編集) 形式: Kindle版

この地域は民族的、文化的に入り組んでいて、しかもアジアに近く、昔話はどこか土俗的かつ素朴で、狡猾な機知があり、またオリエント風の怪奇や華麗な幻想性も現わしていて、ふしぎな謎を秘めているものが多い。
<東欧> ギリシャハンガリーブルガリアルーマニアアルバニア/ユーゴ/ジプシー
<古代> エジプト/アッシリアユダヤ
<古典> イソップ/ギリシャ神話/ゲスタ・ロマノルム

 

 

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新編 世界むかし話集(6)ロシア・西スラブ編(下) (現代教養文庫ライブラリー) Kindle版 山室静 (編集) 形式: Kindle版

ロシアはヨーロッパから別扱いされ、なおざりにされ続けてきた。しかし、ロシアの昔話によく出てくるばかのイワンが、利口者の兄をさしおいて美しいお姫様と結婚、王国を継承したように、近代に至ってロシアは、文学の巨人を輩出させて世界文学の王座をしめ始めた。
<ロシア> 火の鳥カマスの命令 / 他15編
<トルキスタン・シベリア> スイカの種 / 底ぬけに気前のいい男 / 他6編
<コーカサスアルメニア> 処女王 / 漁師の息子 / 他5編
<ポーランド> ヘビの王さまの冠 / オンドリと風 / 他6編
<チェコ> 十二の月 / 塩は黄金よりも尊し / 他6編

 

 

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新編 世界むかし話集(8)中国・東アジア編 (現代教養文庫ライブラリー) Kindle版 山室静 (編集) 形式: Kindle版

黄河流域の北は儒教の影響もあって少ないが、揚子江の南では民話が多く、また少数民族の民話が伝えられていて民間伝承は豊か。この巻は東アジアの民話・昔話を集めたものとしては収録数も多く、変化に富んだものとなっている。
<中国> 少女イェーシェン / 花の精たち / 他20編
<朝鮮> ニンジンっ子 / コウノトリの裁判 / 他6編 
<モンゴル> 金と銀のサイコロ / フルンショボーという鳥のこぶ / 他4編 
<チベット> アリの話 / 他2編 
<ベトナム> 米つぶ / ふしぎな女房 / 他4編 <ビルマ> かぜをひいたウサギ / 他2編
<タイ> 金のハゼ / 夢の話 / 他2編 
<マレーシア> トラとその影 / 豆シカとワニ
<インドネシア> だれの罪か? / ミツバチ女房 / 他7編

 

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