~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「ハイジ」 2 おじいさんVSデーテおばさん ハードな交渉

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

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今日の一冊

 

ハイジ 上 (岩波少年文庫)

ヨハンナ・シュピリ (著), 上田 真而子 (著)

美しいアルプスの自然を舞台にくりひろげられる,少女ハイジの物語.おじいさんと2人きりで山小屋に住んでいたハイジは,クララという足のわるい少女の遊び相手になるために,フランクフルトへゆくことに.ところが,ハイジは町の生活になじめず,山へもどってきてしまいます.不朽の名作をいきいきとした新訳でお届けします.

 

 

大人が読む児童書「ハイジ」 1 もはやCM以外のイメージを探すのが難しい

 

モッコモコに着せられたハイジ、こども本人はかわいそう。
重たいし、暑いし、ふらふらしています。

 

そして、デーテおばさんが知り合いと話して、あれこれと大人の事情を話している間に、ペーターおよびほかの子どもたちと合流してしまいました。

ペーターはしっかりしてるから(やぎの世話もしてるし)大丈夫だろうということで、会話してる二人はほったらかしにしておきます。

 

が、ちゃんとアンテナははって、いったいどこにいるのかは把握しています。
時代もあるでしょうけど、さじ加減きかせています。

 

 

デーテおばさんの説明は、多分に個人的事情による、デーテフィルターがかかっています。
基本、正直で、働き者で(悪いことではない)、利益についてさとく(悪いことではない)、拝金主義です(悪いことでは…)。


すべてを捨てて子どもを包むような母性には欠けている人間性が垣間見えます。

 

おばさんの情報を総合すると

 

・姉が亡くなったあと、ハイジを頼むと頼まれた。
・といっても、これまでは自分の母・ハイジのおばあちゃんが面倒みていたっぽい。
・そんな母・姪(ハイジ)との生活の家計を支えていたのは、バリバリ働くデーテおばさんであるっぽい。
・デーテおばさんの仕事は、温泉旅館のメイドさん
・お母さんが亡くなった。
・デーテおばさんは働いているのでハイジのめんどうは近所のおばあさんに頼んでいた。(ちょっとぼけかけている)
・そこで富裕層の家族に気に入られ、ヘッドハンティングで都会に誘われる。
・住み込みなのでハイジは連れていけない。
 ⇒そうだっ、父方のおじいさんがいるじゃないか!ピキーン!
・おじいさんだって身内でしょ!少しは義務を果たしたっていいと思うよ、うん。(これまでお金使って育ててきたのは自分)
・ハイジは割としっかりしてる、大丈夫。
・自分がお金を稼ぐことは、いずれハイジのためにもなるはずだ。

 

 

ママ情報など見ていると、痛いほどデーテおばさんの気持ちがよくわかります。
経済、経済がまずは大事!お金がないと何もできない。

 

自分の子ではないけど、最低限の義務は果たしてきた。

ここは、おとなになって読むとすべての事情がよくわかるというの、素晴らしいなと思いました。

 

しかし、ホテルスタッフとして働くよりも、富裕層のメイドをしたほうがはるかに稼げるものなのですね~?

 

ハイジは大人の都合に振り回されています。
そんな中で子どもにとってうまく働くこともあり、よかれと思ったことが逆にストレスを与えてしまったりすることもあり、大人の都合は都合としてあるので仕方ない所もあります。

 

そこをこの物語は子どもよりにもなりすぎず、でも子どもの気持ちに鋭い目を注いで見逃さない、という、バランスが絶妙です。

 

 

ハイジはペーターやほかの村の子どもたちと合流。

 

飛び回るには邪魔になったモッコモコの服をぜんぶ脱ぎ、ここが可愛いのですが丁寧にたたみんで石の上に置きます。

 

かわいい!

 

デーテおばさんよりも早く、ペーターと一緒に山に登ってしまったハイジ。
この服はあとでペーターがデーテおばさんにおこづかいもらって回収します。
降りて取りに行きたくないおばさんが、お金で解決するというおまけつき。
こんな何気ないひとこまにも、性格がよく現れています。

 

 

デーテおばさんとおじいさんの会話は、なかなか厳しいものでした。
子どもの世話を誰が見るかの、押し付け合い……。
ハードな交渉です。

 

既におじいさんの過去は語られています。
・割と裕福な農場経営者の長男。
・いわゆるヤンチャをして悪い仲間と付き合い、酒賭博(女は書かれてませんでした)、実家のお金を使い込む。
・心労のためか親・弟が相次いで亡くなった。
・(若いときの)おじいさんは村を出て行った。
・うろついていた時期に、けんかで人殺しをしたという噂がある。
・兵隊に行ったか何か、ある日ふらっと帰ってきて、男の子を連れていた。(これがハイジのお父さん)
・男の子はいい子で、成長してハイジのお母さんと結婚、大工の仕事をしていた。
・梁から落ちて亡くなり、とても愛し合ってたハイジのお母さんもショックで数週間後に死亡。
・おじいさんの昔の所業が悪いからだなどと心ないことを言う人がいて、おじいさん激怒。山にこもる。

 

この心無い言葉
「息子と嫁が亡くなったのはおじいさんの行いが悪かったから」

 

めちゃくちゃ無神経なこと言うな!
と思います。

 

でも、いるんですよね。
こういう無神経なこと、平気で言う人。

 

牧師さんまで「悔い改めなさいよ」と言ったということが書かれており、最悪だなと思います。
しかし、おじいさんも昔ヤンチャしていたことは間違いないし、そのために親・弟を亡くしてるのもまた事実です。

 

烙印というのは消せないものです。それが田舎ならなおさらです。
デジタル・タトゥーもね、消えないんだよ?

 

そんなわけでハイジを連れてきたデーテおばさん、きつい交渉であることは最初からわかっており、おじいさんが拒否するに決まっていると頭から思い込んでいる様子。

 

デーテおばさん、ここでずいぶん居丈高に、言わなくてもいいようなことまで言ってしまいました!
失言です。
息子と嫁の死が、おじいさんの行いのせいだと言われていた、そういうのを踏まえて、何となく匂わせるようなことを言ってしまいました。
それでハイジが死んだって、必要以上に気にすることはない

 

うわぁ……。

 

おじいさんは激怒してデーテおばさんを追い出し、ハイジは残されました。

 

デーテおばさんのこんな言葉もすべて、やはり「ハイジを自分がめんどうみずに置いていくことに対して、良心が痛んでいたからだ」ということが語られます。

 

田舎の人々は目ざといです。

ハイジを置いていくデーテおばさんに対して、
「あの子はどうしたの?」
「まさか置いてきたんじゃないでしょうね?」
「なんてことを!」
という言葉を浴びせかけます。

 

デーテおばさんは逃げるように去りながら、
「お金を稼ぐことは結局、あの子のためにもなることなんだ」
と言い聞かせながら去っていくのでした。

 

何というか、この相当に微妙で複雑な人間関係、心理、言葉を駆使しているあたり、なかなか単なる「児童文学」とは片付けられない作品です。

 

たったこれだけの冒頭に、すさまじい過去と葛藤と、罪の意識と、心ない言葉と、悲しみとが詰まっています。
ハイジという少女の身の上に、集約されています。

 

さて、本人のハイジはどうかというと……。
ここからが、本当に心洗われるような、すてきな描写がてんこもりです。

 

 

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アルプスの少女ハイジ (角川文庫)
 ヨハンナ・シュピリ (著), 松永 美穂 (翻訳)

美しい自然、ハイジがくれた永遠の愛と感動の物語を、読みやすい完訳版で。両親を失いながらも、太陽のように明るく人々の心を照らす少女ハイジ。アルプスの山小屋で孤独に暮らすおじいさんとの絆、ヤギ飼いのペーターやその家族とのふれあい、足の不自由な少女クララとの出会いと友情――。雄大な自然を背景に、深い喪失感を抱く人々が、ひとりの少女によって人間性を回復し再生していく、愛と感動の物語。1880~81年に発表された『ハイジ』は、当初から大評判となり、いまも世界中で翻訳・劇化・映像化されている。日本でもアニメが大ヒットし、児童文学として多くの絵本や抄訳が出版されているが、原作は、家族の絆や地域社会との共生、エコロジーな暮らしへの回帰など現代的なテーマにあふれ、大人にこそ考えさせられることが多い本格的な文学作品である。本書は、シュリンク『朗読者』の翻訳で数々の賞を受賞した、ドイツ文学者・松永美穂氏による渾身の完訳。

 

 

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アルプスの少女ハイジ(1974)
Amazonプライム

1才にして両親を亡くしたハイジは5才の時におばのデーテのもとからアルムおんじのもとに預けられます。アルプスの大自然のもとで明るくのびのびと暮らす毎日はとても幸せなものでした。ところがハイジが8才の時デーテがハイジを無理矢理フランクフルトの屋敷に連れ去ってしまいます。そこでハイジは体が弱くて歩く事のできないクララという少女に出会います。(C)ZUIYO

 

 

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アルプスの山の娘―ハイヂ (岩波文庫)
 ヨハンナ・スピリ (著), 野上 弥生子 (翻訳)

スイスのアンデルセンと呼ばれたヨハンナ・スピリ(1827‐1901)の数多い著作の中においても,この一篇はもっとも代表的なものとされている.アルプスの野花のように美しくて素朴なハイジやペーテルは,すべての少年少女たちに深い親愛を感じさせるとともに,その優れた芸術的価値は,なんぴとの厳正な鑑賞をもけっして失望させないであろう.

 

 

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アルプスの山の少女―ハイジ (1956年) (新潮文庫)
 ヨハナ・シュピリ (著), 植田 敏郎 (翻訳)

 

 

 

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少年少女世界の文学〈19〉
アルプスの山の少女・みつばちマーヤの冒険 (昭和42年)

 

 

 

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アルプスの少女ハイジ (望林堂完訳文庫)
 ヨハンナ・シュピーリ (著), ジェシー・ウィルコックス・スミス (イラスト), 毛利孝夫 (翻訳)

ヨハンナ・シュピーリの名作「ハイジ」の新訳&完訳です。両親を亡くした女の子ハイジ。おばさんのデーテはそんなハイジを引き取って育てていましたが、ハイジが5歳になった時、お屋敷で働く仕事を見つけ、ハイジをおじいさんに押しつけようとします。ところがおじいさんは、人間にも神にも背を向けて、アルムの山の上で独り暮らしている、嫌われ者でした…。アルムの山からフランクフルトへと舞台を移しながら、次々に事件が巻き起こる第一部、アルムの山で奇跡が起こる第二部と、ハイジと数々の魅力的な登場人物が織りなす愛と感動の物語です。縦書、ルビ付き。ジェシー・ウィルコックス・スミスによるカラー挿絵33点を収録。弊社「アルプスの少女ハイジ:ミュンガー版」と、本文内容は同じものです。

 

 

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アルプスの少女ハイジ (こども世界名作童話)
 ヨハンナ・スピリ (著), 若林 ひとみ (著), 田村 セツコ (イラスト)

みんなの人気者ハイジと、ハイジをとりまく人びとの心のふれあいを、美しいアルプスの自然を舞台に描いた名作。

 

 

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アルプスの少女ハイジ よい子とママのアニメ絵本
 平田昭吾 (著)

作者ヨハンナ・スピリは美しいスイスの田舎に生まれ、堅実で愛情深い家庭に育ちました。信仰心が厚く温和な人柄の彼女が、子供のために書いたのがこの作品です。

 

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