今日の一冊「とうもろこしおばあさん」 あまりにもシュールな展開をみごとに絵で表現している
今日、ご紹介するのは絵本です。
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今日の一冊
むかし、アメリカに住むインディアンは、男たちは、野牛をとり、女たちは、いもを掘って暮らしていました。あるとき、小さな村に、ひとりのおばあさんがやってきて、「ここに ひとばん とめてくださらんか」とたのみました。とうもろこしは、どのようにして、インディアンに伝わったのでしょうか? アメリカ・インディアンに伝わる不思議なお話を、お楽しみ下さい。
この話、知っている!と思って借りました。
とても記憶に残る珍しい話だったのです。
ムーミンの訳者、山室静さんの「新編 世界むかし話集」に入っていたお話ではないだろうか。
「新編 世界むかし話集(10)アメリカ・オセアニア編」に入っています。
素晴らしく彩色豊かな絵がついています。
絵がとてもいいと思いました。
ティーピーテントの建ち並ぶ緑の大地、バッファロー。
馬に乗ったインディアンの若者たちは弓に矢をつがえ、空をかけて髪を長くなびかせています。
バッファローのことを「やぎゅう」と書いてるのもいいなと思いました。
◇
アメリカインディアンに広く食べられている とうもろこしの起源説のお話です。
ある村に、一人のおばあさんがやってきて、一晩泊めてくれと言います。
おばあさんは三回村を訪ねて、二回までは断られるのですが、若干絵本の方が柔らかい。
(山室静さんの昔ばなし集の方ではかなりきつい言い方でけんもほろろに放り出されています)
三番目のアリゲーター族の村では、優しく迎え入れてもらうのでした。
そしておばあさんは大人が狩りに出かけている間子供たちと過ごすのですが、子どもたちはおばあさんからとてもおいしい食べ物をもらってお腹いっぱいになります。
ある若者がこっそりとおばあさんがどこからその食べ物を手に入れるのか見ていると、おばあさんは、服をたくしあげ、自分の腿を掻いています。
そこからはぽろぽろとトウモロコシの粒が落ちていました。
こ、これは…。
垢ですね?
日本における古事記や日本書紀に入っている
世界昔ばなしのお話の流れはちょっと違っていて、おばあさんが突然姿を消してしまったのでその食べ物忘れられない若者がおばあさんを探しに行ったということになっています。
絵本の方が数割増しシュールです。
◇
しかし!
垢ぐらいでびっくりしていてはどうしようもなく、(そもそも、日本神話ではゲロ吐いてますし)、ここからがこの物語一番強烈だったところなのですが、このおばあさんを「使って」とうもろこしが栽培できるようになる、その過程が凄いです。
念のため書いておきますと、おばあさんが自らそうするように命じたのですが
「野焼きをして、焼跡の上でおばあさんの髪を掴んで、縦横十文字に引きずりまわす」
ということをしなければならないのです。
むかし話の方では、絵がないので、なんとなく象徴的です。
文字で読んでる分には、「ああ、昔話によく出てくる、よくわからないとんでもない描写なんだな。そんな不思議なこともあるんだな」と思うのですが、絵本の方ではガッツリ引きずり回しています。
しかしこの絵ですので、おばあさん、特に「あーれー」と言う感じでも何でもなく、
(そもそも自分がそうしろと言ったのだし)
おとなしく引きずられちゃっています。
◇
このおばあさんの髪の毛、絵でいかにもとうもろこしのからはみ出ているあのフサフサだなという感じに描かれていますので、伝説をこうして見事に絵に転化しているこの絵本はすごいなと思いました。
頭で考えれば「トウモロコシを擬人化(神格化)し、それをタネとして撒いている状態を示しているのだな」と思うのですが……しかし、おばあさんをひきずりたおす…。あまりにもシュールです。
一度読んだらちょっと忘れられないお話です。
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新編 世界むかし話集(10)アメリカ・オセアニア編 (現代教養文庫ライブラリー) Kindle版 山室静 (編集) 形式: Kindle版
アメリカ・インディアンや大洋州原住民の民話。素朴なものが多いが、それだけに従来の昔話を読みなれた人にとっては、思いがけない発想や急展開があり、楽しいおどろきが多い。ヨーロッパ人による蒐集や研究の厚さにもおどろくほかない。
<北アメリカ> インディアン/エスキモー/白人系/黒人系/ハワイ
<南アメリカ> インディオ/ヨーロッパ系
<オーストラリア> 南太平洋諸島/オーストラリア
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モヒカン族の最後
ジェイムズ・フェニモア クーパー (著),
ニューエル・コンヴァース ワイエス (イラスト), 足立 康 (翻訳)
北米大陸でイギリス軍とフランス軍が戦争をしていた頃、父親の救出に向かった美しい姉妹が護衛のインディアンに裏切られ、壮絶な戦いに巻き込まれる大冒険物語。現在唯一の完訳本。
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夏休み。アメリカ・ロスアンゼルスへやってきたサトルは、初対面のおじいちゃんとふたりきりでのこされてしまう。おじいちゃんがおんぼろ車でつれていってくれたのは、千八百キロも離れた、インディアンの村だった。小学上級から。(「BOOK」データベースより)
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インディアンの哲学が味わえる、詩と散文と絵の本 英語原文も完全収録
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4日間、飲まず食わず、ひとりきりで山にこもるワカンタンカ(大いなる不思議なもの)からのメッセージを得るインディアンの儀式を体験した著者が、夜中に突然の豪雨に見舞われた。雨を避けようと四苦八苦したが、激しくなる雨に「どうにでもなれ!」と、のどの渇きを癒すため雨を飲み始めた。いつのまにか心地よく眠り、目覚めた空には美しい満天の星空があった。宇宙の叡智を感じた著者がインディアンの「全てのものは繋がっている」という意味を絵本に記した。
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あるひ、おじいさんが まごたちをあつめて おなはしをしました。「よいかな、ひとの こころのなかには にとうの おおかみが すんでいるのだ」「その にとうの おおかみは、 わしの こおろのなかでも つねに たたかいを くりひろげている」(本文より)二頭のおおかみとは? そして、そのおおかみの戦いの結末は?大人から子どもまで、深い感動と気づきをもたらしてくれる、インディアンが大切に伝えてきた、心を育てるための物語。
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アメリカ・インディアンの詩は、動植物や人間に具わる尊厳さを知るものだけがもつ、深い慈しみの心に満ちている。かれらにとって詩とは、一種の「実用」の道具であり、アリス・フレッチャー(人類学者)は、「アメリカ・インディアンの詩とは、人間と、宇宙のなかの、眼に見えない存在との間に交わされる伝達の手段なのだ」と説明している。17編の心に響く詩と力強く繊細な絵が、かれらの世界観をダイナミックに伝えてくれる。
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