~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

~自立への旅立ちを物語で~「あるきだした小さな木」

 

今日ご紹介するのは、絵が独特で、美しい美術的なタッチの絵本です。 

あるきだした小さな木 

あるきだした小さな木 (世界のカラー童話)
作者: テルマ=ボルクマン,シルビー=セリグ,花輪莞爾
出版社/メーカー: 偕成社
発売日: 1969/12/01
メディア: 単行本

深い森の中に、パパの木とママの木に守られて幸せに過ごしている小さな木。

パパママに外の世界の恐ろしさ、人間の怖さを聞いて育ちますが

ある日、森に迷い込んで来たのは、道に迷った小さな男の子でした。 

「あるきだした小さな木」

さすがおフランスだけあって、絵が独特で芸術的です。

好みは別れるかもしれませんが、訳がユーモラスなので違和感はありません。

 

この少年の可愛らしさに惹かれ、はじめて見た人間への興味を揺り動かされた小さな木は…

大胆なことに、自分の根っこを自ら引っこ抜き、人間界を旅してまわります。

抜き方もかなりの時間を要して、「ものすごくからだをゆすり」、親たちを困惑させながら無理矢理に根っこを自力で抜き取ります。

おっかなびっくりの歩き方がかわいいです。

 「あるきだした小さな木」

冒険を重ね、子供や鳥たちと仲良くなったり、あやうく切られかけたりしながら、あるお金持ちの目に留まり、家に移植されます。

このアラブの石油王並のすごい金持ちは、娘さんが一人おりまして。

いかにもおフランス的な展開、そこには娘さんの望まぬ結婚が...(略)

最後は小さな木はついに根をすえ、枝を広げ青々と茂らせるのですが、全体的に、昔話にもありそうな何気ない素朴な物語です。 

しかし作者には子供たちへ向けた確かなメッセージを感じます。

恒例の、 訳者あとがきをご紹介します。

あまりにも見事なあとがきが多く、このあとがきが子供たちだけでなく、親に向けても書かれているのを感じます。自分が親となった今になって読み返して考えさせられる所があるという、まさに世代を超えて語り掛ける力を持っています。

 

人間にとってもっとも大切な「自由」(中略)この木がであういろいろな冒険や危険が、いつも自由を束縛するものと、それに対する反抗であることを十分考えてください。(中略)

でも、自由は何もしないでやってくるものではありません。個人の自由は、個人の独立とふかいかかわりがあります。(中略)愛情がなくては自由も独立も、なんの意味もありません。

この自由、独立、愛情の三つを求め、その意味を考え、自分のものとすることが、成長することなのです。作者のいいたいことはそこにあると思います。

 訳者 花輪莞爾 「あるきだした小さな木」あとがきより

 

自由を尊び好奇心に満ちて守られた家を飛び出して、冒険を重ねた末に子供たちも大人となります。

いつか、彼らも自分の場所と呼べるありかを見つけ、根を張り、枝を一杯に伸ばして大樹となり一杯に花を咲かせる日が来るように...との愛に満ちた親心を感じます。

 

そして親たちにも、子供たちの自由に伸びやかに広がる好奇心の力を、反抗という形で訪れる自由に対するあこがれを、理解し尊重してあげられるよう、語り掛けているようにも思えます。

 

多分、アラブの石油王並の金持ちの頑固オヤジは、子供のレールを自分で敷いてしまいがちな親の姿への忠告なのだと思います。

 

この本を読んであげたお子さんの一人に、

「じゃあ、ホテイさんはこの娘さんの結婚を許してあげられるんだね!」

と聞かれました。

「ごめんなさい。無理です」

まあご覧ください。

 

このしんしは いつも いっています。

「わしは、むすめが かわいくて ならぬ。

 むすめのために わしが ほしいのは

 せかいで いちばん りっぱな いえと

 せかいで いちばん 大きな にわと

 せかいで いちばん かねもちの むこさんじゃ」

 

でも、かわいそうに!むすめさんの ほうでは

 せかいで いちばん 小さな いえと

 せかいで いちばん せまい にわと

 せかいで いちばん びんぼうな むこさんでも

いいんだと おもっているのです。

 「あるきだした小さな木」

 

「いやちょっと…世界で一番貧乏なむこさんは…ごめんなさい。無理です。現実は厳しいので」

 

世界で一番とはいかなくとも、せめて、中くらいはあって欲しいと思うのが、親心というものですよね!

 

というわけで、今日は名作を台無しにした所で終了したいと思います。

こんな日があってもいいですよね!!

 

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絵本ナビ>>あるきだした小さな木

 

 

 

whichbook.hatenablog.com

 

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