今日の一冊「森は生きている」
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
気まぐれな女王が真冬に4月の花マツユキソウをほしいといいだし、国じゅう大さわぎ。継母の言いつけで吹雪の森に分け入った少女は12の月の精たちに出会います。有名な児童劇。
「今どこを読んでるの?」
せかされてしぶしぶ読み始めたうちの子、気が乗らない様子なので聞いてみました。
「え?リスくんウサギくんのおにごっこ?そんなところはいいの!サーッとななめ読みでいいの!女王様だよ。第二(第一幕第二場です)の所に女王様が出て来るから、そこを読んで欲しいの!とっとと先にすすめ!」
ものすごくひどい読ませ方です。
間違いなく、教育的によくないです。
「ちゃちゃっと飛ばして!」
「女王様ぁ~?」
「女王様といっても、女の子なんだよ。14歳の女王様だよ。お父さんもお母さんも死んじゃったから、14歳で女王様になったの。もうこれは絶対読んでみてって思った。最悪だから読んでみて!」
もう、娘の方も慣れていますので、言われたとおりそのリスくんウサギくんのあとの、主人公と老兵士の会話などななめ読みして、第二場の女王様の所を読み始めました…。
少し読んだだけで言いました。
「うん最悪だな。何だこいつ」
えらい勢いで読み始めました。そして言います。
「『しゃくほう』と『しけい』だと死刑の方が書くのが楽だから死刑にするって何こいつ!こんな奴を女王なんかにしちゃいけないって法律を作った方がいいと思う!」
「そうでしょ、でもそれでね…」
「こいつかけざんもできないの!?14さいでしょ!?小学生の私でもできるわ!6×6=36だよ!36だよね?」
「うんそれでね…」
「マツユキソウ!こんなやつにマツユキソウとか渡しちゃだめだわ!こんな奴がマツユキソウをもらえたら、あるじゃん。じゃあいいんだ。次はリンゴ、次はクルミ、次は…って何でもかんでも要求するよ!?渡しちゃダメ!」
「するどいね…」
◇
サムエル・マルシャークの超有名な戯曲です。
子どもを演劇の魅力の世界に運ぶには、実にぴったりの一冊です。
(いや、別にアンパンマンショーでもぜんぜん、良いんですけども)
読めば間違いなく、面白くてどうなる、どうなる、と次々に読んでしまえること、間違いなしです。
冬のさなかに、マツユキソウが欲しいという若い女王のわがままなおふれ。
まま母さんとまま姉さんのいじわるから、冬の森に迷いこんだむすめ。
薪の炎を囲む、擬人化された12の月が彼女を迎えます。
悪役がとても魅力的、といいますか…。
とにかく憎たらしいです。
そこが面白いので、次々に読めてしまいます。
いじわるな継母と義姉はテンプレとしてともかく、この騒ぎを引き起こした元凶の、わがままな14歳の女王さま。
これがまた、ものすごく最悪で、まさに14歳の生意気でわがままでもののわかってない女の子、という感じです。
少しだけ、可愛げはあります。
「そのあとに継母の老婆とその娘、義理のお姉さんが出て来るけど、まあお母さんとしては、まだ女王様の方がいいかな」
「ふーーーーん」
気乗りのしない返事です。
さて継母と義姉の所にさしかかりました…。
「何こいつら、最悪!」
「最悪でしょ」
「うん、どちらかといえば女王のほうがまだいいかな」
「さっきふーんとか言ってたくせに…」
「なめてたわ。こいつらほんと最悪だわ」
こいつらが一体どうなるのか?
物語は本当に、悪役が大事だなと思います。
シンデレラ物語の主人公や悪役たちは、とても良い子ちゃんだったり、ものすごく悪い子ちゃんだったりするので、どれも自分たちとはかけ離れた存在です。
このお話でやっぱり、いちばん身近で、いちばん自分たちに近くて、いちばんあるある!なのは、間違いなく、この女王様です。
◇
また素晴らしいのが「森は生きている」という題名です。
「12の月」という題名を、この題にしたすばらしさはこれはもう、これ以上はないだろうと思われるすばらしさです。
またこの「戯曲を文字を読む」というのが実に良いものです!
ほぼ会話でだけ成り立っているので読みやすいし、劇を実際に見たときの自分の想像との違いに衝撃を受けるのもいい刺激になります。
このすばらしい「森は生きている」という題名で訳された湯浅芳子さんのあとがきを引用したいと思います。
これもまた、「あとがきの教科書」とも言うべきすばらしいあとがきです。
この作品は、ふるくから伝わるスラヴの伝説、すなわち新年を控えた大みそかの晩に1月から12月までの月の精がのこらず森の中で出逢うという伝説をもとにして書かれたもので、境遇の不幸に負けることなく、いつも明るさと他人への思いやりとを失わず、雄々しく勤勉に働く少女が思いもよらぬ幸福を得たという、いわば、ソビエトのシンデレラ物語です。
いわゆる継子いじめがあったり、娘と同じ年頃の両親のいない女王のわがままがあったりして、物語は面白く展開しますけれど、しかしこの作品のねうちは、そうした筋の面白さばかりにあるのではありません。作品の底に流れている高いヒューマニズム、人間なり、人間の生活なり、また社会なりへ向けた、作者の目の鋭さ、深さ、視野の広さなどによって、この作品は普通ありきたりの童話劇でないものになっています、また、その内容を表している形式の美しさによって、高い芸術作品にもなっています。ですからこれがメーテルリンクの有名な「青い鳥」に肩を並べる優れた童話劇と言われているのも、もっともです。
マルシャークはどうぶつたちを描くのが本当に上手です。
お気に入りのマルシャークの絵本を二冊、上げておきます。
はりねずみの父さんと母さんとぼうやが、真夜中に散歩にでかけました。森の動物たちはみんな眠っていますが、2匹のおおかみだけは目を覚ましていました。おおかみははりねずみをつかまえようとしますが…。真夜中の森でおこった静かな静かなお話です。
動物園で生まれたライオンやキリンの赤ちゃんたちを愛らしく描いた「おりのなかのこども」、いさましいメンドリの話「めんどりと十ぱのあひるのこ」、わがままな子ネズミの話「ばかなこねずみ」など。
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