閑話です。
またしても「水の子」の話題です。
話し忘れたことがあったので書いてみました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
煙突そうじの少年トムは,仕事中お屋敷のおじょうさんの部屋に入ってしまい,どろぼうとまちがわれてにげるうちに,川に落ちて「水の子」となります.ファンタジーの古典
妹子は「水の子」読了に時間がかかったわりに、途中に挟まれていた小話が好きなようです。
大洋の旅で、トムがペンギンのおばあさんに会って話をする所が、とても心に残ったらしく、何度も話題にしていました。
ペンギンのおばあさんは、小さい島でたったひとり、直立不動で海を眺めながら、哀しい歌を歌っています。
岩にとまった小鳥がふたり
ひとりが泳いでいったので
あとにさびしくただひとり
ああ──ただひとり
残ったひとりの小鳥まで
あとから泳いでいったので
あとにさびしく岩ばかり
ああ──岩ばかり
妹子はこれの、
ああ──ただひとり
というフレーズにすごく感銘を受けていました。
こういう詩があふれているのが、古い児童書のいいところです。
このいつもひとりで、小さな島に直立不動で立っているペンギンのおばあさん。
このペンギンの昔話とはこうです。
「ある時ひとりの紳士がここに来てね、しばらくするうちに、わたしに奥さんになってくださいと言い出したのですよ。──ほんとにわたしを拝むようにして頼んだもの
のさ。ええ、それもそのはず、そのころのわたしといえば、とても美しかったんだからね。よくお聞き、わたしは、そんなことは汚らわしい、といってはねのけてしまいましたよ。だってその紳士はわたしの亡き姉君のだんな様だったのだからね。」
このペンギンのおばあさまは、結婚を申し込んできた紳士を冷たく扱って、ついには死に追いやってしまったという過去があったのです。
妹子、この小話のことを、深く深く考え込んでいました。
「何でそんなに?結婚してあげればよかったのに」
どうやら、そんなにいじわるしないで結婚すればよかったじゃん、と言いたいようです。
トムは何のことだかわからないものだから、出まかせに「それはそれはおいたわしい。姉上さまはさぞかし──」
「おまえには何もわかっていないね。わたしはこういっているのだよ。 ──わたしは身分のいいお嬢さまだから、家名を落さないように、いつも気高い心でいなければなりません。だから、つんとすましたり、相手をからかったり、いじめたりして、いつもその方が近づかないようにしたのだよ。それでね、正直なことを話せばね──ある時、わたしはあんまりその方をいじめたものだから、かわいそうにその方は、うしろむきに海の中にお落ちになったよ。岩の上からだよ。すると、その方がバタバタもがいていらっしゃるところへ、サメがやって来てがぶりとのんでしまった。まあ、何というお気の毒なことをしたのだろう。だが、わたしのしたことじゃないわねえ。それからというものはわたしはいつもひとりぼっちなのだよ。」
妹子「『わたしのしたことじゃないわねえ』って、いやいや、あなたのしたことだよね?っておもうんだけど。どうしてそこまでいじわるする必要があるの?」
「う~ん、わたしの亡き姉の旦那様って、それはどうなんだろうねえ~?」
昔はよくあったことだと聞きます。
昔と言っても、昭和より以前の話です。
亡くなった姉の子どもを含めて世話をする。他人ではないので、まったく血縁のない後妻さんをもらうよりは、子どもにとってよい、という考えによるもののようです。
そういうのを気にしない人もいるのかもしれない。
身内だからこそ、もっといやだという人もいるかもしれない。
冷たくしたのは裏腹で、このおばあさんペンギンは、本当は義兄のことが好きだったのかもしれない。
姉に悪い、外聞もよくないと思うから、だから余計に…?
良家のお嬢さまのプライド…。
そして、ずっとひとりで、
ああ──ただひとり
という歌を歌っている。
「けど、もし結婚していても、すぐにがぶりと食われていたかもしれないし、ずっとひとりにならないとは限らないからねえ」
なんて、ごまかすようなことを言ってみました。
人間誰だって、最終的にはただひとり……。
なのでは、ないだろうか…。
こうして、今読んでみると、「水の子」というこの不思議な物語。
なんだか話が散漫であっちに飛んだりこっちに飛んだりするように思いながらも、子供には飽きないし、まるで目の前で優しいおじさんがいろんなお話を語り聞かせているようです。
何となくこうして心に残り、そしていつか、その意味を何度か反芻する日が来るといいなと思います。
亡き姉の旦那様。
ごまかしたまま終わってしまった…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ふんわり王女
ジョージ・マクドナルド (著), D.P.ラスロップ (イラスト),
本庄 久子 (イラスト), 蘿原 富美枝 (翻訳)
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少年カーディが地下のゴブリンの国からお姫さまを救いだしてから1年.お姫さまの命と王国がまた危険にさらされました.悪賢い従者たちが権力と富をねらって策略をめぐらしはじめたのです.
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新訳 星を知らないアイリーン おひめさまとゴブリンの物語
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