~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

今日の一冊「おねえちゃんはしゃしょうさん」 2 笑いあふれるあたたかい昭和のユーモア

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

おねえちゃんはしゃしょうさん
長崎 源之助 (著), 山中 冬児 (イラスト)

おねえちゃんがこんど、バスの車掌さんになりました。ゆきおくんはおねえちゃんのバスにそっとのりこみました。ところが、おねえちゃんはつぎの停留所の名前を思い出せないでいるのです。

 

 

「おねえちゃんはしゃしょうさん」 1 サザエさんとカツオとタラちゃんが出てきた

 

おねえちゃんは家でしゃしょうさんの練習をして、弟たちを付き合わせています。

 

なので、ゆきおくんは、公園で三輪車で遊ぶ時にも、バスのしゃしょうさんの真似をするようになりました。

 

しかし、おさがりの悲しさ、何せ古いので、この三輪車はきしむのです。
乗っていても、いつもきーきー言います。

 

作者は、このゆきおくんが感じていた、「おさがりばかりの悲しさ」を、さりげなくポジティブ方面に変換しています。

 

というのも、しゃしょうさんの真似をしているのを見たお兄ちゃんの友達(4年生)が、
「おまえ、いいもんのってるじゃん」
とばかりに、ちょっと貸してくれと言い出しました。

 

ときどき、面白そうだなと思ったとき、子供に帰って三輪車とか乗ってみたくなる4年生。

 

ちゃんと返してくれたし、おまけに、音がすることを褒めてくれました。

 

「おんがく付きだね、いいね」
「音がするから乗ったような気がする」

 

さあこうなると、新しい自転車に乗っていたおとなりの子は、うらやましくてなりません。

 

自分の新しい自転車に、すなをかけたり、水をかけたりして、何とかきしむ音を出そうとします。

 

ゆきおくん、大得意でうちに帰るのでした……。

 

古くったっていいじゃないか。
にんげんだもの

 

作者の心がとてもあたたかいです。

 

そういえば今思い出したのですが、実際、うちの自転車が鳴り出したときにも、妹子が
「おんがくつきだから!」
と言っていたのを思い出しました。

 

どこかで覚えていたのかもしれません。

 

 

生意気でいつも喧嘩ばかりしているおにいちゃんですが、何と車掌さんになったおねえちゃんの様子を見に、バスに乗る計画を立てていました。

ゆきおくんは、お兄ちゃんと連れだってバスに乗りに出かけます。

 

このためにおかしを買うのを我慢してバス代を貯めたというお兄ちゃん。
偉すぎます。

 

しかも言い方がこうです。

「おねえちゃんの やつ、どんなかおして、しゃべるかと おもうと、きになるじゃないか。したを かむ きけんを おかしても、なお みてやろうと おもうのは、きょうだいならばこそさ」

 

うんこれはカツオだな。間違いない。

 

 

二人は物陰から見張っていて、おねえちゃんが乗り込んだバスに何食わぬ顔で乗り込みます。

 

おねえちゃん、びっくりしますが、すましています。
(まあそうですよね)
ですが、まだ研修中の身のこと、内心バックバクで、超緊張していました!

 

これを読み返して再発見したのですが、車掌さんのお仕事はとても大変でした。
まったく読み飛ばしていましたが、狭い通路を行くときはぶつからないか前後を確認したり、後続車が付くと、「こうしゃ ついてます」とか言わないといけないらしいです。

 

気ばかり焦ってうまくいかないおねえちゃん、カーブの所で、ふらふらよろけて、何と倒れてしまいました!

 

それも、まずいことに、りっぱな きものを きた おくさんの ひざに すとんと、こしかける かっこうに なってしまったのです。

 

笑ってはいけないのでしょうが、笑ってしまいます。

 

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しかも、申し訳ありませんと謝ろうとした瞬間、またバスが揺れました。

 

おねえちゃんは、あたまを さげたまま のめって、また そのおくさんの むねに ぶつかってしまいました。

 

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絵がまたすごく良いのです!
山中冬児さんです。

 

まあテンションは完全にサザエさんなのですが
お話の中でみんな笑ってますし、読んでいるこちらも笑ってしまいます。

 

はじめはこわい顔をしていたおくさんも笑ってしまいました。

 

なごやかな、よい空気です。

 

 

もう焦るあまり、顔が(@_@)←こんなになってしまっているおねえちゃん、次の停留所の名前を言うことものできません。

 

そこでゆきおくん
「つぎは、いりえばし!」
大きな声で言ってしまいました。

 

毎日、しゃしょうさんの練習に付き合わされているうちに、覚えていたのです。
皆が大声で笑い、運転手さんまで笑っています。

 

なんだか胸がきゅうんとなるような、懐かしい、甘酸っぱい気持ちになります。
とにかくめちゃくちゃ可愛いです。

 

おとうとの機転に救われ、みなが笑って、ユーモラスに終わったこのお話。

 

最後は、厳しくて新人の仲間たちには嫌われていた先輩と、仲良くなれたというおまけつきです。

 

職業を紹介
働くということを教え
おさがりでかなしい心を逆転
失敗もユーモアに変えて笑いで終わる。

 

改めて読んで、本当によい作品でした。

 

絶版になってしまったのは、仕方ないことなのかなあ……。

 

フォア文庫の「ふとったきみとやせたぼく」も、ヘビロテの大好きな本でしたので、いつか必ずまた、紹介したいと思います。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ふとったきみとやせたぼく
長崎 源之助 (著), 古川 タク (イラスト)

体育のにがてなコロッケ君とエンピツ君には夏休みに特別な宿題がでました。子どもの成長をさわやかに描いた物語。小学校低学年~小学校中学年

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

むかしむかしゾウがきた
長崎 源之助 (著), 梶山 俊夫 (イラスト)

「かわいそうなゾウ」のお話を、昔話として再話したものです。

 

 

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