~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「名探偵カッレくん」1

大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

名探偵カッレくん

アストリッド・リンドグレーン (著), 尾崎 義 (翻訳)

名探偵を夢見るカッレくんは、ある日エイナルおじさんの怪しい行動に第六巻を働かせ、捜査を始めます。宝石窃盗団に迫ったカッレくんは、仲良しのアンデス、エーヴァ・ロッタとともにお城の地下室に閉じこめられてしまいますが…。

 

 冒頭の一文です。

「血液!疑問の余地なし!」
彼は虫めがねをとおして、赤い斑点をじっとみつめた。そして、パイプを反対がわの口もとへ移して、ため息をついた。もちろん、それは血だった。おや指を切ったときに、血でなくて、何がでるだろう?あの斑点は、いかなる探偵もかって捜査の運命にめぐりあったこともないような、もっとも残忍な殺人によって、ヘンリー卿がじぶんの夫人をなきものとした、その決定的な証拠であるべきはずだった。ところが残念ながら──話はそうではなかったのだ!鉛筆をとがらせようとして、ナイフがすべったのだ。それが悲しい真実なのだった。それも、ヘンリー卿のせいではなかった。悪人ヘンリー卿が実在さえもしなかったのだから、なおさらのことである。まったくこれは、情けないことだ!

 

改行なしでこの立て続けの文章が続きます。字の圧がすごいです。 
これで、読んだ子どもの誰も彼もが夢中になってしまうというのがまたすごいです。

 

リンドグレーンの「名探偵カッレくん」シリーズの一冊目です。
説明するのも今更だなーと思う人気作品なのですが、ある筋からの強い要望により自分も読み返してみました。

 

安定の面白さ。
何もかも面白いです。

やはりこれは、向かうところ敵なしの一冊で、おすすめした子どもたちの誰もが、面白い、面白いー!!と言ってくれます。

 

登場人物のご紹介。
まず主人公は、名探偵を夢見るカッレくん 13歳。
コナン君と工藤新一のちょうど間ぐらいです。

 

元々高校生だった工藤新一が黒い組織の手によって薬を飲まされ子供になってしまう、などということもなく。

 

一日一回どころか一日十回ぐらい殺人に遭遇してそうな頻度で、実はお前が全ての犯人なんじゃねーかと疑われても仕方が無いほどの恐るべき偶然で事件にぶつかることもなく。

 

つまりはそういう生活に心から憧れているひとりのふつうの少年です。

 

食料雑貨店の息子です。
お父さんはあとを継いで欲しいのですが、カッレくんは名探偵になることを夢見て、冒頭で引用したような空想を常に繰り広げています。

 

カッレくんは、いつも友達三人でつるんで遊んでいます。
くつなおしの家のアンデス、そしてパン屋の娘エーヴァ・ロッタです。

 

カッレもアンデスもこのヒロイン、エーヴァ・ロッタに夢中なのですが、この子は本当に魅力的な女の子です!

 

立ち位置としては、蘭姉ちゃんと灰原哀と吉田歩美を全部足して3で割ったようなと言いたい所なのですが、確かに立ち居地はそうなんですけど、蘭姉ちゃんと灰原哀と吉田歩美を全部かけて3倍したぐらい強烈に記憶に残るキャラクターです。

(ツノは生えてないけど、金髪のおさげがあります)


やはりカッレくんと言えばエーヴァ・ロッタ。
本当に魅力的なヒロインです。

 

冒頭でエーヴァ・ロッタがぶらんこに乗って歌を歌っているのですが、めちゃんこかわいいです!!
このときに歌っている

ヨセ、ヨセ、ヨセフィン
ミシ、ミシ、ミシン

のフレーズが、耳に(というか目に)ついて離れません。

 

アンデスもカッレも、うっとりとして眺めます。

 

ふたりともエーヴァ・ロッタが「たまらなく好き」「結婚したい」のですが、しかしエーヴァ・ロッタをめぐる恋のさや当てなんてものが始まるわけでもなく、この子は恋愛にはまったく無頓着で(そこがまた可愛いです)、おてんばという言葉をはるかに超えて、相当の縦横無尽に暴れまわります。(すごく可愛いです)

 

重要頻出人物、ビョルク巡査。
出たよ。いつもちょっとヌケてる警察の代表人物。
…という扱いを、この本の中でも受けてます。
とてもいい人です。

 

そしてもっとも特筆すべきことは、アンデスもエーヴァ・ロッタもビョルク巡査も、カッレくんの探偵ずきをあまり...というか、全然相手にしてません。

 

カッレくんは探偵の力を必要とする事件が起きて欲しくてしょうがないですけど、現実は厳しくてまったく何も起きません!

 

起きないので、ありとあらゆる普通の現象(冒頭のように、指を切ったなど)を、探偵としての視点から観察します。

 

それが実にユーモラスで、
そうだよね。
なかなか事件なんておこりっこないよねー。
というところでカッレの好奇心と探偵趣味の格好のえじきになるのが、あやしげな人物、エイナルおじさんです。

 

このエイナルおじさんは、本の紹介にもよく「エイナルおじさんは…」と書かれてますので、なんとなくカッレのおじさんなのかな?と思いますけど違います。
エーヴァ・ロッタのおじさんです!

 

カッレの家はエーヴァ・ロッタの家と近く、ほとんど隣接しているので、アンデスはやきもちを焼いてるのですが(設定が細かい)、探偵ごっこにはこれが実に役立ちます。

 

 

(続きます)

 

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