~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「算数の先生」 3 華麗なる大正女子のガチバトル

大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

算数の先生 (ちくま学芸文庫) 文庫 - 2011/1/8 国元 東九郎 (著)

7164は3で割りきれます!この数は4つの数字からできていて、その7、1、6、4をたすと18になります。18は3で割りきれますから、この7164は3で割りきれるのです。睦子さんはふし目がちに、しかし自信ある口調で説明した。それから先生は倍数・約数について説明を加えた。5年生の算数は新任の若い岡本先生で、計算競争や図形を描いたりして教室は活気づいていく。教師だった著者が、読み物ふうにつづる算数との出会いの物語。素数、分数、最大公約数などから数列、面積、ピタゴラスの定理などの高いレベルまでを取り上げた世評に名高い算数学習書。

 

 

大人が読む児童書「算数の先生」 1 57年前+35年前の本に震撼

大人が読む児童書「算数の先生」 2 昭和3年=ほぼ大正時代

 

 

この学校では、女子と男子は別クラスで分けられています。
時代を感じます。

 

昭和3年といえば、ほぼ大正時代と変わりないと言ってもいいので、記事の題名も大正女子にしちゃいました。

 

この女子ターンが、面白いです。

 

・学級委員の優等生、長谷川寿恵子。(すえことよみます)
・内気だけど、たまに寿恵子さんを出し抜く内田睦子。
・そつのない川村春子。
・ダークホース瀬島よし子。

 

などなどの面々です。

 

女子ターンと男子ターン、順番に展開するのですが、昭和3年の時代が、女子は学問など必要ない!なんて、誰か本当に言ってたんだろうか?というような内容です。

 

そして男子よりも、女子は何となくライバル心が強く緊張感があります。

 

私がすごく面白いと思い、熱中していた、女子教室ターンについて、話してみたいと思います。

 

 

長谷川すえ子VS内田睦子

 

女子の教室の中でも長谷川すえこさん、(寿恵子は読めないのでひらがなにしちゃいました)教科書を全部暗記してすらすら言えたりと、半端ない秀才です。

 

長谷川すえ子さんはこんな感じの女子です。

 

先生「地球から太陽までの平均距離は一億四千九百五十万キロメートル、とありませんでしたか。」
長谷川「はい、『かりに1時間200kmの速さでとぶ飛行機にのっていったとしても、太陽に到着するまでには八十六年かかる。』とありました。」
さすがは学級委員の長谷川さん、文章を暗記している。

 

いや~、すごいわ。秀才!
自他ともにライバル(多分)なのは、川村春子さんで、暗算がとても早いです。

 

この女子の教室である日、先生が暗算の問題を出しました。

 48×25
暗算が前提なので、やっかいです。

 

おとななので、「あー、なるほどね」と思うでしょうけど、みな熱心に暗算します。

 

内田睦子さんという子が、手を上げます。

 

睦子さんはそくざにたって、
「1200です。」
と答えた。先生は涼しく、
「そのとおり!」
とおっしゃった。先生は、お気に召した答えがあると、よく『そのとおり』とおっしゃるくせがある。この『そのとおり』を浴びせられることは、わたしたち生徒仲間の光栄なのである。そして、わたしはそのレコード・ホールダーなのだ。それなのに、きょうはちがいもちがい、格段の差で、睦子さんに『そのとおり』の栄冠をうばわれてしまった。

 

わたしは、そのレコード・ホールダーなのだ。(笑)

今読んでもすごいです、長谷川すえ子…。末恐ろしいわ…(笑)
この一話は、すえ子さんの手記という形をとっています。

 

わたしはこういっても、けっしてお友だちの栄誉をそねむあさはかな、いやな考えは少しもないつもりである。ただその差のあまりにもはなはだしかったのに、われながらあきれてしまったのだ。

 

いやいやいやいや(笑)

 

結局、「25をかけるかわりに、百倍して4でわりました」ということなのですけど、この流れ、このやりとりが実におもしろいです。

 

 

成績優秀女子軍団VS瀬島よし子

 

約分のお話です。
普通の約分の問題のなかに、ひょこっと一つだけ、156/390というのが入っています。(すみません、390分の156のつもりです

 

これを多くのものは2で約し、それから3で約し、26/65を答えにした。ひどいものは、2で約しただけの78/195ですましていたが、これはお話にならない。

 

お話にならないとか、厳しいです。

 

ところが瀬島さんひとりだけが、2/5という簡単な答えを出した。一同はこのかわった答えにドキンとしたが、じぶんたちの仲間が多いのをたのみにし、それに瀬島さんの日ごろ のできばえからみて、失礼にもまさかというような顔をしていた。ところが意外!まったく意外。先生はこの大勢には目もくれず、「そのとおり」と、さっと軍配を瀬島さんにあげられた。
さあ、さわぎである。英子さん、睦子さん、すえ子さんなどは、とんびに油揚げをさらわれたかっこうで、そのあわてぶりったらない。しかし、26を2でわると13。この13で65がきれいにわり切れる。だから26/65にはたしかにまだ13という約数があったわけ、無念ともくやしいとも。ああ、この一題だけ問題に出されたのなら、こんな不覚はとらなかったものを。

 

いや~~~(笑)

色々、突っ込みどころ満載なのですが、秀才女子グループの鼻をあかしたこの(普段の出来からしてまさかと思われていた)瀬島さんのような子が出て来ると、ちょっと気持ちがいいです。

 

ここから、話は「エラストテネスのふるい」法にうつり、素数に対して、細かく説明がされています。

 

 

成績優秀女子軍団のバトルロワイアル

 

夏休みに、この算数がよくおできになる女子軍団は(書き方に悪意があるようですが気のせいです)お互いに算数の問題を作って交換しあいます。

 

そんな子供がいるかー!!!


と言うのは置いておいて、この問題、めちゃくちゃ難易度高いです。

 

トップバッターはやはり長谷川すえ子。
期待を裏切らないすえ子さんです。

 

「かたつむり問題」というのを出してます。
100m走で、弟に2m勝った兄に、二回目は2m下がってもらったというものです。

 

次は川村春子。
「力のないわたしが...」「このあいだのお約束がうらめしく...」

 

出たよ。
女子の謙遜合戦。

 

今も昔も変わらないな。

さて...問題はというと

 

地球から太陽まで、 およそ一億五千二百万キロメートル。「いまかりに、時速三六00キロメートルの飛行機で行ったとしても、太陽に到着するには約五年かかる。」と書いてあります。もちろんおおよそのことですが、これがまちがっていないことを、計算でしめしてください。

 

ガチだ。
出す問題がガチすぎる。
斧で殺しにかかってる。
アルキメデスエウレカネタをご披露するおまけつき。

 

 

次、瀬島よし子
「文章のおじょうずなのに感心しました」「長谷川さん、えらい問題をお出しになったものですね」

 

今度は女子の必殺・ほめ殺し作戦だ!

☟瀬島さんの問題♡

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これかよ!!!
本気やん!
本気で全員倒しにかかっとるやん!

 

 

ラストを飾るのは暗算の速さには定評のある石田英子。

「フカだ、フカだ!」
という船長のけたたましい声がひびきわたった。フカは砲手の子の後方84メートルの所に追いすがって、秒速7.2メートルでせまっている。
これにたいして、砲手の子のはやさはわずかにその九分の二。まごまごしていると、かわいいわが子はおそろしいフカの餌じきとならねばならぬ。もはや一刻のゆうよもできぬ。砲手はいまから何秒のあいだにフカを射とめてしまわねばならないか。

 

状況が過酷すぎて問題が頭に入ってこない。

 

 

 

 

つづきます。

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

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