~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「算数の先生」 2 昭和3年=ほぼ大正時代

大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

算数の先生

国元 東九郎 (著)

7164は3で割りきれます!この数は4つの数字からできていて、その7、1、6、4をたすと18になります。18は3で割りきれますから、この7164は3で割りきれるのです。睦子さんはふし目がちに、しかし自信ある口調で説明した。それから先生は倍数・約数について説明を加えた。5年生の算数は新任の若い岡本先生で、計算競争や図形を描いたりして教室は活気づいていく。教師だった著者が、読み物ふうにつづる算数との出会いの物語。素数、分数、最大公約数などから数列、面積、ピタゴラスの定理などの高いレベルまでを取り上げた世評に名高い算数学習書。

 

 

大人が読む児童書「算数の先生」 1 57年前+35年前の本に震撼

 

このお話は、舞台となる学校に、新任の先生がやって来たところからはじまります。

 

名前は岡本先生。
若くてイケメンです。
(希望的観測)

 

表紙の絵からお察し下さい。
ちょっと額が広いように感じますけど、実際に開いてみた挿し絵では、まったくそんなことありません。

 

手足もすらっとしていて、上着を脱ぎ、ネクタイをしめて腕まくりをした所、すごくスマートに見えます。
もスポーツも万能ということになっています。

 

そして、新任の先生とは思えないほど教え方がこなれています。
(そこはお話なので…)

 

理想化されたスーパー先生です。

 

校長先生の意向により、単独で算数の教科のみを受け持つことになったようです。
受け持つのは小学校6年生ぐらいだと思いますが、はっきりと書かれてはいません。
教科によれば、たぶん6年生です。

 

子供たちはそれぞれ、あとがきでも指摘されている通り、優等生ぞろいのいい子ちゃんたちなのですが、割とキャラが立っていて、個性豊かな面々です。

 

新任の先生が来ると聞いた教室の子どもたち

 

・「心得顔で」新情報をキャッチし披露する「世才に長けた杉野くん」
・算数が苦手なので弱音を吐く「案外気の良い本田くん」
・この情報を確認しに、いち早く時間割を調べる「すばしこい伊藤くん」

 

まあ何せ、古い本なので表現は古いのですが、面白いのでぐいぐい読めます。

 

 

岡本先生が現れます。

 

この先生の第一の特徴は、授業を飽きさせないことです。
(お話なので…)

 

パターンがいくつかあります。

 

・おもしろい、算数にちなんだたとえ話をする。
・いきなり計算問題をさせる。
・算数の歴史を語る

 

この「いきなり計算問題をさせる」では、何かしらの「簡単に出来るはずの問題」をひっかけとして出しておき、「あーわかってないんだな~誰かわかる人いないのかな~」というような感じで煽り立てます。

 

…もっと丁寧な言い方でです。

 

さらに、タイムを計って競わせながら、そのひっかけ問題について教えるという感じで、かなり子どもたち、目を吊り上げて煽られて盛り上がります。

 

 

たとえ話とは、ねずみ算で秀吉を煙に巻く曽呂利新左衛門だとかです。
最初にご披露するのは、すもうの谷風という力士と、丸山応挙という画家の交流です。

 

いきなりすもうの力士の話が出てきて
岡本先生「諸君はみんな、すもうが好きでしょう」

 

いやいやいや…。

 

と思うのですが、この本、令和の読み方として一番ただしいのは、ネタとして読むことだと思います。

 

しかしこの最初に出てくる「谷風という力士と、画家の丸山応挙の交流」のお話は、小話としてけっこう印象的で面白いです。

 

横綱の力士、谷川は、丸山応挙に一幅の絵を頼むのですが、三ヶ月の期限を過ぎてもまだ出来ない、まだ出来ないと、三年の月日が過ぎてしまいます。
三年後にやっと出来上がったのは、たった一張りの弓がさびしく描いてあるだけでした──。

 

驚く谷川ですが、応挙は説明をします。
ただの弓の絵と侮ったが、その弓のつる、まっすぐな一本の線を描くのに(2メートルぐらいあるそうです)、描いては消し、描いてはやめ、毎日弓の弦を引き続けて、いつしか三年の月日が経っていた、というものです。
ふすまの向こうにはびっしりと弓の絵が折り重なっていた…。

 

また、谷川が横綱となるための箇所など,、なかなか感動的です。

 

わずか一本の弦――とはいえ、二メートルにもおよぶ一直線、定木を使わず、恩賜の感激をいっきにひっぱる筆のさえ、これはじつに至難なわざに相違ありますまい。三年の月日が、この弦一本についやされました。応挙にこの誠意、この努力あってこそ、円山派の開祖として、後世に非凡の名をうたわれたのでありましょう。

いまわたしは、谷風の努力には一言もふれませんでしたが、一粒選りの天下の力士五十人をむこうにまわして、ひとりのこらずうち負かしたその天晴の腕前、土俵の上の勝負を見ただけでは、力ある身だ、あたりまえと思われるでしょうが、その体力、その技量は、けっして一朝一夕にきたえられたのではありません。十九の年にすもうの道にはいってから、寒風肌を裂く厳冬の朝、熱気惰眠を催す酷暑の夕、一日もたゆみなく土にまみれてけいこにはげみ、相手のないときは柱にぶつかって四肢をきたえた、汗とあぶらの継晶でなくてなんでしょう。

算数はむずかしいにはちがいない。が、わたしたちがこれからしらべる問題は、まさか応挙が二メートルいっきに引きとおしたあの苦心のものではありますまい。雨の日、風の日、たゆまぬ努力をつづけたら、横綱にはなれなくても、ある程度までにはたっすることができるでしょう。

 

努力の大切さを、美しい言葉のリズムで語ってしています。

 

言葉が古臭いだけに、とてもリズム感があって、読んでいても気持ちが良いです。
冒頭のすもうの説明もこんな感じです。

 

あのすもうの世界で、はじめて横綱になったのは谷風梶之助(たにかぜかじのすけ)。天明元年大阪の春場所で、晴天十日、五十人の力士をひとりのこらず負かしたという、古今無双の大力士であります。身長一メートル九十一、体重百六十キロ、天覧ずもうにはまれの弓をいただいて、とうじ谷風といえば、天下にだれひとり知らぬ者もない盛名があったものです。

 

リズムがあるので、何となくその音楽的な流れに引きずられて次々に読んでいく、とでも言えばいいでしょうか。

 

昔の講談話もきっとこうだったんだろうな(きいたことないですけど)と思わせます。

 

 

最初に計算問題を出された子どもたち、深呼吸をさせられます。

 

ちゃめな森川くんさえ、おしゃべりの余裕もなく、ただ先生につられて呼吸している。三回目の呼吸が終わろうとしたとたん、先生は「はい。」とおっしゃったので、一同はさっと表を出して計算に取りかかる。
一秒、二秒──ひっそりとして声がない。かがやくひとみ。熱する耳、走る鉛筆。

 

「兄助、ここ、ええ~って思わなかった?」
「熱する耳、走る鉛筆はあるかもしれんけど、かがやくひとみはないわ」

 

もう、全篇がすべてネタです。
ネタ満載です。

 

 

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