大人が読む児童書「白いりゅう黒いりゅう」 1 「もののけ姫」原話
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
白いりゅう黒いりゅう―中国のたのしいお話
賈 芝 (著), 孫 剣冰 (著), 赤羽 末吉 (イラスト), 君島 久子 (翻訳)
この本に収めた「くじゃくひめ」「天地のはじめ」「九人のきょうだい」など6編は,主に中国の少数民族が語りつたえた物語です.雄大で,ストーリーの変化に富み,西欧の民話とは趣きの異なる楽しさです。
「白いりゅう黒いりゅう」
以前ご紹介した、「チベットのものいう鳥」に続いて、中国の各地の伝説をまとめたものです。
「チベットのものいう鳥」は、妹子から
「ごめんやけど、めっちゃひどかったわ。正直退屈なのも多かった。あの金沙江の女軍はよかったけど」
と言われるほど、硬派な本でした。
どちらかというと、文語体や漢文から離れてしまった現代となっては、大人むきの側面があるかもしれません。
しかし、この「白いりゅう黒いりゅう」は妹子も、お友達も大大大好きな、みんなのヘビロテ作品です。
入っているお話は六篇
・九人のきょうだい(イ族)
・犬になった王子(チベット族)
・天地のはじめ(プーラン族)─巨人グミヤーの話─
・ねこ先生と、とらのおでし(漢族)
・くじゃくひめ(タイ族)
・白いりゅう黒いりゅう(パイ族)
最初にページをめくると、地図が載っています。
「チベットのものいう鳥」と同じく、主にチベット系の四川省・雲南省の奥地のあたりのお話が中心です。
※四川は三国志における蜀の地方です☆
この周辺は、さぞ物語がゆたかだったのだろうなと思います。
余談かもしれませんが、昨今、ニュースを騒がせる新羅ウイグル自治区は、この地図で斜めに塗られた「チベット族」の西側上部のあたりになります。
かなりの広さです。
このような面からも、世界の昔話をひもとき、読んでおくことは、子どもたちにとって国際的感覚を身につけるためにも、とてもたいせつなことだと思います。
◇
最初は「九人のきょうだい」
イ族の作品と書かれています。
ちゃんと、「イ族のある村に、おじいさんとおばあさんが…」という風に描かれていて、民族の特色をちゃんと区別をつけています。
子どもが生まれない二人に、池の中から現れた白い老人が子どもをさずかる丸薬をもらうのですが、9つぶもらいます。
一粒飲むと、子どもがひとり生まれるので、9人の子もちになれるというわけです。
面白いのはここからです。
おばあさん、さっそく薬を一粒飲むのですが、一年たっても生まれません。
おばあさんは、もうまちきれなくなって、あるだけ一ぺんにのんでしまいました。
おばあさんェ…。
よっぽど待ちきれなかったんですね。
おじいさんとおばあさん、突然、九人の子もちになってしまいます。
「ちからもち」
「くいしんぼう」
「はらいっぱい」
「ぶってくれ」
「ながすね」
「さむがりや」
「あつがりや」
「切ってくれ」
「みずくぐり」
この名前がたいそう面白いですし、ひとりひとり赤羽末吉さんの絵がついてるのですが、まあみんな、たいへん元気そうなあかんぼうです。
そのとき、都では王さまの宮殿の柱が倒れて、大騒ぎになっていました…。
この王さまVSきょうだいで、あれやこれやの立ち回りをするのですが、まあお約束通りですけど、九人が九人とも、適材適所、ちょどよく自分の特性を生かして、うまく王さまのたくらみをやっつけます。
なんともつごうのいいことに、この九人きょうだいは九人とも、かおも、からだつきも、そっくりだったのです。
(笑)
個人的に、「切ってくれ」が一番おもしろく、めちゃめちゃに切りつけても「みみずばれほどのきずも残らず」
「ああ、いいきもち、もっとちからをいれて切ってくれ!」
へ、へ、へんたいだ~~!!
完
◇
次は、「犬になった王子」です。
ご存じのかたもいるかもしれませんが、宮崎駿氏が「もののけ姫」を作る前に、「シュナの旅」という、絵物語を出版していました。
チベットの民話「犬になった王子」をもとにした谷あいの貧しい小国の後継者シュナの物語。絵物語という形式で自らの夢を形にした、宮崎駿監督のもう一つの世界。1983年以来のロングセラー。
このお話が、「もののけ姫」のもとになったお話であり、かつ、「犬になった王子」をもとにしています。
わたしは「もののけ姫」が作られる前にこの「シュナの旅」を購入し、アニメ化するには地味だと書かれているのを見て、いつかアニメ化して欲しいなあ…と思っていたので、「もののけ姫」が公開された時には感慨深かったです。
残念ながら、ちょっと期待していたのとは違って、まるで別のお話になってしまていましたが…。
(宮崎監督は、かなり大胆な翻案にしてしまいますので)
逆に、まったく違うお話になっているからこそ、「シュナの旅」も、「犬になった王子」も、どちらもそれぞれに新しい物語の楽しさを味わうことができます。
個人的な物語の好き度は
「犬になった王子」>「シュナの旅」>「もののけ姫」です。
「もののけ姫」を何十回、直接映画館に見に行ったかを考えると、この「白いりゅう黒いりゅう」に入っている「犬になった王子」の好き度はいったいどれくらいか、換算できないぐらいです。
宮崎駿監督が、このお話に深い感銘を受けたのも無理はないです。
◇
このお話は、前半・後半で成り立っています。
前半が、心やさしいアチョ王子(チベットのプラ国)が、こくもつのタネをGET★するまでです。
少しユーモラスだった、 「九人のきょうだい」と違って、かなり恐ろしい雰囲気です。
人びとのために「こくもつのタネ」をもとめ、山の神のリウダさまの所に訪れたアチョ王子。
九十九の山を越え、九十九の川を越えるといった、「チベットのものいう鳥」でもあった冒険が入っているのですが、これは省かれているのか、それとももとから無いのか…。
滝の中から現れた山のように大きな老人が、山の神のリウダさまでした。
何となく、とても不可思議な神聖な雰囲気があります。
リウダさまに、
・「こくもつのタネ」は、蛇の王が持っていること
・失敗すれば犬にされてしまうこと
・線香1本が燃え尽きるまでの時間に、タネを盗む方法
・失敗した時の「風の玉」
・取返しのつかない事態になっても、ひとりのむすめの愛があれば救われる
という話をきき、王子は蛇の王のもとに向かいます。
つづきます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
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