~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

オーノワ夫人「青い鳥」2 フロリーヌ姫=フロリナ王女

 

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

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オーノワ夫人「青い鳥」1 バレエ「ブルー・バード」の元ネタ

 

 

フロリーヌとトリュイトンヌの名前があまりにも強烈で、バレエのフロリナ王女にまったく結びついていませんでした。


前回話した、悪女の深慮遠謀にコロっとやられてしまった王さまはもう、ほぼお話に出てきません。

出てこないばかりか、出てきてもまったく役に立ちません。

 

ここで、お話の主人公はフロリーヌ姫(フロリナ王女)にバトンタッチです。

 

 

花の女神フローラに似ているとのことでフロリーヌ。15歳です。
この姫の美しさについて、オーノワ夫人はあらゆる賛辞で言葉を尽くしています。

 

ついぞけばけばしい身なりをしていたことがありません。かろやかなタフタの衣装を、いくつかの宝石のボタンでとめたものが好きでしたが、そのかわり、冠だけは、花をたくさんたばねた、みごとな花冠で、ふさふさとした髪に、この花冠をつけると、いっそうひきたつのでした。

 

さて、王さまを手玉に取った悪女の継母は、名づけ親の魔女、スーシオに預けている自分の娘を呼んできます。

 

ここから、フロリーヌがいかに美しいかと同じぐらい、この継母の娘がいかに醜いかの記述が延々と続きます。

 

この対比が、昔話としては非常にすぐれていて、やはり子どもとしてはめちゃくちゃ夢中になります。

 

ちょうど、岩魚(トルイト)のように、顔に赤あざがあるところから、トリュイトンヌと呼ばれていました。黒い髪は、さわるのも気味がわるいほどあぶらじみていて、ふけだらけで、はだも黄いろで、あぶらぎっていました。

 

うーん強烈。

 

この「容姿をあからさまに比較するような描写」がいけないから、出版業界から消されてしまったのでしょうか。

 

しかしこのお話において、トリュイトンヌの存在は非常に大きいのです。

 

トリュイトンヌがこれほどしっかりした悪役をやってくれているから、よりいっそうお話が面白いのです。

 

正直、フロリーヌがいかに綺麗かを読んでいるよりも、トリュイトンヌにおぞけをふるって近付きたくない王子さまの描写の方が面白かったです。
(大人になってみれば、たしかにこれが微妙だというのは理解できます)

 

しかし、トリュイトンヌは、名づけの魔女スーシオと継母からは、目の中に入れても痛くないほど可愛がられています。
そこが人間らしいです。

 

 

王さま、二人の王女をそろそろ結婚させようとするのですが、王妃は「わたしの娘の方が年上だし、ずっと愛きょうもあるから先」と言います。

 

えっ…。

 

まだ、冒頭のエピソードの強烈さが残っていますから、王さまいったいどういう反応なのかと思えば、こうです。

 

王さまは口あらそいをするのがきらいでしたから、それがよかろう、万事いいようにするがいい、と答えました。

 

あんなに前の奥さんのことで強烈に悲しんでいたのに。
娘はこんなに可愛いのに。

 

王さま「万事、よきにはからえ~(思考放棄)」

 

この王さまの行動パターンは、今にいたるまで世界の七不思議の謎のひとつとしてわたしの中に残っています。

大人になってみると、こういう人、いる、というのはわかるのですが、納得はできません。

 

 

ここで、相手としてシャルマン王子が登場です。

 

「うるわしの=シャルマン」というわけで、まあ要はプリンス・チャーミングです。
オーノワ夫人の「青い鳥」の英語ページの要約では、まんま「ぷりんす・ちゃーみんぐ」でした。

 

この呼び方もいったい何が元ネタで、どこで定着したのかと思っていましたが、シャルマン王子がもとだったのだろうか…?
(単なる想像です)

 

当然、継母はフロリーヌに目をつけないようにあらゆる手を打とうとします。

召使を味方につけてフロリーヌの衣装・髪飾り・宝石に到るまで盗み出させるという、あまり頭のよくないいじめのような戦法です。

 

広間のかたすみに、ふだん着のまま小さくなっているフロリーヌ王女。

 

王子が到着しますが、引き合わされたトリュイトンヌ。
服や飾りが立派なだけに、ふだんよりずっと不器量な顔立ちになるという逆効果。

 

王子のあからさまな嫌がり方と、まったく気付かないこの母娘の厚顔無恥さが、このお話のおかしみです。

 

微妙ながらも、腹が立ちつつも、ユーモラスでおかしいのです。

 

王子は顔をそむけてしまいますが、王妃は「トリュイトンヌが気に入りすぎたので口もきけないのだろう」と解釈、顔をそむけた方にトリュイトンヌをおしやるという。

 

何か既に、美醜を越えた思い込みの激しさに、これはもう王子が災難としか言えません。

 

しかし王子は負けていません。

 

押しの強さが強いだけ、負けずに押し返して主張をします。

 

そこは、父の王さまが思考放棄しているだけ、すごくがんばるのです。

 

ふだん着の姿を発見されて真っ赤になったフロリーヌがあまりに美しいので、王子はもう、フロリーヌしか目に入りません。

 

「姫君、たとえようもない美しさが、なによりの飾りではありませんか。このうえ、なんのつまらぬ飾りがいりましょう」

 

まあ、さすがはフランスのお話だけあって、非常にお上手です。
王妃がいらいらして邪魔しますが、

 

べつに王妃にえんりょしなければならない立場でもありませんから、自分の思うとおり、フロリーヌ姫をほめあげて、三時間も姫と話しつづけました。

 

つよいです (゚A゚;)。

 

しかしこの押しの強さに対して押し返す力が強いだけ、ものすごく長く激しいバトルになるのです。

 

王さまはそれがわかっているので、早々に戦線離脱したものと思われます。

 

 

ここでざっと、だいたいの構成をお話すると

 

・王の再婚事情。
・フロリーヌとシャルマンが出会う。
・シャルマン、魔女スーシオに青い鳥に変えられる。
・塔にとじこめられたフロリーヌとシャルマンの逢瀬。
・あの手この手を使って、あらゆる邪魔をする王妃たち。
・魔法使いのとりなしで、青い鳥から王子に戻る。フロリーヌは王さまの死により女王になる。
・フロリーヌ、変装して王子のもとへ。割と長い旅路になる。
・鉢かつぎ姫的展開から、王子が気付いて大団円になるまで。

 

という順になるでしょうか。
シンデレラよりは長いです。
異種変身+鉢かつぎ、といったところでしょうか。

 

面白いのは、途中で王さまが死んだ時に、フロリーヌが女王になることです。

 

民衆は、王妃とトリュイトンヌの専横にずっと飽き飽きしていたので、蜂起して王妃を追い落とし、フロリーヌを女王に付けるのです。

 

これはちょっと、他にはない展開です。
あまりこういうパターンは読んだことがありません。
さすがはおふらんす

 

革命が起きるわけです。
(これは、市民革命よりもはるかに昔のお話ですが)

 

ここからは、あらすじをおさらいしながら、面白かったところ、気になったところを拾って行こうかなと思います。

 

 

つづきます。

 

whichbook.hatenablog.com

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

  

「 青い鳥」はないのですが、オーノワ夫人の「美女と野獣」です。

 

美女と野獣 (ワンス・アポンナ・タイム・シリーズ)
ドーノワ夫人 (著), エティエンヌ・ドレセール (イラスト), 石川 康弘 (翻訳)

そまつな服を着て、このうえなくみじめなくらしをつづけながら、娘たちはいつも、むかしのぜいたくで楽しかった生活をなつかしんでいました。ただ末娘だけは、明るく、強く、生きようとしていました。彼女は、父親がはじめて不幸に見舞われたとき、だれよりもなぎけ悲しみました。けれども、もちまえの快活さを取りもどすと、つらい生活にたえて、仕事に取りかかって、父親や兄さんたちをできるだけなぐさめようとしたり、姉さんたちの気持ちが、歌やダンスでまぎれるようにつとめるのでした。ボローニャ・ブックフェア特別賞受賞のシリーズ。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

白いねこ
オーノワ夫人 (著), こみね ゆら (著)

「1年後のこの時刻にこの世でいちばんかわいい犬を探して来た者にこの国を与える」 王の言葉に3人の王子は旅に出ます。17世紀フランスの、話ができる白い猫の繰り広げる、不思議で華麗な世界をのぞいてみて下さい。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

こちらのオーノワ夫人の「青い鳥」とはまったく関係のないメーテルリンクの「青い鳥」ですが、せっかくなのでリンクを置いておくことにしました。

 

青い鳥
モーリス メーテルリンク (著), 大社 玲子 (イラスト), 末松 氷海子 (翻訳)

貧しいきこりの子どもチルチルとミチルは、「幸福」の象徴である「青い鳥」をさがして、思い出の国や夜の御殿、未来の国などを旅します.ノーベル賞作家による、有名な戯曲.新訳.

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

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whichbook.hatenablog.com

 

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ライオンと魔女 新訳 長くつ下のピッピ ヤクーバとライオン(信頼)
ふしぎなかぎばあさん おかあさんは魔女 新訳 十五少年漂流記

 

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