大人が読む児童書「飛ぶ教室」 5 電車を住居に! ストレス社会のおとなすべてが羨む生活をする「禁煙先生」
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ボクサー志望のマッツ、貧しくも秀才のマルティン、おくびょうなウーリ、詩人ジョニー、クールなゼバスティアーン。個性ゆたかな少年たちそれぞれの悩み、悲しみ、そしてあこがれ。寄宿学校に涙と笑いのクリスマスがやってきます。(「BOOK」データベースより)
「飛ぶ教室」 1 「花の24年組」ギムナジウムについて熱く語る。そして「ほんとうの物語」について
2 突然のすとぷりで妹子(およびその友達)を釣ろうと画策する
4 どこを読んでも萌えしか見当たらないギムナジウムの男子高校生たち。
舞台の練習をしている5名。
そこに突然、扉が乱暴に押し開かれます!
ケンカ騒ぎに巻き込まれ、血を流している同級生が現れたのでした。
うん、漫画としてもドラマとしてもたいへん盛り上がる展開だな!
クロイツカムという同級生が、実業学校の生徒に捕まったというのです。
この「実業学校」とこの主人公たちの通う「高等中学校=ギムナジウム」は、伝統的にたいへん仲がわるく、漫画のような争いをいつもやっているらしいです。
ヤンキー同士の闘争というより、もうちょっとゆるい感じです。
学生とヤンキーの境って何でしょうね。
ちょっと喧嘩っぱやいだけの普通の学生です。
◇
ここで、行けっ!突撃だー!クロイツカムを取り戻せー!!
…とはならず、少年たちはまず、「禁煙先生」という人の所に、相談に行きます。
これはちょっと、肩透かしというか不思議な展開です。
「禁煙先生」
別に学校の先生というわけではありません。ただの人です。この5人が、便宜的に禁煙先生と呼んでいるだけです。
この人の説明がここで入るのですが、これがまた、すばらしい生活です。
35歳。独身。何かの暗い過去あり。
まあこれは、なるほど…という感じです。ここからです。
廃車になって菜園の中に持ち込まれた、禁煙車専用の二等客車に住んでいる。
夏と秋には、彼のささやかな庭にすばらしい花が咲きます。植えかえたり、水をやったり、草をとったりする仕事をおえると、彼は緑の草の中にこしをおろして、数多い蔵書の中の一冊を読みます。
何というすばらしい生活…。
多分、このコロナ生活や、ストレス過多な現代社会に疲れたすべての人が望むような理想の生活です。
ここに、「禁煙車」と書かれているエナメル板が残っているので、それでみなは、この人を「禁煙先生」と呼んでいるのです。
どうやって生きているのかというと、夜に場末のピアノ弾きをして日銭をかせぎ、夕食も出るということです。世捨て人のような生活です。
鉄道車両を購入する手順と経費については、こちらにくわしいです。
うーん。この記事は読むんじゃなかった。
夢が壊れた。
(搬入トレーラーをレンタルするのに1日100万円かかるとのことです)
◇
少年たちが、捕まっているクロイツカム君をほったらかしで禁煙先生の所に出かけた理由。
彼らには、とても尊敬しているベク先生という、舎監の先生がいます。
こちらは、間違いなく学校の先生ですし、とても頼りになる人です。
しかし、正と不正を区別することが困難なような場合、彼らはちえを借りる必要がありました。そういう時、彼らはユスツツ先生(ベク先生)のところにはいかないで、垣根を越えて禁煙先生をたずねにいそぐのでした。
この禁煙先生の所に行ったからといって、この人は、特にあれこれ指図をするようなことは一切しません。
少年たちがこの人のもとで何をするかというと、作戦会議です。
禁煙先生は、微笑みながら好きなようにさせ、聞いているだけです。
捕虜奪還作戦をどういう風にするか話し合う少年たち。
しかし、もうどちらの生徒たちも集まって、今にも大乱闘を始めそうな気配です。
このまま捕虜を奪還すれば、あっという間にすごい騒ぎになることでしょう。
そこで話を聞いていた禁煙先生、ちょっとした提案をします。
お互いに代表者を出し合って、一騎打ちで決めること
というわけで、大乱闘は避けられることとなりました。
このあたりは、学校VS学校の大戦争、ジャンプ漫画か男塾的な展開で、たぶん女子のウフフな妄想想像に興味のない男子(や女子)も、非常に楽しく読めること間違いなしです。
◇
こういうとき、交渉を行うのは一匹狼のゼバスチアン。
彼は言うこともいちいち皮肉っぽくて、ぴりっと場を引き締めるよいキャラです。
マルチンはリーダーなので、敵の大将エーガーラントと話し合いを行います。
(エーガーラントは私の推しです)
ヨーニーはマルチンにぴったりついて、副官的な役割です。
もちろん戦うのは、ボクサー志望で食いしん坊のマチアス君です。
ウリーは、このような大騒動の中ではてんで役に立ちません。
ことあるごとに、弱虫であることを揶揄されたり、非難されたりしていて、この弱虫であるということが、非常に彼を苦しめていることが語られます。
それぞれが実にキャラ立ちしています。
◇
なぜエーガーラントが推しかというと、まあ結局、お話なので、実業学校側は負けるのですが、この生徒たち、捕虜解放に同意しません。
リーダーである、エーガーラントの言う事も聞かないのです。
それで、彼はどうしたかというと、自分を捕虜として交換交渉するように、みずからもちかけるというわけです。
な…なんか、キュンと来てしまいました…♡
ここで、最初に捕まっている場所を特定しておいたことが役に立ち、エーガーラントの提案はことわって、みなはクロイツカム君を救出します。
彼は、10分に6回ぶんなぐられるという、とんでもない拷問を受けていました。
1時半から4時まで、10分ごとに6回。
算数の計算問題になりそうですが、これほど計算したくない算数も珍しいです。
◇
この汗くさいジャンプの戦い展開のあとに、あの美少年テオドルが、規則やぶりをした彼らをとっ捕まえて、舎監のベク先生のところに連れて行きます。
やっぱりいちいち、ぜんぶに「美少年」がついてます。
往年の大御所少女漫画家先生がたが萌えてしまったのも、この「美少年」「美少年」「美少年」ていちいち連呼してるのが、若干まずかったんじゃないかと思うんですよね~。
(萌えてしまったと決めつけている)
さて、前述の世捨て人の禁煙先生、どうもこのベク先生を知っているのではないか?と思われるような記述がありました。
ここの、ベク先生の、規則破りの5人への対応がまた、すばらしいです。
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ボクサー志望のマッツ、貧しくも秀才のマルティン、おくびょうなウーリ、詩人ジョニー、クールなゼバスティアーン。個性ゆたかな少年たちそれぞれの悩み、悲しみ、そしてあこがれ。寄宿学校に涙と笑いのクリスマスがやってきます。(「BOOK」データベースより)
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冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。トーマ・ヴェルナー。そして、ユーリに残された1通の手紙。「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。信仰の暗い淵でもがくユーリ、父とユーリへの想いを秘めるオスカー、トーマに生き写しの転入生エーリク……。透明な季節を過ごすギムナジウムの少年たちに投げかけられた愛と試練と恩籠。今もなお光彩を放ち続ける萩尾望都初期の大傑作。
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ヒュールリン・ギムナジウムの転入生エーリク。そこで彼は自分の分身トーマに出会った。2人を結ぶ罪と愛の秘密とは…。
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――ぼくを満たしてくれるものは、あのあつい肌と肌とのふれあい――。妖しい魅力を纏った少年、ジルベール・コクトーは抱かれることでしか心満たされず、威厳あるラコンブラード学院においても退廃的な生活を送っていた。
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ひたむきな自然児であるだけに傷つきやすい少年ハンスは、周囲の人々の期待にこたえようとひたすら勉強にうちこみ、神学校の入学試験に通った。だが、そこでの生活は少年の心を踏みにじる規則ずくめなものだった。少年らしい反抗に駆りたてられた彼は、学校を去って見習い工として出なおそうとする……。
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おばあちゃんをたずねる途中の列車で,大切なお金を盗られてしまったエーミール.ベルリンの街を舞台に,少年たちが知恵をあわせて犯人をつかまえる大騒動がくりひろげられます.
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お金持ちの両親の目を盗んで夜おそく街角でマッチ売りをするおちゃめな点子ちゃんと、貧しいアントン少年―つぎつぎと思いがけない展開で、ケストナーがすべての人たちをあたたかく描きながらユーモラスに人生を語る物語。
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おたがいを知らずに別々の町で育った、ふたごの姉妹ルイーゼとロッテ。ある夏、スイスの林間学校で、ふたりは偶然に出会います。ふたりは、大胆な計画をたてるのですが…。
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