大人が読む児童書「ぼくは王さま」 2 読了 王さま?子ども?どこのおうちにもひとり……それは、あれ?わたし?
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
王さまはたまごやきが大好き。朝も昼も夜も、いつもたまごやきを食べます。ある日、王さまはとびきり大きなたまごやきを作るために「ぞうのたまご」をとってこいと命令を出しますが…。ロングセラー児童文学のリニューアル版。(「MARC」データベースより)
大人が読む児童書「ぼくは王さま」 1 そこの君。君のことだよ、君。
第2話 しゃぼんだまのくびかざり
王さまは、あそぶのが、だいすきでした。あそんで、おかしをたべて、あそんで、べんきょうして、あそんで、ひるねして、あそんで、ごはんをたべて……それで、一日がおしまいになりました。
子どもだ!!
しかし、読んでいるたちばの子供たちは、けっしてあー自分だとは思わないもので、
「王さまっていいご身分だね」
「王さまになりたい」
とか言いやがります。
◇
大臣がしゃぼんだまをもってきました。
「王さま、これから、わたくしが、おもしろいあそびを、ごらんにいれましょう。しゃぼんだまというあそびです。ごらんください。」
しゃぼんだまが飛び、また散って行く音がとてもすてきです。(寺村さんは、擬音を多様されるかたです)
ぷ────ぷるるぷるる るるるるる
ぱっ ちっ ぱ ち ち ち
さまざまな色に光りながら、景色や顔も映すきれいなしゃぼんだまに、すっかり魅了された王さま。
つぶれないしゃぼんだまを作り、くびかざりにしたいと思いつきました。
研究者に命じて、あれこれとわけのわからん薬剤(でも読んでいてとてもよくわかる薬剤)を混ぜ込んだ、風船ガムっぽいやつができました。
ですが、針を刺すとつぶれてしまいます。
研究者(はかせ)「鉄を混ぜれば大丈夫っ☆」
んなわけあるかーい!
なのですが、鉄の粉をたくさんまぜたやつができました。
今度はどうか?しゃぼんだまの様子が変です。
予測できそうな展開には決してなりません。
◇
今度のしゃぼんだまは、まるで魔法をかけられたかのように大きく、大きくふくらんで、ゆかに落ち………中から、子どもが出てきました。
この子どもに兵隊たちがとびかかりますが、にこにこ笑いながらちょっと兵隊をさわると、みんな一つにくっついてしまい、ピストルからはたまのかわりにしゃぼんだまが飛び出します。
くっついてしまったのは磁力の現象でしょうけど、理科に出てくる教科書的な説明はついていません。
「がっちんと吸い寄せられ、くっついてしまいました」のです。
不思議な子どもです。
第一話の「たまごやき」で、ぞうはたまごうまないよ、と指摘した子に似ていて、冷静で、にこにこしていて、どこか不思議な力を持つ妖精のようです。
子どもの方が冷静で、万能で、おとなの王さまの方がわがままで、出来ないことばっかり云い付けて、感情のままに走り出す。
という、姿かたちと立場の逆転現象がおもしろいです。
◇
不思議な子どもは、王さまにこわれないしゃぼんだまの作り方を教えてくれます。
畑で、王さまみずからの手で土をたがやし、種をまくこと。
最初は何事もうまくいかないもので、王さまは文句ばっかり言いながら、ふうふう言ってやっとちょこっとだけ(テーブルの広さぐらい)の畑を耕しました。
そうすると、今度はごはんが美味しいです!
もりもり、ぱくぱく、食が進むこと、進むこと!
「王さまは、あそんで、べんきょうして、ひるねをしていれば、いいのですよ。」
「いや、はたらいたほうが、おもしろいさ」
労働の魅力に取りつかれた王様、ごはんも美味しいし、毎日もりもり働きます。
このしゃぼんだまの実が出来るまで、実に丁寧に、水をやって、世話をして、肥料をやって、害虫を取って(ちゃんと農薬を撒いてます)…と、実に丁寧にやっています。
不思議な子どもが種をまいてくれるのですが、「不思議なストロー」をふくと、小さなごまのような種が飛び出してきて、地面に着地するので、それに土をかぶせるというわけです。
◇
結果、リンゴ箱に百杯も出来たとのことなので、これは希少価値としては若干、値が下がるような気がしますが、こんなこと考えてしまう汚い大人はほっといて先に進みます。
王さまは、国中の人に分けてあげることを考えつきました。
ひとりずつ、丁寧に直接手渡して(いい王さまだな)あげていると、何と数が足りなくなってしまいました!
最後に並んでいるのは、子どもです。
あのふしぎな、しゃぼんだまの子どもにそっくり……。
子どもは、王さまがいま首から下げているしゃぼんだまの首飾りと引き換えに、これをあげましょうといって、ストローを差し出します。
あの、しゃぼんだまの種が出るストローです。
究極の取り換えっこ!
王様、自分のしゃぼんだまのくびかざりが欲しかったら、もう一度はたけを作るところからはじめなければならなくなってしまいました。
ナンセンスで摩訶不思議な、夢の中の出来事のようなことが次々に起き、子供を飽きさせない。
誰が読んでも面白い、ハードカバーの「本」です。
子どもによっては、あいうえおを覚えた頃からいけますから、こうしてどんどん「本」に慣れて行ってもらいたいです。
◇
「第3話 ウソとホントの宝石ばこ」は大作です。長編です。
どちらかというと、大人向きなのではないでしょうか。
この本に入っている4つのお話、1は明らかに幼保~低学年でも十分にいける話、2はバランスが取れた面白い話(ちょっと長い)、3は少しひねっていて皮肉がきいていて、人間の本質にまで迫る話……と、少し違っていてさまざまです。
こういう風に、あらゆる年齢層から大人まで対象であるお話が、一つの本に入っているというのがこのハードカバー版「ぼくは王さま」の魅力です。
いつ読んでも、どれかにはひっかかってくるということです。
大人で読んでいても、「たまごやき」の話が純粋でかわいくて面白いなあ!と思うことがありますし、子どもがちょっと無理をして「嘘と本当」について真剣に話を追って行くのも面白いものです。
ウソとホントの宝石ばこは、嘘をつくと「ジジージジジジ」と鳴ります。
こっそり捨てようとした王さまに、川の中から宝箱は歌います。
『ウソつき王さま ウソつきやめた
ウソつきやめたの ホントでしょうか
ウソつきやめたの ホントでしょうか』
大臣、はかせ、武力で攻め込んできた隣の王さままで巻き込んでの大騒動。
ぜひ読んでみてもらいたいです!
これは本当に、一見の価値あり、皮肉と風刺もたくさん含んで、なおかつ面白いというお話です。
◇
ここまで書いて、最初にもどってきました。
どこの おうちにも
こんな 王さまが
ひとり
いるんですって
いる。
いるな。
たとえ、一人暮らしであっても、王さまはいる。
うちの王さまは……。
わがままでゴネてひっくり返って、単純で……すぐ乗せられて…。
もしかして………。
わたし (゜.゜)
かもしれないし、だ〇〇かもしれない。
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王さまのお城で王子さまが生まれました。王さまはお城に国中の人を呼んでお祝いをするといいます。ごちそうはたまごやき。たくさんたまごやきを作るために、王さまはゾウのたまごを持ってこいと言いますが…。新編集版。
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たまごやきが大好きな王さまがいました。ある日、王さまは散歩の途中で鶏小屋からにわとりを逃がしてしまいます。もちろんお城は大騒ぎ! にわとりを逃がした犯人さがしがはじまりますが、見つかるわけがありません。
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<ファンタジーの世界で楽しいおかし作り> ゆかいなお話とおいしいお菓子の作り方が一冊で楽しめる好評シリーズ。 クリーニング屋さんのわかったさんが、配達の途中でまきこまれる不思議な世界。 お話のなかに、お菓子作りのカギがあり、巻末には、作り方の実際をわかりやすく解説しています。 全10巻 (1)わかったさんのクッキー (2)わかったさんのシュークリーム (3)わかったさんのドーナツ (4)わかったさんのアップルパイ (5)わかったさんのホットケーキ (6)わかったさんのプリン (7)わかったさんのアイスクリーム (8)わかったさんのショートケーキ (9)わかったさんのクレープ (10)わかったさんのマドレーヌ
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<お話を楽しみながら料理のコツがわかる> お話と料理、2つの要素を一冊にまとめた本。 かわいい花屋の奥さん、こまったさんが、 いろいろな出来事に出会いながら、おいしい料理作りに挑戦します。 楽しいお話とゆかいな絵にくわえて、実際の料理のコツがよくわかると評判のシリーズです。 (1)こまったさんのスパゲティ (2)こまったさんのカレーライス (3)こまったさんのハンバーグ (4)こまったさんのオムレツ (5)こまったさんのサラダ (6)こまったさんのグラタン (7)こまったさんのサンドイッチ (8)こまったさんのコロッケ (9)こまったさんのラーメン (10)こまったさんのシチュー
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ファンタジーの世界で、おかし作りのレッスン!きょうはクリスマス・イヴ。わかったさんは、白ひげのおじいさんをてつだって、ショートケーキを作ることになりました。
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寺村 輝夫。1928年東京生まれ。早稲田大学卒業。『ぼくは王さま』で第15回毎日出版文化賞受賞。1984年「独特のナンセンステールズで、子どもの文学の世界を広げた」功績により第17回巌谷小波文芸賞を受賞。
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