~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

閑話 「マッチうりの女の子」 P丸様。ビジネス書。錯乱。そして、伝説へ…。

閑話です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

マッチうりの女の子
ハンス・クリスチャン アンデルセン (著),
スベン オットー (イラスト), 乾 侑美子 (翻訳)

身をきられるように寒く、暗い、雪の降りしきる街を一人の女の子が歩いていました。足ははだしで、すりきれたエプロンにはマッチの束を抱えて…。冬のデンマークの街の情感を背景に、格調高く描かれたオットーの絵本。

 

 

妹子「マッチ売りの少女、うちにあったよね」
わたし「うん。そこにあると思うよ」
妹子「あっ!そういえば、このおかあさんごじまんの赤い本にも入ってんじゃないの?入ってないはずないよね!?」
わたし「どうだったかなぁ~?」

 

赤い本とは、世界少年少女文学全集のことです。
割とちゃんとした小説ばかりを載せてるようなイメージがあるけどな?

……しっかり入ってた。

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昭和28年発行です。1953年。

68年前か~。すごいな。

 

この赤い本に入っているアンデルセンの訳は平林広人さん。
初山 滋さんがイラストを担当された、この本の大畑 末吉さんバージョン「野の白鳥」は愛読していますが、こっちの赤本のアンデルセンはまだ読んでいませんでした。

 

「絵のない絵本」も入っているところがさすが!
川端康成大先生をはじめとする編集者のお歴々!(←ごじまん)

 

 

妹子「(開きながら)いやー、今日ね友達が、P丸様の動画でマッチ売りの少女があったっていうから、もとの話はちゃんともう一度読んどこ、と思ったんだよね」

 

P丸様とは、小学生に大人気のYouTuberです。(登録者数218万!)
若干、テンション高めで、なご助は好きではありませんが、妹子はだいすきです。

なご助「チッ!まーたくだらねえもん見やがってよ~小学生が!いいかそんなもん、高校生とかなったら、つまんなすぎて時間のむだなんだよ!」

わたし「まあまあ。マッチ売りの少女のオリジナルを読もうというんだから大目に見てやって」

 

妹子「あかちゃんみたいな子が読むようなみっじかい『マッチ売りの少女』じゃだめよねやっぱり」
わたし「絵本だとまとめられちゃってるよね。まあそれでも知らないよりはいいんだよ…………」

 

と、検索していると、こんなの出てきました。

 

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わたし「………」
妹子「………」

 

「『マッチ売りの少女』はこうすればマッチが売れた!」神経伝達物質ドーパミンを使えば販売は急上昇!

 

妹子、大笑い!

 

妹子「えー読んでみたい!」
わたし「ちょうどkindleアンリミテッドの一カ月おためし期間中なんだよね……」

 

というわけで、kindleアンリミテッドで入手、サラッと読んでみたところ、なかなかよくできたビジネス本でした。

 

よくある「北極で氷を売る」を、マッチ売りの少女をもとにかみ砕いて説明しています。
その人が購入に到るまでの道筋をストーリー化、付随商品として存在するマッチの購買意欲をそそる、というような感じの……。

 

わたし「こんなマッチ売りの少女はいやだの典型例みたいなやつだな!」
妹子(大笑い)

 

 

妹子、世界少年少女文学全集の「マッチ売りの少女」を開いて読み始めました。
こちらでは、「マッチうりの女の子」という題名になっています。

 

物語を読むまでの道筋はどうあれ、P丸様といい、ビジネス書といい、こんなのを見ちゃったら、真面目にお話読んでても、途中で思い出して笑っちゃうじゃないかな?

 

読み終えた妹子、真顔です。
呆然としています。

 

妹子「え……………」
わたし「どうした」
妹子「すごい」
わたし「どうすごい?」
妹子「なんか……、なんか、すごい」
わたし「文章?きれい?」
妹子「すごい。すごいとしか言えない」

 

気になるーーー!!!

 

真顔ですごい、とだけ繰り返し、呆けた顔をしている妹子。
どんな感想よりも、こんな顔して「すごい」しか言わないというほうが、読みたくなるものだな。

 

 

十分後。

 

わたし「すごい」
妹子「だよね。すごい。もうなんか……ことばにならない」

 

P丸様もビジネス書もふっとぶ、「マッチ売りの少女」オリジナルの威力。
本物をナメていた。

 

貧困にあえぐ少女は、大晦日の夜に、新年を迎えることがなかった、そういう話なわけなのですが、そこに到る過程が、美しい文章と、リアルな描写とともに流れ込んで来ます。

 

おいしそうな料理の匂いが漂う通りで、足は裸足で紫色になり、体は冷え切っておなかはぺこぺこの少女。

 

それでも、家に帰ろうとしないのは、今日は誰もマッチを買ってくれなかった上に、帰ってもお父さんに殴られるだけだし、家にかえっても寒いことには変わりがないから。

 

これは、ビジネス書に従って手持ちの在庫が多少売れたからといって、解決する問題だとは思えません。
お父さんに搾取されて終わり、最終的に同じことになる気がします。

 

たった一本だけでも、指さきをあたためることができれば、と願って、路地の片隅に座りこみ、一本のマッチを束から抜き取る少女。

 

最初のマッチは、あたたかいストーブ、次のマッチは、おいしそうなお料理。

 

マッチはぱっともえあがって、あたりが明るくなりました。光がそばの壁を照らすと、みるみるうちに、その壁がすきとおって、ヴェールのようになりました。

 

何千本ものろうそくが、みどり色のもみの木の枝の上で、もえさかっていました。そして、商店の飾り窓に並んでいるような、美しい色とりどりの絵が、まるでおくりもののように、つるしてありました。

 

文章と翻訳の美しさにぶん殴られてる感じがします。

 

少女はおもわずそのほうへ高く両手をのばしました。──と、そのとたんに、ふっとマッチの火がきえてしまいました。たくさんのクリスマスのあかりは、高く高く、空へのぼっていき、とうとう明るい星になりました。そのうちの一つが、長い尾を空にひいて、とんでいくのが見えました。
「あっ!いま、だれかが死んだのだわ」


少女を誰よりもかわいがってくれていたおばあさんが、むかし少女に
「お星さまが落ちると、ひとりの人のたましいが、神さまのところへのぼっていくんだよ」
と教えたのでした。

 

マッチの光が、震える少女の手の中で、まぼろしを映し出す。


小さな炎が、色とりどりのろうそくの光に変わり、マッチの炎が消えると同時に、さっと高く空へ立ち昇って、星々のきらめきになり、その中から流れ星が落ちていく。

それは今まさに燃え尽きようとしている、ひとの命の輝き──。

わたし「す、すごい」
妹子「すごかった。文章が美しいとかいうレベルじゃなかった」

 

最後のマッチによるおばあさんの姿は、美しく、輝きに満ちていて、少女はその姿をひきとめようと残りのマッチをすってしまいます。

おばあさんは、少女を腕にかかえて、だきあげました。そして、ふたりは、よろこびいさんで、高く高く、どこまでも高くまいあがっていきました。もう寒いことも、おなかのすくことも、こわいこともありませんでした。ふたりは神さまのところへ召されていったのです。

 

少女はほほ笑みを浮かべて死んでいました。

 

この少女が、どんな美しいものを見たか、また、どんなに祝福されて、おばあさんといっしょに、楽しい新年を迎えたか、それを知っている人は、だれもいませんでした。

 

わたし「……………」
妹子「……………」

 

わたし「こ、この人は……この人は、何もわかってない!(この人=ビジネス書の作者)」
妹子「う、うん」

 

わたし「マッチを売ることの話をしてるんじゃないんだよ!この!少女は!たとえおおみそかの夜にひとりでこごえ死んでも!マッチ1本の炎の中に、すばらしいものをみたんだよ!」
妹子「…………」

 

わたし「それは!大好きだったおばあさんのやさしさであり!愛であり!たとえ!死んだとしても!そのおばあさんのもとに抱き取られて!今はおばあさんのもとに一つになれたんだよ!幸と不幸なんて、分けられるものじゃないんだよ!生きていれば必ず幸せなのか?金持ちになればそれが豊かなのか?

 

号泣。

 

わたし「こいつは!何もわかってない!そればかりか!マッチ売りの少女を二次利用して、自分がもうけようとしてるだけなんだよ~~~!」

 

突然のなご助「そうだよ、そんな奴らなんて、聞こえのいいことばっか言って、自分がもうけることばっかしか考えてねえんだからよ~(´;ω;`)ウゥゥ

 

妹子「ちょっとちょっと、ふ、二人とも、お、おちついて……(オロオロ)」

 

 

※追記:決してこのビジネス書(およびその作者)を貶める意図はなく、ビジネス書としてはたいへんよく書けている部類のものでしたので、マーケティングに興味のある方はどうぞ一読してもらえばよいと思います。

 

 

 

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「マッチ売りの少女」はこうすればマッチが売れた!
山川 裕士 (著)

アンデルセン童話「マッチ売りの少女」はマッチが売れていれば、雪の中で死なずにすんだはずです。本書では「マッチ売りの少女」が神経伝達物質ドーパミンの働きを使って売り込んでいれば、たくさんマッチが売れていたであろう、そしてそれは現代の営業・販売にも共通する手法であることを分かりやすく紹介しています。

 

 

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完訳版 アンデルセン童話集 全7冊セット
アンデルセン (著), 大畑 末吉 (翻訳)

アンデルセン(一八〇五―七五)の童話は,決して口あたりよい砂糖菓子のようなものではない.「私が書いたものはほとんどが私自身の映像である」と『自伝』のなかで述べられているように,どんな空想的な話のなかにも,作者の生きた波瀾の人生の一片が封じこめられていて,おとなであれ子どもであれ,読む者の心を強くゆさぶる.

 

 

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アンデルセン童話集〈1〉
H.C. アンデルセン (著), 初山 滋 (イラスト), 大畑 末吉 (翻訳)

グリムの昔話とならんで世界中の子どもたちに親しまれているアンデルセン童話は,人生の縮図であるといわれます.1には,「おやゆび姫」「みにくいアヒルの子」「人魚姫」など,17編を収めます.

 

 

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アンデルセン童話集 (2) 野の白鳥
H.C. アンデルセン (著), 初山 滋 (イラスト), 大畑 末吉 (翻訳)

アンデルセンは,実生活の喜怒哀楽を美しい芸術に昇華させ,人間の真実を伝えます.2は,「野の白鳥」「マッチ売りの少女」「赤いくつ」「さやからとび出た五つのエンドウ豆」「雪の女王」など,16編.

 

 

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カラー版 ママおはなしよんで 幼子に聞かせたいおやすみまえの365話
千葉 幹夫 (著)

人気の画家たちの挿絵とともに、日本と世界の昔話・名作を、一日一話ずつ366話収録した、オールカラーの豪華絵本です。 定番の「桃太郎」「おむすびころりん」「白雪姫」「おおかみと七ひきのこぶた」といった昔話はもちろん、「やまたのおろち」「じゅげむ」などの神話や落語、「ハイジ」「ロビンフッド」などの名作やギリシア神話も多数収録しています。 主な特長は次になります。 ●504頁、オールカラー、上製本という、他書にはない圧倒的に豪華な体裁と内容。 ●毎日3分程度で読み聞かせできるお話を366話掲載。

 

 

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ママお話きかせて―冬の巻
(小学館のお話シリーズ)

初版と新版は、表紙デザインが異なります。日本昔話、イソップ童話などが90話収録。毎日ちゃんと読み聞かせても三か月分あり、読み応え十分。挿絵はダイナミックかつ個性的で、家族の話題作りにもいかがでしょうか。

 

 

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新編 世界むかし話集(1)イギリス編 (現代教養文庫ライブラリー) Kindle版 山室静 (編集) 形式: Kindle版

ムーミン」やアンデルセン童話など、北欧・児童文学の研究・翻訳に生涯携わり、子供たちには夢を、大人にはやすらぎを与え続けた著者・山室静の世界むかし話集第1弾。
<イングランド>ネコの王さま/カメの遠足/最初のバナナ/三びきのクマ/ロンドン橋の上で/ジャックと豆の木/他8編
<コーンウォール>ベッチィ・ストーグの赤ちゃん/頭から下に向かって/他3編
<スコットランド>ヒース酒の秘密/詩人トマスの話/他5編
<ウェールズ>長すねグウィスの嘆き/他3編
<アイルランド>白いマス/笛吹きとプーカ/他9編

 

 

 

 

 

 

 

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

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