今日、ご紹介するのは、かなりしっかりした文字の多い、「絵本」です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ある町で大さわぎがおこりました。近くの湖におばけが出るというのです。ところがそのおばけの正体は、前世紀の怪獣でも怪魚でもなく、かわいい子アザラシでした…
この本、なかなか装丁が面白く、真っ赤な装丁に真っ黒な海からオーリーがぬっと海から首を突き出しているので、いかにもおばけな感じです。
昔から必ずと言っていいほど、この「海のおばけオーリー」は名作童話・名作絵本の中に入っています。
どうしてもあげなくてはいけないなと思う一冊です。
内容としては可愛らしいアザラシの赤ちゃんがお母さんからはぐれて人間に捕まり、水族館に連れて行かれてしまったお話です。
そこで、お母さんが恋しくて沈んでいる所を可哀相に思った飼育員さんが...。
港に出たオーリ―は、あそんでもらおうとして無邪気に近づいて行くのですが…。
中の絵と台詞のの置き方もちょっと変わっていますので、記憶にもすごく残ります。
1ページ中に絵が3×3こま、左から右へ順番に置かれており、一つ一つの絵に対して、短い文章がついていて、漫画のコマにも少し似ています。
吹き出しで言葉が入る代わりに下に文章がついているといったふうです。
一つ一つの絵についている文章はやさしく、単純でありながら絵は非常に密です。
そして、文章も一つ一つについては少ないながらも、何しろ1ページにつき3×3もありますので、全てを 追っていくとかなりの文章量になります。
読み聞かせしていると、ちょっと口がつらいかもしれません。
そして、「続きはあしたね...」「ダメ!続き読んで!」となる感じです。
海外の絵本を読んでいるとよくあることですが、意識しないといったいどこの話なのかさっぱりわかりません。
このお話も、あざらしの赤ちゃんオーリ―がいったいどこで生まれたのか、連れて行かれた水族館がどこなのか、最初はさっぱりわかりません。
大人目線で見ると、絵本がつくられた時代背景を反映して、「古き良きアメリカ」を感じさせる風景です。
風俗を語る上でも なかなかに興味深い一冊です。
一つ一つの絵は白黒の版画のようです。
この白黒が、怖がられた時のオーリ―のおばけ感をすごく引き立てています。
人はかってな想像で、どんどん怖さを作り上げていくものだな、というのがユーモラスに描かれています。
このひとつひとつの絵を3×3にせず、一枚ごとのページにしていたら相当に分厚い本になることは間違いないです。
しかし、そのまま読み進め、最後のページを見ると!
今まで小さく書いていた視点がぐうっと大きくなります。
Googleアースを見ているかのように…。
地球儀をのぞくように、大きな大型本の中に アメリカの地図がぱっと広がります。
五大湖のあたりです。
そしてオーリーがどういう風にお母さんのところへ帰って行ったのか、具体的な地図と地名ではっきりと示されます。
今まで、「オーリーはどうなるんだろうな?」「お母さんに会えたらいいな」「みんなに驚かれおばけなんて言われてかわいそうだなぁ」などという風な視点で見ていたところに、急にそれはこうだったんだよ!という、現実の地理の知識がわっと現れます。
物語と現実とを見事に融合させた一冊です。
名作です。
何より、オーリーはすごくすごく、可愛いです💖
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