~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

オーノワ夫人「青い鳥」4 魔女と魔法使い

青い鳥に変えられてしまったシャルマン王。 

 

首尾がうまくいかなかったことを聞いた王妃は腹をたて、フロリーヌに八つ当たりをして憂さ晴らしすることにします。

トリュイトンヌはフロリーヌを装って王から巻き上げた指輪を持っているので、着飾ってフロリーヌの所に行き、結婚したとか優しいとか大嘘をついてみせます。

 

父王さまには、フロリーヌを塔から出さないように釘を刺すのですが…。

 

王さま「万事、よきにはからえ~(思考放棄)」

 

多分この父王は、最初の奥さんが亡くなった時に壁に頭をぶっつけて死んでた方が良かったでしょうね。


結論:戦犯は壁に頭をぶつけて死なないように配慮した部下

 

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

  

 

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オーノワ夫人「青い鳥」1 バレエ「ブルー・バード」の元ネタ

オーノワ夫人「青い鳥」2 フロリーヌ姫=フロリナ王女

オーノワ夫人「青い鳥」3 バレエ「ブルー・バード」の衣装の羽

 

 

 

青い鳥とフロリーヌ姫(フロリナ王女)は、ここでお互いを見つけて、この牢屋で逢瀬を重ねます。


「ブルーバード」グランパ・ド・ドゥの内容は、おそらくこの部分だと思われます。

やっと、バレエの内容になってきました。

 

「でも、あなたはどなた、かわいい小鳥さん」と、フロリーヌは羽をやさしくなでながら、ききました。
「かわいい(シャルマン)とおっしゃったではありませんか。それがわたしの名前です」

 

これはいかにもしゃれてるなあ~と思いました。

多分、王さまの名前「シャルマン」はこの台詞を言わせたいがためにつけられたんじゃないかという気がします。

 

この青い鳥なのですが、フロリーヌが好きなあまり、ものや宝石を必死に貢ぎまくります。
やっぱり今も昔も、推しに対してやろうとるすことは同じみたいです。

 

・ダイヤの耳飾り
・エメラルドの腕輪(一つの大きなエメラルドを切子にして真ん中に穴をあけ、手と腕が通るようにしたもの)
・真珠玉にはめこんだ小さな懐中時計

 

どうやって入手するのかというと、鳥なので自分の国に飛んで行って部屋に忍び込み、持ち去るのです。

フロリーヌも、実にうまいことを言いやがります。 

「せっかく時計をくださっても、役にたちませんわ。あなたがいらっしゃらないときは、早く時がたってくれればよいと思いますし。ごいっしょにお話ししていれば、まるで夢のようにすぎてしまいますもの。どちらにしても、時計があれば、かえって苦労がましますわ」

 

それで、青い鳥は、あなたのやさしい心を傷つけましたねとか何とか...。
フロリーヌは、そんな、あなたが思ってくださることがいっそうわかりましたわとか何とか...。

 

何かこんな風な、いちゃいちゃした会話を交わしながらも、青い鳥はフロリナ王女に貢ぎつづけます。

 

真珠の首飾り、みごとな細工の指輪、ダイヤのくさり、ヘヤ・ピン。花のいろどりに似せて宝石でつくった花たば、おもしろい本、まるい浮きぼり細工。

 

「おもしろい本」てのがあるのに注目しました。

あらゆる面で気を使っています。

 

 

さて、ふたりがいちゃいちゃしている間に、王妃は必死でトリュイトンヌの嫁入り先を探しますが、どこからも断られてしまいます。

 

断る方もよくないので、「フロリーヌならいいけど」、と一言付け加えるので、二人はかんかんに腹を立て、謀反の疑いをかけて(=八つ当たりして)やろうと示し合わせて塔にやってきました。

 

牢の中のフロリーヌは、宝石で飾り立て、香まで焚いている有様なので、二人はびっくりします。

(ここはかなり長く、色々あるのですけど、中略)

結局、見張り番を置かれてしまい、フロリーヌと青い鳥はなかなか会えなくなってしまいます。

 

眠ったすきに、フロリーヌは急いで窓を開け放ち、呼びかけます。
ちょっとユーモラスです。

 

青い鳥さん、空の色、
わたしのところへ、はよおいで

これは、フロリーヌのことばどおりで、歌にするため変えたりしたところは一字もありません。

 

「一字もありません」念押しの一言によって、いっそうこの呼びかけが際立ちます。

 

「はよおいで」は、他に何とかならなかったのかなあと思いますが、この本は、そういう違和感よりも、いわゆる575の「5」に当てはまるかどうか、の方を重視しているみたいです。

 

このよびかけを何度も行い、また、逢瀬を重ねるのですが、王妃の悪だくみで青い鳥は、ひどいけがをさせられてしまいました。
(糸杉の木立に、「剣や包丁やかみそりや短刀をゆわえつけておいた」ということになってます)

 

昔の本は日本のも海外のもですけど、割と、小道具をたくさん重ねて表現することが多いです。
とても楽しいので、こういうのは積極的に現代の児童書にも取り入れてもらいたいものです。

特に子供向けだと、語彙力が増えることにもなるんじゃないでしょうか?(無理矢理感)

 

 

全身傷だらけになってしまった青い鳥。
ここで、「シャルマン王の友達の魔法使い」の登場です。
 

あの空とぶかえる車がどうなったのかという所まで、ちゃんと伏線回収してあります。
乗り手のないからのまま、魔法使いの所に戻ってきたのです。

それで、何かあったに違いないと思った魔法使い、すでに地球をくまなく8回も探していました。

 

魔法使いに発見され、看護されたシャルマン王、自分を裏切ってかみそりをゆわえておいたのがフロリーヌだと思い込んでいます。
はて...なぜ?
とまあ、それは良いとして、魔法使いに保護されている間に、フロリーヌの方には重大な転機が訪れていました。

 

父君の王さまが亡くなったのです。

 

あの情けないアホンダラの思考停止王がです。
悪女の手練手管にやられて、奧さんのことはコロッと忘れるわ、娘のことは放置するわ…。

 

「青い鳥 2」でも書きましたが、民衆は蜂起して、王妃とトリュイトンヌにおそいかかりました。

 

ここは割とすごい展開です。

 

これまで国のひとびとは、トリュイトンヌ親子が、王さまの寵愛をほしいままにして、かってなふるまいをしているのを、こころよく思ってはいませんでしたから、たちまち、むほんを起して御殿におしかけ、フロリーヌ姫を返せ、フロリーヌ姫こそ位をおつぎになるおかただと叫びました。腹をたてた妃は、高飛車に出ておさえつけようと考え、御殿のバルコンにすがたをあらわし、ひとびとに向かっておどし文句を並べましたが、かえってさわぎをますます大きくし、ついにひとびとは王妃の居間の戸をおしやぶってなだれこみ、部屋をさんざんあらしたあげく、王妃を石でなぐりころしてしまいました。

 

すごい幕引きの仕方です。

 

ありそうなだけに、なまなましいです。
これは、「まっかに焼けた鉄の靴をはいて踊らされる」という、白雪姫のラストよりも、もっと怖いです。

 

トリュイトンヌは、スーシオの所に逃げて無事でした。

 

普通、継母がいなくなったならば力も半減して、何とかなりそうなものなのですが、トリュイトンヌにはまだ、スーシオという強力な後ろ盾がいます。

この革命が起きて、フロリーヌが女王になった、ここまででちょうどお話は半分です。

 

恋愛ものとしては、邪魔が入り、ラブラブの所があり、裏切りだと思い込み、実に波乱万丈です。

 

 

面白いのが、魔女や魔法使いの関係性です。
魔法使いは、スーシオの所に話をつけに行くのですが、お互いに顔見知りであることが語られます。

 

魔法使いと魔女とは似たりよったりのもので、もう五六百年もの顔なじみですし、この、長い年月のあいだ、よいことにせよ悪いことにせよ、いっしょになって、いくたびしごとをしたかしれないなかでした。

 

この設定は面白いなあ。
現代のラノベなどにも転用できそうです。

 

昔話は設定の宝庫ですので、お話を書こうと志す人は、どんな媒体であっても、たくさん参考にすべきところがありますから、そういう点でも、ラノベ作家勢のかたがたにも、ぜひ読んでもらいたい所です。
「青い鳥」はあらゆる面から面白いです。

 

「容貌をあげつらうのはよくない」という忖度をしていない時代に作られたものなので、そういう面からも新鮮な印象を得る所があります。

 

 

魔法使いと魔女は話し合いをして、何とか、執行猶予つきの仮釈放まで話をこぎつけました。
ここからは、フロリーヌが頑張る番です。

 

もう、自由の身になっていますので、身なりを変えて旅をして、シャルマン王の国まで行き、シャルマン王が何としても結婚するまいと頑張って日にちをのばしている間に…。


好きな人を取り返す!

 

という展開です。
(内容としては、鉢かつぎ姫系です)

  

 

 

つづきます。

 

whichbook.hatenablog.com

 

 

 

これで興味を持った方は、ぜひ図書館で探してみてください。
国立国会図書館に所蔵されているのは確認ずみです。

iss.ndl.go.jp

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

  

「 青い鳥」はないのですが、オーノワ夫人の「美女と野獣」です。

 

美女と野獣 (ワンス・アポンナ・タイム・シリーズ)
ドーノワ夫人 (著), エティエンヌ・ドレセール (イラスト), 石川 康弘 (翻訳)

そまつな服を着て、このうえなくみじめなくらしをつづけながら、娘たちはいつも、むかしのぜいたくで楽しかった生活をなつかしんでいました。ただ末娘だけは、明るく、強く、生きようとしていました。彼女は、父親がはじめて不幸に見舞われたとき、だれよりもなぎけ悲しみました。けれども、もちまえの快活さを取りもどすと、つらい生活にたえて、仕事に取りかかって、父親や兄さんたちをできるだけなぐさめようとしたり、姉さんたちの気持ちが、歌やダンスでまぎれるようにつとめるのでした。ボローニャ・ブックフェア特別賞受賞のシリーズ。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

白いねこ
オーノワ夫人 (著), こみね ゆら (著)

「1年後のこの時刻にこの世でいちばんかわいい犬を探して来た者にこの国を与える」 王の言葉に3人の王子は旅に出ます。17世紀フランスの、話ができる白い猫の繰り広げる、不思議で華麗な世界をのぞいてみて下さい。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

こちらのオーノワ夫人の「青い鳥」とはまったく関係のないメーテルリンクの「青い鳥」ですが、せっかくなのでリンクを置いておくことにしました。

 

青い鳥
モーリス メーテルリンク (著), 大社 玲子 (イラスト), 末松 氷海子 (翻訳)

貧しいきこりの子どもチルチルとミチルは、「幸福」の象徴である「青い鳥」をさがして、思い出の国や夜の御殿、未来の国などを旅します.ノーベル賞作家による、有名な戯曲.新訳.

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

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