~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

山室静氏編「世界昔話全集」(2)ドイツ・スイス編

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

新編 世界むかし話集(2)ドイツ・スイス編
山室静 (編集) 形式: Kindle版

これまで家庭で語られていただけの昔話が、今日のように文化的宝と認められるようになったのは、グリム兄弟の『家庭と子供のための童話集』の刊行によるところが大きい。
本書は「ヘンゼルとグレーテル」「白雪姫」などのグリム童話を中心に、オーストリア、スイス、オランダ諸国の昔話を多数収める。
<ドイツ> カエルの王子/ヘンゼルとグレーテル/オオカミと七ひきの子ヤギ/いばら姫/他21編
<オーストリア> 永遠の国へ行った花婿/ハシバミの枝/他3編
<スイス> 三つの言葉/ローツェ氷河はどうしてできたか/かわいい小鳥/他5編
<オランダ> スタフォレンの奥方/飛びゆくオランダ人/他3編

 

 

以前、山室静氏編集の昔話集を紹介したことがありました。

whichbook.hatenablog.com

 

そのままにしていたのですが、続きを紹介したいです。
全部で11編あります。
まさに世界の昔話です。

 

これは、(前にも書きましたが)わたしは三冊のものすごく分厚い、広辞苑か!?というような本で持っていました。
みどり、あか、青のパステルな信号機カラーで、世界の昔話のあれこれがどれをとってもめくっても面白かったです。

 

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(青は今、妹子がどこかに持って行ってしまい、行方不明です)

 

世界の昔話に触れると、世界に興味が広がりますので、いまの子どもたちにも超おすすめです。

 

というわけで、イギリス編に続き、ドイツ・スイス編です。

 

この本の真骨頂は、あまり知られていなさそうなアフリカや南アメリカの神話にあるのですがドイツはとりあえず、ものすご~~~く定番です。

 

定番なのですけど、とても「お話」としてしっかりしています。

 

短く簡単にしすぎていることもなく、きっちりと語っていますが、子供向けの昔語りとてもなじみやすい、平易な文章です。

 

また、残酷な部分も隠していません。
しかし、とてもさらっと語っています。

バランスがすばらしいです。


グリムだけでなく、あちこちからお話を集めていますので、まったく聞いたことないようなお話も混じっています。

 

 

 

ドイツ

 

 カエルの王子 (グリム。有名なカエルとお姫さまの話。もちろん壁に投げつけられます。ハインリッヒも出ます)
 ヘンゼルとグレーテル (グリム。ちゃんと実母になってます。きちんとした長編です)
 オオカミと七ひきの子ヤギ (グリム。オオカミは石をつめておぼれ死ぬパターンです)
 いばら姫 (基本のキですが、グリム初犯本版からとのことです)
 白雪姫 (グリム。かなりの長編です。継母は焼けた靴をはかされます)
 お爺さんと孫 (グリム。短編教訓もの。介護されてるご老人を大切に。)
 ガチョウ番の少女 (グリム。長編です。物語がすごくしっかりしています。からくりを見破るのは父親の王様です。ファラダ…。)
 ワラと炭と豆 (グリム。短編、なぜ豆に縫い目がついているかの因果譚)
 しあわせ者のハンス (グリム。ドイツ版わらしべ長者ですが長者にはなりません。長編です)
 人間の寿命 (グリム。短編。人間の一生の因果譚です。欲をかいたのが間違い)
 ヒキガエルの話 (グリム。超短編が二編です。不思議なお話です。意地悪の因果応報?)
 星の金貨 (貧乏なのに、持っているものはすべてを来る人全てに与え続けた少女の話です。星が降ってくる所がすてきです)
 カブラ (半分は舌切雀、半分は機転でピンチを乗り越えるまで)
 三人の鉱夫 (ここからは「グリム伝説集」で「グリム童話集」ではないようです。ボヘミアの鉱山に閉じ込められた鉱夫の不思議なお話です)
 重たい子供 (超短編、グリム伝説集、スイスのクールに行く途中、など詳細です。不思議な言い伝えを書き留めたもの)
 巨人のおもちゃ (グリム伝説集、巨人が主人公です。人間をおもちゃにして持って帰りましたがお父さんに怒られました)
 枝でぶたれた妖精の子 (グリム伝説集、ブレスラウの伝説です。取替えっこされた子を、ハシバミの枝でぶったたき、妖精が慌てます)
 魔法の木 (ここからはグリムではない昔話です。高い木に登って不思議な冒険をします。カラスの魔法使いが出たり、12人に謎を出して解けなかった11人が悪魔の手に落ちたり、若干、クラバートを思わせます。ラストが結構な衝撃です。めでたしめでたしではありません。)
 ジーベンシェーン (鉢かつぎ姫パターンの長編です。世界中の昔話には、シンデレラも多いですが、鉢かつぎ系も多いです)
 風琴ひきの老人 (ある娘さんをどうしてもお嫁にもらいたい息子のために死んでるお父さんが奮闘します)
 ウサギ飼いの少年 (ブタ飼いの少年がとんちをきかせて、約束を守らない王様をとっちめ、お姫様をもらいます。とても笑えます。縦横十文字…)
 天国へはいった小使いさん (超短話で、風刺を込めた作品です。ブドウの仲買人のひとことで村会議員はみな天国を飛び出します)
 ウィデワウ (けちんぼの水車屋を若者が魔法の力をかりてこらしめます。長編で面白いです。ウィデワウ、ワウワウ!)
 歌をうたう海の夫人 (海にさらわれた娘を、お母さんが根性で取り戻します)
 墓掘り人足 (リップヴァンウィンクルもの。あの世めぐりはダンテの神曲っぽさもあります。教訓をふくんだお話です)

 

 

オーストリア

 

 永遠の国へ行った花婿 (これも死人に導かれてのあの世めぐりです)
 ハシバミの枝 (イエスさまのお母さん<マリアと書いてません>が、マムシから逃げてハシバミの枝に助けられます。超短編
 若いオオカミ (貧しい者をあざ笑った裕福なおくさんは、オオカミを産んでしまいます。引きこもっていたオオカミはある日突然、結婚したいと言い出します。長編)
 わすれな草 (忘れな草の名前の因果譚ですが、ななめ上というかそのまんまです)
 一クロイツァーが百倍に (教会の前の格言を真に受けた少年が、神様を探すたびに出かけます。求道とかでなく文字通りです。旅の途中で神様へのたくさんの質問を受け付けます)

 

 

スイス

 

 三つの言葉 (動物の言葉を覚えて帰ってきた息子は父親に勘当されますが、旅の途中でその特殊技能をいかして偉い地位につくこととなります。長編です)
 ローツェ氷河はどうしてできたか (ローツェ氷河の起源譚です。清らかな娘さんが、手で一つ一つ氷を置いていきます。まじかよ。わりと長いです)
 かわいい小鳥 (美人の娘をねたむお母さん、追い出されて12人の荒くれ者たちの家に...あれ?どこかで聞いたような...。長編です。切ないです。女の子の名前はセラフィヌ、お母さんは実母です)
 小人の王子 (小人の王子さまが、人間の女の子エバに恋してあれこれ頑張りますが、これはフラれて終わる珍しいパターンです。長編)
 白ばらちゃんとばら赤ちゃん (白ばらと赤ばらではないです。ばら赤です。仲良しの二人はノロジカとお友達になり、あやしい小人の誘いを断ります。改めて読むと白ばらちゃんの方がモテてます。中編です)
 二人の友 (たぶんこの世ならぬ父親をもった二人の従兄弟がめぐる、友情と冒険の物語です。産まれた事情が神秘的です。長編)
 夜の動物をからかうな (冗談で何気なく言ったことから、大変なことに...。わりと短編です)
 三人の兵隊さんと医者 (三人の兵隊が冗談で外科手術を受けますが、それぞれ片腕と心臓と目を間違いで動物のものと取り替えられて騒動が置きます)

 

オランダ

 

 スタフォレンの奥方 (傲慢で美しいお金持ちの未亡人、スタフォレンの奥方が、その傲慢さの罰を受けることになります)
 飛びゆくオランダ人 (オペラにもなっている有名なさまよえるオランダ人、幽霊船の原型です。「なぜ幽霊船になったか」のお話で、オペラにおける救い主のゼンタは出てきません)
 チーズをもっともっとほしがった少年 (クロース少年の災難な一日。出てくるさまざまなチーズの種類に思わず夢中になります。農家の食卓事情も詳細です)
 死んだ奥さん (赤ちゃんと夫を残して亡くなった奥さんが、聖母の恵みで夫を手伝いに現れます。やさしいお話です。短編)
 カタリナ姫 (男装の麗人ものです。何となくヴェニスの商人思わせる感じもあります)

 

 

私がむかし特別に好きで、いつまでも覚えていたのは、オランダの「チーズをもっともっとほしがった少年」です。

とにかくチーズの描写がすごいです。
ありとあらゆるチーズの山が…(よだれ)

 

こうしてみると、昔から料理の所にはかなり注目していたのだなと自分を振り返ります(…)。

 

やはりグルメの話題は老若男女問わず、共通の関心事項です! 

 

「ウサギ飼いの少年」「ウィデワウ」も好きで、子どもたちも大好きな、とても笑えるお話です。
読み聞かせているときに、せがまれることもたびたびです。

 

 

山室静さんのこの昔話集のすばらしいところは、たとえば今回はグリム中心でほぼよく知られた物語が多いのですが、それらのどれも、しっかりと細部まできちんと訳され、紹介されているところです。

 

カエルのお話でも、ちゃんとハインリッヒ氏も入っています。

(ハインリッヒ氏とは何ぞ?と思われた方はぜひお確かめください)

 

あとがきには、山室静さんご自身が、出展を詳しく書き記しています。
グリムの初稿版では白雪姫の継母は実母だったこと、お兄さんが集めた伝説集は、集めた物語にあまり手を入れることをしなかったので、語り口が粗削りであること。

 

グリム以外では、どんな所からお話を集めてきたのかなど、とても興味深いので、ぜひみていただきたいと思います。

 

カタリナ姫は、たいそう有名な伝説だそうで、わたしはシェイクスピアを連想しましたが、山室静氏は、ヴォルテールカンディードを連想されています。
(聞いたことない作品なので、チェックしてみたいと思います)

 

 

ドイツ・スイス編は、敬虔なキリスト教の背景のある信仰心の深いお話が多いです。
「子どものために、人としての倫理を教える」のにとてもよいです。

 

仏教説話なども、本来、そのような意味があったはず…。
昔話を子どもたちにもう一度!

 

かと思えば、教訓など含まない、本当に昔ながら語り継がれてきたお話っぽいものがあったり、 とんちをきかせてうまく乗り切ったりと、非常に多種多彩です。

 

 

 

新編 世界むかし話集 (全11巻)
Kindle版 山室静 (Editor)

 

 

 

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