閑話 松谷みよ子さんのお話のすごさ
閑話です。
今日はお休みを取っていました。
いやぁ~。お休みって本当にいいものですね!
ダラダラとニュースを見ていると、こんな記事が…
おめでとうございます、松谷みよ子さん。
ブックスタートなどで配られるので、多いのも納得なのですが、それでも、ブックスタートとして配るのに最もふさわしい本だと思います。
ニュースのコメントまで目を通していると、
絵が怖い。子供が怖がる。ハマらなかった。
などの意見もけっこう多くみられました。
このような意見は貴重です。
子どもにも好みがある、というのを肝に銘じないといけないです。
あと、「アンチがいるのはメジャーな証拠」とよく言われますが、これもその通りだと思います。
それだけ流通が多く、有名な本ということですね!
「あかちゃんがほんとうに笑うんです。」1967年、発売当初より多くの読者からいただくうれしい声。「あかちゃんだからこそ美しい日本語と最高の絵を」の想いから、日本初の本格的なあかちゃん絵本として誕生して半世紀、あかちゃんがはじめて出会う一冊として、世代を越えて読みつがれています。いないいない、ばあ。にゃあにゃが、くまちゃんが、ほらね、いないいない…。 母と子の伝承あそびをはじめて絵本の形に再創造。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
先日、あと一冊借りられる、という時に松谷みよ子全集を借りました。
どれにしようかと迷って、読んでいなさそうな
「黒い蝶」というのを選びました。
「松谷みよ子全集2」です。
(こちらのリンクは古書です)
お日さまがお月さまに語った下界のかなしいできごと。訓練中の立入禁止区域に砲弾の破片をひろいにいった1人の少年の命を1発の銃弾がうばった、と……。戦争への怒りをこめた「黒い蝶」ほか、初期の作品10編を収録。赤い鳥文学賞特別賞受賞。
入っているのは
黒い蝶
花びら
おふろやさんへいく道
こけしの歌
にんじんさんは、みそっかす
黒いきんぎょと赤いそり
赤ちゃんのおへや
夜のいちご
朝鮮の子
うさぎのてぶくろ
はと
でした。
「黒い蝶」をまず読んでみて、ほかをぱらぱらとめくってみました。
この全集の2巻は、反戦のお話が多く入っている巻だったんだな~、と思いました。
最近、戦争は悲惨だ、と描いている児童書は古びているとする空気が漂っていて、積極的に読ませ、紹介するのをためらいます。
あまんきみこさんの、「ちいちゃんのかげおくり」のような超名作をのぞいて、すごく積極的に手に取ることをしませんでした。
「一つの花」「ビルマの竪琴」などは家にあるけれど…。
子どもたちも読んでくれてはいるけれど…。
それ「ばかり」すすめることも、戦後の敗戦の嫌気による、過剰な自虐思想と思われがちで、思い返してみれば自分が読んで来た作品の中にも、ワンパターンと言われても仕方ないかと思うものもあり、大切なのに、伝えなければならないのに…と思いながら、思いながら、迷いながらいました。
確かに、戦争の反省を描いてはいても、「どうやったら防げるか」、という未来の話は書いていないかもしれない。
しかしそんなの、人間にとっては永遠の命題かもしれない。
そして、「花びら」という作品にくぎ付けになりました。
◇
お医者さまに行ったサンコという女性は、先生に告げます。
「あの──ときどき、人間の顔が人間にみえなくなる病気って、ありますかしら。」
お医者さまはふかくうなずきました。かわいそうに──お医者さまにはなにもかもわかったのです。それは、目が赤ちゃんのように、そう、目の白いところがうっすりと青いほどすんでいる目をもっている人ほどかかりやすい病気だったのです。
しばらくだまりこんでいたお医者さまは、やがてやさしくいいました。
「あなたばかりじゃない。わたしだって、その病気にかかっているのですよ。いいえ、この病気は日本じゅうに、世界じゅうにひろまっている病気なのです。でも、きっとなおりますよ、きっとなおりますよ、あなたがやさしさとつよさをうしなわないかぎり、きっとなおりますよ。」
この作品、明確に「戦争のせいだ」と書いてないのです。
言わなくてもわかるからだとは思うのですが。
マスクをかけ、顔もわからなくなっている(いまの)人々…。
蔓延する病気…。
どきっとしました。
話は前後するのですが、サンコは、物資が不足する中、買い出しに出る人で満員になっている電車の中にいました。
それはいつかの日、買い出しにいったかえりでした。かえりの電車の中で、赤ちゃんがひいひいとたえまなくなきつづけました。重い荷物を肩にくいこませ、ちぎれそうな指に荷物をささえたまま、やっと息をしている人たちは、赤ちゃんのひいひいなくのをにくみました。
だれだ、こんなところに赤んぼうをつれてくるやつは。
まっかに上気した顔で、にくにくしくこんなことまでいいました。
まったく気をつけてほしいね、そうじゃなくったって気がへんになりそうなんだから。
がさがさかすれた声でいう人もいました。そして赤ちゃんが、ひいと息をのむようにして、やがてだまったとき、みんながせいせいした顔をしました。おぶっているおかあさんだって、ほっとした顔をしたのです。
こ、これは…。
これって、全く今のことじゃないか。
そのまんまじゃん。
びっくりするぐらい、反戦とか戦争反対とか、自虐とか関係なく、ただそのままの空気を描いていて、何一つ変わってない。
降りてみたらその赤ちゃんは死んでいました。
栄養失調か、押しつぶされたのか、という直接原因よりも「なきごえをにくむ空気に殺された」という感じがします。
一部始終見ていたサンコは、人の顔がみんなけだものに見える病気にかかってしまって病院に来たのでした。
◇
もうひとつ注目したのが「こけしの歌」です。
こけしが主人公で、見聞きしたことを話してきかせます。
こけしの持主である少女に、(恋人であるらしき)青年が、ローランサンの話をしています。
マリー=ローランサンは、白い小箱を持っていた。
話を聞いているのは、ローランサンの絵にそっくりな少女です。
(それはそれは、ものすごく可愛いだろうな)
「マリー=ローランサンはフランスの絵かきでした。マリーはひとりで絵をかいていました。そのころフランスの絵かきたちのあいだでは、野獣派だとか、立体派だとか、ひっくりかえしたようなさわぎでしたから、マリーがじぶんのすきなもも色と水色と白の少女を描いていこうとすると、みんながわるくちをいいました。そこでマリーは、白い小箱の中にはいって耳をおさえ、そっとじぶんのすきな絵をかいていました。」
子どもたちはみんな、絵を描くのが大好きなのでわかりますけど、絵のことをあれこれ批評して、あーだーこーだわるくちを言うのは、子どもたちの間ですらあるあるです。
(SNS界を見ていても、あるあるのような気がします)
青年は、ローランサンや、またヴィヤール、ボナールといった画家の話を引き合いにだして、外に出るべきだ、箱に閉じこもっていてはいけない、手も足もないこけしになって欲しくない、窓を開き、太陽で心をいっぱいにしてほしい、と言います。
少女は、それはそれで理解を示しながら、こけしも好きだと言ってこけしを買って帰るのですが、その夜にこけしは涙します。
松谷みよ子さんのお話は、石も空も花も動物たちも、みんな聞く耳を持っていて、声を持っていて、あらゆるものが語り掛けるなあ、と思います。
こけしは、自分がある家のさくらの木だった時に見たものを語ります。
おゆうさんという主婦の女性です。
朝はうちじゅうでいちばん早く起き、夜はいちばんおそくねた。暗いうちから起きてはしたくをしたごはんも、いっぺんもすきによそって食べたことはない。
のらに出れば男とおなじに働き、ひとあし先にかえってひるめしのしたく、みんながおひるねしているあいだは、せんたくしたり、お菜もあらわねばならなかった。
あああ…。
それって今の女性たちだ。
女性も働かないと、子供産まないと、経済が、女性の力が、何で女ばっかり全部するのって言ってる、女性たちそのままだ。
びっくり、何一つ変わってないんだ。
このこけしのお話も、青い空と虹を願う所で終わります。
元気をお出し 生きているんだよ
ガラスにも虹はうつるんだよ
戦争のお話のはずなのに、戦争に直接関係ない所で、もっと広義な意味で、人々が社会に追い詰められたときにどうなるか、その場の気配を、ものすごく的確に、これ以上ないほど的確に描写してくる。
ちょうど、お休みを取ったのも疲れていたからでしたし、仕事して洗濯して洗い物して買い物して食事作って掃除して、それでブログの記事を書く(笑)って、ちょっと無理くない!?と思っていた所に、グサッと刺さってきました。
そして、でありながら、あくまで人間愛をもって希望を忘れずにお話を〆ている松谷みよ子さんというのは、すごい人だなとしみじみ思った、おやすみの日でした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
元気でかわいくて、おしゃまな女の子モモちゃんには、子ねこのプーやコウちゃんという友だちがいます。モモちゃんは、夢の中でライオンと遊んだり、電車に乗って空を飛んだり、水ぼうそうになったりして、ママを心配させたりします。誕生から3歳になるまでのモモちゃんの日常生活を軽妙にスケッチした成長童話の名作シリーズ第1作。
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100万人のこどもたちに愛されてきた、日本でいちばんかしこい太郎のおはなし。松谷みよ子の傑作童話『龍の子太郎』の「絵本版」が今、美しくよみがえる。(「BOOK」データベースより)
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高原の山小屋に住んでいるノンちゃんは、子ギツネのコンとしりあいになり、森の動物たちの<ダケカンバの祭り>にもぐりこみます。
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