大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 2 最悪の敵トマト騎士
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ここは野菜とくだものたちの暮らす国。玉ねぎ一家の長男坊チポリーノが、無実の罪で牢屋に入れられてしまった父チポローネを救いだそうと大活躍。仲間たちと力をあわせて、国をおさめているわがままなレモン大公やトマト騎士とたたかいます。語りの名手ロダーリの書いた明るくゆかいな冒険物語を、歯切れのよい新訳で。
大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 1 えらそうにするのはあほだから
読んだら読んだで、面白くて続き、続き!と夢中になってしまいました。
トマト騎士とガチンコ対決したチポリーノですが、理由は、逮捕されたチポローネお父さんが「勉強しろ」と言ったからです。
「だって、ぼくは本をもってないし、本を買うお金だってないもの!」
「そんなことは、問題じゃない。ただ一つのもの、つまり悪者のことを勉強してごらん。だれかとてもいばっているひとに出会ったら、しっかりその男のことを研究してみるがいい」
悪者のことを研究しろと言われて、最初に会ったのがトマト騎士だったわけですが、このトマト騎士こそ、チポリーノの宿命のライバル、ラスボスです。
最悪の悪役、トマト騎士。
卑怯で、ずる賢くて、高圧的で、プライドが高くて、お育ちがよく、口がうまくて、恫喝と泣き言を使い分け、どことなく愛嬌があって、政治力は抜群です。
顔がちょっと、現存する有力政治家にとても似ている気がすると前から思っているのですけど気のせいでしょうか。
レモン大公は最高権力者ですがあほです。
ちょっと同情すべきところもありますが、サクランボ伯爵夫人たちもあんぽんたんです。
自分たちが生きているだけで常に誰かから何かを搾取して生活していることを知ろうともしない無神経さを持っています。
◇
あさてまず、トマト騎士が何をしでかしたのかというと、うらなりカボチャのおじいさんの家を取り上げようとしました。
この家、爪に火をともすようにして、一生の間に一枚一枚、レンガをためてせっかく作った犬小屋ほどの小さな小さな家なのです!
たった百八個のレンガをためるのに、どれほどの苦労を重ねたか…ユーモラスに語られてます。
どちらかというと、かなり笑えるエピソードなのですが、この苦労の産物を取り上げられるとなるとこれは、話が別です!
おとなとして読んだとき、ここに非常に複雑な感情をいだきました。
トマト騎士は、うらなりカボチャのおじいさんに退去を命じますが、この理由はサクランボ伯爵夫人の敷地内だからという理由です。
う~~~ん。
これは退去してもらうしかない…のかなあ…。
現代の法律に照らし合わせても…。
それとも借地権代を払わないといけないんだろうか。
トマト騎士は、大事に大事に一生をかけてためたレンガでつくった家をとりあげて、番犬を置こうとしてます。
どうやら、「番犬を置くのにちょうどいい小屋だぞ」と思ったのが先で、あれこれと難癖をつけて追っ払おうとしてるらしいです。
借地権代のかわりに差押をかける、と考えれば、ギリ理由がなくもないのかな?
こども六法読み直そうかしら…。
こいつの言うことは何から何まで全部間違ってる!お前が悪い!と言うことができない、何とももどかしい思いがあります。
うらなりカボチャのおじいさんにとっては、一生をかけてためた全財産です。
非道なことに間違いはありません!そんなことが正しくて良いはずがない!なのに…。
◇
とりあえずは、たまねぎの皮をむくことでトマト騎士を泣かして、チポリーノはこの敵を追い払いました。
しかしこの家は、ずっと争いの種になりつづけます。
トマト騎士、犬を連れて来て無理矢理に追い出す
☟
チポリーノが知恵をはたらかせ犬を排除
☟
みんなでおじいさんの家を隠す
☟
トマト騎士、村の住人たち全員逮捕。
こんなちっちゃい家ごとき、どうしてそんなに執着するのかよくわからなーい!
けど、何というか、行政や権力者というのは、隅々まで権威をいきわたらせるためなのか何なのかよくわかりませんが…。
そんなことよりもっとほかにたくさんしなきゃいけないことあるだろぉ!?
ということをほったらかして、本当にどーーーーでもいい、ちっちゃなこと、それも、弱い者から巻き上げるようなことに相当すうるようなことを
がんこに諦めずにいつまでも熱中したりしますよね。
まあ、信長が欲しがった松永久秀の平蜘蛛の釜とまではいきませんけど、何かとにかく、搾取することにばかり熱中しすぎてるのを見ること、よくあります。
なのでいっそうムカつくというか…。
野菜や果物の話なのですけど、理不尽さと絶妙さが鼻についてしかたあありません。
やっぱり似ている…。
◇
この、住民たちがとばっちりをくらって全員逮捕されたあたりで出て来るのが…、
チポリーノの生涯の盟友であり参謀、孔明であり張良であり黒田官兵衛であるサクラン坊やです!
続きます。
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