大人が読む児童書「チム・ラビットのぼうけん」 2 みずからの意志で稲葉の白うさぎとなったチム・ラビットの悲劇
大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。
この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
子うさぎのチムの成長を温かくとらえた珠玉の童話を、名訳と流麗なさし絵でおくる。
食べ物の描写が豊富です。
チーズケーキなどがひらがななのがとても可愛らしいです。
ちーずけーき。
このうさぎの名前はチムですが、チム・ラビットのチムという名前以外は、本来ならカタカナを使うべきところも、ほぼひらがなを使っています。
カタカナもあやふやなぐらいの年代の子供が読みやすく、漢字・ひらがな・カタカナを、楽しく覚えていってもらおうという配慮が非常に良く見える本です。
楽しく覚えていってもらうのに最適なのはやはり、
「どうなるんだ?」
「続きが読みたい!」
という気持ちです。
◇
さて、風が怖くて家にとんで帰ってきた小さなチム。
他にも、いろんなものが怖いです。
外でびっくりしては逃げ帰ってきて、お母さんうさぎに訴えます。
自然現象に一つひとつ驚いています。
新鮮です。
最初は風、それから雹を怖がり、雷にびっくりします。
お母さんはそのたびに、一つ一つどうすればいいのか冷静かつ的確に教えてくれます。(そして「やきたての ぱん」のような何かいいものをくれます)
しかし、最後に会ったのはとてもすてきな動物でした。
チムも仲良くなろうかとそっちにかけ寄ろうとしましたが、何かがチムを引き止めます。
これまでチムが恐れていた、風をはじめとして、そこらの木も揺れて「にげろう!」「しいっ!」と危険を知らせ、いばらのやぶも「はしれえ!と叫びます。
この、チムが遊びたかった、「白くてやさしい目をしたどうぶつ」
何とこれは、いぬでした。
人間にとってはかわくても、(ねこも)うさぎにとっては大変危険な動物です。
この年代では、外に一人で出ることはまずないでしょうが、いつかはひとりで出なければならない子どもたち。
外にあるさまざまな危険を知らせ、注意深くすることを教えます。
そして、見ためのよい、感じのよいものが、実は大変な危険をはらんでいることもある……。
これは、ふつうに世の中の真理であるような気がします。
◇
何度か、年長~小学校低学年の年代のお子さんに、この本をプレゼントとして送ったことがあります。
職場でのお別れや、お祝いなどの時に。
そしてだいたい、子どもさんがたが、みんな口をそろえて覚えていると言うのが二話目のはさみのお話です。
こいつは本当に強烈です。
この「チム・ラビット」のお話が、強烈に記憶に残るのも、このパンチのきいた「はさみのお話」の影響が強いからであるはずです。
チムは草刈り場で忘れられたハサミを見つけました。
このお話、よく人が色んなものを忘れていってます。
そして、その忘れて行ったもの、帽子や、手袋や、上着などを、うさぎたちが持って帰って使っています。
今回は、はさみ。
チムははさみを見たことがないので、用心深くにおいをかいだり、ひげで触ったりした挙句、うちに持って帰ります。
おとうさんのラビットさんがとても喜んで、いいものを持って帰ってきたとチムを褒めるのですが、おとうさんは出かける前に用心深く、しっかりと手の届かない場所に置きました。
ところが!
まあ、いたずら坊主のやりそうなことですが、チムは親がいなくなるとさっそくこしかけにのり、はさみをとってしまいました。
ろくなことになる予感がしません。
本が面白くなるとき、たいてい「嫌な予感しかしない」という感じがありますが、こいつは特にその予感が強いです。
何しろ、はさみです。
お父さんが「なんでもきれる」と言ったので、チムはさっそくおためしです。
「なんでも」切りはじめました。
まず はじめに、ひつじの毛で できた もうふを、ちょきちょき、小さくきりました。それから、木のはで できた、てーぶるかけを、じょきじょき こまかく きりました。つぎには、おかあさんが ほそい くものいとで ししゅうをした 青いかーてんを、ほそい ひもみたいに きりました。それから、戸のうちがわに かけてある 手ふきの たおるを、めちゃくちゃに しました。
Twitterにエッセイ漫画で載せたら、確実にバズってしまい、すっごい炎上しちゃうエピソードです。
お話のいいところは、こういう「エッセイ」のように、実際にあったことだと思うと非常識!危ない!どうしてひとりにしたの!というようなことを、まるで見てきたかのように体験できるところです。
やっぱり、こういう「えーっ!」という出来事は、メシマズ…メシウマ…い、いや、何でもありません。
次が問題です。
それから こんどは、じぶんの おけしょうに とりかかり、ひげが すこしも なくなるまで かりこみました。そしてさいごに、からだの 毛を かりはじめました。
「おけしょうにとりかかり」っていう訳がいいなあ!と思いました。
丸々の赤はだかになってしまったチム・ラビット。
自らの意志でサメに毛をむしられた因幡の白うさぎになってしまったという。
◇
帰ってきたお母さんはびっくり仰天です。
きみょうな 白い どうぶつが、はねて おどっているのを みると、ラビットおくさんは びっくりして、もうすこしで きぜつする ところでした。
体じゅう、サマーカットしてしまったうさぎを、お母さんうさぎも判別することができません。
「ぼくだよ、ぼくだよ」
と一生懸命訴えるチムに耳をかさず、外に出して扉を閉めてしまいました!
チムは、扉に鼻を押し付けてすすり泣きます。
妹子「まあ、そうなるよねっていう。かわいそうだけど」
わたし「あなたそういう感想でしたよね」
この本をプレゼントしたお友達の娘ちゃんは号泣したそうです。
「ねえ、なんで?かわいそう!入れてあげてよ~!」
兄助も毛布をかみしめてすすり泣いていました。
まあ、もちろん入れてもらえますので大丈夫です☆
お母さんうさぎは、床に落ちている毛を見てすべてを悟りました。
◇
散々怒られ、毛を失ったことで風邪までひいてしまったチム。
なさけない恰好になってしまったチムは、みずから借り落とした毛で、おとうさんにふわふわの上着を作ってもらいました。
子どもの心を完全にギュッとつかむ、心にくい作品です。
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「くまの子ウーフ」の物語は、1969年の刊行以来、小学校の教科書をはじめ、さまざまな形で読み継がれてきたロングセラーです。卵を割ると、必ず卵が出てくることに感心し、自分が何でできているか真剣に考えるウーフ。子どもたちはウーフとともに考え、発見の喜びに目を輝かせてきました。また、命のふしぎと生きることの本質をあざやかに描いた物語は、幅広い層の読者の共感を集めてきました。時代を経てますます輝きを増すウーフの世界をたっぷり味わえる「くまの子ウーフの童話集」を、コンパクトなサイズにリニューアルしてお届けします。
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ルース・スタイルス・ガネット (著),
ルース・クリスマン・ガネット (イラスト), 渡辺 茂男 (翻訳)
エルマー少年とりゅうの子の冒険物語3部作。ユーモアたっぷりのお話は、読むものの心を空想の世界に羽ばたかせながら、物語のリアリティーに引き込みます。幼年童話の最高峰として読みつがれているロングセラー。
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