大人が読む児童書「ちびっこカムのぼうけん」 1 家庭用ゲーム機が広まるよりもはるか前に
今日、ご紹介するのは児童書です。
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今日の一冊
カムは、湖のそばにたち、金のユビワを北にむかって、三ど大きくふりました。かあさんのびょうきをなおすイノチノクサをもとめて、火の山にすむ大オニ・ガムリイと対決するカム。リズム感あふれる文章でつづる、スケールの大きなファンタジー。(「BOOK」データベースより)
人気漫画、「ゴールデンカムイ」佳境に入っているとのこと。
ストーリーの面白さ、キャラの魅力もさることながら、アイヌ文化を丁寧に描写していることも特徴です。
しかし、こどもに読ませるにはちょっと…。
そうとうにエグい描写が多いですし、ヒグマは怖いし、猟奇的な人がたくさん出て来るので、どうなのかな~。
ある程度年齢層が高くなってから、自分で出会ってみる分にはいいけど、積極的には読ませたくないかな~、というとき…。
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子どもたちにアイヌ文化に触れてもらうには、児童書がいちばんです。
もしかすると、大人もこちらから入った方がとっつきやすく、世界に入りやすいのではないか?と思うほどすばらしい作品の数々です。
実は、昭和の児童書には、非常にアイヌのお話が多いのです。
多分、もっとも有名なのは萱野茂さんではないでしょうか。
ご自身がアイヌの出身である萱野茂さんは、たくさんのアイヌの伝承、物語を集め、本を書かれました。
名作、「オキクルミのぼうけん」は、挿し絵が斎藤 博之さんのすばらしい絵で彩られています。
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ですが、子どもたちへ北方民族のお話の入り口としてもっともとっつきやすいというか、名著を書かれたのは、神沢利子さんです。
今も教科書に採用され続けている「くまの子ウーフ」の作者です。
福岡のご出身のようなのですが、樺太で幼少期を過ごされたとのことで、アイヌのお話をたくさん描かれています。
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直接にアイヌのお話というわけではないのですが、「ちびっこカムのぼうけん」という、超名作があります。
カムという名前が、カムイから取られていることは明らかだなと前々から思っていました。
(イラストはどちらかというと、イヌイット系のようなイメージで描かれています)
でも、長じてから萱野さんの本や、他に神沢利子さんが描かれた児童書を通じて、このちびっこカムの世界は、アイヌの価値観、アイヌの視線を非常に多く取り入れているな、と感じるようになりました。
ファンタジー作品なので、この地上のどこの民族!という括りがないのですが、北の大地、北の海、その広大で豊かな自然の息吹を感じることができます。
民族が~というくくりがないことが、かえってこの作品の普遍性を高めています。
このお話は、わたしが幼年期~小学校低学年にかけて、まるで自分がその世界に入り込んだかのように感じて夢中になって読み、忘れがたい一冊です。
兄助も妹子も、どちらもこのお話は大好きです。
今も普通に売られているのがすごいです。
◇
久しぶりに開いてみました。
最初のページに、作者からの「はじめに」が書かれていました。
いつも元気な、イタズラッコのあなただって、しゅくだいができなかったり、友だちとケンカしたり、おまけにおかあさんにしかられたりして、なにもかもつまらない日だってありますよね。そんなあなたを思いうかべながらちびっこカムをうみだしました。まず、さいしょに、ページをぱらぱらめくってください。カムもトナカイも大グマも、紙の上から、おどりあがります。ほら、あなたのほっぺたがもうあかくなった!さ、カムといっしょにでかけましょう。
こんな文章、あったかな…?
いきなり、はじめて読むような気分です。
あんなに何度も何百回も繰り返し読み返したのに、この部分はまったく頭に入っていませんでした。
というか、もう開いたらすぐにカムの世界に入ってしまうので、外からの声など入る余地がなかった、と言った方がいいかもしれません。
今は、作者のこの子どもたちへの心をあたたかいな、と受け取ります。
◇
何と、次は挿し絵を書かれた山田三郎さんのコメントも載っていました。
ぼくは、このお話がとてもおもしろいので、いろいろのどうぶつ、めずらしい鳥などの、ゆかいなありさまを、べんきょうしながら、いっしょけんめいに、この本のなかにかきました。読んで、こころにうかんできたことを、そのままきみたちにつたえたいと思ってかいたのですから、この本のなかの絵は、ぼくのことばみたいなものです。きみたちも、ときどき思ったことを絵でかいてみませんか。できたら、ぼくにもおくってくださると、とてもうれしいですね。 山田三郎
この本のなかの絵は、ぼくのことばみたいなものです。
というのが、とても素敵だなあ!と思いました。
子供たちは絵が大好きで(漫画ですけど)一生懸命繰り返しくりかえし書いています。
その絵はすべて、子どもたちのことばみたいなものなんだろうな。
◇
さて、いよいよお話のはじまりです。
ずっと、北の北のほうのくにに、一年じゅう、まっ白な雪をいただいて、そびえたつ、大きな山がありました。
そのいただきから、巨人のはく、いきのように、もくもくと、けむりをふきあげ、くらい夜には、空までとどく、火のはしらが、とおい海からも、みえました。
冒頭がすばらしいです。
この山のてっぺんには、ガムリイという大男のオニが住んでいて、クジラをつまみあげては食っている。
そんな伝承めいたお話から入って、カムという男の子が住んでいました──となるのですが、このガムリイにご注目です。
こんな伝説がある地域なんですよ~的なにおいを醸し出しながら、あとでガッツリ関わってきますので、すべてにむだがありません。
神話のある世界で暮らしている、普通の男の子、がついに伝説にまで飛び込んで、縦横無尽に駆け回る、という楽しさです。
◇
・カムにはびょうきのおかあさんがいる。
・山で木を切っているとき、居眠りしているクマに出会い、ちっとも怖がらない。
・この力じまんの大クマは火の山に登る人をとおせんぼしている。
・火の山には大男ガムリイがいる。
・火の山には、どんな病気もなおす「イノチノクサ」がある。
・火の山に行くまでには、「大ワシの住む岩」「マモノのいる黒い湖」がある。
というわけで、RPGに慣れた現代の大きな少年少女たちにはもう、すぐにピンとくると思われるのですが、まさにRPGの王道であるかのような展開です。
それも、非常にすぐれたストーリー構成と、キャラ造形を持っています。
しかし、このお話はまだ、家庭用ゲーム機が登場するよりはるかに前、1961年に書かれた作品です。
(わたしが持っているのは、1977年版ですでに45版も出ています)
wikiの「コンピューターゲームの歴史」を見てもらえばお分かりかと思いますが、日本版本格的RPGが出るより前の作品です。
つづきます。
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「くまの子ウーフ」の物語は、1969年の刊行以来、小学校の教科書をはじめ、さまざまな形で読み継がれてきたロングセラーです。卵を割ると、必ず卵が出てくることに感心し、自分が何でできているか真剣に考えるウーフ。子どもたちはウーフとともに考え、発見の喜びに目を輝かせてきました。また、命のふしぎと生きることの本質をあざやかに描いた物語は、幅広い層の読者の共感を集めてきました。時代を経てますます輝きを増すウーフの世界をたっぷり味わえる「くまの子ウーフの童話集」を、コンパクトなサイズにリニューアルしてお届けします。
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オホーツク海に浮かぶ北の島にタランと呼ばれる湖がある。その湖底に沈む青い玉、それはモコトルの父祖が退治した大トドの片目だという。「わしはタランの湖の底、泥に埋もれし青い玉。わしをさがし、ひろいあげてまつれ。さすればやがて大地の水もひき、タランの村によき日がおとずれよう」その役目が、いまモコトルに命じられた。美しい白鳥の化身した娘と暮らすタランに、よみがえったトド神の魔の手が忍び寄る。少年少女に送る愛と甦りの物語。
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1931年夏、麻子の一家は、炭坑技師である父さんの赴任地、樺太に向かう。柳蘭の花咲く北の原野を汽車でゆられていったその先に、麻子を待っていたのは、きらきら光る川だった。北の自然と暮らしを描く回想の物語。
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村はずれに住んでいる狩りのへたな、貧しいアイヌ。でも、得意なことが一つだけありました。それは、ユカラを語ること。ある日、病気をまきちらす神・パヨカカムイが村にやってきて…。アイヌ民族の昔話を絵本化。
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海辺で鯨の肉を見つけたおおかみどん。家に持って帰る途中、子供にわけてとたのまれますがしらんぷり。北海道石狩に伝わるアイヌの民話。
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アイヌの人々の間で口伝えに語り継がれてきたウゥェペケレ(昔話)、20話。悪い根性を懲らす痛快な、よい生活の作法を教える温かな話の中に、人間と自然と神とが自在に交流し共生する世界のあり方を告げる。「ひとつぶのサッチポロ」「ひろった子ども」「へびのまゆげ」など、アイヌの世界で古くから語られてきた昔話を収録。短いストーリーの中に自然や神と共に生きる豊かな世界が表現されている。
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多くのアイヌ達が暮らす北海道沙流川。美しくのどかなアイヌの村里をついに見に出かけた竜の神カンナカムイの息子でしたが…。星づくりの神、月の神、太陽の神、雲づくりの神の下で豊かに生き生きとくらすアイヌの生活を描く。
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この世に人間が生まれたばかりの頃、アイヌに生活のすべてを教えてくれたのはオキクルミの神だった。アイヌ語で語られたウパシクマ(故事来歴)を題材にした勇壮な絵本。1975年刊の新装版。
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