今日の一冊「ろくべえまってろよ」 穴に落ちてしまったいぬを助けるために奮闘する子どもたち
今日、ご紹介するのは絵本です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
犬のろくべえが穴におちてしまった。なんとかしてろくべえを助けなきゃ!一年生の子どもたちがみんなで考え出した「めいあん」とは?
読み聞かせの定番なのですが、国語の教科書に入っていたんですね。
調べてみましたが、全国の教科書全部に入っているわけではないようでした。
子どもたちも大好きで、一度読んであげると忘れることがない作品です。
◇
長新太さんの絵が、ぴったりです。
このわんちゃんがろくべえです。
開くと、最初の中扉のページから台詞(?)があります。
きょゆーん わんわん
きょゆーん わんわん
ろくべえのなきごえです。
開いてみてわかるのですが、中表紙にはなきごえ。
最初のページには子どもたちの姿しかありません。
表紙にろくべえはいるのですが、皆には姿が見えないのです。
ろくべえが、あなに おちているのを、さいしょに みつけたのは、えいじくんです。
「まぬけ。」
と、かんちゃんが いいました。
ここから、あなに落ちたろくべえを助けようともちろんこのかんちゃんも含めて皆で奮闘するのですが、この「まぬけ」というセリフほど、あるあるある~!となる子どもの言葉はありません。
いきなり「たいへんだ!たすけよう!」が最初じゃないのです。
最初は
「ばか」
とか
「あほか」
と言うものです。
こういう所が、ああ、灰谷健次郎だな!と思うところです。
◇
だいたい、読み聞かせていると子どもたちも、どうやったらいいか必死で考え、口々にあれこれ言って来るので、教室はたいへんうるさくなります。
おちつけ。まず話を聞けよ
と言いたくなりますが、かわいいです。
次々読んでいくと、この集まってどうしようか考えているのが一年生の子であることが知られます。
・ロープをつけて下に降りていくのは一年生にはまだ無理
・高学年の子は、まだ学校
・日曜日ではないので、お父さんはいない。
希望が先細りになっていきます。
◇
てんであてにならないお母さんたちが集まってきました。
むりとか、男でなくちゃとか、降りていくなんて絶対ダメだとか、もう本当にあてになりません。
お母さんたちはリスクのことばかり考えて、挙句の果てに、穴の中にはガスがたまっていることがあるなどという、余計な不安をあおる情報だけを与えて帰ってしまいました。
◇
ろくべえは、まるくなって次第に静かになってしまいます。
歌をうたい、シャボン玉を飛ばして必死になる子どもたち…。
そこに現れた「ひまそうな人」。男性です!
こいつもてんで役にたたねえ!
お話の中の子どもたちも不満が溜まりますが、こうなると、教室の子どもたちの顔も憤怒です。
「サイッテー」
「何それ」
「は?意味なくね?」
とか罵倒を浴びせ、笑ってしまうほど真剣な顔をしています。
おとなって、何てばかなんだろう……。
そんな冷たい空気が漂います。
◇
皆が頭が痛くなるほ度考え、そこに最初に「まぬけ」と言ったかんちゃんが
「みすずちゃんとこのクッキーを、かごのなかにいれておろしたら」
というアイデアを思いつきました。
(クッキーは女の子のいぬです。)
・クッキーをかごに入れておろす
・クッキーはろくべえのこいびと
・ろくべえがかごに入る
・吊り上げる
という作戦です。
灰谷健次郎は、ここで決して急ぎません。
じっくり、ゆっくり、みなでかごとロープを用意して、結んで、クッキーを入れて…とひとつひとつ丁寧に描いています。
あーーーーー
クッキーも飛び降りてしまったあああああ!!
聞いている子どもたちの絶望の表情をお見せしたいぐらいです。
すすり泣いている子もいます。(いました)
最終的に、何とかなかったときの喜び。
この本に、明確な結論がなく「ロープをひきました」で終わっているところ。
最後の扉絵が、子どもたちがみんなでわんちゃん二匹を囲んでいるところであるのが、すばらしいです。
(しかし、実際に、ちゃんと助かったと書いてないことが納得いかない子どもたちに攻め寄せられて、本当に大丈夫なのかどうなのか、質問攻めにあったことがありました)
◇
絵本というよりも、作者の灰谷健次郎さんは、読みボラでも古参だったり、昔から知っている方は
「ああ…灰谷健次郎…ね、色々言われるけど、わたしこの本はとても好きよ!」
という言い方をされるときがあります。
どういう「色々言われる」なのかは、たぶんWikipediaでも見ていただければふわっと書いてるとは思うのですが、昔から思っていましたが、ほかの児童文学、児童書とは少し違う色合いを持った作家さんでした。
児童文学というのものは、子どもに読んでもらうことを前提としているため、どこかでやっぱり、何か配慮をしているものですが、そういうのがなくて、荒々しいほどなまの子どもの姿をぐっと掴み出してきたような描写をされる方です。
小中学校というのは、それこそ小さな社会の縮図とも言え、さまざまな家庭の子どもたちが一つに集まって過ごす場所です。
(そういうのを忌避するかたは、私立を検討したりすることもあるわけですが)
家庭環境もさまざま、事情もさまざまです。
そういう家庭環境から現れる、何気ない「差」を、灰谷健次郎はいっさい隠しません。
なので、それこそ臓腑をえぐるように鋭く突き刺さってくるときがあります。
この「ろくべえまってろよ」は、そのような「色」が比較的ありません。
ない代わりに、「子どもそのままのなまの姿を表現すること」はそのままに、鮮やかに日常のあるひとこまを見せてくれています。
名作です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
新任の小谷先生が受け持ったのは、学校では全くしゃべらない少年、鉄三。そんな中、ちょっと変わった転校生・みな子も加わって、もう大変! みんなで悩みながら、「大切なモノ」を見つけていく、感動の物語!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
犬のろくべえが穴におちてしまった。なんとかしてろくべえを助けなきゃ!一年生の子どもたちがみんなで考え出した「めいあん」とは?表題作「ろくべえ まってろよ」の他、天真爛漫な男の子・マコチンの生活を描いた「マコチン」、何でも同じになってしまうのが悩みのふたごの女の子の物語「ふたりはふたり」など、八編の童話を収録。子どもたちのみずみずしい感性がきらめく一冊。
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