~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「ヤマネコ号の冒険」 1 空想と現実が交差する瞬間

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

ヤマネコ号の冒険

アーサー・ランサム (著), 神宮 輝夫 (翻訳)

ツバメ号とアマゾン号の乗組員たちは、老水夫ピーター・ダックと知りあい、帆船ヤマネコ号で、イギリス海峡に船出しました。ところがピーター・ダックの宝をつけねらう海賊、ブラック・ジェイクがあらわれ、しつこく彼らを追いまわします。初めて味わう本格的な航海の喜び。熱帯の島で起きる思わぬ事件。海洋冒険物語。

 

 

 

「ヤマネコ号の冒険」は、アーサー・ランサムシリーズの第3作目です。

 

ツバメの谷からはじまって、「ヤマネコ号のぼうけん」をいちから読み返したくてたまらなく、やっと持ち出したのですが、シリーズものなこともあり、まずはランサム・サーガを説明していきます。

 

アーサー・ランサムのかきあげた12の物語。
検索するといつも「ランサム・サーガ」と出てきます。

 

サーガは、いかにも剣と冒険の旅とでも言うような、一大叙事詩、英雄の一生、みたいなイメージがあるのですが…(ありませんか?)、この12冊の物語は、ぜんぜん「英雄の叙事詩ではないです。

 

1.ツバメ号とアマゾン号
2.ツバメの谷
3.ヤマネコ号の冒険
4.長い冬休み
5.オオバンクラブの無法者(オオバンクラブ物語)
6.ツバメ号の伝書バト
7.海へ出るつもりじゃなかった。
8.ひみつの海
9.六人の探偵たち
10.女海賊の島
11.スカラブ号の夏休み
12.シロクマ号となぞの島

 

これらすべてが、いかにもありそうな…。
読んでいる子どもたち自身にも、起きそうな…。

 

アウトドアやってみようとすればできるような、そんな奇妙な現実味を帯びた冒険です。

 

そして、今回の「ヤマネコ号の冒険」、原題は、「ピーター・ダック」です。

 

閑話 おとなの本と子どもの本」で、ちらっと記述したのですが、改めておとなになってから通して読んでいて、グサッ!と刺さったのが、このピーター・ダックに関する記述の所でした。

 

「ピーター・ダック」は、もともとティティが空想で作り上げた人物です。

 

不用意にフリント船長が言及したとき、「一瞬、いやな気持ち」がしたティティ。
おとなは子どもの世界に踏み込むことができないと示唆したとき、何ともさびしい気持ちがしたのです。

 

その次の作品の原題が「ピーター・ダック」!

 

このお話では、ピーター・ダックはもう空想の人物ではないです。
実際の船乗りとして、冒険をともにします。

 

 

この「ヤマネコ号の冒険」では、ウォーカー兄弟姉妹と、ブラケット姉妹が、ほぼ乗組員は子どもという状態で、海の航海に出発です。

 

今まで、ツバメ号とアマゾン号は、いかにも現実にありそうな感じ、手の届くキャンプとセーリング生活でしたが、ほぼ子どもだけで航海、これはさすがにファンタジーではあります。

 

おとなはフリント船長とピーター・ダックだけ。

 

どこかで、空想と現実が交差して、ふっと一つになる瞬間です。
そして、問題なくフリント船長(おとな)も、ピーター・ダックと一緒になって、ぼうけんに出発です!

 

前回の二作では、周囲の大人やお母さんたちが、子どもだけでのキャンプを許しながらも、まめに連絡を取ったり、目を配ったりしています。
とても気をつけているので、子どもだけでの航海はちょっと非現実的なのです。

 

けれど、ピーター・ダックがツバメの谷であれほど活躍したあとに、この題ならば、それはティティの創作のようであり想像であるとする余地があります。
また、そうではなくて、本当に航海をしたんだ!という風にとることもできます。

 

子供の頃には違和感なく読んでいました。おとなになっても、細かい部分にとちょっと胸熱だったりします。
こうしておとなも子どもも一緒に冒険させてもらえて嬉しいなあ!という気持ちになりました。

 

 

よく考えてみたら、ウォーカー家の4人の子供たちがキャンプをしていたのはヤマネコ島でした。

 

今回のお話で、みなが子どもだけで航海に出ようとしているのはヤマネコ号

 

キャンプのテントの中で、ティティが鉛筆で書きとめていた物語かもしれません。

 

この島自体が船だったなら…と考えながら、子どもだけで、実際に外洋に出て、みんなで航海するのだ!

 

見守る大人はフリント船長だけ。
でも、もうひとり、老練で信用のできる船乗りが欲しい。
ピーター・ダックは、たくさんの航海をしてきて経験豊富な、引退した船乗りで、一緒に航海することになる。
「町かどのジム」みたいな存在です)

 

「ツバメの谷」からつなげて読むと、ティティがピーター・ダックに強い思い入れを持っていたことが語られていますので、ここでまるで知らない顔をしてピーター・ダックと出会って話しているのは、いかにも違和感です。

 

しかし、ツバメ号、アマゾン号の物語についで、その細やかでリアルな描写が、アーサー・ランサムの特徴です。

 

マストの上げ方、準備の様子、波の動きなどが実に詳細に記述されています。
これは本当の物語であると、感じられます。

 

実際に6人の子供たちが、2人の大人だけを頼りに海に出た。
そこで海賊と、てんやわんやのあれこれの逃走劇を繰り広げるのだと、これが実際に起きたことのようにワクワク読み進めることができます。

 

 

冒頭から悪党らしき人間が登場です。
名前はブラック・ジェイク。

 

いかにも悪党で海賊で、敵になるのではないかという感じの名前です(偏見)
きっと何かが起きるとドキドキです。

 

 

 

 

 

ツバメ号とアマゾン号

アーサー・ランサム (著), 神宮 輝夫 (翻訳)

夏休み、ウォーカー家の4人きょうだいは、小さな帆船「ツバメ号」に乗って、子どもたちだけで、無人島ですごします。湖を探検したり、アマゾン海賊を名乗るナンシイとペギイの姉妹からの挑戦をうけたり、わくわくするできごとがいっぱい!

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

ツバメの谷

アーサー・ランサム (著), 神宮 輝夫 (翻訳)

ツバメ号とアマゾン号』の冒険から一年、ウォーカー家の4人きょうだいは、ふたたび湖で帆船を走らせますが、ツバメ号が突風にあおられ、暗礁にぶつかって沈んでしまいます。船を失った探険家たちは、新たにみつけた「ツバメの谷」でキャンプをすることに。アマゾン海賊姉妹とともに、夏休みの冒険に乗り出します。

 

 

 

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