大人が読む児童書「トンデモネズミ大活躍」 2 読了 おきてに立ち向かう勇気とは。やっぱりポール・ギャリコだった。
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
陶芸職人が酔っぱらって作ったトンデモネズミ.時計が13時を打つと動き出して奇想天外な旅に出ます.行くさきざきでゆかいな事件をまきおこすトンデモネズミの冒険ものがたり.
大人が読む児童書「トンデモネズミ大活躍」 1 夜の魔法にかけられた、陶器のネズミが動き出す。
脱線しましたが、ドロロンとトンデモネズミは話し込んだ挙句、ドロロンは「トンデモネコにご用心」という言葉を残して去っていきました。
まあネズミの話だから。
猫が天敵になるのは想定内というものだ。
(自分に言い聞かせている)
次に、ヤナツキドリという鳥に会って、この辺の町について教えてもらいますが、別れ際にやっぱりトンデモネコに気をつけろということと、「かわいそうに」という言葉を残していきました。
何か事情がありそうですが、なんだなんだ。
自分じゃちっともかわいそうだと思っていないのに、人からかわいそうだなんて言われると気分が悪いです。
◇
これ、装丁があまりにもぶっきらぼうですね。
こういう本の中にこそ!
面白い物語が、冒険が、詰まっているんだっ!
と強く主張したいです。
インスタ映えはしません。
しかし、絵がとても可愛いです!
挿し絵は、ジャーネット・グレアム=ジョンストン、アン・グレアム・ジョンストン
こちらは、古本の方ですが、4000円の値段がついて、高騰しかかっています。
この挿絵で間違いはないのですけど、これじゃあの絵の魅力は伝わらないよ~!
ネズミもくりくりした目で可愛いけど、特にねこが!
ねこの絵がすんごく可愛いのに!
しかし、話の筋としてこの表紙は確かに、間違いではありません。
◇
入り込んだ最初の家で、いきなりネコに捕まりました。
はやい。
早すぎる。
トンデモネズミの方も、お前には警戒心がないのかと小一時間……と言いたいほどの無防備さなので、仕方がないと言えば、そうです。
しかし何か様子が変です。
捕まえたのはどうやら子猫ちゃんです!
すごく得意そうに、自分のやったことを十倍ぐらいに膨らませ嘘も加えつつ自慢するのですが、相手はお母さんと兄弟の子猫たちです。
カイネコカアサンが近づいてきて、いいました。
「どうして。それ、青いじゃないの!青いものなんて、どくだと思わないの?どっかへもってっちゃいなさい、おばかさんねえ」
いかにも母親が言いそうなセリフだ、これ。
こねこが自分で撮ったんだから自分が食べると抗弁すると、お母さんねこはおこり出して、前足でこねこに横ビンタを食らわせ、ころりとひっくり返してしまいました。
なんかただひたすら可愛い。
絵もめちゃくちゃ可愛いです。
鼻血が出そうなくらい可愛いです。
やっぱりポール・ギャリコだった!
◇
今度は、ベテランの年寄り猫に捕まりますが、あっという間にはなしてもらえました。
トンデモネズミはトンデモネコのもの、そういうことになっているので、手出しはならないという掟になっているみたいです。
なんとも不気味です…。
これからトンデモネズミは、タカのキャプテン・ホークと仲良くなったり、ゾウのネリイさん、人間の女の子のウェンディ。
何事も怖がらない、あけすけで親切、礼儀正しいトンデモネズミは、どこでもみんなと仲良くなり、色んな経験をして冒険を続けていきます。
◇
女の子のウェンディの話はなかなか印象的です。
(「ハリソン・G」というネームをつけてもらいました)
大人たちに取り上げられ、捕まってしまったトンデモネズミ。
ウェンディは、理解のある(自分も詩を書いたりする)アタマル先生の助けを借りて、トンデモネズミを救い出すのですが、さてどうしよう、というところでアタマル先生は言います。
「にがしてやったほうがいいんじゃないかな。」
「つまりねえ、ぼくたちは、じぶんのいちばんだいじな夢ってものは、けっして身近においちゃいけないことになってるんだなあ。そんなことをすれば、きまってだれか、それをぶちこわそうとする人が出てくるさ。」
◇
ここでまだ、前半がちょうど終わったぐらい。
ここから、トンデモネズミは実にさまざまな経験をします。
あらゆる世界をめぐるので、読んでいるこちらも気ままな旅をしているような気分になります。
想像のつばさともいうべきトンデモネズミを、羽ばたかせているというべきでしょうか。
しかし、ずーーっとついて回るのは、
「トンデモネズミはトンデモネコに食べられることに決まっている」
という不文律のおきて。
死の暗い影のようなものです。
あらゆる人に、そう言われ続けたトンデモネズミ、ついに、トンデモネコにみずから会いに行きます!
そもそも、みんなトンデモネコ、トンデモネコと言いますが、そのトンデモネコに一度も出くわしたことがないのです。
ゲド戦記のゲドが、一話の「影との戦い」で途中から反転、立ち向かいに行ったように、トンデモネズミも、トンデモネコと対決することをのぞみます。
だって、いくらネズミだからといって、たたかおうと思えばちゃんとたたかえるのですし、ばあいによっては勝目がないともかぎりません。だめならだめで、そのときはいさぎよく、トンデモネコののどをくだりながら、これをかぎりに思うぞんぶんめちゃくちゃにあばれてやったほうが、こわがりながらおめおめと生きながらえるよりは、よっぽどましではありませんか。
ネズミは、こう決心することで、気持ちがしゃっきりとなります。
そして、イギリス、マン島へと向かいます──。
掟とは、伝統とは、決まりとは、そうなっているから、そうなんだ、という定め、運命とは、いったい──。
それを、旅を重ねてきて、経験も積み、恐れも知るようになったトンデモネズミは、自分の目で確かめることを選択するのです。
◇
結末はネタバレなしで読んでくれー!!というような内容ではありますが、それにしてもずっと言及されてきたこのトンデモネコ。
最後まで読むにしたがって、これは確かにしっぽがない、特別なトンデモネコではあるけれど、マンクスではないかな。と思うようになりました。
何というか、このようなものすごい冒険をしてきた特別な世界にただ一匹のトンデモネズミ……に対応するような、運命のトンデモネコというのは、マンクス種にちょっと荷が重すぎます。
マンクスはマンクスで、カワイイある一種のねこなのですが、普通の猫なので。
トンデモネコは、やっぱり特別なトンデモネコなのです。
◇
さすがポール・ギャリコ。
ねこの魅力を知り尽くしているというだけあって、敵であってもねこはねこ。
ポール・ギャリコの目を通して見たねこです。
結論:ひたすら可愛いです。
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ある日、編集者のもとへ不思議な原稿が届けられた。文字と記号がいりまじった、暗号のような文章。“£YE SUK@NT MUWOQ"相談を受けたポール・ギャリコは、それを解読してもっと驚くはめになる。原稿はなんと、猫の手になる、全国の猫のためのマニュアルだった。「快適な生活を確保するために、人間をどうしつけるか」
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さすらいのジェニー (日本語) 単行本 - 1983/1/1 ポール・ギャリコ (著), Paul Gallico (原著), 矢川 澄子 (翻訳)
突然真っ白な猫になってしまったピーター少年は、大好きなばあやに、冷たい雨のそぼ降るロンドンの町へ放り出された。無情な人間たちに追われ、意地悪なボス猫にいじめられ――でも、やさしい雌猫ジェニィとめぐり会って、二匹の猫は恋と冒険の旅に出発した。猫好きな著者ギャリコが、一匹の雌猫に永遠の女性の姿を託して、猫好きな読者たちに贈る、すてきな大人の童話。
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突然真っ白な猫になってしまったピーター少年は、大好きなばあやに、冷たい雨のそぼ降るロンドンの町へ放り出された。無情な人間たちに追われ、意地悪なボス猫にいじめられ――でも、やさしい雌猫ジェニィとめぐり会って、二匹の猫は恋と冒険の旅に出発した。猫好きな著者ギャリコが、一匹の雌猫に永遠の女性の姿を託して、猫好きな読者たちに贈る、すてきな大人の童話。
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あたしはトマシーナ。毛色こそちがえ、大叔母のジェニィに生きうつしと言われる猫。あたしもまたジェニィのように、めったにない冒険を経験したの。自分が殺されたことから始まる、不可思議な出来事を…。スコットランドの片田舎で獣医を開業するマクデューイ氏。動物に愛情も関心も抱かない彼は、ひとり娘メアリ・ルーが可愛がっていたトマシーナの病気に手を打とうともせず、安楽死を選ぶ。それを機に心を閉ざすメアリ・ルー。町はずれに動物たちと暮らし、“魔女”と呼ばれるローリとの出会いが、頑なな父と孤独な娘を変えていく。ふたりに愛が戻る日はいつ?『ジェニィ』の姉妹編ともいえる猫ファンタジーの名作。
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スコットランドの片田舎で獣医を開業するマクデューイ氏。獣医でありながら動物に愛情も関心も抱かない彼は、幼い一人娘メアリ・ルーが可愛がっていた猫トマシーナを病気から救おうとせず、安楽死させる。それを機に心を閉ざすメアリ・ルー。町はずれに動物たちと暮らし、《魔女》と呼ばれるローリとの出会いが、トマシーナに新たな魂を与え、二人を変えていく。『ジェニィ』と並ぶ猫ファンタジイの名作を新訳で。解説・河合隼雄
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魔術師――時に奇術師や手品師とも呼ばれる人々が住まう都市マジェイア。偉大なる魔術師の娘ながら周囲からできそこない扱いされていた少女ジェインの前に、ある日ふしぎな青年があらわれる。ものいう犬モプシーとはるばる山のむこうから旅してきたという彼は、魔術師ながら肩書きのない“ただのアダム”と名乗る。魔術師名匠組合への加入を希望するアダムのために、ジェインは助手となって審査会に臨むことに。そこで彼女が目の当たりにしたのは、種も仕掛けもない“ほんものの魔法”だった。矢川澄子の名訳で贈る、色褪せぬファンタジイの名作。
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誰にも優しくされたことがなく、しんから冷笑的で、一度だって物であれ人であれ愛したことのない35歳の男、ミシェル。七つの人形に分与されたミシェルの影の人格が最後に愛を知り癒されるまでを、絶妙のタッチで描く。再刊。
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誰でも好きにならずにいられないハリスおばさんを、作者は時に皮肉りながらも、あたたかい視線で描きだしてゆきます。そして、ちょっとほろ苦い結末‥‥。
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