大人が読む児童書「山のむこうは青い海だった」 1 児童書は「その時代の子供の物語でなければならない」ということはない
今日、ご紹介するのは児童書です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
ピンクちゃんとあだなをつけられた気の弱い少年次郎が、尊敬する高杉晋作にならい、決心して一人旅に出かける。軽快なテンポのユーモアで’60年代を代表する児童文学の名作。再刊。(「MARC」データベースより)
私事ですけど、転職して新しい職場に変わりました。
今のところ、いい感じなのですけど、やっぱりものすごく緊張します。
次は、「山の向こうは青い海だった」にしよう!と思って、取り出し、例のねこカバーをつけました。
しっかりしている紙質です。
私の持っているのはフォア文庫版なのですが、ちょうどフォア文庫の所に黒いぽちマークがついているではありませんか。
この、ねこが!ついてる。
わたしにはこのねこがいる、京都に行ったんだぞ!
と繰り返して自分を励ましてました。
ブログ見ていてくれる人たちだっている!
大丈夫!失敗しても胸を張って辞めよう!(ちがう)
何かあれば尻に帆をかけて逃げ出すつもりで行きました。
いや、でもこういう気持ちって大事ですよね?逃げ方を想定しておくことって……。
バス通勤に変わったので、バスで開いて読んでいました。
40ページ程度でもう泣きそうになったので一旦とじました。
(はやい)
◇
妹子がするするっと読んでくれたので感想を聞いてみました。
わたし「妹子さん何かコメントないの?」
妹子「うーん難しい」
わたし「うむ」町のお店で毛皮売ってるのは見たことがある
妹子「こうだね!って言えない。ただただ、ずっと読んじゃった。感動とも違うしすごいとも違う……」
割と読むのに時間のかかる子が、あんなに手が止まらずに読んだのに。
今、まだ紹介したいのにしきれていない大好きな本は、そういうのが多いです。
難しい!
良さをうまく表現できないです。
「山のむこうは青い海だった」
確かに、けっこう出てくる登場人数も多いし、ドラマ仕立ても複雑です。
246ページ。
そして、何がどう面白い?と言われても難しい。
一言ではとても言えない、複雑な世界観とひとびとと魅力があります。
人間群像とも違うし、旅をしますけど、ロードムービーとも違う。
ひと夏の思い出……と言えばそうなのかもしれませんが、ぜんぜん、ひと夏で終わる感じがしません。
この体験も、出会った人も、これからも人生すべてに関わるだろう、という予感がします。
そして何より、おもしろい!
すごい登場人物の数ですが、どれがどの人か迷うことはないです。
キャラ立ちというより、それぞれが強烈すぎて忘れることがありません。
そして、さまざまな知識や体験へつながる、配慮の多さを感じます。
それぞれは小さいのですが、例えば高杉晋作についてのエピソードだとかです。
これは以前「写楽暗殺」について書いた時にも思いましたが、それぞれの狂言や江戸時代の人々への造詣をちりばめ、興味を持つ道筋になっています。
◇
戦後少したった頃の子供たちが主人公です。
20年まではたっていないのじゃないかな?という感じがします。
戦後の大混乱がだいぶ落ち着いてきたころ。
出兵、戦死、闇市などが、少しずつ、むかしがたりになりかけたころ。
このお話が出版されたのは、1979年なので、昭和54年です。
終戦は1945年(昭和20年)なので、これはまったく根拠のない、わたしの 想像ですが
(たぶんもっと、ちゃんと研究されている論文とかがあるような気がしますけど)
書かれた時に、すでにかなり昔を時代背景として想定しているような気がします。
昔と言うほどの昔じゃないのが微妙なところですけど。
昭和54年の子供達が読むにも、 若干古い情報 であるという、 へえ~昔はそんなことがあったんだという印象を与える。
そういう感じがします。
◇
児童書は、「その時代の子供の物語でなければならない」ということはないと思うんです。
そんなこといったら、宝島だってありませんし、トム・ソーヤだっていつの話、となります。
当時の子供たちだって、 さすがに 昭和54年 ぐらいの子供たちで このお話に出てくるように 復員兵の人たちが 身近でウロウロしているようなことはなかったと思うんですよね。
◇
冒頭からいきます。
主人公は、中学生になったばかりの新1年生。
教室でカチカチになって緊張している子どもたちからはじまります。
カワイイ……。
次郎くんです。
あとで、山根次郎というフルネームが分かりますが、それよりも先に担任の先生の名前の方がガツンと出てきます。
大文字です。
井山先生。
(黒板書きで説明をしたのです)
痩せていて(マッチ棒が背広を着たような)、井山のいやまてで、「いや、まあ、待て」が口ぐせ。
先生が自己紹介をしているところ、とてもユーモラスで愉快で目がとまりません。
とても怒りんぼだったというのですけど、こんな感じです。
子どものときからやせっぽちで、そのせいだったかもしれん。やせっぽちは今でもかわらんが、おこりんぼのほうはかわった。そのことを話そう。
とにかくぼくは子どものころ、すごくおこりんぼだった。友だちとかたっぱしからケンカした。
いつも勝ったんだけど、とうとう相手がなくなっちまった。ぼくはひとりむすこだから家の中で兄弟げんかをやるわけにもいかん。ぼくはひとりぼっちになった。そのとき考えたんだ。
いや、まあ、待てよ、とな。
おこるまえにちょっと待ってみる。口のなかで十かぞえるんだ。たいていのことはこれでガマンできる。
それからぼくはかわった。はじめは信じられんふうだったが、そのうち「井山のいやまて」は有名になった。
こ、これは、よく言われるところのアンガーマネジメントではありませんか~~!
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突然の父の死。祖母の死。そして戦争がはじまった。日々の暮らしのなかで何が変わり、何がなくなっていったのかを、多感な時期を迎える“ぼんぼん”・洋の目をとおして語る。さまざまな人間模様、危険なできごと、淡い恋心――。力強く生きぬく少年の姿を、大阪弁にのせて、ていねいに描いた作者の代表作。(解説=山田太一)
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昭和46年度から平成12年度までの定評のあった、国語教科書のお話を、あざやかな挿絵そのままに、児童書にしました。時計の中に住んで時を告げているチックとタックの2人が、夜中にこっそり抜け出して、わさび入りのおすしを食べて「ジッグ、ダック」時計が鳴るようになった千葉省三「チックとタック」(第1巻)を皮切りに、50代~60代の方にも懐かしい翻訳作品「小さい白いにわとり」(第3巻)など、すでに絶版で他では読むことのできないまぼろしの名作の数々を収録。
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くじらのような、イルカのような大きな飛行機が海に浮かんでいます。大勢の猫たちがそれに乗り込み、「ごろごろにゃーん」と出発です。「ごろごろにゃーん」と、飛行機は飛んでいきます。魚を釣りながら「ごろごろにゃーん」。くじらにあっても「ごろごろにゃーん」。山を越え、街をながめ、飛行機はにぎやかに「ごろごろにゃーんごろごろにゃーん」と猫たちをのせて飛んでいきます。長新太の真骨頂! 斬新で愉快な絵本です。
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猫 (中公文庫)
大佛 次郎 (著), 有馬 頼義 (著), 尾高 京子 (著)
谷崎 潤一郎 (著), 井伏 鱒二 (著), 瀧井 孝作 (著),
猪熊 弦一郎 (著), クラフト・エヴィング商會 (編集)
猫と暮らし、猫を愛した作家たちが、思い思いに綴った珠玉の短篇集。半世紀前に編まれたその本が、クラフト・エヴィング商會のもとで、新章“忘れもの、探しもの”を加えて装いも新たに生まれかわりました。ゆったり流れる時間のなかで、人と動物の悲喜こもごものふれあいが浮かび上がる、贅沢な一冊。
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