今日、ご紹介するのは児童書です。
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今日の一冊
ピンクちゃんとあだなをつけられた気の弱い少年次郎が、尊敬する高杉晋作にならい、決心して一人旅に出かける。軽快なテンポのユーモアで’60年代を代表する児童文学の名作。再刊。(「MARC」データベースより)
1 児童書は「その時代の子供の物語でなければならない」ということはない
2 1000円があったら何がしたい?往復切符を買って、行ったことのない場所へ
妹子が心配していた通り、次郎君は泊るところでつまづきました。
まあ、中学生になったばかりの数か月前まで小学生なんてこんなものですよね。
それも、お父さんのお墓がある墓守の家に泊まらせてもらおうとしていたのですが、あっさり断られてしまいました。
お母さんの実家、つまり二郎君のおばあちゃんの家に泊まったのでは「ひとり旅の趣旨に反する」と考えた次郎くん、ここで何と!
幼馴染の女の子の家に泊まらせてもらいに行きます!
な、な、なんですと~~!
幼なじみヒロイン登場~!!
いやいやいやいや、自分のおばあちゃんちと、幼なじみの女の子の家では、泊めてもらうハードル違い過ぎるだろ!!……と言いたくなるところですが、これはお話なので☆
読んでる方としてはウッキウキです☆
◇
今江祥智さん、けっこうロマンチックで、よくヒロイン枠の女子を出してくるのですけど、また本当に魅力的なんですよね。
古田足日さんのヒロイン同様、元気で物怖じをしらない、はっきりしたタイプなのですが、何となく数割増しで女の子らしさがあります。
そのしとやかなところも、女の子っぽいところも、男性向けの漫画系には出てくるような美人でしっかり者で優等生で……というような、読んでいるこちらからするとこんな女子いねーわ!妄想だよ!というようなのと違って、いてもおかしくない、リアルにかなりありそうなタイプです。
そういうのが「写楽暗殺」では、男女逆転するという面白さがあったのですが……。
子供向けの児童文学を書いている人は、やはり先生だったり保育士さんだったり、(今江祥智さんは先生でした)子供を身近に見ているからか、本当の子供がそこに生きているように感じます。
半分は夢が入ってるかもしれませんが、なんだかまだ、そんな事を恥ずかしいとか思う境目にいるような感じもあります。
まあとにかく、次郎くんは
この野郎!
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昭代ちゃんの素敵さは、ぜひ読んでもらって確認してもらいたい……と思うのですが、昭代ちゃんの周辺の人々もまたとても個性的です。
特に、同級生たちは強烈です。
たくさんいるのですが、わたしは女子では松村さん、男子では岡田くんが好きです。
次に紹介された子はとてもふとっていた。しかしそのことをあんまり気にしていなかった。象よりもずっとスマートだわ、と思っていた。そのかわり力はあった。めずらしい女の子だった。
次郎が紹介されておじぎをすると、
──あら、古いわして。あくしゅよ。
といった。にぎられた手がつぶれそうだった。
岡田くんは昭代ちゃんの学校の生徒会長。ちびっ子なのに力は強いし、肝っ玉もある少年です。
とつぜんの妹子「したんかい、ってなに?」
わたし「?(そんな言葉あったかな?)ああ、大阪弁ね?」
妹子「え?」
わたし「え?」
わたし「ちょっと見せて」
そんな言葉出てたんだー!
読み返したのに、そこだけは読み飛ばしていたのかなあ。
わたし「肝試しのことだよ」
妹子「うえ!大嫌い!」
こんな古典的な肝試しを怖がる小学生がまだいるなんて。
もしかしたら、古典的な方がウケるのかもしれないな。
これは後輩を驚かそうとする先輩たちの奮闘ですが、ぬれたぞうりをはいてあとからピタピタ音を立てながらつけたり、糸につけたコンニャクを、首にぺたっとくっつけたりです。
とても古典的です。
ところが岡田君はぜんぜん平気でのこのこ歩きつづけて、コンニャクは糸からちぎってしまった。
好き。
このお話、非常に登場人物が多いのですが、一度出たら絶対に忘れません。
すごいことだと思います。
キャラ立ちも無理がない感じです。
イメージを強調させようとして、あとから考えてつくったような設定がありません。
ありのまま、生き生きとした姿そのままが個性的です。
これはやっぱり、作者の筆の冴えに違いありません。
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昭代ちゃん本人も、川に入って蛙釣りしてるような元気な女の子です。
(魚ではなくて、蛙です)
それにしても、田舎の設定なのに、実に子供が多い!
みんなバイトをしたりして、一生懸命お金を稼いでいるのですが、それはガラス張りの円形図書館を作るための募金活動を行っていてその一環としてのカエル釣りなのです。
次郎君も感心するけど、読んでるこっちも感心します。
──うれしいわ、わたしたち、来年からうんと本がよめる!……昭代が言った。
妹子は何も言いませんでしたけど、こういう台詞って微妙に心に刺さってくると思うんですよね。
声で読んでいると、あっという間に消えてしまう、そして薄れ忘れていく言葉というもの。
印刷して、書いた文字は、目に映る視覚とともに残ります。
目に焼き付くのが、そのまま脳や、もしくは心臓に焼き付いている感じです。
これが面白ければ、何度も読み返しますから、そのたびに上書きされて焼き付けられていきます。
──うれしいわ、わたしたち、来年からうんと本がよめる!
細かいところで止まってしまいましたけど、どの大人も子どもたちも、登場人がみんな魅力的です。
元気そのもので生き生きとしています。
夏休みに田舎に行って、ひと夏の思い出、肝試しがあって、花火があって、そんなの、語り尽くされたテンプレのようでありながら、(きっと短い説明を付けるなら、そういう感じになるのではないかと思います)全く違います。
読んでもらえれば分かると思うのですが、ほんとうにぜんぜん違っていて、すごく目に(?心に)新しいのです。
妹子「すごいよなあ。ガラス張りの図書館か」
今頃言い出した。
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突然の父の死。祖母の死。そして戦争がはじまった。日々の暮らしのなかで何が変わり、何がなくなっていったのかを、多感な時期を迎える“ぼんぼん”・洋の目をとおして語る。さまざまな人間模様、危険なできごと、淡い恋心――。力強く生きぬく少年の姿を、大阪弁にのせて、ていねいに描いた作者の代表作。(解説=山田太一)
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昭和46年度から平成12年度までの定評のあった、国語教科書のお話を、あざやかな挿絵そのままに、児童書にしました。時計の中に住んで時を告げているチックとタックの2人が、夜中にこっそり抜け出して、わさび入りのおすしを食べて「ジッグ、ダック」時計が鳴るようになった千葉省三「チックとタック」(第1巻)を皮切りに、50代~60代の方にも懐かしい翻訳作品「小さい白いにわとり」(第3巻)など、すでに絶版で他では読むことのできないまぼろしの名作の数々を収録。
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貧困、いじめ、勇気、学問…。今も昔も変わらないテーマに、人間としてどう向き合うべきか。時代を超えた名著、新装版で再び。
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くじらのような、イルカのような大きな飛行機が海に浮かんでいます。大勢の猫たちがそれに乗り込み、「ごろごろにゃーん」と出発です。「ごろごろにゃーん」と、飛行機は飛んでいきます。魚を釣りながら「ごろごろにゃーん」。くじらにあっても「ごろごろにゃーん」。山を越え、街をながめ、飛行機はにぎやかに「ごろごろにゃーんごろごろにゃーん」と猫たちをのせて飛んでいきます。長新太の真骨頂! 斬新で愉快な絵本です。
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猫 (中公文庫)
大佛 次郎 (著), 有馬 頼義 (著), 尾高 京子 (著)
谷崎 潤一郎 (著), 井伏 鱒二 (著), 瀧井 孝作 (著),
猪熊 弦一郎 (著), クラフト・エヴィング商會 (編集)
猫と暮らし、猫を愛した作家たちが、思い思いに綴った珠玉の短篇集。半世紀前に編まれたその本が、クラフト・エヴィング商會のもとで、新章“忘れもの、探しもの”を加えて装いも新たに生まれかわりました。ゆったり流れる時間のなかで、人と動物の悲喜こもごものふれあいが浮かび上がる、贅沢な一冊。
「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492
◆プロジェクト・グーテンベルクについて
☞Wikiの説明ページ
プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリカ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館。
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