「本好きは作るもの」読解力を身に付ける~珠玉の児童書~

「本好きは作るもの」読解力を身に付ける ~珠玉の児童書~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

「きんいろきつねのきんたちゃん」~虚飾の世界への目~

 残念ながら、もう絶版になっているのですが

「きんいろきつねのきんたちゃん」

をご紹介したいと思います。 

きんいろきつねのきんたちゃん
作者: かこさとし
出版社/メーカー: ブッキング
発売日: 2005/12/01
メディア: 単行本

 

去年(2018年5月2日)にお亡くなりになった、加古里子さんの作品です。
からすのパンやさん」「だるまちゃんとてんぐちゃん」で有名です。

 

読み聞かせには、「どろぼうがっこう」が大人気でした。

これらの作品に比べ、埋もれてしまって絶版になっている一冊です。

 

しかしこれは、プレゼントすると大人気の一冊です。

お貸しした時に、ご紹介した時に、子供たちが大好きになって欲しい欲しいと言われると聞いたので、絶版ながらも中古で取り寄せてプレゼントした所、とても喜んでもらえました。

 

お子さんがたが先を争うように読ませろ!!と奪い合うという話や
きんたちゃんが本当に可愛い、大好き

などなど、嬉しい言葉ばかりいただきました。


ラストシーン…

お母さんの毛皮にくるまって泣いているきんたちゃんが

可愛くて可愛くて…
可哀相で可哀相で…

おかあさんの毛皮がすぐそこにあるのに触れることもできず、いっぱい涙をためているきんたちゃん。

号泣です。

 

こにくたらしいクソガキもやっぱり出てきます。

男子と女子どちらも、ダブル出演です。

 

加古里子さんの描くクソガキ。

これがまた、しげるちゃんや、ツネタとはまた違っており、修正できそうもない腹の底からの憎らしさを感じます(笑)

 

きんたちゃんは、序盤ではよくある動物もののように人語を話しているのですが、ある時から全くしゃべらなくなってしまいます。

ケケケケーン

と鳴くばかりです。(かわいいです)

しかし、人語を一切話さなくなってからがきんたちゃんのお話のはじまりです。

 

のきんいろきつねのきんたちゃん
加古里子さんの「虚飾の世界に対する目」を感じます。

 

何か、警鐘のようなものです。

 
女子はわりと、歌って踊る華やかなアイドル、パーティにあこがれたりするものです。

プリキュアだって、必ずラストには振り付けた踊りを入れてありますし。

子供用雑誌にもおしゃれの情報はあふれています。モデル、子役などなど。

まさにインスタ映えの世界です。

 

男子の大好き、YouTubeゲーム実況も根底は同じかと思います。

 

見て見て!という自己顕示欲や、承認欲求…
子供あるあるどころか、大人だってあるあるです。

 

それ自体は悪いことではないと思うのです。
身だしなみに気を遣うこともある程度必要ですし。
男子のゲーム熱だって、そこからシステムに対する興味や、割と人付き合いを学んだりすることもあります。

しかし、それらすべてが目に見える通り、本当にキラキラした魅力的な世界なのだろうか?

 

華やかに見せる世界の根底にある、他人を押しのけ、争う指向。
自然に派生した穏やかな世界を、序盤で出てきたブルドーザーのように、何もかも踏みつぶすもの。
美しさを追及する果てにある、おかあさんの犠牲=毛皮。

(私は別に毛皮否定派ではありませんが…。)

 

美しく、明るく、きらびやかな世界に対して、一歩立ち止まり、距離を置いて見る視線があります。

きんたちゃんのお母さんのような犠牲が存在する事実に対して、無知であることの醜さ。
豪邸は、燃えてしまえば灰しか残りませんでした。

 

私は、絵本を、本を読むときに、子供たちがそこまで考えなくとも良いと思っています。大人も、そこを強調して教えることもないと思います。

 

「物語として、ある経験として」、ただ、すうっと子供に吸収されるだけでいい。

その体験の多さそのものが一番重要だと思っています。

 

大人ならば加古里子さんの表現しようとした、虚飾に対する一歩距離を置いた視線になんとなく気付くはずです。


我が子を、自分をかえりみて、ふっと「ああ、気を付けなければな」と思うその瞬間がほんの少しでもあればいい。

 

そして、月夜の下でお母さんの毛皮にくるまってひとり泣く、可愛らしいきんたちゃんの切ない姿を、この本を読んだ子供たちが皆、心のどこかにそっととどめておいて欲しいと思います。

 

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