~クソガキの極み だけどかわいい~「ロッタちゃんとじてんしゃ」
今日、ご紹介するのは、かなりしっかりしたページ数の多い、「本型の絵本」です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日の一冊
作者のリンドグレーンさんは、「長くつしたのピッピ」の作者さんです。
ピッピにはトミーとアンニカという友達がいます。
主人公はピッピですが、物語はトミーとアンニカの視点からはじまります。
びっくりするようなことをしでかす子供を、周囲から目を丸くして見る。
ある意味、客観的な目線です。
トミーやアンニカが読者のこどもたちを代弁する立場だとすれば…。
ロッタちゃんは本人がトンデモです!!
「ロッタちゃんのおひっこし」もなかなかのトンデモクソガキっぷりを発揮しますが、「ロッタちゃんのじてんしゃ」
これはもう、トップレベルのクソガキです。
ロッタちゃんシリーズはいくつかあるのですが、この「じてんしゃ」は単体で絵本になっています。
(「ロッタちゃんのクリスマスツリー」もありますが…こちらはほのぼのしたふつうのお話です)
物語の展開がものすごいのと、花々が咲き乱れるスウェーデンの町並みの絵が本当に美しいので、これは必見の一作です。
ロッタちゃんは、ようちえんじぐらいの年なのですが、ようちえんには通っていません。
ロッタちゃんは自転車が欲しいのです。
おにいちゃんもおねえちゃんも持ってます。
目の前で得意げに乗り回しています。
イヤミです!(ロッタちゃんからすれば)
末っ子の気持ち、末っ子あるあるです。
お母さんもお父さんも、まだ早いという判断です。
ロッタちゃんは、あれほどもらって嬉しかった三輪車につかつかと歩みより、けとばします!
「おまえなんかにゃ、もう ぜったい のってやらないから。のるなんて おもってるのは、パパだけね。」
この絵のものすごい憎らしげな顔が、実にカワイイです。ほっぺたが食べたいぐらいプクプクです。
そしてロッタちゃん、自力で自転車を手に入れる計画を立てます。
ろくなことが起こりそうな気がしません。
ロッタちゃんの家のお隣には、ロッタちゃんのことを目に入れても痛くないほど可愛がってくれてるお隣のおばさんがいるのですが…。
ロッタちゃん、そのおばさんがお昼寝で寝付くのを待ちます。
もう本当に嫌な予感がします。
…納屋から...自転車を...取り出して…勝手にそれも大人用の自転車を取り出して…。
窃盗です!!犯罪です!!
しかも悪いことだとわかっていてやります。
明らかに炎上案件です。
このお話では、おおらかに、あたたかく、話は展開します。
まあ、ロッタちゃんはとんでもなくひどいめにあうのですが…まあ、とりあえず言えることは無事でよかった。それだけです。
物語のよいところをつめこんだような作品です。
おもしろさ、心に残るのはもしかすると、とても美しくて何一つ起きない優しくてきれいな物語よりも、悪いことをしたり、紙一重で助かったり、危険な目にあったりするところにあるのかもしれません。
子供は未熟です。あやまちを犯すもの。
しかも何を思いつくかわかりません!
物語の中では何でも出来ます。
そして危険や自分の肌で学ぶと同時に、こうして、物語を読んでハラハラワクワクすることによって…本当ならしてはならない(でもありそうな)体験を得ます。
罪だけでなく、罰まで体験します。
ロッタちゃんは、こども版トンデモ「罪と罰」なのです!
ただひたすらたくさん読むだけでなく、一つの物語に何年も何十年も向き合い、何度も読み返す楽しさ。
それはやはり、名作と呼ばれる本の特権です。
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