「本好きは作るもの」読解力を身に付ける~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「砂の妖精」1

大人が読む児童書。
積ん読・解消計画★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

砂の妖精

イーディス ネズビット (著), H R ミラー (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ロンドンから田舎に移り住んだ子どもたち4人。彼らは砂の中に棲んでいるサミアドという不思議な妖精に出会います。その魔法の力で空を飛んだり、巨人になったり…愉快な冒険物語。

 

閑話 ネズビットさん「砂の妖精」を読む前に - 

 

 

 

「砂の妖精」を、読んだ感想「その1」です。
今回は石井桃子さんの翻訳と原文を比較をまぜながら読んでいってみたいと思います。
(序盤だけです!!全部はむりです)

 

英語版の最初に詩が描かれています。

 

My Lamb, you are so very small,
You have not learned to read at all.
Yet never a printed book withstands
The urgence of your dimpled hands.
So, though this book is for yourself,
Let mother keep it on the shelf
Till you can read. O days that Pass,
That day will come too soon, alas!

 

子どもはすぐに大きくなってしまいますから、この本を読むようになるのもすぐだろう…。
そんなに早く大人にならないで、というような詩だと思います。
胸にしみます!

 

何度か読んでみたアリスの原文もそうでしたが、とにかく原文は最初の一文に四苦八苦するのですが、「砂の妖精」はこんな感じです。

 

The house was three miles from the station, but before the dusty hired fly had rattled along for five minutes the children began to put their heads out of the carriage window and to say, 'Aren't we nearly there?'

 

長すぎます。
意味はなんとなくわかります、どこか、田舎の家に向かっていて、子供たちがまだ?と言ってる…。
家は駅から3マイル離れている…。

 

そもそも、最初につまづくのは「fly」です。
ハエ?飛んだ?何??
ハエがぶんぶん飛び回ってるのかな?
散々調べてやっとたどり着きましたが、どうやら「fly」はイギリスの古語で「賃貸用の一頭立て馬車」のことをさすらしいのです。わっかんないわ!!それ!!

 

家に到着して、わっと子どもたちが飛び出します。
そして、おのおのひとこと発言するのですが、その順番は

ロバート
アンシア
ジェーン
シリル
ぼうや(baby)

です。

 

今思えば、おそらくこれは年齢順だったんだなと思います。
海外ものはあまり兄なのか姉なのかはっきりしませんが。

 

おかあさまがしずしずと慌てずいそがず登場なのですが、そのときの「一文」がこうです。

 

Mother, curiously enough, was in no hurry to get out; and even when she had come down slowly and by the step, and with no jump at all, she seemed to wish to see the boxes carried in, and even to pay the driver, instead of joining in that first glorious rush round the garden and the orchard and the thorny, thistly, briery, brambly wilderness beyond the broken gate and the dry fountain at the side of the house.

 

長っ!!!!
いや、一文が長すぎんか!?
これは、初心者には敷居が高すぎました。
ここですっかり参ってしまって、あとはほぼ流し読みしてしまいました。

 

たまに、「どうしても日本語と英語の順番の違いから、おしりから訳したくなりますがだめですよ」みたいなことが英語の参考書に書いてます。

 

慣れていないので、おしりから訳していましたが、こういうのを読まされてる間に「おしりから読むこと」をあきらめました。
あきらめざるを得なかったです。
無理です。覚えていられません。

 

だんだん、

 

「おかあさまは、奇妙なことに、いそがなかった → そればかりか~さえした、(~さえした、とは?) → ゆっくりステップをおりた → まったくジャンプなどしなかった → ~したいように見えた、(~とは?) → 見たい、荷物が運び込まれるのを → 運転手に払いさえした、~のかわりに、(~とは?)…」

 

という読み方に変わってきました。

 

読んだところはもう流してあとに捨てていき、追加情報を加えながら読み進めていく、という感じです。(これが正しい英語の読み方なのかどうかぜんぜん、わかりません)

 

要は、子どもたちが広い庭に飛び込んでいく喜びを、おかあさまの落ち着きと対比させて生き生きと描いているわけです。

 

すてきなお庭!果樹園!野イバラのしげみ!壊れかけた生垣の門に水のない噴水…。
飛び込みたい!どんなにすばらしいか!なのに…おとなって…?
という感じです。

 

恐ろしいほどの苦労がよみがえります。
やっぱり、石井桃子さんの訳が良いです。

 

石井桃子さんの訳はこうです。

 

ところが、おかしなことに、お母さんだけは、いっこう、いそぐ気配を見せません。おりるときだって、お母さんはとびおりもしないで、ゆっくりステップをおりて来ると、子どもたちといっしょに、庭や、果樹園や、木戸の外のノバラや、草のぼうぼうはえてるところや、家のわきの水の出なくなっている泉を、わあわあいって見てまわろうともしないで、時間をかけて荷物を家へ入れさせたり、お金をはらったりしました。

 

うーん、すばらしいです!完璧です!
子ども向けの絵本や本は、「、」を多様して読みやすくしています。
スペースを入れていることもあります。
大人向けの文章を読んでいるとうるさいように思うかもしれませんが、実際に読んでみるとまったくそんなことはありません。

 

あとで思ったのですが、ネズビットさんの文章はちょっとひねりがきいていて、普通と違うところを面白く描いているのでした。
お母さんが子どもと一緒になって興奮しないのを、「おかしなこと」として描いています。
こういう子どもならではの視線から見たおとな世界とのギャップや、一般的にこうだろうという所をはずしてそこを楽しむので、原文が難しかったのも無理はないのでした。

 

(こういう視点から見ると、アメリカの「オズの魔法使い」などはものすごくストレートで簡単な表現なので、超絶読みやすかったです)

 

しかし石井桃子さんはすばらしいです。
長い文章をいったん区切る所も最適ですし、「~しなかった」という所の長い表現も完璧です。

 

石井桃子さん、この方はどれだけ児童書の良書を翻訳して昭和の子どもたちに届けたのだろう…。
功績が本当に大きいです。

 

 

こうして、自分の子どもも全く違和感なく、すらすらと読める翻訳を読んでいるとき
石井桃子さんを太宰治が口説こうとして紹介してもらおうとしたけれど井伏鱒二に阻まれた」
というエピソードを思い出します。

 

石井桃子さん、太宰と同じ時代の人なんだよなあ…とちょっと不思議に思います。

 

というのは、やはりちょっと太宰、芥川の文体は、その時代独特の雰囲気が強くて、昭和風かなと思うからです。
転じて、当時の子ども向けに書かれた本は、(ものによりますが)非常に簡易でわかりやすいストレートな日本語で、スムーズに入ってきます。

 

しかし、この調子で進めていると、「砂の妖精」連載が長すぎることになりそうなので、内容のほうにシフトして先にすすめることにします。

 

どうでもいいですが私は太宰は好きですが、石井桃子さんを口説いてなくて本当に良かったと思います。
太宰治という大きなお子ちゃまに振り回されて、こうして石井桃子さんが時代を超えて子供たちに注いでくれているエネルギーが分散してそうな気がします。太宰治ごめんなさい)

 

  

「砂の妖精」原典(フリー)

Five Children and It by E. Nesbit - Free Ebook

 

「砂の妖精」音声ファイル

Five Children and It by E. Nesbit - Free Ebook

 

ネズビットさんの作品一覧

Books by Nesbit, E. (Edith) (sorted by popularity) - Project Gutenberg

 

 

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

 

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