「本好きは作るもの」読解力を身に付ける~珠玉の児童書~

「本好きは作るもの」~珠玉の児童書~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書 「砂の妖精」4 読了です。

大人が読む児童書。
積ん読・解消計画★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

砂の妖精

イーディス ネズビット (著), H R ミラー (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ロンドンから田舎に移り住んだ子どもたち4人。彼らは砂の中に棲んでいるサミアドという不思議な妖精に出会います。その魔法の力で空を飛んだり、巨人になったり…愉快な冒険物語。

 

 

閑話 ネズビットさん「砂の妖精」を読む前に - 

大人が読む児童書「砂の妖精」1 -

大人が読む児童書 「砂の妖精」2 いきなりしっちゃかめっちゃか -

大人が読む児童書 「砂の妖精」3 - 

 

 

華々しいというか、てんやわんやというか、色々と何から何まで期待を裏切らないネズビットさんでした。

 

文学少女のネズビットさんの詩が最初に雑誌載った時17歳だったとか、フェビアン協会の熱心な一員だったとか、いろいろ、あるのですが割愛しました。

 

 フェビアン協会の会員は、バーナード・ショウが有名でしょうか?
バーナード・ショウの「ピグマリオン」は、オードリーヘップバーンの素晴らしい映画「マイ・フェア・レディ」の原作です。
貧しい花売りの少女の少女が、貴族階級と労働階級を隔てていた発音を改善させ、自立に導く物語です。

 

社会主義と一口で言うとアレルギーのある方もいるかもしれませんが、まだまだ初期段階の頃は理想に燃え、不平等や差別に真摯に向き合うものでありました。

 (「宇宙戦争」のウェルズも会員だったみたいです)

 

ネズビットさんが自由で、明るくていたずら好きで、わけ隔てない心を持ったかただったと同時に、この本は、どこかで一本筋が通ったところがあります。

 

ヴィクトリアン朝時代の、古きよき価値観と言えば簡単ではありますが、たとえば…。
泥棒はだめだとか、きちんと謝罪するだとかです。

嘘をつかないとか、お金の始末はきちんとする、悪いことをしたら謝る。

おかあさまの思いだとか、兄弟姉妹たちの、お互いの思いやりだとか、ごはんをちゃんと食べたり、生活リズムはきちんとしたり、という、子どもにとって大切なことです。

 

人としてたいせつなことです。

 

石井桃子さんがこんな風にあとがきに書かれています。

 

彼女の作品の優れているのは、お話の構想が自然で、流れるように動いていて、息もつかせないようにおもしろいこと、登場する子供たちの、生き生きとしている事でしょう。
彼女の本は、古いのは、書かれてから、もう百年近くにもなり、社会の風習は大きく変わっているのに、何とこれらの物語に出てくる子どもたちの新しく、溌剌としている事でしょう。
このような子どもを描き出すことができたのは、作者ネズビットの中に、世の中の表面的な規範に縛られない、ほんとうに人間らしいものがあったからだといえるでしょう。
当時、少年少女としてネズビットの物語を読んだ人の中から、かなりの数の次の時代の作家が生まれたことも、彼女の能力を評価する上で忘れてはならないことです。

 

「作者の中に世の中の表面的な規範に縛られない本当に人間らしいものがあったから」

 

そういえば、ぼうやが人にさらわれそうになる「3」のエピソードで、ジプシーの人々の記述が出てきますが、実に愛のあふれる描写です。

 

優しい、アメリアさんというジプシーの女性が出てきます。

 

「ジプシーは赤ん坊をぬすむなんて世間のひとはいってるが、あんなことうそだよ。あんたたちがいうことをきかないと、おとながそういっておどかすだけだよ。」(中略)

アメリアはぼうやのひたいの上に、なにかを書くように、ひとさし指を動かし、それから、胸の上にも、手の上にも、足の上にも書いて、

「この子が、勇敢になりますように。よく考えるつよい頭と、ひとを愛するつよい心と、働くつよい手と、遠くまで旅して、無事に家にもどれるつよい足を持ちますように!」

 

'Poor, poor!' said the Lamb. And he let the gipsy woman kiss him, and, what is more, he kissed her brown cheek in return - a very nice kiss, as all his kisses are, and not a wet one like some babies give. The gipsy woman moved her finger about on his forehead, as if she had been writing something there, and the same with his chest and his hands and his feet; then she said:

'May he be brave, and have the strong head to think with, and the strong heart to love with, and the strong hands to work with, and the strong feet to travel with, and always come safe home to his own.' Then she said something in a strange language no one could understand, and suddenly added:

 

ここで、最初にぼうやをさらったのが何となく鼻もちならない貴族の「チッチンデンのおくさま」であるのと、このジプシーのアメリアという女性はとても対照的です。

ものごとの表面的な事象や偏見にとらわれず、本質を見るわけへだてない心があり、もちろん、人の醜さやいやらしさもするどく看破されています。

 

 

作家が子供向けに書いた本には、嘘のつけない自分がなまなましく出るな、と思います。
先日紹介した「怖い本」シリーズもそうでしたが、アーサー・ミラーの書いた「ジェインのもうふ」は成長に温かい目を注いでいますし、阿川弘之さんの書いた「きかんしゃやえもん」には、優しさに裏打ちされてはいますけども、厳しさや偏屈さも垣間見えます。(阿川さんすいません 笑)

 

作家がさまざま、人生経験を積んだり、人間を追求して大人向けに書かれた小説よりも、もっとストレートに
「では、その見てきた中で、何が一番大切で、何が一番次世代に伝えていきたいことなのか?」
というのが、はっきりと出ています。

 

優しさ、この世の美しさ、普遍的なもの、変わらない人間の姿、価値観、哲学、人間愛…。

 

おとなむけ、子ども向けに限らず、本を読んでいると、それも何年経ってもいつまでも読まれ続ける本を読んでいると、修辞のうまさや表現の美しさ、ストーリー構成もあるでしょうが、これらの要素がこめられたものこそ、いつまで残っていくのだなと感じるときがあります。

 

きっと子どもたちは、どこに行くことができなくても、都会の中でもコロナ騒動の最中でも、安全を守るための塀の中で狭苦しい、世知辛い生活を強いられていても、読書体験といっしょに、楽しい夏休みを過ごし、ぼうけん☆することができると思います。

 

わあわあ笑いながら存分に楽しみ、享受して、さらにまた語り継いで子供に読ませたいと思う。
そんな、古典の名作と言われるだけのことはある、本当に、本当にすばらしい作品でした!

 

 

 

 

 

「砂の妖精」原典(フリー)

Five Children and It by E. Nesbit - Free Ebook

 

「砂の妖精」音声ファイル

Five Children and It by E. Nesbit - Free Ebook

 

ネズビットさんの作品一覧

Books by Nesbit, E. (Edith) (sorted by popularity) - Project Gutenberg

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

 

ジェインのもうふ

アーサー=ミラー (著), アル=パーカー (イラスト), 厨川 圭子 (翻訳)

ジェインは、お気に入りのピンクの毛布を鳥に持っていかれ悲しみますが、毛布が赤ちゃん鳥の巣になることを知って…。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

きかんしゃやえもん

阿川 弘之 (著), 岡部 冬彦 (イラスト)

年をとってしまった機関車のやえもん。くず鉄にされる運命が待っていたのですが、ある日、交通博物館の人がゆずってほしいと申しこんできました。

 

 

 

マイ・フェア・レディ

オードリー・ヘプバーン (出演), ジョージ・キューカー (監督),

レックス・ハリソン (出演) 形式: DVD

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ピグマリオン Kindle版
バーナード・ショー (著), 小田島 恒志 (翻訳)

 

 

 

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