~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

今日の一冊「くわずにょうぼう」 コスト削減、人件費削減を家庭に持ち込む落とし穴

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

くわずにょうぼう
稲田 和子 (著), 赤羽 末吉 (イラスト)

欲張り男のところに、よく働くが飯を食わない美しい女がやってきて女房になりました。最初は喜んだ男でしたが、ある日、蔵の米がごっそり減っているので、隠れて見ていると、女房は男の留守に米を炊き握り飯を作ると、髪をほどいて頭のてっぺんの大きな口から食べてしまいました。女の正体が鬼婆だったことを知た男は、鬼婆にとらえられ……。赤羽末吉の絵によるスリリングな昔話の絵本。

 

 

今日はどれにしようかなあ。

 

妹子「これ、良かったよ」

 

どれどれ。
くわずにょうぼうか!

 

わたし「こわいこわいこわい。この後めっちゃよもぎを詰んだわ。道端で」

 

子どもたちに、ペニーワイズは人気(人気?)ですけど、現実の世に「おにばば」は今もいます。
ほら、後ろを向いたら…。

 

般若のお面、あれです。

 

 

これは「こどものとも」の中でも相当の名作です。
絵がものすごいです。
迫力満点で、ホラー感満載です。

 

日本もののホラーというのはどこか、わたしたちの心の奥底に語りかけるらしく、バイオハザードで倒すゾンビや、漫画で人気な美しい耽美な吸血鬼ものとはまったく違う、真に迫った怖さがあります。

 

 

お話は、よくばりおとこが「よっくはたらいて、めしをくわない」にょうぼうが欲しいと、山でひとりごとを言ったところからはじまります。

 

後ろからついてくる人影…。

 

だれかしらんが あとから ついてくるんだと。
 ぴた ぴた ぴた  ぴた ぴた ぴた

 

ここからして怖いので、読み聞かせのときは子どもたちは釘付けです。

 

米を食わないといううつくしいむすめを、にょうぼうを迎えたよくばりおとこ。

 

倉の米が増えるどころかごっそり減っているので、よくばりおとこは物陰に潜んで見守ります。

 

「ああ、よくばりおとこが いっちゃった。どれ したくすべえか」
にょうぼうは くらのこめだわらをどっこいしょと だしてきて、おおきな おおきな かまのなかに こめを ざぁーっと うつしこんだ。
そして、じゃぎ じゃぎ じゃぎ じゃぎ といで、
かまのしたを ぼん ぼんと たくんだと。

 

このとき、読み聞かせのときに、
「ああ、よくばりおとこが いっちゃった」
を、ほっとして羽をのばすおくさんのように…。
「どれ したくすべえか」
を、声色を変えて、さてこれから悪いことをするぞ、というような悪女っぽい声で読むと、子どもたち…

 

ふっと、わたしの顔を見るんです。

 

鬼ばばは、こっちじゃないわい!!

 

 

こどものとき、自分としてはまず最初に疑問だったのは、なぜそうまでしてご飯を食べないお嫁さんをありがたがるのか?ということです。

 

その良さの意味が分かりませんでした。

 

もう一つ、結婚して女房を持ったのに、やっぱり一人がいいからとかいうふわっとした理由で、そんなに簡単に結婚生活を、はいさようなら、終わりです、なんて出来るのかということでした。

 

この男性は、あらゆる面で突っ込みどころ満載なので、ひどい目にあうのはある程度仕方ないことと思うのですが...。

 

大人になってから、一体どういうことだったのか、何となく意味がわかりました。

 

このお話は「うまい話には裏がある」という以上の意味を含んでいます。

 

そもそも、この男はなぜ奥さんが食べないことを望むのでしょうか?

 

ケチなだんなさんは、あちこちにたくさんいます。
奥さんがこれを買いたい、あれを買いたいと言っても、必要ない、もったいない、いらないなどと言う男性です。

 

あからさまに反対はしないまでも、「それ本当に必要なの?」とか何とか言って、嫌な顔をする。

 

「女性の奥さんに全部家計を任せて文句を言わないのが夫婦の円満の秘訣☆」
などと言うやんわりとした言い方では、全くこのプレッシャーを表現することはできません。

 

どうやらこのケチなだんなさんがた、資産を増やすことにばかり傾倒するあまり、奥さんも自分が経営する会社の従業員の一人ぐらいに捉えているらしいです。

 

利益を出すためにコストを削る。
そのために人件費を削減することばかり考えているというような思考回路です。

 

人生のパートナーをこのような観点からしか見られない。
この物語の中でどんどん減っていく倉の米俵のがらんとした様子は、このよくばりおとこの心の貧しさを暗示しているようです。

 

(こんな風に昔話って読むんですよね違いましたっけ)

 

 

うつくしいにょうぼうから、たちまち正体を現したおにばば。
それはそれは、すさまじい怖さです。

 

めくりながら、その怖さを堪能します。

 

めくれば、突然、絵が見開きの大まわしになって、そのたびにくわずにょうぼうは自在に変化します。

 

迫力のある美人が、唐突に大鬼のような太い腕のマッチョになったり、走る必要がある時には妙に細く風のようになりますし、怒った時の顔といったらそりゃあもう…。
(ブルブルガクガク)

 

ここからのホラーゲーム展開があまりにも恐ろしいので、よくばりの是非が云々よりも、脱出できたときは本当にほっとします。

 

しかし、見開きいっぱい使って細い風のようになり、すさまじいスピードでおいかけてくる、おにばば…。
ヒィッ、怖いーっ!!

 

正体を現してからの食わず女房があまりにも怖いので、ここからは見ている方もホラーゲームの主人公になります。

 

何とかして逃れる術は無いものかと、共感してハラハラと見守ることになります。
共感するうちに、よくばりおとこのよくばりは、何となく自分と一体化してきます。

 

なんだこいつ。
よくばりで最低だわ。
という以上に、いつしか自分の中にひそむよくばりへの反省と戒めになります…。
よくばり、よくなかったわ…という心になります。

 

この世の中にはよくばりおくさんももちろん、いますからね(笑)
ほどほどにです(笑)
(これは自分に言ってます)

 

声に出して読んでみるとわかりますが、
じゃぎ じゃぎ じゃぎ じゃぎ
ぼん ぼんと
しっとり しっとり おもたいわい

 

言葉のリズムがすばらしいです。
とても読み聞かせにむいています。

 

赤羽末吉さんの絵と、稲田和子さんのことばが完璧にマッチした、名作です。

 

 

 

 

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