~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「とぶ船」5 読了 けじめをつける、物語を終わらせるということ

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

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今日の一冊

 

とぶ船
ヒルダ・ルイス (著), ノーラ・ラヴリン (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ピーターがある日、うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は、なんと魔法の「とぶ船」でした。ピーターたち4人きょうだいはこの船で、エジプトやウィリアム征服王時代のイギリス、北欧神話の世界にまで冒険旅行をします。

 

 

大人が読む児童書「とぶ船」 児童書は世界へのとびら

2 古い、うすぐらい小道のうすぐらい店に魔法は待っている

3 あのトトロに影響?病気のお母さんのエピソード

4 ノルマン・コンクエスト時代のイギリス。なじみの薄い歴史を生き生きと

 

下巻では、お話が

・エジプトの発掘現場へGO!
古代エジプトへGO!

と推移します。

 

みんな大好き、エジプトへ!

 

前回の記事で話題にしましたが、作者がこのお話を書く前、ハワード・カーターがツタンカーメン王の墓を発見しました。

当時、別にその時代の人間じゃなかった私もハワード・カーターに大興奮だったので、きっといまの子どもたちだって大興奮してくれるはず。

 

山岸凉子の「ツタンカーメン」は、カーターをかっこよく書いてくれるだけじゃなくて、地道でリアルな発掘の様子を描いていて、とてもイイ!です。

 

 

四人は、「ハワード・カーターに話を聞いたらこんな感じかな♡」というノリのテンションで、今まさにエジプトを発掘中の考古学者の所にとぶ船で飛んでいき、話を聞いてお食事を一緒にとって、素敵な一日を過ごします。

 

そこで聞いた、気になる情報…!
が、次の古代エジプトへGO!」のきっかけとなるものでした。

 

時代背景をご紹介します。

 

四人兄弟姉妹が行った「古代エジプト」とはどの時代なのか?

 

エジプトの長い長い歴史には、初期王国、古王国、中王国、新王国とあって、人気のツタンカーメン、トトメス、ハトシェプスト、ラムセスあたりはみな、新王国です。
情報も、古い時代に比べて豊富だからなのでしょうね。

新王朝はBC1570~1000。

 

四人が行ったのは、BC2000~の中王国。

ツタンカーメン時代よりも500年ほど前のアメン・エム・ハト一世の時代です。

アメンエムハト1世 - Wikipedia

 

ここで4人は実在している人物を元にしていそうな王子をとぶ船で助けるのですが…。
・なんとなく、ハワードカーターっぽい考古学者
・苦境に落ちた古代エジプトの王子

 

これはやはり、ハワード・カーターに会いに行って、ツタンカーメンを「とぶ船」で助けられたならなあ…!というロマン、空想のようなものを感じます。

 

医者であったり、シェフであったりする現代の人物が、時空を越えて突然、戦国時代や幕末に現れ、坂本龍馬や信長に関わるのと、基本おなじです。

 

 

次のエピソードは、この「とぶ船」の中でも特に好きなお話です。

ウィリアム征服王の時代からマチルダが現代にやってきます!

 

このエピソードはマチルダが本当に可愛く大好きなので前回の登場回ともに夢中になれるところです。

 

大切な友達が夏休みに遊びに来た、ひと夏の大切な記憶、というモチーフは、よく児童書でも絵本でも用いられています。

それが、時空を越えて、中世イングランドのノルマン人の少女がひとときだけ、現代に遊びに来る。

 

現代人が未来へ行って遊ぶのでもなくて
古代へ行ってあれこれ見聞きするのでもなくて
中世イングランドの少女が、今の(当時の)イギリスにやってきて、あれこれと体験をする。

 

なぜかわかりませんが、読んでいるこちらはどうしてかマチルダの気持ちがよくわかり、マチルダに感情移入して読んでしまいます。

 

日本という異国の立場から、イギリスの(当時の)子どもたちの生活を見ているからなのかもしれません。
そのキラキラした喜び、好奇心、夢中になる心。
子供は順応性が高いです。

 

たとえ時代はちがっても、あの頃生きている人々は、おなじなのだ…!
と、感じられる、とてもすばらしいエピソードです。

 

 

最後はロビン・フッド

 

薔薇戦争よりも300年ほど前の時代、中世イギリスの十字軍時代の義賊ということになっています。
伝説上の人物です。
いま、ロビン・フッドを知っている日本の子どもはいるのかな?
名前も聞いたことないのではないでしょうか?
わたしが子どもの頃は、割とお話も出ていたのですが、最近はほとんど見かけない気がします。

 

定期的に映画にもなっているみたいですが、史実上の人物ではないからかな。

 

 

ロビン・フッドを最後に、物語は幕引きに入ります。

 

「とぶ船」を名作としていて、何よりもすばらしいのが、その終わり方です。
上巻で、北欧神話の国に行った時から、漠然と予見されていたことでした。

 

神秘の世界、魔法の世界は、ある一時期だけに訪れるもので、そしていつかは卒業しなければならないものであること。

中世イングランドの少女マチルダも、最後は背を向けて帰っていきました。
それぞれの時代で、生きて行かねばなりません、との言葉を残して。

 

終わり方が、実に潔いのです!

楽しければ楽しいほど、すばらしい体験であったからこそ、幕引きをしっかりと閉じ、終わらせねばなりません。
夏休みは、いつまでも休みのままではいられない。

 

終わりが必ず、来るのです。

 

「はてしない物語」の記事の時にも、少し書いたことですが、名作だな、と思う作品に必ずある、この「空想の世界からきちんと読者を吐き出す」「幕を引く」という終わり方。

 

これは、子どもたちにとって本当に大切です。
けじめをつける、というのは勇気がいることです。

 

こちらも魅入られ、すばらしいと思っているからこそ、このけじめに対するきっぱりとした態度は、尊敬の心を生みます。

 

だからこそ、見守り、寄り添いながらも、最終的には別れをうながす大人の態度は、とても大事なことだと思います。
一緒になって遊んでもいいわけですけども、やはり監督者としての心を忘れてはならない。

 

そして、最後に子どもたちが自らの手でいさぎよくこの話を終わらせたことによって叶えられたことがあります。
「心からの望み」が何だったのか。

 

それは、本来は忘れさられるはずだった「とぶ船」の記憶を、いつまでも持ち続けていられることではなかったか、とそんな風に考えました。

 

 

 

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The Ship That Flew (English Edition)
Kindle版 英語版 Hilda Lewis (著), Beebliome Books (編集)

The model Viking ship lay in the window of a little old shop in an unfamiliar back street, and Peter, on his way to the dentist, lost his heart to it at once. It cost him all the money in hist pocket, including the fare home. That was how he came to take the way along the beach which led him into grave danger, but also opened his eyes to the magic properties of the little ship in his hand—the ship that flew.

 

 

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ツタンカーメン (全4巻)
山岸凉子(著)

「我は汝を王と成さしめる者なり」。1903年エジプト。封印されたファラオの墓発掘に挑むハワード・カーターはテントの中で枕元に立つ金のサンダルを履いた男から不思議な言葉をかけられた。彼の人生をかけた挑戦が、始まりを告げる。ツタンカーメンの王墓発掘を描く冒険歴史ミステリー。

 

 

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信長のシェフ
西村ミツル (著) , 梶川卓郎 (イラスト)

現代の料理人・ケン。彼が目を覚ますとそこは戦国時代だった。京で評判の料理の噂を聞きつけた信長は、強引にケンを自分の料理人にするが…!?戦と料理が織りなす前代未聞の戦国グルメ絵巻!コラム&レシピ「戦国めし」も必見!

 

 

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JIN―仁― (全13巻)
村上もとか (著)

南方仁は東都大学附属病院に勤める脳外科医である。ある日、彼が頭部裂傷の緊急手術を執刀した患者が、病院を脱走しようとする。患者と揉みあう内に仁はなんと幕末の1862年にタイムスリップしてしまった。電気も消毒薬も抗生物質もない世界で、医師南方仁の戦いが始まる。

 

 

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ロビン・フッドのゆかいな冒険
ハワード パイル (著), 村山 知義 (翻訳), 村山 亜土 (翻訳)

伝説の英雄ロビン・フッドは,シャーウッドの森に住むイギリス一の弓の名手.悪政に反抗し,しいたげられた人びとのために戦ったロビンと彼の仲間たちの冒険を生き生きと描く.(解説=神宮輝夫)

 

 

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ロビン・フッド(字幕版)
Amazonプライム

すべての人のため、一つの愛のため、そして正義を守るため、法をも破り、男は闘った--。 No Rating (C) 1991 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

 

 

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砂の妖精
イーディス ネズビット (著), H R ミラー (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ロンドンから田舎に移り住んだ子どもたち4人。彼らは砂の中に棲んでいるサミアドという不思議な妖精に出会います。その魔法の力で空を飛んだり、巨人になったり…愉快な冒険物語。

 

 

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時の旅人
アリソン アトリー (著), 松野 正子 (翻訳)

病気療養のため、母方の古い農場にやってきたペネロピーは、ふとしたことから16世紀の荘園に迷い込む。王位継承権をめぐる歴史上の大事件にまきこまれた少女の、時をこえた冒険。中学以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 

 

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