今日の一冊「おそばのくきはなぜあかい」 極限まで考え尽くされたシンプルな文章の美しさ
今日、ご紹介するのは絵本です。
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今日の一冊
語りつがれた日本の民話の中から《なぜ》のおはなし3つ.「おそばのくきはなぜあかい」「おししのくびはなぜあかい」「うみのみずはなぜからい」.初山滋氏の美しい幻想的な画面が子どもの夢を広げます
むかし、「岩波の子どもの本」には、ひとつひとつ、ちゃんとカバーがついていて、その折り返しのところに説明が書いてあったり、「本のおねがい」というのが載っていました。
わたしは本です!
「絵本です」じゃなくて「本です」というところが良かったです。
1.よむまえには手をあらってね!
2.ぺーじをおらないでね!
3.ふせるのはいやだよ!
4.つばきをつけないこと!
5.ほうりだしたらいたいいたい!
6.ではみなさんおやすみなさい!
ページを開くたびにこれが目に付きます。
絵も可愛いので、興味をひかれてじっくり見ていました。
本は大事に扱わないといけない。
大切なものなんだ、ということを自然に身につけてもらいたいと、当時の絵本を作る人たちが願っていたんだなと思います。
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開いた表紙の裏が、もう見事なカラーです。
そしてこの本の特徴はやはり、初山滋さんの素晴らしい絵にあります。
このデフォルメされた線と、普通の絵の混合で描かれた表現は、いちど見ると忘れられません。
内容は古来の日本むかしばなしです。
単なる昔話とあなどってはいけなくて、ネットでもたくさん昔ばなしを載せていたり、子供用のものもあふれていますが、やはり極限まで考え尽くされたシンプルな文章というのは、すでにそれだけで芸術です。
いま、むかしばなしや民話は、ネットで読めるからというお母さん、けっこういらっしゃるのですが、やっぱりぜんぜん違います。
むかしばなしだからこそ、筋だけではなくて、この計算しつくされた美しい日本語のリズムというものを、意識して大事にして行きたいものです。
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3つ、お話が入っていて、起原を問う、「由来譚」と呼ばれる系統の昔話です。
・おそばのくきはなぜあかい
・おししのくびはなぜあかい
・うみのみずはなぜからい
最初に「おそばのくきはなぜあかい」
現代において、おそばの茎が赤いということ知っている人はそう多くないでしょう。
ふゆの ある さむい 日の ことでした。おおきな かわの そばで、おそばと むぎが はなしを していました。
こんな線で表現された絵なのに、どちらがおそばでどちらがむぎか、はっきりとわかります。
おそばはちょっと洒落ています。
服に器に盛ったご飯のような絵が書いてあって手に花を持っています。
こうやって話している、2人でもないし2匹でもないし……何て言ったらいいかわかりませんが、つまりおそばとむぎのところに、年取ったおじいさんがやってきて川の橋を探しているといいます。
しろい ひげを むねまで たらした たいへん としとった おじいさんが つえを ついて
なかなか石井桃子さんはスパルタです。
おさない子どもが読みやすいよう、語句と語句の間をスペースをつけて、ひらがななのでますが、文章そのものは、「しろいひげを胸まで垂らしたたいへんとしとった」と、形容詞がすごくたくさんついています。
困っているけど、仙人っぽい、偉そうなおじいさんだなということがちゃんと伝わってきます。
この前の嵐で流れてしまった橋。
風が強く波が立っている川
おじいさん、この二人でも二匹でもない、つまりおそばとむぎに、自分をおぶって向こう岸までつれていってくれないかと聞きます。
「いやだよ」と、むぎはすぐにいいました。
「こんな さむい 日に、かわに はいったら、しんで しまうよ」
しかしお蕎麦はうなずきました。
ここのシーン、ものすごくシュールです。
よく動物や植物が人に混じってあれをしてこれをしたなどと、「由来譚」にはよく出てきますが、この絵は本当に植物がおじいさんを背負ってやってるんだなという感じがします。
このときお蕎麦は、したくをする、と言って「きもののすそをたかくひきあげて」います。
4ページ、見開き2ページいっぱい使い切って、頑張るおそば。
渡り終えた時には冷たい水の中で足が真っ赤になっていました。
このおじいさんはなんと穀物の神様でした。
国々をまわって様子見て歩いているとのことです。
おまえは ふゆの さむさも おそれない わかものだ。みも しらない わたしに しんせつを つくしてくれた。
おそばは夏のお日様のもとでそだち、不親切な寒がりのムギは冬の寒さを我慢しなければならないことになってしまいました。
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「おししのくびはなぜあかい」
内容については説明はしませんが、特徴があるのがこの言葉遣いです。
「おしし」とはなんぞ
ということです。
てんじく という くにに、たいへん げんきものの おさるが すんでいました。
てんじく。おさる。
語感がおもしろいので覚えてしまいます。
動物がいっぱい出てきて眠そうなキツネやくしゃみをするたぬきなど、とてもかわいいです。
これがおししです。
なぜこれをライオンと書かないのか、なぜ「おしし」なのか。
最後まで読めばわかります。
実にユーモラスで奇想天外な話ですが、それにこの絵が輪ををかけてシュールの空気を醸し出しています。
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「うみのみずはなぜからい」
すごく有名なお話です。
シンプルなもとのお話を、イメージを全く崩さないまま、それなりに長めのお話になっています。
この話は有名なので、再話されているものはたくさんありますが、シンプルな文章の美しさ、表現のこまやかさ、この見事さにかなう「うみのみずはなぜからい」のお話は、今まで見たことがありません。
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日本のなつかしい昔ばなしの中から,「ふしぎなたいこ」「かえるのえんそく」「にげたにおうさん」の3つのお話をえらびました.たっぷりとした墨の線を使った,清水崑氏の大らかな絵が楽しい絵本.
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リゼットおばあさんの家に住んでいる子ねこのぴっちは、ほかのきょうだいたちとはちがうことをして遊びたいと思いました。ところが、アヒルのまねをして池で泳ごうとして、おぼれてしまいます。
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長いあいだ小型版で親しまれてきた、人気者のかわいい子ねこのぴっちが、迫力ある美しい大型絵本にうまれかわりました。読みきかせにもぴったりの大きい画面で、動物たちの表情をお楽しみください。
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かもの一家が、川から公園へ引越しです。かもたちは1列になって町の中を歩き出しました。さあ、たいへん! おまわりさんは自動車をとめて交通整理。パトカーまで出動です。
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