~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

~ワクワク・ハラハラ・そしてゲス~「トム・ソーヤーの冒険」

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

トム・ソーヤーの冒険

マーク トウェイン (著), 柴田 元幸 (翻訳)

ポリー伯母さんに塀塗りを言いつけられたわんぱく小僧のトム・ソーヤー。転んでもタダでは起きぬ彼のこと、いかにも意味ありげに塀を塗ってみせれば皆がぼくにもやらせてとやってきて、林檎も凧もせしめてしまう。海賊ごっこに幽霊屋敷探検の日々を送る中、ある夜親友のハックと墓場に忍び込んだら……殺人事件を目撃! 永遠の少年時代がいきいきと描かれた名作を名翻訳家が新訳。

 

 

もはや紹介する意味があるのかどうかもわからない有名作品「トム・ソーヤーのぼうけん」です。

 

児童書も完訳も、あらゆる種類の本がたっくさん、出ています。
どれから紹介していいかわからないぐらいです。
しかもどれも評価が高いです。

 

 

 

さて、このトム・ソーヤーという男の子。

まあ、改めて読むかぎり実に柄の悪い、ヤンキー少年です。
「むかしヤンチャしてた」と自慢するタイプ。

 

冒頭からしておばさんをけむに巻いた後に、そのあたりを歩いている少年をガンつけしてケンカに持ち込みます。

嘘をつき、罰は他人にやらせ、ケンカ三昧。
ろくなことをやりません。

さらに、手下を集めて「戦争」をやらかします。昭和の学生同士の縄張り争いみたいです。

 

ちなみにトムは十歳です。


そして、物語がはじまった段階ですでに彼女がいます。

とんだリア充野郎です。

 

しかし、そこに現れたのがベッキーです。

ベッキーについての話は決してこのぼうけん☆の主ではなく、トムのやらかしたあらゆる種類の「ヤンチャ」があまりにもすごいのでまぎれがちなのですが…。

 

今回は、トムがいかにこのベッキーを落としたか、に注目して、ちょっとご紹介したいと思います。

 

ベッキーとの出会いは、トムが「戦争」をやらかした直後でした。

庭に、まだ見たことのないひとりの少女がいた──青い目をし、黄色い髪の毛を、二本のおさげにあんだかわいらしい子で、白い夏の上着に、ししゅうをしたパンタレットをはいていた。
今、(ケンカで勝利を収めたばかりの)勝利の冠を得たばかりの英雄は、自分のほうからは一発の弾も打たずに、まいってしまった。

(世界少年少女文学全集10 より 吉田甲子太郎 訳)

 

この金髪の女の子がヒロインのベッキーです!
このあとに唖然とするような描写が続きます。

 

とたんに、エイミー・ローレンスという女の子はかれの心から消え去って、一片のあとも残さなかった。今まで、トムはエイミーを夢中で愛していると考えていた。この情熱こそ、崇拝というものだ、とトムは思っていた。

 

あれ?
これちゃおの漫画だったかな?

 

トムは十歳です。 

 

さらに続きます。

ところが、こうなってみると、それは、みすぼらしい、たわいない、一時の気まぐれだったとしか思われない。じつは、彼はエイミーの心をかちうるために、なんか月もかかったのだった。かの女が、トムを好きだと言ってくれたのは、まだ、ほんの一週間ばかりまえにすぎなかった。その短い七日間というもの、かれは、世界じゅうで、いちばん幸福な、ほこりにみちた少年だったのだが、今、この瞬間に、エイミーは通りがかりにちょっと立ちよって、もう行ってしまった他人のように、かれの心から消え去ってしまっていた。

 

この後、トムは引っ越してきたベッキーと父親の判事に自分の存在をアピールするために、ズルをして聖書の聖句を覚えたといつわります。
(暗記した分だけ色付きのカードがもらえるシステムです)

 

その場にエイミーもいるのですが、トムの様子がおかしいです。
自分の顔をトムは見ようともしません!
エイミーは仔細に観察した結果、トムの心変わりを知って苦い涙にくれるのです…。

 

これ何の話!?
本当にトム・ソーヤーのぼうけん☆なんだよね!?

 

 

さてここからトムは、あの手この手でついにベッキーに気を引き、ついに落としてしまいます!

 

小細工を弄してわざと先生をおこらせ、まんまとベッキーの隣の席に座ります。

まずはプレゼント。基本です。
モモをあげます。

最初は突っ返されますが、何度も根気よく押し戻して、こんな風にやります。

トムは石板に、「どうぞ取ってください──たくさん持ってるんだから」とへたくそな字で書いた。

 

ここから、絵を描いてみせたりしながら小細工を弄して自己紹介に持ち込み、それから、何かを石板に書き始めます。
見せないように隠されるので、女の子(ベッキー)の好奇心はあおり立てられます。

 

ふざけた見るに耐えない、「男と女☆恋の駆け引きテクニック」が始まります

「ううん、なんでもないんだよ」
「いいえ、きっと、なんかいいことが書いてあるんだわ」
「なんでもないんだったら。きみなんかの、見たがるもんじゃないんだよ」
「いいえ、見たいわ。ほんとに見たいのよ。見せてちょうだいったら」
「だって、きみ、しゃべるもん」

これが後ろの席などでやられていたら、ぶんなぐりたくなること間違いなしのいちゃつきです。

で、何が書いてあったのかというと、「アイラブユー」が書いてあるのです!

 

トムのスケコマ能力は本当にすごいです。

 

「まあ、いじわる!」と言って、女の子はトムの手をぴしゃりとぶった。それでも、しかし、赤くなって、うれしそうな顔をした。

 

何が「まあ、いじわる!」だよ!

何の恋愛シミュレーションゲームのプレイ動画を見せられてるんだ!

 

さてまだまだラブゲームは終わません。

 

並べ挙げると

 

・「愛してる」とベッキーに言わせ、「婚約ごっこ」まで持ち込む。(ここでトムは、愛してると言わせた挙句に、強引にキスを迫ります。もう本当にめちゃくちゃに最悪の悪党です)

 

・うっかりエイミーの名前を漏らし、ベッキーが怒る。キスも既にエイミーとしていたと推察されます。しかしある程度謝ってベッキーがすねるのをやめないと、あっさり機嫌を取るのをやめて去ってしまいます。(このあとに、墓場でインジャン・ジョーの殺人現場を目撃してしまいます)

 

・家出をして戻った後に、仲直りしたいベッキーに見せつけるように、いまさらエイミーといちゃつく。ベッキーは仕返しのためにアルフレッド君という当て馬を探し出し、しかもトムがその場から去った後は「あんたなんてきらい!」(トムもトムなら、ベッキーもたいがいなものです)

 

ベッキーのやらかしをトムがかばって、二人はめでたく仲直り💖

 

もう、本当にこの展開…、じつに攻めています。 

 

ことばに棘があるようですが、わたしは読みながらもこのトムのゲスさにつくづくあきれ果て、何人もの人にいかにゲスであるかを主張してきたのですが…
これが、割とわかってもらえなかったのです!!

 

わかります。わかるのです…。

 

次から次へとワクワクするぼうけん☆がたくさん起きていき、特にインジャン・ジョーの犯した殺人事件の裁判や、洞窟での冒険など、ハラハラする展開が満載で、これほど面白いことが次々に起きる物語は、黄金期のジャンプの漫画でもそうはなかった…と思うほどです。

 

ぼうけん☆の部分はぼうけん☆として、楽しく読めるのですが、わたしはとにかく、このトムという男子が、どうにも好きになれませんでした。

 

今現在、原書の方でマーク・トウェインを検索すると、圧倒的に「ハックルベリー・フィン」の方が出てきます。
アメリカで評価されているのはこちらの方です。

 

なぜかはやはり、読んでみるとわかります。
往年の黒人差別、またインディアン差別がすごいです。
しかし、そこもまた、歴史の中では確かにあったことであり、正直にありのままを描いているという点では非常に評価できる作品です。

 

ハックルベリー・フィン」は、主人公が白人であるとはいえ、弱者の一員である浮浪児であり、そのまなざしもまた、たくさんの開拓時代のアメリカの欺瞞や風俗の中にひそむ人間の悪に対する視線が大変するどいです。

 

いつかハック・フィンの物語を読んでもらうためには、まずトム・ソーヤー

このブログを読んで興味をもってもらった方に、もう一度トムの悪行の所業のすべてを白日にさらして共感して欲しいがために、この記事を書きました。

 

 

ぜひみなさん!!

トムがいかにゲス男か、ぜひ読んで確認してみてもらえませんか!! 

 

 

追記:

これを書いた後に、つばさ文庫やみらい文庫では、ゲスさをかなり消去して訳されていることに気付き、続編として書いた記事です。☟

whichbook.hatenablog.com

 

 

トム・ソーヤーの冒険の原書は、グーテンベルクで読めます。
ハックルベリー・フィンもあります)

 

www.gutenberg.org

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

 

 

 

 

whichbook.hatenablog.com

 

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