~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「水の子」 6 読了 復刊お願いしまぁ~~す!(サマーウォーズ風に)

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

水の子―陸の子のためのおとぎばなし
キングスレイ (著), クルックシャンクス (イラスト), 阿部 知二 (翻訳)

 

 

これまでのレビュー

「水の子」 絶版になっている貴重名作

大人が読む児童書「水の子」 1 レビューするのが難しすぎる。

大人が読む児童書「水の子」 2 そもそも論。水の子とは何ぞ?

大人が読む児童書「水の子」 3 「報いのおばさん」という妖精

大人が読む児童書「水の子」 4 語彙力の暴力

大人が読む児童書「水の子」 5 現代にも通じる痛烈な風刺と、「水のいぬ」

 

 

妹子も、多大なる時間をかけて、ついに終盤にたどりつきました。
スマートメディア、ありがとう、ありがとう!

 

このあたりの旅は(勉強の国のカブも)面白かったらしく、一つひとつうるさくコメントしていました。

 

カンムリガラスの娘さんが殺された話には、すごい衝撃を受けていました。
妹子「とつぜんどうした!?猟奇的!しかもひどい。これまでほのぼのだったのに!どうして!?」

 

このお話、脱線が多いですが、これらのたくさんの小話が面白いので、どれかは必ず記憶にひっかかってくる感じです。

 

 

世界の果ての牢獄のような所にグライムズはいます。

 

妹子「助けたくない人を助けるってグライムズなのー!?」
わたし「う、うん」

 

そこ、これまで気づいていなかったのか。

 

確かに、そこはよほど注意深く読んでいないと、ふわっとしていたからな。
って、あんなに詳細に読んでたくせに、そこは見逃してたんかーい!
と思いながら、ぶつぶつとつぶやきます。

 

わたし「なぜグライムズなのか。自分が虐待されて搾取されていて、もう二度と会いたくないし、助けたくもないと思っていたグライムズの所に来るというね。トムが自分で選んだ道で、その行為の意味というのはね…(ぶつぶつ)」

 

妹子「書きなよ」
わたし「はいっ?」
妹子「書いたら?それ」

 

ぶつぶつの内容:

 

・トムは別にグライムズにお願いされて許しに来たわけじゃない。
・強制はされなかった。
・おそらくトムは、グライムズを赦したときに、本当に自由になれる。自分のうらみから自由になれるとでもいうような意味で。
・そこにグライムズ本人の意思や選択は、あまり関係ない。彼は彼の思いがあるから。

 

とでもいうようなことを、ぶつぶつとつぶやきました。

 

 

絶版になっているので、結論を書いてしまいますが

 

グライムズは、煙突にぎゅうづめになって閉じ込められていました。
セメントのように固まって出られなくなってしまっているのです。
(これまでの習慣や、悪癖や、固定観念から出られないというような表現のようです)

 

あれこれ会話しているちに、トムが皆に追いかけられていた時に、親切にしてくれたヴェンデールの谷のおばあさんが、グライムズのお母さんだったことがわかります。

 

この事実が、グライムズの心を溶かしました。
涙を流したグライムズの、自らの涙が、固まっていた煙突のすすを溶かして、グライムズは出ることができるようになりました。

 

報いのおばさんは、最後に、トムとエリさんの前に美しい姿を現して、その正体を垣間見せます。
その姿が、一番最初にグライムズがトムを殴ろうとしたときにとがめたアイルランドの女や、海の女王や、また親切のおばさんと、姿が変わっていく…。
すべては一つの存在だったのか、それとも…。

 

とても神秘的で、この不思議な物語の幕引きにふさわしい感動です。

 

エリさんと二人、トムは、報いのおばさんに導かれて、「外の世界へ出る」ことになります。

 

 

ここで、不思議な「裏階段」というものが出てきます。


おばさんは、トムに「何なんですかそれは」と聞かれて、
「子どもには無理にいろんなことを教えなくてもいいのです」
なんて答えています。

 

妹子「階段…」
わたし「不思議だよね」
妹子「何なのこれは?」
わたし「それは自分で考えるんだよ」
妹子「たとえば。ブログ書くんでしょ」

 

ぎゃふんです。

 

わたし「お母さんが想像したのは、たとえば…不死のとびら…全能の力…どんな悪いことしても天国にストレートで行けちゃうパスポートのようなもの…死者を生き返らせる力のような…リセットボタンのような…時間を巻き戻すような…バッドエンドをひっくり返すような…」

 

妹子「このこん棒、けっこう可愛いね」
わたし「聞いてないのかよ」

 

こん棒に目と鼻がついていて、警察官の役割をしているのですが、絵がなかなか可愛いです。
(一応説明)

 

 

この本について、あとがきで、阿部知二さんの息子の阿部良雄さんがこんな風にこの本について、紹介してくれています。

 

(この「水の子」の中での、子どもたちへの)励ましのことばが、グレンヴィル・アーサー坊ややそのほかのちいさな少年たちに向けて語られているのは、男性と女性の任務や生き方がはっきりと区別されていた十九世紀英国のお話だからです。今日の私たちは、この教訓が、すべての男の子、すべての女の子のために向けられたものだと思いながら読むのが、当然ではないでしょうか。

でもこれは、そういう教訓ばかりの、かたくるしいお話ではない。それは、作者自身も言っている通りです。何よりもまず、美しい、おもしろいおとぎ話なのだ。このあとがきを書いている私は昭和七年の生まれですが、父の知二が若いころに訳して昭和六年にはじめて本になったとの童話を、子どものころ、くりかえしくりかえし読んであきなかった、なつかしい思い出があります。その後も昭和二十二年に東郷青児画伯のさし絵入りで再版され、昭和二十七年にも岩波少年文庫の一冊としてあらためて本になりました。今度は最初に本が出てからもう五十年近くたっていることではあり、ことばづかいなどもわかりにくくなっている点が多いので、なくなった父に代って私が、岩波書店編集部のご協力を得て、全面的に手を入れました。ずいぶん読みやすくなったのではないかと思います。知らない人の名前や何かがたくさん出てきても、そんなものは気にせずどんどん読み進めばよいのです。グレンヴィル・アーサー坊やや十九世紀英国の子どもたちにしても、そんな名前をぜんぶ知っていたわけではないと思います。

 

まさに、この本は何度読み返しても面白く、また新たな発見がある本です。

 

 

搾取される子どもたち

 

先日の「ヤマネコ号の冒険」でも、キャビンボーイとして働く、下層階級の労働力として扱われる子どもの姿が描かれました。
ランサムもキングスレイも、そういう児童労働問題や、貧困に対して、じっと目を向けていたのだなあという印象です。

 

それも、決して「助けてやろう」「ひどいなあ」などという上から目線ではないのがまた特徴的です。

 

アーサー・ランサムでは、自立して働いている少年に対するリスペクトがあふれていました。
「ヤマネコ号」のビル少年は、海事技術に関しては、ずっとウォーカー兄弟姉妹たちよりもベテランですし、そのことに誇りをもっています。
ビル少年が海賊どもの間で覚えた悪いこと(噛みタバコなど)も、責めたりやめろと言ったりはしません。

 

階級は階級として存在しながらも、人間性を鋭く見抜き、尊重し、対等として見ている、そんな目線です。

 

 

 

グライムズは、悪いことだけしてきた人間です。

 

今回、読み返してみると、実はこの物語、
グライムズのためのお話だったのではないか?
と、そんな気がしてきました。

 

トムは冒頭で、ちいさなグライムズみたいな感じでした。
大きくなれば、グライムズみたいになっただろうな、というイメージです。

 

このお話は、煙突につめこまれてにっちもさっちもいかなくなっている、固定観念に縛られて、どこにも行けなくなっている大人たちへの物語でもあるのではないだろうか。
なぜなら、大人でなければわからないような個所がたくさん出てきますから。

 

子どもだけに書いたのではない。
もし子供が読んだとしても、その人が大人になったときにまた読み返して、子供に帰ることもでき、また大人として新たな気づきも見いだせる。

 

報いのおばさんが、とても難しい顔をして、
「グライムズのような人間をどうにかするのは、とても難しいことだ」
と言うほどだった、そんなグライムズのような男の中にひそんでいる、少年の心に向けて語っている面もあるのではないだろうか。

 

グライムズを救えるのは、グライムズの中の、小さな少年だけなのではないか。

 

そんな風にも感じました。

 

何にしても、これは本当に名作なので、
復刊!
どうか!復刊を!

 

お願いしまぁ~~~~す!!!
(ぽちっ)

  

復刊ドットコムの投票ページです。

www.fukkan.com

 

(登録してログインをする必要がありますが、何ら宣伝のたぐいはないです)

 

 

そして、ここまで長い長いレビューにお付き合いくださった方、ありがとうございました!

 

whichbook.hatenablog.com

 

 

「水の子」原文は、フリーで公開されています。 

www.gutenberg.org

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ヤマネコ号の冒険
アーサー・ランサム (著), 神宮 輝夫 (翻訳)

ツバメ号とアマゾン号の乗組員たちは、老水夫ピーター・ダックと知りあい、帆船ヤマネコ号で、イギリス海峡に船出しました。ところがピーター・ダックの宝をつけねらう海賊、ブラック・ジェイクがあらわれ、しつこく彼らを追いまわします。初めて味わう本格的な航海の喜び。熱帯の島で起きる思わぬ事件。海洋冒険物語。

 

改めて、「ヤマネコ号の冒険」といい、「水の子」といい、児童書は子供への愛にあふれたものなのだなと再確認です。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

カーディとお姫さまの物語
ジョージ・マクドナルド (著), 竹宮 恵子 (イラスト), 脇 明子 (翻訳)

少年カーディが地下のゴブリンの国からお姫さまを救いだしてから1年.お姫さまの命と王国がまた危険にさらされました.悪賢い従者たちが権力と富をねらって策略をめぐらしはじめたのです.

 

マクドナルドが好きなかたは、きっと「水の子」が気に入っていただけると思います。
神秘的な所や、不思議でありながら面白いところ、共通点がいっぱいです。

 

 

 

 

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