~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

今日の一冊「海のおばけオーリー」

今日、ご紹介するのは、かなりしっかりした文字の多い、「絵本」です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

海のおばけオーリー

マリー・ホール・エッツ (著, イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ある町で大さわぎがおこりました。近くの湖におばけが出るというのです。ところがそのおばけの正体は、前世紀の怪獣でも怪魚でもなく、かわいい子アザラシでした…

 

この本、なかなか装丁が面白く、真っ赤な装丁に真っ黒な海からオーリーがぬっと海から首を突き出しているので、いかにもおばけな感じです。 

 

昔から必ずと言っていいほど、この「海のおばけオーリー」は名作童話・名作絵本の中に入っています。

どうしてもあげなくてはいけないなと思う一冊です。

 

内容としては可愛らしいアザラシの赤ちゃんがお母さんからはぐれて人間に捕まり、水族館に連れて行かれてしまったお話です。
そこで、お母さんが恋しくて沈んでいる所を可哀相に思った飼育員さんが...。
港に出たオーリ―は、あそんでもらおうとして無邪気に近づいて行くのですが…。

 

中の絵と台詞のの置き方もちょっと変わっていますので、記憶にもすごく残ります。

 

1ページ中に絵が3×3こま、左から右へ順番に置かれており、一つ一つの絵に対して、短い文章がついていて、漫画のコマにも少し似ています。

 

吹き出しで言葉が入る代わりに下に文章がついているといったふうです。

 

一つ一つの絵についている文章はやさしく、単純でありながら絵は非常に密です。

 

そして、文章も一つ一つについては少ないながらも、何しろ1ページにつき3×3もありますので、全てを 追っていくとかなりの文章量になります。

読み聞かせしていると、ちょっと口がつらいかもしれません。
そして、「続きはあしたね...」「ダメ!続き読んで!」となる感じです。

 

海外の絵本を読んでいるとよくあることですが、意識しないといったいどこの話なのかさっぱりわかりません。
このお話も、あざらしの赤ちゃんオーリ―がいったいどこで生まれたのか、連れて行かれた水族館がどこなのか、最初はさっぱりわかりません。

 

大人目線で見ると、絵本がつくられた時代背景を反映して、「古き良きアメリカ」を感じさせる風景です。

風俗を語る上でも なかなかに興味深い一冊です。

 

一つ一つの絵は白黒の版画のようです。
この白黒が、怖がられた時のオーリ―のおばけ感をすごく引き立てています。
人はかってな想像で、どんどん怖さを作り上げていくものだな、というのがユーモラスに描かれています。

 

このひとつひとつの絵を3×3にせず、一枚ごとのページにしていたら相当に分厚い本になることは間違いないです。

しかし、そのまま読み進め、最後のページを見ると!

今まで小さく書いていた視点がぐうっと大きくなります。
Googleアースを見ているかのように…。
地球儀をのぞくように、大きな大型本の中に アメリカの地図がぱっと広がります。
五大湖のあたりです。

 

Google Earth -五大湖の周辺

  

そしてオーリーがどういう風にお母さんのところへ帰って行ったのか、具体的な地図と地名ではっきりと示されます。

 

今まで、「オーリーはどうなるんだろうな?」「お母さんに会えたらいいな」「みんなに驚かれおばけなんて言われてかわいそうだなぁ」などという風な視点で見ていたところに、急にそれはこうだったんだよ!という、現実の地理の知識がわっと現れます。

物語と現実とを見事に融合させた一冊です。
名作です。

 

何より、オーリーはすごくすごく、可愛いです💖

 

 

 

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バレエシューズ いいおかお はじめてのおつかい
ムーミン谷の冬 ヤマネコとウミネコ でんでんむしのかなしみ
あめの ひの ピクニック おそばのくきはなぜあかい がんばれヘンリーくん

 

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ファンタジーの名作「プリデイン物語」

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

タランと角の王 (プリデイン物語 1)

ロイド・アリグザンダー (著), 神宮 輝夫 (翻訳)

 

 


たくさんのファンタジー作品の名作がある中で、子どもに読ませたい、読んで欲しい作品として、私はこのロイド・アレグザンダーの「プリデイン物語」シリーズをあげます。

 

自分が楽しい!と思って読むファンタジーの作品はたくさんあるのですが、「子どもたちにも伝えていきたい」と思うファンタジーであるかどうかの条件のようなものが(勝手に)あります。


それは

・設定に凝りすぎていないこと
・名称が凝りすぎていないこと
・神話などにもともとあるモチーフが色濃く残っていること
・終わり方が後を引かずきっぱりと終わっていること
・人の生き方としての哲学がこめられているかどうか
・ファンタジーのようでありながら、現実を如実にうつす鏡であること

などなどです。

 

ファンタジー「終わり方」「読んだ人がすっと現実世界に戻って来れるようなラストであること」が大切だと思っています。

 

エンデが「果てしない物語」でファンタージエンを通して、繰り返し警告していたことです。
ファンタジーは、現実世界を豊かにするための心の旅であってほしい。
一つの成長過程であり、その中にずっと閉じ込められてはならないのだという警告です。

 

 

この「プリデイン物語」はこれらの条件に完璧に合致していました。

 

そして、登場人物のテンションが割と軽いです。
ラノベテイストで読みやすいです。かなり安心感があります。
そうでありながら、敵が恐ろしいので、重たい展開にさっと走るときの緩急がものすごく…。

 

 

主人公タランは、老魔法使いのダルベンの農場で働く豚飼いの少年でみなしごです。
英雄ギディオンに憧れ、いつか英雄になりたいと願っています。
この世界は、魔王アローンの影響が濃くなっており、戦争の足音が近づいています。

そんな時、タランは厳しい目をしたもしゃもしゃ頭の旅人と出会うのですが…。
ギディオン王子はタランが想像していたような、いかにも「英雄!」というタイプではありませんでした。
指輪物語アラゴルンみたいですが、もっと親しみやすいです。)

 

ヒロインのエイロヌイ王女(プリデイン物語3で登場)が、不思議ちゃんであり、ツンデレであり、お姫様であり、やんちゃ娘であり、妖精の血を引いているという、すべてのライトノベル作品が求める要素を全部つめこんだようなキャラクターです。

 

主人公の性格が明るく元気で(本人はいたって真面目なのですが…)、軽い掛け合いが多く、指輪物語ほど重たくないしさらっと読めます。

 

周囲をかためる者たちもコミカルです。
主人公に忠誠を誓う毛むくじゃらのガーギ
吟遊詩人のフルダー・フラム
気難し屋の小人のドーリ

などなど、個性豊かで愉快な登場人物がそろっています。

 

プリデイン物語 - Wikipedia

 

1.タランと角の王

魔王アローンの手下、角の王との闘いです。タランの最初の冒険となります。
魔女のアクレンのもとで、タランはエイロヌイという少女と出会います。

 

2.タランと黒い魔法の釜

アローンの最大の力であるのは、「不死身」と呼ばれる死者の軍隊です。
これを作る黒い釜を奪回しようとしたところ、釜は既にアローンの居城アヌーブンから失われていました。

3.タランとリールの城

このあたりから、タランはエイロヌイへの気持ちに気付き悩み始めます(ストーリー紹介はどうした!?)→タランたちは、アクレンとの対決に挑みます。

 

4.旅人タラン

タランはエイロヌイのことが頭から離れず、気持ちを打ち明けたいのですがエイロヌイは王女、自分の出自を確認する旅に出かけます。
ごらんのとおり、タランは割とずっとエイロヌイのことが気になってしかたなく、行動のになっているといってもいいぐらいです。

 

5.タラン・新しき王者

人間をまとめるドン家の居城が落ち、世界は絶体絶命に陥ります。タランたちは一か八かの勝負をかけて、アヌーブンへ向かい、魔王アローンと最期の決戦に挑みます。

 

 

この作品をやはり名作たらしめたのは、ラストの扱いでした。
指輪物語さながら、魔法の力はすべて去ることとなりますが、その時に訪れる、主人公タランの最後の選択──。

登場人物は皆どこかコミカルで、恋愛沙汰もあるというのに、そこかしこに作者が伝えたい、人生への哲学が込められた作品です。

 

 

先日、神宮輝夫さんの対談が載っていたので雑誌飛ぶ教室 第61号(2020年春)」 を購入したのですが、「今、新訳を出すとしたらロイド・アリグザンダーなら面白いだろう」と書かれていて、本当にそうだなと思いました。

 

ラノベ世代に十分に訴えかける力を持つ、たいへんよい作品だと思います。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

タランと黒い魔法の釜 (プリデイン物語 2)

ロイド・アリグザンダー (著), 神宮 輝夫 (翻訳)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

タランとリールの城 (プリデイン物語 3)

ロイド・アリグザンダー (著), 神宮 輝夫 (翻訳)

 

 

 

旅人タラン (プリデイン物語 4)

ロイド・アリグザンダー (著), 神宮 輝夫 (翻訳)

 

 

5巻目はAmazonにはなく、e-honにはおいてあるようでしたので、注文は可能なようです。ニューベリー賞を受賞しています。

www.e-hon.ne.jp

 

 

見てはいないのですが、アニメ化された時には「やはり」と思うほど、展開や軽さがアニメ、漫画に近いです。
(しかし、奥行きは深い!です!)

 

 

コルドロン [DVD] 形式: DVD

ウェールズ伝説を題材に、魔法と冒険が交錯するファンタジーアニメが低価格で登場。悪の帝王を封じ込めた壷を探し軍隊を作ろうとするホーンド・キングに、勇敢な戦士に憧れる少年・ターランが仲間たちと共に挑む。(「キネマ旬報社」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

人間になりたがった猫

ロイド・アリグザンダー (著), 神宮 輝夫 (翻訳)

 

 

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子どもの本だな【広告】

小人の冒険シリーズ 全5冊セット オンネリとアンネリのふゆ しろねこしろちゃん
賢者の贈り物 十五少年漂流記 ながい夏休み しょうぼうじどうしゃじぷた
ロッタちゃんと じてんしゃ しずくの首飾り よるくま

 

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今日の一冊「みんなうんち」

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

みんなうんち (かがくのとも絵本)

五味 太郎 (著, イラスト)

子どもにとって興味のある、そして大事な「うんち」をユーモアいっぱいの絵本にしました。「いきものはたべるから、みんなうんちをするんだね」というお話。

 

読みきかせのボランティアをしているとき、ちょっと真面目でしんみりしたお話を読んでシーンとなったようなとき…。

空気を換えたい…。
メリハリをつけるために選ぶのが下ネタ本です。

 

おなら、うんち…下ネタは下級生の子供たちに大人気です!
(残念ながら、と言うべきなのかどうなのか、上級生にも大人気です)

 

不謹慎かもしれませんが、この下ネタ系が大ウケした時には、昼休みまで引きずってずっと子供たちがうんこの話をしたりしています。

(主に男子です)


かがくいひろしさんのの「だるまさんが」もありますが、これはもっと、幼児向けのような気がします。

 

ナンセンス絵本の中でも特に秀逸な名作、「ごろごろにゃーん」のように、ちょっと深く考えてしまうようなところはありません。

 

なので、私はよく「みんなうんち 」を選びます。

これはうんちに特化していてなおかつ、うんちの形状やうんちの種類の多様性を紹介して、個性はそれぞれ…というようなところをふわっと伝えていたりしますので、割と奥が深い一冊です。

(うんちうんちとすみません…)

 

うわあっと笑ってくれたりしながらも、割とちゃんと見ていて、身近なうさぎのふんあたりから、自分の見たうんちのことを詳細に説明してくれたりします。

 

うんちは健康のバロメーターですし、先日(2020年5月12日)に亡くなられたジョージ秋山氏の漫画作品「浮浪雲」でもよく、主人公の浪人、浮浪雲
「いいうんこしてますか?」
と周囲に聞いて回っていたのが、とても記憶に残っています。

 

こんな記憶も、どこかで、「みんなうんち」の本ととつながったりしますので、色んな読書の経験を積み重ねていってほしいなと思います。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ごろごろにゃーん

長 新太 (著, イラスト)

くじらのような、イルカのような大きな飛行機が海に浮かんでいます。大勢の猫たちがそれに乗り込み、「ごろごろにゃーん」と出発です。「ごろごろにゃーん」と、飛行機は飛んでいきます。魚を釣りながら「ごろごろにゃーん」。くじらにあっても「ごろごろにゃーん」。山を越え、街をながめ、飛行機はにぎやかに「ごろごろにゃーんごろごろにゃーん」と猫たちをのせて飛んでいきます。長新太の真骨頂! 斬新で愉快な絵本です。

 

 

だるまさんが (日本語) ハードカバー - 2008/1/1 かがくい ひろし (著)

「だ・る・ま・さ・ん・が」左右にうごくだるまさん。ページをめくると……あらら、びっくり! 大わらい! さて、おつぎは……? 0歳の赤ちゃんから大人まで、ページをめくるたびわらいの渦に引きこまれる、とびきりゆかいな「だるまさん」シリーズ第1弾です

 

ものすごくはまるお子さんと、怖いと言って嫌うお子さんと、 評価が別れる本です(笑)
でも、ハマるお子さんにとっておならのシーンはもうそれはもう……大人気です(笑)

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

浮浪雲(はぐれぐも)

ジョージ 秋山 (著)

 

ジョージ秋山先生に哀悼の意を表します。
問題作「アシュラ」をはじめどの作品も尖っていて哲学的で、大好きでした。
(100巻を選んだのは、キリが良かったからです)

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

チムとゆうかんなせんちょうさん ナルニア国全7冊セット ぼくは王さま
白いりゅう黒いりゅう ともだちは海のにおい しょうぼうじどうしゃじぷた
おとうさんの庭 エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする 銀のシギ

 

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今日の一冊「スザンナのお人形・ビロードうさぎ」

今日、ご紹介するのは、かなりしっかりしたページ数の多い、「本型の絵本」です。

 

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>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

スザンナのお人形・ビロードうさぎ

マジョリー・ビアンコ (著), 高野 三三男 (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ごうじょうでごめんなさいが言えずだいじなお人形を手放すことになったスザンナのお話と、ほんとうのなみだをながしたビロードの子うさぎの物語。おもちゃと子どもとの愛情をえがいたあたたかい絵本。

 

この一冊には二つお話が入っていますが。「スザンナのお人形」も、「ビロードうさぎ」もどちらも、単独であってもまったく力を失わない、とても印象的なお話でした。

 

この二つには共通点があって、どちらも子どものおもちゃを題材にしている、ということです。

 

子供時代を彩る大切な思い出のおもちゃ、ぬいぐるみ…。
その中にも、「特別な一つ」が必ずあるはずです。

フランスでは、子どもの手放せないおもちゃやぬいぐるみ、毛布のことをDoudou(ドゥドゥ)と言うらしく、最近ちょっとファッションっぽく紹介されたりしています。
このお話で見る限り、意味合いが少し違うような気もします。

というのは、「特別なひとつであるおもちゃ」を大切に思う心に、国境はなく、どこにでもあることと思うからです。

 

 

「スザンナのお人形」

 

きかんきの強い女の子、スザンナはパパ、ママの言うことをききません。
駄目と言われたのに無視して、花瓶をかたむけて花のにおいをかぎはじめました。

しかも返事が生意気です。
「おこづかい持ってるから買って返すわ」

 

駄目と言われてるのに、ほら言わんこっちゃない…。
ページをめくれば、すでに花瓶は思いっきり粉々です。

 

しかしスザンナは謝りません。
この主人公スザンナは、反抗期というよりもともとの性格が頑固みたいです。

 

お父さんは、多分、ここでひとつ徹底的にやらねばと思ったのでしょう。
何とスザンナのおこづかいでは花瓶を弁償するのに足りないので、スザンナのおもちゃを競売にかけることを提案します!!

お父さんはごめんなさいが言えたら(競売なんて)やめる、と言いますが、スザンナはそんな取引には応じません。
言わされてごめんなさいをいうのも違うでしょうし、かといってそのまま許すというのも違う気がします。

 

お父さんは競売を実行します。

 

スザンナはすばらしいおもちゃが次々、ご近所の子どもたちの奪い合いにあい、競り落とされていくのを特に何の感情もなくただ見ています。

 

これはフランスのお話ですが、なんとなくフランスっぽいなあ、と思います。
プライドが高く、めちゃくちゃ頑固で、動かないとなったらてこでも動きません。
(個人的感想です)

 

そして、競売に大騒ぎをする子どもたちの姿が、やたらとユーモラスです。

 

しかし、最後に出してきたとても値段のつきそうのない、ぼろぼろにはげた一つのお人形…(「病気のお人形」なんて紹介されています)
(スザンナはそれを隠していたのですが、乳母が見つけて持ってきたのです!)
スザンナはわっと泣き出して…

 

スザンナにとって、どんなすばらしいおもちゃも、たった一つのはげてボロボロのお人形と比べられないのです。

 

そして、お父さんも乳母も競売の進行役のおじさんも、そこを区別はしません。
これは大事なのだから、別にしてあげようね、などという配慮はせず、すべて平等に扱います。

 

非常な厳しさを感じると共に、ここまで追い詰めなければ自分のしたことに反省する事が出来なかったスザンナの強烈な意思に戦慄したりもするのですが…。

 

このような頑固さは、子どもは誰しもどこかに持っているので、大人は常に試されていると言えるかもしれません。

 

 

 

 

 

「ビロードうさぎ」

 

ちょっとしたきっかけで、ぼうやの「お気に入り」になったうさぎのぬいぐるみ。
ずっと何をするにしてもぼうやと一緒でした。
うさぎは夜の子ども部屋で、年取ったウマに、愛されたおもちゃは「ほんとうのもの」になる、という話を聞きます。
ウマは昔、ぼうやのおじいさんが「ほんとうのもの」にしてくれたのでした。

 

ぼうやに可愛がられて、ほんもののうさぎになったつもりでいたうさぎが、庭にいたときに本物の生きたリアルうさぎに会って、つくりものだ!と言われたときは、読んでいるこちらもつらいです。

 

でも、ぼうやとの絆があればいいのではないか?と思います。

しかし、ある日ぼうやが重い猩紅熱にかかります…。
「ばい菌の巣ですよ」というお医者さまの一言でうさぎはぼうやの知らないうちに、ゴミ箱に入れて捨てられてしまいました。
ごみ箱の中で、うさぎは悲しみに震えます…。

 

このお話は本当に泣けるお話で、こうして書いてる今でもじわ~っと涙が…。

 

 

「ビロードうさぎ」の方は、復刊も別訳も出ており、kindle版ですとよい訳が99円で読めたりしますので、内容を確認するには最適です。
しかも英語版のkindleもありますので、この美しい物語をダブルで楽しめることでしょう。

 

 

 

かなり探したのですが、この「岩波の子どもの本」以外で出展が確認できなかった「スザンナのお人形」の方…。
手元の本にも、「フランスのお話」とだけ書いてあり、原典がわかりません。(石井桃子さんの訳です)

 

「ビロードうさぎ」にあわせてこの「スザンナのお人形」を出版された当時の編集の方の配慮は、本当にすばらしいなと思います。
(どちらも、一冊ずつにしてもかまわないほどの文字の多さです)

 

実際に子どもに与えてみると、ちょっとした長く綿密な描写がある「小さな小説」である「ビロードうさぎ」よりも、「わがままなスザンナ」の方が話が面白く、競売のてんやわんやの大騒ぎもあって、ぐぐっと話に引き込まれて読んでいきます。

導入として「スザンナ」はたいへんすぐれていますし、この二つを合わせて一つの本にしていた出版社のかたの配慮が実にすばらしいな、と思います。

 

強情なスザンナの方は、子どもからおもちゃへの愛、ビロードうさぎの方は、おもちゃから子どもへの愛、です。

二つのお話のコラボレーションで、一つの完璧な物語となっています。

 

わたしもこの一冊、ボロボロになりながらも、ずっと取っておいています。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ビロードのうさぎ

マージェリィ・W. ビアンコ (著), 酒井 駒子 (イラスト, 翻訳)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ビロードのうさぎ (望林堂完訳文庫) Kindle版

マージェリー・ウイリアムズ・ビアンコ (著),

ウィリアム・ニコンソン (イラスト), 毛利孝夫 (翻訳) 形式: Kindle版

 

 

The Velveteen Rabbit (Illustrated) (English Edition) Kindle版

Margery Williams (著), Lyudmila Khudiakova (イラスト) 形式: Kindle版

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

しずくのぼうけん 火星の王女 リンゴ畑のマーティン・ピピン
大雪 ジャッキーのうんどうかい 風をつむぐ少年
むしばミュータンスのぼうけん めっきらもっきら どおんどん おそばのくきはなぜあかい

 

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トム・ソーヤーのゲス男認定はJARO案件か?

以前、ご紹介したトム・ソーヤーの記事です。

 

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ここで、トム・ソーヤのゲス男案件をあますところなく暴露したわけですが、そのあとでふと思いました。

 

ちょうど、JAROの宣伝がやっていました。

うそ・おおげさ・まぎらわしい。

 私が読んだ翻訳ではない翻訳では、果たしてトムはそこまでゲスに描かれているだろうか?

果たして、あの記事で興味をもってくださった方が読んでみたとして、「そこまでかな~?」と思いはしないだろうか?

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

ふたたび考察

 

トム・ソーヤーの冒険

マーク トウェイン (著), 柴田 元幸 (翻訳)

ポリー伯母さんに塀塗りを言いつけられたわんぱく小僧のトム・ソーヤー。転んでもタダでは起きぬ彼のこと、いかにも意味ありげに塀を塗ってみせれば皆がぼくにもやらせてとやってきて、林檎も凧もせしめてしまう。海賊ごっこに幽霊屋敷探検の日々を送る中、ある夜親友のハックと墓場に忍び込んだら……殺人事件を目撃! 永遠の少年時代がいきいきと描かれた名作を名翻訳家が新訳。

 

まず、私が読んだ一発目で「はぁ!?」と思ったのは、この訳です。

 

とたんに、エイミー・ローレンスという女の子はかれの心から消え去って、一片のあとも残さなかった。今まで、トムはエイミーを夢中で愛していると考えていた。この情熱こそ、崇拝というものだ、とトムは思っていた。

(世界少年少女文学全集10 より 吉田甲子太郎 訳)

 

吉田甲子太郎さんの訳でした。

これは、今はもう絶版になっている、東京創元社さんの「世界少年少女文学全集」に入っていたものです。

 

何と、あのノーベル文学賞作家である、川端康成大先生が責任編集をされているのですが、確か「1(イソップなど)」が入っていたものの記述によると、「言葉自体は平易にしたが、子どもだからと言って内容を省略することはしなかった」と書かれていました。

 

そうでしょうね。

今まで、トムはエイミーを夢中で愛していると考えていた。この情熱こそ、崇拝というものだ、とトムは思っていた。

(世界少年少女文学全集10 より 吉田甲子太郎 訳)

 

この「夢中で愛している」という部分を、いったい子ども向けの他の翻訳作品ではどう訳しているのだろうか?

やっと開いた本屋さんに行って、確かめてみました。

 

 

まず、定評のある岩波少年文庫のトム・ソーヤです。
訳は石井桃子さんだ!
 

トム・ソーヤーの冒険

マーク トウェイン (著), T.W.ウィリアムズ  (イラスト),

石井 桃子 (翻訳)

 

 「 エミーに夢中だと思っていた」と書かれています。
とりあえず、ニュアンスは伝わりますがかなり柔らかい表現です。

愛している☆のパンチの強さにはかないません。

 

 いやいや、そんなパンチの強さは必要ないわけであって、こちらの訳の方が普通なのだと思います。

 

次は、青い鳥文庫です。 

 

トム・ソーヤーの冒険

マーク・トウェーン (著), にし けいこ (著), 飯島 淳秀 (翻訳)

 むぅ、これは…。


「仲良しのエイミー・ローレンスのことなど忘れてしまった」

これは、子供用の忖度を感じます!(笑)

トムがキスを迫ってベッキーを追いかけまわす所も読んでみましたが、非常に、非常~~に、柔らかい感じでした。

まあ、そうですよね。

それが普通ですよね。

子供むけですもんね。 

 

 

まだつばさ文庫・みらい文庫がありますが、こちらはまだ未確認です。

 

トム・ソーヤーの冒険

マーク・トウェイン (著), ちーこ (イラスト),

中井 はるの (その他)

 

 

トム・ソーヤの冒険 宝さがしに出発だ!

マーク・トウェイン (原著), 亀井 俊介 (翻訳), ミギー (イラスト)

 

 

では本家本元、英語ではどうなんでしょう?

トム・ソーヤーの冒険の原書は、グーテンベルクで読めます)

 

www.gutenberg.org

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

 

A certain Amy Lawrence vanished out of his heart and left not even a memory of herself behind. He had thought he loved her to distraction; he had regarded his passion as adoration; and behold it was only a poor little evanescent partiality. He had been months winning her; she had confessed hardly a week ago; he had been the happiest and the proudest boy in the world only seven short days, and here in one instant of time she had gone out of his heart like a casual stranger whose visit is done.

 

参考までに、

to distraction

とは、「気が狂いそうなほど、頭がおかしくなるほど」という意味だそうです。(英辞郎より)

 

He had thought he loved her to distraction;

 

 

 これは、

今まで、トムはエイミーを夢中で愛していると考えていた。

(世界少年少女文学全集10 より 吉田甲子太郎 訳)

というこの訳が確かに一番正しいかと思われます。

そして、そのパンチのきいた意味が、まっすぐ私に入ってきてショックを与えたのでした。

この翻訳でOKを出した、川端康成大先生をはじめとするお歴々の方々に敬意を表したいです。

 

 

そして、海外ものは翻訳によっておおいにイメージが左右されることも考慮に入れたうえで考察した結果、トムはやっぱりゲスであるという結論に達したことをここにもう一度明記しておきたいと思います。

 

しかし、最初に読んだ翻訳の影響は大きいなあ、と思います。
最初に読んだのがこれでなければ、これほどゲスだとは思わなかったかもしれない。

 

いきなり「夢中で愛していると思っていた」という女の子をほおりだしてよその女の子に色目を使い始めたので、本当にびっくりしました。

 

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

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子どもの本だな【広告】

あしながおじさん 太平のカメ日記 ちいさいおうち
算数病院事件 しろねこしろちゃん からすのパンやさん
おかあさんは魔女 かえりみち バタシー城の悪者たち

 

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今日の一冊「点子ちゃんとアントン」

 今日、ご紹介するのは児童書です。

 

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>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

点子ちゃんとアントン

エーリヒ ケストナー (著),  池田 香代子 (翻訳)

お金持ちの両親の目を盗んで夜おそく街角でマッチ売りをするおちゃめな点子ちゃんと、貧しいアントン少年―つぎつぎと思いがけない展開で、ケストナーがすべての人たちをあたたかく描きながらユーモラスに人生を語る物語。

 

 


家に遊びに来ていた子たちが、しきりとわたしに向かって言います。

「3×4!」
「2×6!」

いまさら、掛け算の練習でもしているのだろうか?
もう高学年になろうと言うのに。

 

忙しくて反応しないでいると、娘が横から教えます。

「2×6!だよね!でしょ?」
「??何のこと?どうしたの?」
「だってあの子がやってたじゃない。お母さんがすすめた本のあの子が」
「女の子で、犬に色々やらせようとして…」

点子ちゃんとアントン、かー!!

「そうだよ、あれだよ」

女の子で犬に色々やらせようとする。
それでわかった自分をほめたい!
(最近、記憶力の低下が激しいです)

 

ケストナーの傑作です。

主人公の点子ちゃんは本当に変わった子です。

 

点子のお父さんが学校の勉強をためしてみようと、点子に聞きます。

「3×8は?」
「3×8?3×8イコール120÷5」と、点子はいいました。

これは、相当に頭のいい子じゃないと出来ない計算のような気がします。
九九が出来るか試しているのに、それに対して割り算で返事をするのです。

 

点子ちゃんは富裕層、アントンは貧困層ですが、二人はなかよしです。
二人とも家庭が完全ではありません。それぞれに問題を抱えています。

点子ちゃんのお母さんはいっさい子供をかまわない人で遊びまわっているか寝ているかばかりです。お父さんは理解はありますが、忙しくてかまってやる暇がありません。

点子ちゃんのめんどうを見ているのは、主に家庭教師のアンダハト嬢です。

 

家庭教師は、面倒を見ている風を装って、小金を稼ぐために点子ちゃんを夜の路上に連れ出してマッチ売りの子役をやらせます。

 

 

アントンは母子家庭ですが、お母さんは体が弱いです。
なのでアントンは夜の路上で物売りをしています。


点子ちゃんは富裕層でありながらもネグレクト気味であり、アントンは貧乏で児童労働しないと家計を維持していけません。

 

というわけで知り合った二人なのですが、この「路上でものを売る」
点子ちゃんはすごいです。

この子には、間違いなく営業の才能か、俳優の才能か、何かわかりませんが才能があります。
どちらになっても、大成しそうです!
やらされてる感など微塵もありません。
哀れっぽく体をくねらせ、「マッチを!どうかマッチを買って下さい!」

迫真の演技です。

 

 

この話、とても面白いんだよ~と言っても、すすめた方の気分が乗りきらなかったとき、最初から読み聞かせするよりも、ピンポイントですごく面白かったところだけをピックアップして見せたのでした。

点子ちゃんが、いぬのピーフケに「赤ずきんちゃんとおおかみ」の相手役をやらせようとする所です。

 

点子はかごをおいて、寝台のすぐそばに歩みより、芝居の後見役のように、小さいピーフケにささやきました。「そこで、こんどはあたしをたべてしまうんだよ」
ピーフケは、(略)ごろりと横になったまま、いわれことなんかしませんでした
「あたしを食べなさい」と点子は命令しました。「どう?あたしをすぐたべるかい?」それから、足をふみならして、どなりました。「ほんとに、しようのないやつね。おまえは耳でも遠いの?あたしをたべるんだっていったら」

 


点子ちゃんはほんとうに面白い子供です。

 

自分のブログなので忌憚ない意見を書きますと、ケストナーは割と、主人公の男の子がすごくいい子ちゃんです。
真面目でお母さん思いで、なにごとにも一生懸命です。

その若干、いい子ちゃんすぎるほどいい子である男の子の補完をするように、真逆を行くように、女子が飛び抜けてキテレツです!

 

エーミールのいとこのポニー・ヒュートヘンもそうですが、とにかく行動が愉快でとても面白いです。

 

点子ちゃんは主人公であり、かつトンデモなので、そのキテレツ行動を追っているだけでもとても面白いです。
空想の力がゆたかで、次から次にゆかいなことを思いつきます。
そんな点子のああだこうだの大騒ぎのトラブルを、友達のアントンや料理人ベルタの機転や努力で助けられるわけですが…。


最後の最後にお父さんが点子ちゃんのベッドの横に座って、静かに話し合い、諭すシーンがとても印象的です。

 

点子ちゃんは家庭教師の悪行を手伝い、すすんでやって遊んでいたわけでしたから。
別にいたずらをしようとか、親を困らせようと思ったわけではなく、単純に面白かったからです。

(まあそれに、そこでアントンと友達になることもできたわけです)

 

点子ちゃんは言います。

「おとうさんはお金をもうけなきゃならないので、ひまがないってことはわかってるわ。でも、おかあさんはお金をもうける必要もないのに、あたしをかまってくれるひまがないのよ。どちらもあたしをかまってくれるひまがないんですもの」

 

忙しいからと子どもを預けている場所と人が、完璧なものである保証はどこにもありません。
子供の性質との相性もあり(親だって子供と相性があるでしょう…)、しかし子どもはその置かれた場所で思いきり頭を働かせ、さまざまなことをして遊びながら成長してゆきます。

 

偏頭痛で子どもをかまうつもりがない、常にパーティ三昧のお母さん、点子をほったらかしのお母さんはもう、弁解の余地は何ひとつありませんが、わたしはこのお母さんの「偏頭痛」という所だけはものすごく共感しましたので、あまり責める気もちになれませんでした。

 

というより、お話にならない人が構ってくるとかえってめんどくさい上に自由気ままな遊びの時間も拘束されてしまうので、このお母さんは偏頭痛で寝ていてよい、とさえ思いました。

なんだかそんな風に思わせてしまうケストナーが不思議です。
ユーモアにあふれ、人間愛にあふれた描写です。

 

このお母さんはこうなのだから仕方ないかな、と思い、
母親なんだから○○すべきなのに!!!
という気持ちにはなりませんでした。

 

多分点子ちゃんが、まったくひねくれる気配がないからでしょう。
大人の目がないのをいいことに、普通なら出ることが出来ない夜の町や遊び場にさえ出て行って

お父さんに最後に
「だが、大いにおもしろうござんしたね」
という台詞の小気味いいこと!

 

頭から終わりまで、紹介しきれないほど「面白い」がつまった作品です。 

 

 

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闇の左手 すてきな三にんぐみ 思い出のマーニー〈上〉
ぐるんぱのようちえん 大食いフィニギンのホネのスープ ともだちは海のにおい
めのまどあけろ おにたのぼうし だれも知らない小さな国

 

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「ガンバの冒険」アニメ作品を見てみました

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」がとても面白かったのと、家族のノロイに対する力説(ノロイ最強最悪説)を確認したくて、アニメ版も見て見たくなりました。 

 

冒険者たち ガンバと15ひきの仲間

斎藤 惇夫 (著), 薮内 正幸 (イラスト)

イタチと戦う島ネズミを助けに,ガンバと15ひきの仲間は、船で夢見が島に向いました。しかし、白毛ノロイがひきいる、どうもうなイタチの群れに追いつめられ、海岸の岩山で最後の決戦の時をむかえます。

 

 

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さらに、ガンバの冒険Wikipediaを見ていた所、こんな記述が…。

ガンバの冒険 - Wikipedia

動物のキャラクターながら日本のアニメ史上でも屈指の恐ろしい悪役として知られ、藤田和日郎による『週刊少年サンデー』に連載されていた少年漫画作品『うしおととら』の白面の者のモチーフになったと言われている。

漫画「うしおととら」は大好きだったし、悪役の白面の者はこれはもう怖さが半端なく怖い感じでしたので、非常によく覚えています。
白面の者のモチーフになるとは、これは相当なものです。

 

というわけで、Amazonプライムですが、まず1話を見て見ました。

 

 

 

ガンバの冒険(1975TV版.Amazonプライム)

頑張り者のネズミ・ガンバは、相棒のボーボと一緒に、海を一目見ようと港町までやってくる。そこで出会った子ネズミの忠太が、自分たちの島の仲間を助けて欲しいと求めてきた。力自慢のヨイショや博学のガクシャといったネズミ仲間とともに、大海原へ乗り出すことを決意する。だが、目的の島には脅威の白イタチ・ノロイが待ち構える。小さなネズミ7匹が繰り広げる波乱に満ちた大冒険。他に類を見ない表現にドキドキハラハラの連続だ。(C)斎藤惇夫岩波書店・TMS

 

ガンバの声は安定の野沢雅子さん。
ノロイの声はねずみ男、フック船長で覚えのある大塚周夫さん。
かわいくほのぼのとした絵です。 

 

見始めました。
...!?
なんだか、すごく、上手いです。

 

アニメというより、映像として技術、演出がものすご~くうまいです。
絵はもちろん、アニメ黎明期の線画のそれなのですが…。

カット割り、アングル、光と影の使い方、音楽の入れ方、ワンカットの長回し風の流れの中で次々にカメラ(?)の位置を変えていく...。

 

素人目からしても、びっくりするほど引き付けられます。
こんなクオリティの高い演出を駆使するなんて、技術が発達した今のドラマや映画でもなかなか見られません。

 

そして、ガンバが皆と仲良く騒いでいる所に、唐突な沈黙!
シーンとなりました。このギャップがすごい。
雷の音と沈黙と、白黒の映像...。
忠太がよろよろとやってきました。血が滴ります。
(床にしたたる血がなんだかすごくリアルです)

 

そして忠太の語るイタチの被害と、ノロイという名前に反応するねずみたち...!

海から(ゴジラ並の大きさで)赤い口を開きカッと現れるノロイの姿…!!


こ…怖い!!!

ねずみたちのノロイの名前に対する恐怖心がすごいです!

 

アニメの「動かし方」「撮り方」「演出」によって、これほどの迫力が出せるんだと感嘆しました。

 

だんなは、幼稚園の時に見てトラウマになったようです。
ノロイの恐ろしさが深く刻み込まれたのも、このアニメ自体の出来の良さと無関係ではないのだな、と思いました。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

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※ここからはアニメおよび、原作のネタバレを含みます!!
名作なのでぜひ読んでから・見てからおすすめします。

 

 

アニメで印象に残ったところ

 

・7~9話、黒ギツネのザクリ編。
リスのクリークの覚悟が胸に痛いほどです…!
「リスには爪も牙もない、でも欲しいんだ!大きな牙が…!」
これは本当に子ども向けのアニメなのでしょうか!?
まだ序盤で、しかもまだ旅の途中でイタチの影もないのに、こんな盛り上がりを見せてこれなら、ノロイはどうなっちゃうんだろう!?と思いました。

 

・キツネ、ねこ、犬(野良犬と猟犬と両方)、そしてイタチと、あらゆる外敵に襲われます!
そのすべてがものすごくこわく、そしてどうぶつの動きがすごいです。
ガンバたちも服を着たり二本足で立ったりしていますが、走って逃げるところはまんまネズミの動きと走り方です。

 

・15話「鷹にさらわれたガンバ」、人間との束の間のふれあい。
このアニメ作品はすべて、人間が灰色で塗りつぶされており、ほぼ存在はありません。
ネズミの目線、鼠の世界としての物語のきりとりが際立ちます。
そこで唯一と言える人とのふれあい…。
孤独な山男が、雪山でひとり孤独にさいなまれていたとき、鷹にさらわれてひとり、山小屋に逃げ込んできたガンバを見つけます。
これまで灰色の恐ろしい怪物でしかなかった人間、その個人のやさしがしみる、とても良い回でした。

 

・23話「裏切りの砦」、これはガンダムなのかな?というような、ハードなエピソードをぶっこんできました。
食料を持ってやってきてくれた高倉ネズミたち、このままではまったくノロイに対してなすすべもないまま、全員殺されてしまったことになります。しかも食糧もムダに。
ノロイの恐ろしさがひしひしと心に迫ります。
一郎が死んだときのイカサマの悔し泣きがとても印象的でした。

 

ノロイ

噂に違わぬ恐怖の大王感満載でした。とても勝てそうにない感がすごいです。
ノロイが出る頃には、ガンバのアニメをもはや家族全員で見ていました。
バカにしていた上の子も釘付けです。とても目が離せないのです!!
そして、要所要所のコマ回しや演出が抜群にうまいので(うますぎるので)、目を離すことが出来ません。
ノロイの恐ろしげな顔のカットがバァ~ン!!とすごいタイミングでアップになります。(だんな「ヒィー!!怖い~っ!!!」)
ラストに向けてのガンバの頑張りが本当にすごかったです...。
そして、最後の最後の最期まで、ノロイは最強の敵で在り続けました。敵役の誇り...、この目に焼き付けられました。
さすがに、言われるだけのことはあるノロイでした…。

 

 

アニメと原作のちがい

 

・15ひきの仲間は多すぎるからでしょう。
2~3びきをあわせて1ぴきにしていました。
原作でのマンプク+ボーボ+アナホリ→アニメのボーボ
原作でのイカサマ+イダテン→アニメのイカサマ
といった感じです。

 

ノロイの島に着くまでが原作は短い。
アニメは26話の中、1~16話までがロードムービーになっています。
原作は、割とあっという間にノロイの島に着きますので、全編ほぼノロイとの戦いになっています。

 

・リーダー
アニメでは、リーダーをどうするかでもめたり、仲間なんだからリーダーのようなものはない、という風になりますが、原作でははっきりとリーダーをガンバと決めます。
リーダーを決めないと、現場で緊急事態に到った時の即時判断が出来ないからです。
このあたりが、全編ほぼイタチとの戦いなのもあって、原作は緊迫感に満ちた出来になっています。

 

・ガクシャ
ガクシャは原作では、本当に尊敬すべき大学教授のようなキャラであり、だいたいガクシャの言うことに従っていればほぼ間違いないかもしれない、という感じです。参謀将軍といった雰囲気です。
みずからの知識と作戦に自信のあるタイプだからこそ、最後の作戦が破れた時の心の折れ方がいっそう胸にしみます。

 

・イタチとの戦いかたが原作は慎重
着いた直後から、とにかくガンバたちはイタチに見つからないように細心の注意を払います。
ノロイの怖さに関しては、アニメの方が数十倍割り増しで怖かったです!


イカサマ。
娘「(アニメの)イカサマかっこいい。イカサマ好き…」
昔で言う渡世人風の、ちょっと斜に構えた一匹狼のイカサマはかっこいいいです。
原作のイカサマは、アニメのイカサマともまた違ったカッコよさなので、ぜひイカサマファンは原作を読んで欲しいです。
アニメで高倉ネズミの一郎が死んだ所のショックの涙などは、原作でボーボが死んだときのイカサマの涙に通じるところがありました。
(原作のボーボ、アナホリの特技があるわけでもなく、ただぼうっとしているだけなのにものすごい働きを見せます…)


・潮路
もっとも違いがあったのは潮路です。
すべてにおいて完璧と言えるすばらしいアニメ作品でしたが、わたしは潮路に関してだけは不満でした...。
というより、原作の潮路がとても良かったのです!!
原作の潮路は、大和撫子な守られるヒロインではなくて、ときには女なんだからという意見に真っ向から物申し、自ら戦う女戦士のような存在でした。
だからこそ、「今言って!」と言われた時にどうしてガンバは言わなかったのか…。
潮路はどうして、惑乱したように自殺行為とも言える行動に出たのか…。
ガンバのさいごの「潮路ぼくは…」という叫びの切なさ…。
(→胸がいっぱい)

 

アニメ作品を見たことがあるかたは、ぜひ原作を!!
原作を読んでみて欲しいです。

 

 

 

 

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レ・ミゼラブル ツバメ号とアマゾン号(上) ぜったいたべないからね
いいおかお エーミールと探偵たち おにたのぼうし
ねずみくんのチョッキ かあちゃん取扱説明書 魔女の宅急便

 

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今日の一冊「ばばばあちゃんのマフラー」

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

ばばばあちゃんのマフラー

さとう わきこ (著, イラスト)

冬のある日、ばばばあちゃんは、風邪をひいたお月さんに自分のステキなマフラーをあげる約束をします。ところが、次々にいろんな出来事が起こり、とうとうそのステキなマフラーはボロボロになってしまいました。

 

さとうわきこさんの、ばばばあちゃんシリーズの中の一冊です。

ばばばあちゃん」のお話はどれも、ばばばあちゃんの台詞で成っていますが、それがうたうように、詩のように言葉がつづられていきます。

 

この本は、マフラーをおつきさんに上げる約束をするのですが...。

 

実際は、おつきさんはほったらかしにされたまま、マフラーは二転三転、色んな人(動物)、いろんな場所に、いろんな用途で使われながらあちこちをめぐりめぐっていきます。

最後はボロボロになって、ばばばあちゃんは編みなおし、無事におつきさんのもとに届けられます。

 

この絵本、うたうような言葉に合わせて、マフラーの変化が面白いです。

月が変化していくようにマフラーの持ち主も、用途も変化していき、最後は丸くおさまるという、きれいな終わり方です。
四季の巡りが本のページをめくりながら変わっていく様子も素敵です。

 

途中で、「おつきさんどうなった...?」と思わないこともなかったのですが(笑)、ゆったりと時は流れます。

 

子供たち、大好きな一冊です。

 

 

 

 

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科学と科学者のはなし ジェインのもうふ ふしぎなたいこ
げんきなマドレーヌ くまのがっこうシリーズ(既12巻) コッペパンはきつねいろ
バルバルさん チポリーノの冒険 しょうぼうじどうしゃじぷた

 

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今日の一冊「どろんこハリー」

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

どろんこハリー

ジーン・ジオン (著),

マーガレット・ブロイ・グレアム (イラスト), わたなべ しげお (翻訳)

ハリーは、黒いぶちのある白いイヌです。なんでも好きですが、お風呂に入ることだけは、だいきらいでした。

 

これも本当に長い長いロングセラーですが、何度でも手に取ってしまう魅力のある本です。

 

白黒のぶち犬、ハリーは、どろんこになってしまい、家族にもこれがハリーだとわからなくなってしまいます!
そもそも、お風呂がきらいなのでブラシを隠したのが原因でした。

好き放題遊びまわった外の世界は、危険と魅力に満ちています!

遊びまわる中に、そうでなければ見ることがなかったさまざまな家の外の景色があります。

しかし、腹の虫には勝てません。 

 

黒いぶちのある白いいぬ

白いぶちのある黒いいぬ

に変化したところは、ハリーには悪いのですが、言葉遊びの意味もあって笑ってしまいます。

 

ここからが悲しいところです。

とっておきの芸を披露してもわかってもらえません。
家に受け入れてもらえないハリーは、とぼとぼとおしりを向けて家を去ろうとします…。
切ない…!!

まって、ハリー!
もうちょっと頑張って!


こうやって書いてるだけで切ないです。

 

どろんこになってあそぶハリーの姿に、汚れなどかまわず夢中になって遊ぶ子どもの姿が重なります。

 

 

 

Harry the Dirty Dog (Harry the Dog) (English Edition)

Kindle版 Gene Zion (著), Margaret Bloy Graham (イラスト) 形式: Kindle版

 

 

 

 

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サムのおしごと 野尻湖のぞう しずくの首飾り
ともしびをかかげて〈上〉 ふらいぱんじいさん からすのパンやさん
たべたのだあれ 五月三十五日 ロッタちゃんと じてんしゃ

 

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大人が読む児童書「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」 3 読了しました。まず親が読んで!

大人が読む児童書。
積ん読・解消計画★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

大人が読む児童書

 

冒険者たち ガンバと15ひきの仲間

斎藤 惇夫 (著), 薮内 正幸 (イラスト)

イタチと戦う島ネズミを助けに,ガンバと15ひきの仲間は、船で夢見が島に向いました。しかし、白毛ノロイがひきいる、どうもうなイタチの群れに追いつめられ、海岸の岩山で最後の決戦の時をむかえます。

 

 

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実はこれを書いている時点で、読み終わってしまいました。

 

あまりに面白くて、徹夜してしまいました!!

やめられない、とまらないです。

 

Amazonプライムのガンバも見てみようと思っているのですが、とりあえず、読了後の雑感です。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

しかし、この画像☟ 

 

f:id:WhichBook:20200606011410j:plain

 

ノロイは非常にカリスマ性のある、悪魔的な悪役でしたが、ここまで怖いか!?と言われると、原作のノロイに関してだけは微妙な感じでした。

 

怖いは怖いのですが、普通に怖いです。

ノロイはていねい口調でした。
悪魔的で残虐ですがどちらかと言えば、力押しよりも頭脳派です。
声にも姿にも魅力がありますが、特に声の魅力はすごくて、魔法のように動物たちを広い所に誘い出してしまう力があります。

統率力もあり、基本単独行動であるイタチたちをまとめ、ノロイが呼び出して配下が殺す、という戦法を取っているようです。

 

何度もねずみたちを広い場所に誘い出そうとするのですが…。
歌試合、踊り試合、と続き、ねずみたちは負けません!

 

戦いの場に出て行かない、という消極的な戦い方です。

 

詩と歌をふんだんに使っています。

児童文学、よく詩が出てきます。
トールキンなどを読んだ方は、美しい瀬田貞二さんの訳をご存じかと思いますが、この作品にも、歌や詩がふんだんにちりばめられています。

 

精密な描写に加え、詩まで載せている…。
すごいです。

 

かわいいめすネズミが出てきます。
忠太のお姉さん、潮路です。

 

潮路とガンバのやりとりは、 非常に、非常に、考えさせられるものでした。
実に日本的だと思ったのですがどうでしょう?

この「日本的」という意味は、決して悪い者ではなくて、情緒と余韻にあふれていました。

 

私が見るところ、この「冒険者たち」のMVPは間違いなく潮路でした!

 

ここまでネタバレネタバレと言っておきながら、このあたりネタバレせずに巧妙に隠していますが、 やっぱり、読んでみて欲しいな~!!
これだけ面白いのだから!!
と思います。

 

おとなの方に意見聞きたいです。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

さてガンバの冒険、見終わったわけですが、実はルドルフとイッパイアッテナもまだ読んでないので、読むべきものはまだたくさんあります!

  

どこかの本を読む訓練についてのニュースにも書かれていたことでした。
「まず親が読んで」という一言が出てきました。

スマホスマホになってしまっている世の中です。
「まず親が本を読んでいる姿を見せなければ、子どもも読むことはない」

これは本当にそうだな、と思いました。


本を読むのにあまり慣れ親しんでいない大人のかたにも、児童書はぴったりです。

 

絵本ではなくて、ちょっと硬質で名前の売れている児童文学は「これ、子供が読めるの!?」と思うほどのクオリティです。

独自の進化を遂げて、今軽く読める大人向けの小説よりもはるかに芸術的で哲学的であったりします。
しかも読みやすいです。

 

「ともしびをかかげて」を読んだ時にも感じたことでした。

 

手を抜いていないな、と思うときがあります。
文章自体は平易で、わかりやすいながらも、子どもなんだからこの程度だろう、子どもなんだから、ここは省略してしまおう、という部分がありません。

 

「子どもに対するやさしい思い」や、「教えておきたい道徳」だけで終わらないのです。

それ以上に、大人になるまでに、どうしても伝えておかなければならないことを伝える、という。
この世のそのままの姿を、真実を、正確に伝える、という真摯さは痛いほどです。

 

読んでいるこちらも真剣に向き合わなければなりません。
思わず襟を正すようになるところがあります。

 

このすばらしき児童文学の世界を、ぜひ大人の方に味わっていただき、そして子どもに伝えていってほしいです。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ガンバの冒険(1975TV版.Amazonプライム)

頑張り者のネズミ・ガンバは、相棒のボーボと一緒に、海を一目見ようと港町までやってくる。そこで出会った子ネズミの忠太が、自分たちの島の仲間を助けて欲しいと求めてきた。力自慢のヨイショや博学のガクシャといったネズミ仲間とともに、大海原へ乗り出すことを決意する。だが、目的の島には脅威の白イタチ・ノロイが待ち構える。小さなネズミ7匹が繰り広げる波乱に満ちた大冒険。他に類を見ない表現にドキドキハラハラの連続だ。(C)斎藤惇夫岩波書店・TMS

 

 

 

 

 

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銀のほのおの国 片耳の大シカ ふしぎなたいこ
おおきな木 ゆめくい小人 ロビンソン・クルーソー
やかまし村の春・夏・秋・冬 エーミールと探偵たち ロッタちゃんのひっこし

 

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田畑精一さんが亡くなられました。

絵本作家の田畑精一さんが亡くなられました。

古田足日さんをはじめ、昭和期の名作絵本・名作児童書をともに彩ったすばらしい絵を描かれる方でした。

心からお悔やみ申し上げます。

 

 

 

 

 

 

おしいれのぼうけん

ふるた たるひ (著), たばた せいいち (著)

お昼寝前に、ミニカーのとりっこでけんかをしたさとしとあきらは、先生に叱られておしいれに入れられてしまいます。そこで出会ったのは、地下の世界に住む恐ろしいねずみばあさんでした。 ふたりをやっつけようと、追いかけてくるねずみばあさん。でも、さとしとあきらは決してあきらめません。手をつないで走りつづけます―。

 

「おしいれのぼうけん」 は、以前記事を書かせていただきました。

何をいまさらという大ベストセラーであり、これからも読まれ続けていくであろう本です。

田畑精一さんの、古田足日さんの本との親和性はそれはすばらしく、そのコンビ力が結集したと言えるのが「おしいれのぼうけん」です。

 

 

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算数病院事件 (5年3組事件シリーズ) (日本語) 単行本 - 2009/8/1 後藤 竜二 (著), 田畑 精一 (イラスト)

算数病院は、「みんなが算数ができるように」と、とも子先生が発明した病院です―。楽しくて、わくわくして、人なつかしくなる物語。

 

小学生高学年向けの名作です!

ルパン三世のアニメを心から楽しみにしているシーンが出てきたりと、昭和期のものでありながら、そこにある子どもの心は今を生きるこどもとリンクしています。

 

 

 

さっちゃんのまほうのて (日本の絵本) (日本語) 単行本 - 1985/10/1 たばた せいいち (著)

先天性四肢欠損という障害を負って生まれたさっちゃん。傷つきながらも右手の指がないという障害を受けいれ、力強く歩き始める。

 

人の心ない言葉も、つらい気持ちも、決して目をそむけることなく、真正面から描いた名作です。

 

 

 

 

 

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はるかな国の兄弟 じごくのそうべえ にじいろのさかな
レ・ミゼラブル だるまちゃんとてんぐちゃん ドリトル先生ものがたり
ロッタちゃんと じてんしゃ わたしのわごむはわたさない 思い出のマーニー〈上〉

 

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大人が読む児童書「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」 2 戦うというのは、逃げるということ、そして、逃げる道もおそらくないということ

大人が読む児童書。
積ん読・解消計画★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

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冒険者たち ガンバと15ひきの仲間

斎藤 惇夫 (著), 薮内 正幸 (イラスト)

イタチと戦う島ネズミを助けに,ガンバと15ひきの仲間は、船で夢見が島に向いました。しかし、白毛ノロイがひきいる、どうもうなイタチの群れに追いつめられ、海岸の岩山で最後の決戦の時をむかえます。

 

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さてガンバの冒険、続きです。
アニメ情報を見る限り、15ひきもいるわけではないのですね。 

 

リーダーを決め、ガンバが選ばれました。
ガンバたちは、忠太の情報を総合して地図を作ります。

しかし、みんなの相談が…。ものすごく現実的です。
ノロイ(イタチ)には勝てない、ということが最初からはっきりしているのです。ねずみたちはそれを承知できた、というのです。

戦うというのは、逃げるということ、そして、逃げる道もおそらくないということなのです。

どんだけ絶望的な状況なのか…!?
今までさまざまな冒険ものの児童文学を読んで来ましたが、ここまで絶望的な状況はなかなかないです。

 

ボーボというおっとりしたねずみが場をやわらげ、フラグになりそうな島に伝わる不思議な歌を聞きます。

イカサマという、サイコロ賭博をやっている渡世人風のねずみは、なんとなくガンダムのカイさんみたいです。
たいへん昭和風ですが、斜に構えていてなかなか、かっこいいです。

 

 

 

 

ここで第二部に入りました。

 

甲板での夜明けのシーンが鮮烈です。朝焼けを初めてみるガンバ、その美しさに目を奪われます。

 

まだリーダーに慣れないガンバを、ガクシャの知識とヨイショのたくみなサポートが支えます。ガンバは徐々にリーダーらしくなっていきます。
(ヨイショは、どうして名前がヨイショなんだろうかと思っていましたが、ガンバのことをヨイショするからヨイショなんだとわかりました。)

 

島についてねずみたちがリヤカーに乗って、馬をひっぱたき、カーチェイスのような逃走劇を演じたり、とにかく面白いです。

 

途中の「オイボレ」という年寄り…。

不思議なネズミです。よろよろとしてオイボレなのに、途中で彼が指摘することはすべてあたります。
まるで、この島もイタチからの逃れ方も知っているような...?

 

ん?と思います。

 

イタチの回し者とかではないだろうな?と思っていたら、ねずみの一人が作中で同じことを言及して「それはない。ひどい」みたいな会話がありました。
なので、スパイなどではないようです。 

 

!!

 

これは、忠太が島について説明している時に気になる記述があったはず!!
ページを巻き戻して読み返します。

 

トキです。
忠太のおじさんで、以前先見のめいを働かせ、一刻も早くこの島から逃げることを提言してひとり別行動を取ったネズミです。多分死んでいるだろう、と書かれています。

読みかけたときに、「こういうキャラって実は生きていて…などというフラグだったりするんだよな~」と思っていました。

きっとこいつはトキだ!

 

島のモデル、最初は沖縄かな?と思いました。

風を防ぐために石垣があり、椎の木が植えてある...。
あとがきによれば、八丈島のようでした。

 

ノロイに家族を殺されたツブリたちが憎しみに燃えて、(勘違いで)ねずみたちを脅すシーンが怖いです。

最初は姿が見えないのでで...出たぁ~!!と思いました。
これを超えるノロイってどんなのだろう。

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ガンバの冒険(1975TV版.Amazonプライム)

頑張り者のネズミ・ガンバは、相棒のボーボと一緒に、海を一目見ようと港町までやってくる。そこで出会った子ネズミの忠太が、自分たちの島の仲間を助けて欲しいと求めてきた。力自慢のヨイショや博学のガクシャといったネズミ仲間とともに、大海原へ乗り出すことを決意する。だが、目的の島には脅威の白イタチ・ノロイが待ち構える。小さなネズミ7匹が繰り広げる波乱に満ちた大冒険。他に類を見ない表現にドキドキハラハラの連続だ。(C)斎藤惇夫岩波書店・TMS

 

 

 

 

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大人が読む児童書「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」 1 ノロイの恐怖

 大人が読む児童書。
積ん読・解消計画★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

大人が読む児童書

 

冒険者たち ガンバと15ひきの仲間

斎藤 惇夫 (著), 薮内 正幸 (イラスト)

イタチと戦う島ネズミを助けに,ガンバと15ひきの仲間は、船で夢見が島に向いました。しかし、白毛ノロイがひきいる、どうもうなイタチの群れに追いつめられ、海岸の岩山で最後の決戦の時をむかえます。

 

実はこのお話、名前は知っていて紹介もしたかったのですが、読んだことがありませんでした。
そして、1975年のテレビ版「ガンバの冒険」も見たことがありませんでした。

 

だんな「おまえ、ノロイも知らないの!?」

わたしはテレビは禁止されて育った世代なのです~~。
(母が「アニメ・漫画=悪」世代のどストライクです)

 

だんなが、「ノロイ」の恐怖について語ってくれました。

ノロイは怖い。
・あれはトラウマ
・いまだにイタチに対して恐怖がある。
ノロイほど恐ろしいものはない。
ノロイは恐怖。どこまでも追いかけてくる
ノロイからは逃れられない。
・大きさがはんぱない。何十倍どころか何百倍もでかい。
・夢に出る。
・うなされるほど怖い。

 

要は「怖い」以外のことは一言も語ってないのですが、私の反応に納得がいかないらしく、検索してきて見せに来ました。

「ほら!ほら!だってこれだよ!?ほらノロイ!」

それで見せられたのがこれです 

f:id:WhichBook:20200606011407j:plain

まだあります。

f:id:WhichBook:20200606011410j:plain


こ…怖ぁ~!!!
なんじゃこりゃ!これは怖いわ!!

 

「本当に怖いんだよ!!ノロイは!!」

 

検索してみると、アニメ史上最強・最悪・最凶、などと書かれており...。
そのものすごさを語っています。

こんなサイトもありました。

www.excite.co.jp

 

美しき最強のトラウマ…。
闇のカリスマ…。
大きさもゴジラ並…。

字づらからして並々ならぬノロイに対する情熱を感じます。
最早怖いを通り越してリスペクト…というより教祖様のようです。

 

これはひとまず、読んでみねばなるまい。 
AmazonプライムにTV版もあったのですが、やはりここは読まねばなりません!

 

というわけで、長々しい説明を付けましたが、ガンバの冒険を読んでみたいと思い購入してきました。 

もう、40年たった今でも棚に並び続けていますし、間違いがないことはわかっていますのでしっかり本屋で購入です。

 

さて、どうか…。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

冒頭はこんな感じではじまりました。

ドブネズミのガンバは、台所の床下の貯蔵穴に住んでいました。長さ一間、幅・深さ半間のその貯蔵穴はコンクリートでつくられており清潔で、そのうえ、周囲には一尺四方の窓が四つあいており、風通しも申し分ありませんでした。

 

…今の、映像文化になれきった子供たちには、敷居が高いかもしれない綿密な描写です。

 

しかし、文章は平易でたいへん読みやすいです。 
漢字も多く緻密な描写なのですが、はっきりしているので逆に想像しやすいです。

 

ガンバはこの街のすみかで幸せに暮らしているのですが、こんな所が目につきました。

つまり、ガンバは静かな時に思い出されるようなことは、まだ何一つとしてしたことがなかったのです。(略)することがないので、くり返し、くり返し、このすみかはすばらしいとか、自分よりも強いやつは近所にはいない、ということだけを考えていました。

 

今どきの子供っぽいです。
これは非常に子どもを見ている目線として共感できました。

俺TUEEEの自己満足の(子どもの)世界です。

 (一応、俺TUEEEの説明リンクを置いておきます。)

どうでもいいですが、

それは六月の末のむし暑い夜のことでした。

というのも、今の季節にあっています。(まだ月末ではありませんが…)

 

そこにマンプクという太ったネズミ仲間がやってきて、ガンバを海へとさそいます。

気乗りのしないガンバです。
ええ~?ひとりで行けばぁ~?おれはここでたいくつなんてしてないよ。
という感じのガンバに、マンプクが反論します。

おまえの言葉は、まるで若いころ、散々あちこちを冒険してきたやつが、隠居して、孫でも集めていうことだ。おまえなんか海はおろか、何一つ知ってやしないじゃないか!そんなおまえが、でまかせにしろ大きくて広いものなんて口にするなよ、おわらいだぜ。だいたい、夢見るってことと、海みるってことは、もともとは同じ言葉なんだぜ。どぶ川と海をまちがえんなよ。

若いくせに、現状に満足して動こうとしないガンバを、マンプクの激しいことばが揺り動かします。

 

だいたい、夢見るってことと、海みるってことは、もともとは同じ言葉なんだぜ。

う~ん、いいせりふです!

 

こうして、物語にはすうっと入っていけました。
序盤からなにしろ、普通以上に面白いです。

 

これは、古い物語を読んでいるとたまに感じることなのですが、現代のサラサラっとした感覚的な描写とちがって、実に緻密です。

港の描写なんて、ものすごいです。

物揚げ場のむこうの小舟だまりには、鉛色に沈んだ海の上に、小さい船が三十隻あまり、それに白いパイロット船、タグボートが三隻ずつ並んでいました。その小舟だまりの右手に、桟橋がぐっとのびていました。桟橋の両側には、大きな客船と貨物船が横づけされていましたが…

と、この調子です。

(これは一部だけで、実際この三倍ぐらいあります)

 

子どもだからといって、いっさい手を抜かない描写です。
しっかり、「場面をきちんと文字で表現すること」を意識している文章です。

これをしっかりと読み込んだらものすごーく語彙力がつきそうです。
(でもわからないなりに、さらっと物語に引きずられて読むのもそれはそれでいいと思います)

 

なんとなく、感覚でわかるだろう、というような感じの甘えがいっさいありません。
きりっとしたかっこいい文です。

冒頭で「長さ一間、幅・深さ半間」なんて出てきた時には、どうしようかと思いましたが…それもまた、ご愛敬です。
「一間て何だろ?」と思ったら、ググレカスと言ってやればよい、とさえ思います。

 

ガンバとマンプクは慣れない港で、「ガクシャ」というネズミと行き合います。

この名前の付け方、非常にわかりやすいです。 

 

ちょっと引用が多すぎたのでこのあたりでやめておきますが、さすがガクシャなだけあって、おとなでもちょっと、というようないかにも教授や博士が使いそうな賢そうな知識がバーッとご披露されます。

 

彼のあとについて入った港街の(ネズミの)酒場?たまり場?で、この「ガンバと15ひきの仲間」という、15ひきほとんどの仲間が登場します。

 

15ひきです。

 

多っ!!

しかし、これが混乱してしまうことはありませんでした。

ちょっとあとで、15ひきの仲間の名前がご披露されますが、この港街の騒ぎの中でしっかりと一匹いっぴきキャラづけされ、ほとんどが頭に入っていました。

ガクシャ、ヨイショ、イカサマ、バレット、イダテン、シジン、オイボレ、ボーボあたりはしっかり印象づけられていました。


(ちょっとカリック、ジャンプ、テノール、バス、アナホリあたりがあやしかったですが、名前でだいたいわかります)

 

 

このねずみたちのバカ騒ぎ(ラム酒を一気飲みしたりします)の中に、傷だらけの忠太というネズミがやってきました。生々しい血がしたたる描写がすごいです。

 

ここでいきなり、漢字名称登場です!
助けをもとめてきたネズミと、助けに行くネズミとの区別をしっかりと付ける、心にくい工夫です。

 

出ました。ノロイの名前。

 

急にあたりが静まり返ります。

あれほど元気だったヨイショも、天を仰いでひとことも口をききません。

怖いです。

 

忠太の説明が非常に的確です。
簡潔・明瞭・筋が通っていて完璧です。

忠太のいた島は、数千のネズミが繁栄していましたが、イタチのノロイ一族によって殺され、百匹程度という所にまで追い詰められているのです。

 

ガクシャは助けを拒否しました。ヨイショも、その場にいたすべてのネズミたちも、助けの手に声を上げよう、手を上げようとはしません。

 

…読めば読むほど怖そうです。

ガンバは、そんなネズミたちの前でひと演説ぶちます。

島の仲間はなんだい!死んでもらいましょうってことか?黙れ!イタチを知ってるとか、何とか、でっかい顔すんなよ!今いったとおり、おれはいく!

ガンバ、かっこいいです。

しかし残されたのはガンバと忠太、二匹だけでした...。

二匹は島目指して船に乗ります。

忠太は、助けを得られなかったことを無理からぬことと考えているようです。
それぐらい当たり前のこと。

 

だってノロイだから。

 

ガンバが行くと言ってくれただけで救われた、どうぞ帰ってくださいと言う忠太。
なんだかここはすごく日本的だなと私は個人的に思いました。

気持ちだけあげたって、何にもならないじゃないか!無理してへんなこというなよ。

台詞がとてもかっこいいです。

 

 

 

さて導入部分を割と詳細にご紹介してきましたが、ざっくり言うとガンバの演説に感動した仲間たちが船にこっそり乗り込んでおり、とりあえずはリーダーを選びます。

ガンバが責任をとって選ばれ、それから作戦タイムです。

地図をかき、もう一度詳しく状況の説明を忠太から聞き取りします。イタチたちは、闇夜に紛れて一匹ずつさらい、決して生かしては返さないため、イタチの被害は奇妙な行方不明からはじまったようです。(怖いです)

 

 

正直いって、もうメモったり書いたり引用したりしてるのがめんどくさくなってきました。

それぐらい面白くて、続きが読みたいです。

 

名作の「序盤をいかに攻略するか」は本読みにとっては大きな課題です。

 

そして、序盤攻略のあとに待ちきれないほど面白い世界が待っているのだということを、読ませようとする方も意識して、教えてあげないといけないです。

序盤は読み聞かせするなり、話し合いながら一緒に読むなりして、お子さんにそのあとのすばらしき物語の世界に連れて行ってあげて欲しいなと思います。

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

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今日の一冊「百まいのドレス」

今日、ご紹介するのは、かなりしっかりしたページ数の多い、「本型の絵本」です。

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

百まいのドレス

エレナ エスティス (著), ルイス スロボドキン (イラスト),

石井 桃子 (翻訳)

「百まいのドレス」を持っていると言い張る、まずしいポーランド移民の女の子ワンダ。人気者で活発なペギーが先頭に立って、みんなでワンダをからかいます。ペギーの親友マデラインは、よくないことだと感じながら、だまって見ていました…。どんなところでも、どんな人にも起こりうる差別の問題を、むずかしい言葉を使わずにみごとに描いた、アメリカの名作。ロングセラー『百まいのきもの』が50年ぶりに生まれかわりました。(「BOOK」データベースより)

 

「岩波の子どもの本」シリーズは本当に名作ぞろいでした。

これもその中の一冊です。以前は「百枚のきもの」という名前でした。
少し訳にも手が入り、復刊されました!

 

さてこの本、読み聞かせするには長いです。長すぎです。
「子どもの本シリーズ」は、ピンキリで字が多かったり少なかったりなのですが、これは字もわりとぎっちりです。

 

読みきかせをしていたら、途中で投げ出すレベルです。

 

なんだか不思議な物語です。

 

少し地味で、暗いのではないかな~と思うお話なのですが、なぜか惹きつけられて、何度も読んでしまいます。
主人公の女の子、マデラインも、あれこれといつまでも一人であれこれ考えてしまうタイプです。

 

きょう、月曜日、ワンダ・ぺトロンスキーは、学校へきていませんでした。

 

という一文からお話ははじまります。

 

子どもが読んでいく限り、いったいこの子どもたちがどこに住んでいるのかもよくわからないままです。

 

ワンダはいつも古ぼけた同じ服を着ています。
住んでいるのも貧民街のようですし、席もはみ出し者の固められるところにあって、お友達もいません。

 

ある日ワンダは、あるタイミングで「あたし、うちに、百まい、ドレス持ってるわ」と言います。
周囲の女子はびっくり!いつも古い同じ服を着ているのに?
それがからかいの始まりでした。

 

序盤に、「リンカーンゲティスバーグの演説をあんしょうしているところでした」があり、この物語がアメリカのものであることがわかります。

これは子どもは自分で読んでいるかぎり、わからないです。
なんとなくどこともしれない西洋で起きた不思議なお話です。

 

でありながら、この子どもたちの間で起きていること、なんとなく教室でもはみ出している外国人の子、恰好も古ぼけており、話し方もおかしい、友達もいない。ワンダ・ぺトロンスキーという「変な名前」。

 

この西洋のどこともしれない出来事が、実際に教室で起きているのと同じ出来事であると、子どもたちは直感的にわかります。

 

終盤になると、ワンダがポーランド人であったことがわかり、かつ「からかわれないように大きな街に引っ越す」という父親の手紙の記述が出てきます。
これは、アメリカの保守的な、比較的小さな田舎町で起きた出来事のようだと、おとな目線では知られます。

 

主人公マデラインのお友達のペギー、ことあるごとにワンダのことを「百まいのドレス」ネタでからかいます。
「ドレスがあるんでしょ?」「ドレスあるの?」
からかうことは習慣になってしまい、誰も止める人はいません。

 

ワンダはからかわれるだけのことをしている、と子どもたちは思っています。
おかしな恰好で奇妙な言葉、いつも同じ古い服を着ているなら、嘘なんてつかなければいいのに。

 

そういう認識です。

 

そして、物語は、ワンダ・ぺトロンスキーが学校に来ていなかった、という一文からはじまります。

 

このお話に、「いじめ」という単語はほぼ出てきません。

 なんとなく女性グループのいやらしさを描いているようで、それほど、どぎつくデフォルメされていません。

 

からかいの首謀者である、マデラインの友達、ペギーも、「いじめられている子がいればかばい、動物がひどいめにあわされるのを見て泣く子」です。

 

からかう女子の中にも、わかりやすい悪役はいないのです。
そういうのが、ほんとうは一般的なんじゃないかなと思います。

 

マデラインはペギーのからかいにひとり悩みます。
というのも、マデライン自身もそれほど裕福ではなく、服はおさがりであったりするからです。
からかうのをやめてくれたらいいのになあ、とマディは思います。

 

このお話のすぐれている所は、とても写実的なことです。
丁寧に、しっかりと子どもたちの心理をそのままに描いています。

 

百まいのドレスごっこは、こんなにしてはじまったのでした。
ほんとにだしぬけに、おもいがけないことからはじまって、だれもかれも、ひとりでに、そのなかへひきずりこまれてしまったのです。ですから、もしだれかが、マディ―のように、この遊びをいやだと思っても、どうすることもできなかったでしょう。

 

それでいながら、見開きのページを使って、はっきりとはしていないぼんやりとしたパステル調の絵によって、教室の壁一面に貼られたワンダの絵を見たときの衝撃──。

胸を打つものがあります。 

 

 

読み終わった子どもさんが言いあっていました。

「嘘じゃなかった。あったんだよね心に。イメージの服があったんだよ」

「この子、ぜったいデザイナーになるよ。空想ってほんとにすばらしいね」

「空想は楽しいね。その服を着てぴかぴかの大広間を踊ってるのを想像するのが楽しかったんじゃないかな」

「最後にもらった手紙がまたいいね」

 

ワンダは最後に、みんなに手紙を送ります。

それがまた、ちっとも暗くありません。

 

ワンダのお父さんからの手紙のように、受け入れてくれなかった恨み節のようなものはなくて、どちらかといえばこちらの学校を恋しがっているようでした。


あの「ドレスもってるの?」「百枚、ずらっとならべてあるの」という会話、それは投げかけるほうはからかいであり、かるいイジリのようなものであったのでしたが、ワンダはむしろコミュニケーションとして捉えていたようでした。

 

なぜなら、嘘ではなかった、本当だったのです。 

たんすの中にあったドレス、とは、この百枚以上の「絵」であったと思われます。

 

「きっと、ワンダはこの子にはこんな服が似合うなって想像してたんだろうね。そして家に帰って描いていたのかもしれない。心でつながってたんだね」

 

ペギーもワンダがいなくなった時には気にします。

マデラインがあれこれ思い悩み、もう二度とこんなことがないようにしよう...、謝りたい…という気持ちが、読んでいるこちらの胸にしっとりと入ってきます。
そしてワンダがいじめとしてだけとらえてはいなかったという「許し」を得たとき、子どもたちの「百まいのドレスごっこ」は優しい思い出へと変化を遂げます。

 

とても美しい、繊細な物語です。

 

「いじめはだめだ」「からかいはだめだ」と百回、言葉で言うよりも、この物語を読むほうがずっとその意味が入って来ると思われます。

 

ロングセラーであるのも納得の一冊です。

 

 

◇ 

 

 

「岩波の子どもの本」シリーズは、「こどものとも」の絵本よりも少し字も増えてストーリーも複雑になり、文学的な内容も多くて非常に非常にいい感じでした。

 

この頃は、「こどものとも」→「子どもの本シリーズ」→「少年文庫」といった、本、読書につながるきれいなラインがありました。

 

今、あの頃に読んだお話を探して購入し、子どもに与える方も多いと思います。
このあたりの本がもう少し…充実して欲しいなあと思うことがあります。

 

 

 

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今日の一冊「宝島」

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

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>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

図書館がはじまったので、満を持してあれこれ紹介したいと思…って…いたのです……が、まだ行けていません。

月初でもあるし、テレワークの影響ががっつり来ています!
6月は1日から仕事でしたので、一週間出社するともうぐったりです。
もっとゆっくり、日常に戻してほしいです…。

 

というわけで、ぼうけんの旅に出たいです。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

宝島

R.L.スティーヴンスン (著),

海保 眞夫 (翻訳)

ジム少年は,トレローニさんや医者のリヴィシー先生とともに,海賊フリント船長がうめた莫大な財宝を探しに出帆する.ぶきみな1本足の海賊シルヴァーの陰謀にまきこまれ,はげしい戦いが始まる….手に汗にぎる海洋冒険小説の名作.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

宝島 (10歳までに読みたい世界名作)

ロバート・ルイス スティーヴンソン (著),

横山 洋子 (監修), 館尾 冽 (イラスト), 吉上 恭太 (翻訳)

 

 

ティーブンソンの「宝島」は、とてもさまざまなバージョンが出ています。
というのも、原作はなかなかにものすごく硬派なのです!!

 

長いですし、描写もたいへん細かいです。
抄訳で子ども用に出しているのもわかります。

 

筋が面白いので、抄訳でも十分に楽しめます。
それにこの「10歳までシリーズ」の中でも「宝島」の絵柄はなかなか、合っていると思っているのですが、どうでしょうか?

 

さて硬派な原作「宝島」ですが、その魅力...特に特筆すべきはやはり、シルバー船長です!

この一筋縄ではいかない悪党、しかも、悪いだけではない悪党の魅力は素晴らしいです。

 

 

とにかく、シルバー船長からいかに逃げるか、そしていかに裏をかくか。

主人公のジムはきりっとしていて、なかなかかっこよいです!
なので、シルバー船長もちょっと一目置くというか、可愛がるというか、目をかけるというか、そういう風を見せます。

 

シルバー船長は、自分が取り仕切っている仲間の荒くれ者の悪党の海賊どもよりも、仇敵であるジム少年の方が好きなようです。


この気持ちは何となくわかります。
(わかるんかーい!)

  

とはいえ、改心したりだとか、結局仲間になるなんてことは一切ありません。
シルバー船長は結局、悪党は悪党なのです。

 

人間らしい心、ユーモラスさ、そして情のようなもの。
それと残忍な、恐ろしい悪党な部分が交じり合って、一筋縄ではいかない人間の複雑さをあらわしています。

 

もちろん抄訳を選んであげるのも良いですが、ここはひとつ、大人が原作の「宝島」を読んでみるのも良いと思います。

 

青空文庫の翻訳はたいへん古いことばで訳されており、苦労はしますが、なかなか味があります。

そして、原作はグーテンベルクで無料公開されています。

 

 

青空文庫

www.aozora.gr.jp

 

グーテンベルク

www.gutenberg.org

 

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

 

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せいめいのれきし だるまちゃんとてんぐちゃん かんどうのめいさくえほん
モモ アクビちゃんゆめであそびましょ! ちびっこカムのぼうけん
アンデルセン童話集 Mad about Madeline: The Complete Tales (英語) 子うさぎましろのお話

 

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