~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

トム・ソーヤーのゲス男認定はJARO案件か?

以前、ご紹介したトム・ソーヤーの記事です。

 

whichbook.hatenablog.com

 

ここで、トム・ソーヤのゲス男案件をあますところなく暴露したわけですが、そのあとでふと思いました。

 

ちょうど、JAROの宣伝がやっていました。

うそ・おおげさ・まぎらわしい。

 私が読んだ翻訳ではない翻訳では、果たしてトムはそこまでゲスに描かれているだろうか?

果たして、あの記事で興味をもってくださった方が読んでみたとして、「そこまでかな~?」と思いはしないだろうか?

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

ふたたび考察

 

トム・ソーヤーの冒険

マーク トウェイン (著), 柴田 元幸 (翻訳)

ポリー伯母さんに塀塗りを言いつけられたわんぱく小僧のトム・ソーヤー。転んでもタダでは起きぬ彼のこと、いかにも意味ありげに塀を塗ってみせれば皆がぼくにもやらせてとやってきて、林檎も凧もせしめてしまう。海賊ごっこに幽霊屋敷探検の日々を送る中、ある夜親友のハックと墓場に忍び込んだら……殺人事件を目撃! 永遠の少年時代がいきいきと描かれた名作を名翻訳家が新訳。

 

まず、私が読んだ一発目で「はぁ!?」と思ったのは、この訳です。

 

とたんに、エイミー・ローレンスという女の子はかれの心から消え去って、一片のあとも残さなかった。今まで、トムはエイミーを夢中で愛していると考えていた。この情熱こそ、崇拝というものだ、とトムは思っていた。

(世界少年少女文学全集10 より 吉田甲子太郎 訳)

 

吉田甲子太郎さんの訳でした。

これは、今はもう絶版になっている、東京創元社さんの「世界少年少女文学全集」に入っていたものです。

 

何と、あのノーベル文学賞作家である、川端康成大先生が責任編集をされているのですが、確か「1(イソップなど)」が入っていたものの記述によると、「言葉自体は平易にしたが、子どもだからと言って内容を省略することはしなかった」と書かれていました。

 

そうでしょうね。

今まで、トムはエイミーを夢中で愛していると考えていた。この情熱こそ、崇拝というものだ、とトムは思っていた。

(世界少年少女文学全集10 より 吉田甲子太郎 訳)

 

この「夢中で愛している」という部分を、いったい子ども向けの他の翻訳作品ではどう訳しているのだろうか?

やっと開いた本屋さんに行って、確かめてみました。

 

 

まず、定評のある岩波少年文庫のトム・ソーヤです。
訳は石井桃子さんだ!
 

トム・ソーヤーの冒険

マーク トウェイン (著), T.W.ウィリアムズ  (イラスト),

石井 桃子 (翻訳)

 

 「 エミーに夢中だと思っていた」と書かれています。
とりあえず、ニュアンスは伝わりますがかなり柔らかい表現です。

愛している☆のパンチの強さにはかないません。

 

 いやいや、そんなパンチの強さは必要ないわけであって、こちらの訳の方が普通なのだと思います。

 

次は、青い鳥文庫です。 

 

トム・ソーヤーの冒険

マーク・トウェーン (著), にし けいこ (著), 飯島 淳秀 (翻訳)

 むぅ、これは…。


「仲良しのエイミー・ローレンスのことなど忘れてしまった」

これは、子供用の忖度を感じます!(笑)

トムがキスを迫ってベッキーを追いかけまわす所も読んでみましたが、非常に、非常~~に、柔らかい感じでした。

まあ、そうですよね。

それが普通ですよね。

子供むけですもんね。 

 

 

まだつばさ文庫・みらい文庫がありますが、こちらはまだ未確認です。

 

トム・ソーヤーの冒険

マーク・トウェイン (著), ちーこ (イラスト),

中井 はるの (その他)

 

 

トム・ソーヤの冒険 宝さがしに出発だ!

マーク・トウェイン (原著), 亀井 俊介 (翻訳), ミギー (イラスト)

 

 

では本家本元、英語ではどうなんでしょう?

トム・ソーヤーの冒険の原書は、グーテンベルクで読めます)

 

www.gutenberg.org

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

 

A certain Amy Lawrence vanished out of his heart and left not even a memory of herself behind. He had thought he loved her to distraction; he had regarded his passion as adoration; and behold it was only a poor little evanescent partiality. He had been months winning her; she had confessed hardly a week ago; he had been the happiest and the proudest boy in the world only seven short days, and here in one instant of time she had gone out of his heart like a casual stranger whose visit is done.

 

参考までに、

to distraction

とは、「気が狂いそうなほど、頭がおかしくなるほど」という意味だそうです。(英辞郎より)

 

He had thought he loved her to distraction;

 

 

 これは、

今まで、トムはエイミーを夢中で愛していると考えていた。

(世界少年少女文学全集10 より 吉田甲子太郎 訳)

というこの訳が確かに一番正しいかと思われます。

そして、そのパンチのきいた意味が、まっすぐ私に入ってきてショックを与えたのでした。

この翻訳でOKを出した、川端康成大先生をはじめとするお歴々の方々に敬意を表したいです。

 

 

そして、海外ものは翻訳によっておおいにイメージが左右されることも考慮に入れたうえで考察した結果、トムはやっぱりゲスであるという結論に達したことをここにもう一度明記しておきたいと思います。

 

しかし、最初に読んだ翻訳の影響は大きいなあ、と思います。
最初に読んだのがこれでなければ、これほどゲスだとは思わなかったかもしれない。

 

いきなり「夢中で愛していると思っていた」という女の子をほおりだしてよその女の子に色目を使い始めたので、本当にびっくりしました。

 

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

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子どもの本だな【広告】

あしながおじさん 太平のカメ日記 ちいさいおうち
算数病院事件 しろねこしろちゃん からすのパンやさん
おかあさんは魔女 かえりみち バタシー城の悪者たち

 

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今日の一冊「点子ちゃんとアントン」

 今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

点子ちゃんとアントン

エーリヒ ケストナー (著),  池田 香代子 (翻訳)

お金持ちの両親の目を盗んで夜おそく街角でマッチ売りをするおちゃめな点子ちゃんと、貧しいアントン少年―つぎつぎと思いがけない展開で、ケストナーがすべての人たちをあたたかく描きながらユーモラスに人生を語る物語。

 

 


家に遊びに来ていた子たちが、しきりとわたしに向かって言います。

「3×4!」
「2×6!」

いまさら、掛け算の練習でもしているのだろうか?
もう高学年になろうと言うのに。

 

忙しくて反応しないでいると、娘が横から教えます。

「2×6!だよね!でしょ?」
「??何のこと?どうしたの?」
「だってあの子がやってたじゃない。お母さんがすすめた本のあの子が」
「女の子で、犬に色々やらせようとして…」

点子ちゃんとアントン、かー!!

「そうだよ、あれだよ」

女の子で犬に色々やらせようとする。
それでわかった自分をほめたい!
(最近、記憶力の低下が激しいです)

 

ケストナーの傑作です。

主人公の点子ちゃんは本当に変わった子です。

 

点子のお父さんが学校の勉強をためしてみようと、点子に聞きます。

「3×8は?」
「3×8?3×8イコール120÷5」と、点子はいいました。

これは、相当に頭のいい子じゃないと出来ない計算のような気がします。
九九が出来るか試しているのに、それに対して割り算で返事をするのです。

 

点子ちゃんは富裕層、アントンは貧困層ですが、二人はなかよしです。
二人とも家庭が完全ではありません。それぞれに問題を抱えています。

点子ちゃんのお母さんはいっさい子供をかまわない人で遊びまわっているか寝ているかばかりです。お父さんは理解はありますが、忙しくてかまってやる暇がありません。

点子ちゃんのめんどうを見ているのは、主に家庭教師のアンダハト嬢です。

 

家庭教師は、面倒を見ている風を装って、小金を稼ぐために点子ちゃんを夜の路上に連れ出してマッチ売りの子役をやらせます。

 

 

アントンは母子家庭ですが、お母さんは体が弱いです。
なのでアントンは夜の路上で物売りをしています。


点子ちゃんは富裕層でありながらもネグレクト気味であり、アントンは貧乏で児童労働しないと家計を維持していけません。

 

というわけで知り合った二人なのですが、この「路上でものを売る」
点子ちゃんはすごいです。

この子には、間違いなく営業の才能か、俳優の才能か、何かわかりませんが才能があります。
どちらになっても、大成しそうです!
やらされてる感など微塵もありません。
哀れっぽく体をくねらせ、「マッチを!どうかマッチを買って下さい!」

迫真の演技です。

 

 

この話、とても面白いんだよ~と言っても、すすめた方の気分が乗りきらなかったとき、最初から読み聞かせするよりも、ピンポイントですごく面白かったところだけをピックアップして見せたのでした。

点子ちゃんが、いぬのピーフケに「赤ずきんちゃんとおおかみ」の相手役をやらせようとする所です。

 

点子はかごをおいて、寝台のすぐそばに歩みより、芝居の後見役のように、小さいピーフケにささやきました。「そこで、こんどはあたしをたべてしまうんだよ」
ピーフケは、(略)ごろりと横になったまま、いわれことなんかしませんでした
「あたしを食べなさい」と点子は命令しました。「どう?あたしをすぐたべるかい?」それから、足をふみならして、どなりました。「ほんとに、しようのないやつね。おまえは耳でも遠いの?あたしをたべるんだっていったら」

 


点子ちゃんはほんとうに面白い子供です。

 

自分のブログなので忌憚ない意見を書きますと、ケストナーは割と、主人公の男の子がすごくいい子ちゃんです。
真面目でお母さん思いで、なにごとにも一生懸命です。

その若干、いい子ちゃんすぎるほどいい子である男の子の補完をするように、真逆を行くように、女子が飛び抜けてキテレツです!

 

エーミールのいとこのポニー・ヒュートヘンもそうですが、とにかく行動が愉快でとても面白いです。

 

点子ちゃんは主人公であり、かつトンデモなので、そのキテレツ行動を追っているだけでもとても面白いです。
空想の力がゆたかで、次から次にゆかいなことを思いつきます。
そんな点子のああだこうだの大騒ぎのトラブルを、友達のアントンや料理人ベルタの機転や努力で助けられるわけですが…。


最後の最後にお父さんが点子ちゃんのベッドの横に座って、静かに話し合い、諭すシーンがとても印象的です。

 

点子ちゃんは家庭教師の悪行を手伝い、すすんでやって遊んでいたわけでしたから。
別にいたずらをしようとか、親を困らせようと思ったわけではなく、単純に面白かったからです。

(まあそれに、そこでアントンと友達になることもできたわけです)

 

点子ちゃんは言います。

「おとうさんはお金をもうけなきゃならないので、ひまがないってことはわかってるわ。でも、おかあさんはお金をもうける必要もないのに、あたしをかまってくれるひまがないのよ。どちらもあたしをかまってくれるひまがないんですもの」

 

忙しいからと子どもを預けている場所と人が、完璧なものである保証はどこにもありません。
子供の性質との相性もあり(親だって子供と相性があるでしょう…)、しかし子どもはその置かれた場所で思いきり頭を働かせ、さまざまなことをして遊びながら成長してゆきます。

 

偏頭痛で子どもをかまうつもりがない、常にパーティ三昧のお母さん、点子をほったらかしのお母さんはもう、弁解の余地は何ひとつありませんが、わたしはこのお母さんの「偏頭痛」という所だけはものすごく共感しましたので、あまり責める気もちになれませんでした。

 

というより、お話にならない人が構ってくるとかえってめんどくさい上に自由気ままな遊びの時間も拘束されてしまうので、このお母さんは偏頭痛で寝ていてよい、とさえ思いました。

なんだかそんな風に思わせてしまうケストナーが不思議です。
ユーモアにあふれ、人間愛にあふれた描写です。

 

このお母さんはこうなのだから仕方ないかな、と思い、
母親なんだから○○すべきなのに!!!
という気持ちにはなりませんでした。

 

多分点子ちゃんが、まったくひねくれる気配がないからでしょう。
大人の目がないのをいいことに、普通なら出ることが出来ない夜の町や遊び場にさえ出て行って

お父さんに最後に
「だが、大いにおもしろうござんしたね」
という台詞の小気味いいこと!

 

頭から終わりまで、紹介しきれないほど「面白い」がつまった作品です。 

 

 

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闇の左手 すてきな三にんぐみ 思い出のマーニー〈上〉
ぐるんぱのようちえん 大食いフィニギンのホネのスープ ともだちは海のにおい
めのまどあけろ おにたのぼうし だれも知らない小さな国

 

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「ガンバの冒険」アニメ作品を見てみました

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」がとても面白かったのと、家族のノロイに対する力説(ノロイ最強最悪説)を確認したくて、アニメ版も見て見たくなりました。 

 

冒険者たち ガンバと15ひきの仲間

斎藤 惇夫 (著), 薮内 正幸 (イラスト)

イタチと戦う島ネズミを助けに,ガンバと15ひきの仲間は、船で夢見が島に向いました。しかし、白毛ノロイがひきいる、どうもうなイタチの群れに追いつめられ、海岸の岩山で最後の決戦の時をむかえます。

 

 

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さらに、ガンバの冒険Wikipediaを見ていた所、こんな記述が…。

ガンバの冒険 - Wikipedia

動物のキャラクターながら日本のアニメ史上でも屈指の恐ろしい悪役として知られ、藤田和日郎による『週刊少年サンデー』に連載されていた少年漫画作品『うしおととら』の白面の者のモチーフになったと言われている。

漫画「うしおととら」は大好きだったし、悪役の白面の者はこれはもう怖さが半端なく怖い感じでしたので、非常によく覚えています。
白面の者のモチーフになるとは、これは相当なものです。

 

というわけで、Amazonプライムですが、まず1話を見て見ました。

 

 

 

ガンバの冒険(1975TV版.Amazonプライム)

頑張り者のネズミ・ガンバは、相棒のボーボと一緒に、海を一目見ようと港町までやってくる。そこで出会った子ネズミの忠太が、自分たちの島の仲間を助けて欲しいと求めてきた。力自慢のヨイショや博学のガクシャといったネズミ仲間とともに、大海原へ乗り出すことを決意する。だが、目的の島には脅威の白イタチ・ノロイが待ち構える。小さなネズミ7匹が繰り広げる波乱に満ちた大冒険。他に類を見ない表現にドキドキハラハラの連続だ。(C)斎藤惇夫岩波書店・TMS

 

ガンバの声は安定の野沢雅子さん。
ノロイの声はねずみ男、フック船長で覚えのある大塚周夫さん。
かわいくほのぼのとした絵です。 

 

見始めました。
...!?
なんだか、すごく、上手いです。

 

アニメというより、映像として技術、演出がものすご~くうまいです。
絵はもちろん、アニメ黎明期の線画のそれなのですが…。

カット割り、アングル、光と影の使い方、音楽の入れ方、ワンカットの長回し風の流れの中で次々にカメラ(?)の位置を変えていく...。

 

素人目からしても、びっくりするほど引き付けられます。
こんなクオリティの高い演出を駆使するなんて、技術が発達した今のドラマや映画でもなかなか見られません。

 

そして、ガンバが皆と仲良く騒いでいる所に、唐突な沈黙!
シーンとなりました。このギャップがすごい。
雷の音と沈黙と、白黒の映像...。
忠太がよろよろとやってきました。血が滴ります。
(床にしたたる血がなんだかすごくリアルです)

 

そして忠太の語るイタチの被害と、ノロイという名前に反応するねずみたち...!

海から(ゴジラ並の大きさで)赤い口を開きカッと現れるノロイの姿…!!


こ…怖い!!!

ねずみたちのノロイの名前に対する恐怖心がすごいです!

 

アニメの「動かし方」「撮り方」「演出」によって、これほどの迫力が出せるんだと感嘆しました。

 

だんなは、幼稚園の時に見てトラウマになったようです。
ノロイの恐ろしさが深く刻み込まれたのも、このアニメ自体の出来の良さと無関係ではないのだな、と思いました。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

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※ここからはアニメおよび、原作のネタバレを含みます!!
名作なのでぜひ読んでから・見てからおすすめします。

 

 

アニメで印象に残ったところ

 

・7~9話、黒ギツネのザクリ編。
リスのクリークの覚悟が胸に痛いほどです…!
「リスには爪も牙もない、でも欲しいんだ!大きな牙が…!」
これは本当に子ども向けのアニメなのでしょうか!?
まだ序盤で、しかもまだ旅の途中でイタチの影もないのに、こんな盛り上がりを見せてこれなら、ノロイはどうなっちゃうんだろう!?と思いました。

 

・キツネ、ねこ、犬(野良犬と猟犬と両方)、そしてイタチと、あらゆる外敵に襲われます!
そのすべてがものすごくこわく、そしてどうぶつの動きがすごいです。
ガンバたちも服を着たり二本足で立ったりしていますが、走って逃げるところはまんまネズミの動きと走り方です。

 

・15話「鷹にさらわれたガンバ」、人間との束の間のふれあい。
このアニメ作品はすべて、人間が灰色で塗りつぶされており、ほぼ存在はありません。
ネズミの目線、鼠の世界としての物語のきりとりが際立ちます。
そこで唯一と言える人とのふれあい…。
孤独な山男が、雪山でひとり孤独にさいなまれていたとき、鷹にさらわれてひとり、山小屋に逃げ込んできたガンバを見つけます。
これまで灰色の恐ろしい怪物でしかなかった人間、その個人のやさしがしみる、とても良い回でした。

 

・23話「裏切りの砦」、これはガンダムなのかな?というような、ハードなエピソードをぶっこんできました。
食料を持ってやってきてくれた高倉ネズミたち、このままではまったくノロイに対してなすすべもないまま、全員殺されてしまったことになります。しかも食糧もムダに。
ノロイの恐ろしさがひしひしと心に迫ります。
一郎が死んだときのイカサマの悔し泣きがとても印象的でした。

 

ノロイ

噂に違わぬ恐怖の大王感満載でした。とても勝てそうにない感がすごいです。
ノロイが出る頃には、ガンバのアニメをもはや家族全員で見ていました。
バカにしていた上の子も釘付けです。とても目が離せないのです!!
そして、要所要所のコマ回しや演出が抜群にうまいので(うますぎるので)、目を離すことが出来ません。
ノロイの恐ろしげな顔のカットがバァ~ン!!とすごいタイミングでアップになります。(だんな「ヒィー!!怖い~っ!!!」)
ラストに向けてのガンバの頑張りが本当にすごかったです...。
そして、最後の最後の最期まで、ノロイは最強の敵で在り続けました。敵役の誇り...、この目に焼き付けられました。
さすがに、言われるだけのことはあるノロイでした…。

 

 

アニメと原作のちがい

 

・15ひきの仲間は多すぎるからでしょう。
2~3びきをあわせて1ぴきにしていました。
原作でのマンプク+ボーボ+アナホリ→アニメのボーボ
原作でのイカサマ+イダテン→アニメのイカサマ
といった感じです。

 

ノロイの島に着くまでが原作は短い。
アニメは26話の中、1~16話までがロードムービーになっています。
原作は、割とあっという間にノロイの島に着きますので、全編ほぼノロイとの戦いになっています。

 

・リーダー
アニメでは、リーダーをどうするかでもめたり、仲間なんだからリーダーのようなものはない、という風になりますが、原作でははっきりとリーダーをガンバと決めます。
リーダーを決めないと、現場で緊急事態に到った時の即時判断が出来ないからです。
このあたりが、全編ほぼイタチとの戦いなのもあって、原作は緊迫感に満ちた出来になっています。

 

・ガクシャ
ガクシャは原作では、本当に尊敬すべき大学教授のようなキャラであり、だいたいガクシャの言うことに従っていればほぼ間違いないかもしれない、という感じです。参謀将軍といった雰囲気です。
みずからの知識と作戦に自信のあるタイプだからこそ、最後の作戦が破れた時の心の折れ方がいっそう胸にしみます。

 

・イタチとの戦いかたが原作は慎重
着いた直後から、とにかくガンバたちはイタチに見つからないように細心の注意を払います。
ノロイの怖さに関しては、アニメの方が数十倍割り増しで怖かったです!


イカサマ。
娘「(アニメの)イカサマかっこいい。イカサマ好き…」
昔で言う渡世人風の、ちょっと斜に構えた一匹狼のイカサマはかっこいいいです。
原作のイカサマは、アニメのイカサマともまた違ったカッコよさなので、ぜひイカサマファンは原作を読んで欲しいです。
アニメで高倉ネズミの一郎が死んだ所のショックの涙などは、原作でボーボが死んだときのイカサマの涙に通じるところがありました。
(原作のボーボ、アナホリの特技があるわけでもなく、ただぼうっとしているだけなのにものすごい働きを見せます…)


・潮路
もっとも違いがあったのは潮路です。
すべてにおいて完璧と言えるすばらしいアニメ作品でしたが、わたしは潮路に関してだけは不満でした...。
というより、原作の潮路がとても良かったのです!!
原作の潮路は、大和撫子な守られるヒロインではなくて、ときには女なんだからという意見に真っ向から物申し、自ら戦う女戦士のような存在でした。
だからこそ、「今言って!」と言われた時にどうしてガンバは言わなかったのか…。
潮路はどうして、惑乱したように自殺行為とも言える行動に出たのか…。
ガンバのさいごの「潮路ぼくは…」という叫びの切なさ…。
(→胸がいっぱい)

 

アニメ作品を見たことがあるかたは、ぜひ原作を!!
原作を読んでみて欲しいです。

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

レ・ミゼラブル ツバメ号とアマゾン号(上) ぜったいたべないからね
いいおかお エーミールと探偵たち おにたのぼうし
ねずみくんのチョッキ かあちゃん取扱説明書 魔女の宅急便

 

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今日の一冊「ばばばあちゃんのマフラー」

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

ばばばあちゃんのマフラー

さとう わきこ (著, イラスト)

冬のある日、ばばばあちゃんは、風邪をひいたお月さんに自分のステキなマフラーをあげる約束をします。ところが、次々にいろんな出来事が起こり、とうとうそのステキなマフラーはボロボロになってしまいました。

 

さとうわきこさんの、ばばばあちゃんシリーズの中の一冊です。

ばばばあちゃん」のお話はどれも、ばばばあちゃんの台詞で成っていますが、それがうたうように、詩のように言葉がつづられていきます。

 

この本は、マフラーをおつきさんに上げる約束をするのですが...。

 

実際は、おつきさんはほったらかしにされたまま、マフラーは二転三転、色んな人(動物)、いろんな場所に、いろんな用途で使われながらあちこちをめぐりめぐっていきます。

最後はボロボロになって、ばばばあちゃんは編みなおし、無事におつきさんのもとに届けられます。

 

この絵本、うたうような言葉に合わせて、マフラーの変化が面白いです。

月が変化していくようにマフラーの持ち主も、用途も変化していき、最後は丸くおさまるという、きれいな終わり方です。
四季の巡りが本のページをめくりながら変わっていく様子も素敵です。

 

途中で、「おつきさんどうなった...?」と思わないこともなかったのですが(笑)、ゆったりと時は流れます。

 

子供たち、大好きな一冊です。

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

科学と科学者のはなし ジェインのもうふ ふしぎなたいこ
げんきなマドレーヌ くまのがっこうシリーズ(既12巻) コッペパンはきつねいろ
バルバルさん チポリーノの冒険 しょうぼうじどうしゃじぷた

 

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今日の一冊「どろんこハリー」

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

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>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

どろんこハリー

ジーン・ジオン (著),

マーガレット・ブロイ・グレアム (イラスト), わたなべ しげお (翻訳)

ハリーは、黒いぶちのある白いイヌです。なんでも好きですが、お風呂に入ることだけは、だいきらいでした。

 

これも本当に長い長いロングセラーですが、何度でも手に取ってしまう魅力のある本です。

 

白黒のぶち犬、ハリーは、どろんこになってしまい、家族にもこれがハリーだとわからなくなってしまいます!
そもそも、お風呂がきらいなのでブラシを隠したのが原因でした。

好き放題遊びまわった外の世界は、危険と魅力に満ちています!

遊びまわる中に、そうでなければ見ることがなかったさまざまな家の外の景色があります。

しかし、腹の虫には勝てません。 

 

黒いぶちのある白いいぬ

白いぶちのある黒いいぬ

に変化したところは、ハリーには悪いのですが、言葉遊びの意味もあって笑ってしまいます。

 

ここからが悲しいところです。

とっておきの芸を披露してもわかってもらえません。
家に受け入れてもらえないハリーは、とぼとぼとおしりを向けて家を去ろうとします…。
切ない…!!

まって、ハリー!
もうちょっと頑張って!


こうやって書いてるだけで切ないです。

 

どろんこになってあそぶハリーの姿に、汚れなどかまわず夢中になって遊ぶ子どもの姿が重なります。

 

 

 

Harry the Dirty Dog (Harry the Dog) (English Edition)

Kindle版 Gene Zion (著), Margaret Bloy Graham (イラスト) 形式: Kindle版

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

サムのおしごと 野尻湖のぞう しずくの首飾り
ともしびをかかげて〈上〉 ふらいぱんじいさん からすのパンやさん
たべたのだあれ 五月三十五日 ロッタちゃんと じてんしゃ

 

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大人が読む児童書「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」 3 読了しました。まず親が読んで!

大人が読む児童書。
積ん読・解消計画★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

大人が読む児童書

 

冒険者たち ガンバと15ひきの仲間

斎藤 惇夫 (著), 薮内 正幸 (イラスト)

イタチと戦う島ネズミを助けに,ガンバと15ひきの仲間は、船で夢見が島に向いました。しかし、白毛ノロイがひきいる、どうもうなイタチの群れに追いつめられ、海岸の岩山で最後の決戦の時をむかえます。

 

 

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実はこれを書いている時点で、読み終わってしまいました。

 

あまりに面白くて、徹夜してしまいました!!

やめられない、とまらないです。

 

Amazonプライムのガンバも見てみようと思っているのですが、とりあえず、読了後の雑感です。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

しかし、この画像☟ 

 

f:id:WhichBook:20200606011410j:plain

 

ノロイは非常にカリスマ性のある、悪魔的な悪役でしたが、ここまで怖いか!?と言われると、原作のノロイに関してだけは微妙な感じでした。

 

怖いは怖いのですが、普通に怖いです。

ノロイはていねい口調でした。
悪魔的で残虐ですがどちらかと言えば、力押しよりも頭脳派です。
声にも姿にも魅力がありますが、特に声の魅力はすごくて、魔法のように動物たちを広い所に誘い出してしまう力があります。

統率力もあり、基本単独行動であるイタチたちをまとめ、ノロイが呼び出して配下が殺す、という戦法を取っているようです。

 

何度もねずみたちを広い場所に誘い出そうとするのですが…。
歌試合、踊り試合、と続き、ねずみたちは負けません!

 

戦いの場に出て行かない、という消極的な戦い方です。

 

詩と歌をふんだんに使っています。

児童文学、よく詩が出てきます。
トールキンなどを読んだ方は、美しい瀬田貞二さんの訳をご存じかと思いますが、この作品にも、歌や詩がふんだんにちりばめられています。

 

精密な描写に加え、詩まで載せている…。
すごいです。

 

かわいいめすネズミが出てきます。
忠太のお姉さん、潮路です。

 

潮路とガンバのやりとりは、 非常に、非常に、考えさせられるものでした。
実に日本的だと思ったのですがどうでしょう?

この「日本的」という意味は、決して悪い者ではなくて、情緒と余韻にあふれていました。

 

私が見るところ、この「冒険者たち」のMVPは間違いなく潮路でした!

 

ここまでネタバレネタバレと言っておきながら、このあたりネタバレせずに巧妙に隠していますが、 やっぱり、読んでみて欲しいな~!!
これだけ面白いのだから!!
と思います。

 

おとなの方に意見聞きたいです。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

さてガンバの冒険、見終わったわけですが、実はルドルフとイッパイアッテナもまだ読んでないので、読むべきものはまだたくさんあります!

  

どこかの本を読む訓練についてのニュースにも書かれていたことでした。
「まず親が読んで」という一言が出てきました。

スマホスマホになってしまっている世の中です。
「まず親が本を読んでいる姿を見せなければ、子どもも読むことはない」

これは本当にそうだな、と思いました。


本を読むのにあまり慣れ親しんでいない大人のかたにも、児童書はぴったりです。

 

絵本ではなくて、ちょっと硬質で名前の売れている児童文学は「これ、子供が読めるの!?」と思うほどのクオリティです。

独自の進化を遂げて、今軽く読める大人向けの小説よりもはるかに芸術的で哲学的であったりします。
しかも読みやすいです。

 

「ともしびをかかげて」を読んだ時にも感じたことでした。

 

手を抜いていないな、と思うときがあります。
文章自体は平易で、わかりやすいながらも、子どもなんだからこの程度だろう、子どもなんだから、ここは省略してしまおう、という部分がありません。

 

「子どもに対するやさしい思い」や、「教えておきたい道徳」だけで終わらないのです。

それ以上に、大人になるまでに、どうしても伝えておかなければならないことを伝える、という。
この世のそのままの姿を、真実を、正確に伝える、という真摯さは痛いほどです。

 

読んでいるこちらも真剣に向き合わなければなりません。
思わず襟を正すようになるところがあります。

 

このすばらしき児童文学の世界を、ぜひ大人の方に味わっていただき、そして子どもに伝えていってほしいです。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ガンバの冒険(1975TV版.Amazonプライム)

頑張り者のネズミ・ガンバは、相棒のボーボと一緒に、海を一目見ようと港町までやってくる。そこで出会った子ネズミの忠太が、自分たちの島の仲間を助けて欲しいと求めてきた。力自慢のヨイショや博学のガクシャといったネズミ仲間とともに、大海原へ乗り出すことを決意する。だが、目的の島には脅威の白イタチ・ノロイが待ち構える。小さなネズミ7匹が繰り広げる波乱に満ちた大冒険。他に類を見ない表現にドキドキハラハラの連続だ。(C)斎藤惇夫岩波書店・TMS

 

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

銀のほのおの国 片耳の大シカ ふしぎなたいこ
おおきな木 ゆめくい小人 ロビンソン・クルーソー
やかまし村の春・夏・秋・冬 エーミールと探偵たち ロッタちゃんのひっこし

 

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田畑精一さんが亡くなられました。

絵本作家の田畑精一さんが亡くなられました。

古田足日さんをはじめ、昭和期の名作絵本・名作児童書をともに彩ったすばらしい絵を描かれる方でした。

心からお悔やみ申し上げます。

 

 

 

 

 

 

おしいれのぼうけん

ふるた たるひ (著), たばた せいいち (著)

お昼寝前に、ミニカーのとりっこでけんかをしたさとしとあきらは、先生に叱られておしいれに入れられてしまいます。そこで出会ったのは、地下の世界に住む恐ろしいねずみばあさんでした。 ふたりをやっつけようと、追いかけてくるねずみばあさん。でも、さとしとあきらは決してあきらめません。手をつないで走りつづけます―。

 

「おしいれのぼうけん」 は、以前記事を書かせていただきました。

何をいまさらという大ベストセラーであり、これからも読まれ続けていくであろう本です。

田畑精一さんの、古田足日さんの本との親和性はそれはすばらしく、そのコンビ力が結集したと言えるのが「おしいれのぼうけん」です。

 

 

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算数病院事件 (5年3組事件シリーズ) (日本語) 単行本 - 2009/8/1 後藤 竜二 (著), 田畑 精一 (イラスト)

算数病院は、「みんなが算数ができるように」と、とも子先生が発明した病院です―。楽しくて、わくわくして、人なつかしくなる物語。

 

小学生高学年向けの名作です!

ルパン三世のアニメを心から楽しみにしているシーンが出てきたりと、昭和期のものでありながら、そこにある子どもの心は今を生きるこどもとリンクしています。

 

 

 

さっちゃんのまほうのて (日本の絵本) (日本語) 単行本 - 1985/10/1 たばた せいいち (著)

先天性四肢欠損という障害を負って生まれたさっちゃん。傷つきながらも右手の指がないという障害を受けいれ、力強く歩き始める。

 

人の心ない言葉も、つらい気持ちも、決して目をそむけることなく、真正面から描いた名作です。

 

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

はるかな国の兄弟 じごくのそうべえ にじいろのさかな
レ・ミゼラブル だるまちゃんとてんぐちゃん ドリトル先生ものがたり
ロッタちゃんと じてんしゃ わたしのわごむはわたさない 思い出のマーニー〈上〉

 

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大人が読む児童書「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」 2 戦うというのは、逃げるということ、そして、逃げる道もおそらくないということ

大人が読む児童書。
積ん読・解消計画★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

大人が読む児童書

 

冒険者たち ガンバと15ひきの仲間

斎藤 惇夫 (著), 薮内 正幸 (イラスト)

イタチと戦う島ネズミを助けに,ガンバと15ひきの仲間は、船で夢見が島に向いました。しかし、白毛ノロイがひきいる、どうもうなイタチの群れに追いつめられ、海岸の岩山で最後の決戦の時をむかえます。

 

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さてガンバの冒険、続きです。
アニメ情報を見る限り、15ひきもいるわけではないのですね。 

 

リーダーを決め、ガンバが選ばれました。
ガンバたちは、忠太の情報を総合して地図を作ります。

しかし、みんなの相談が…。ものすごく現実的です。
ノロイ(イタチ)には勝てない、ということが最初からはっきりしているのです。ねずみたちはそれを承知できた、というのです。

戦うというのは、逃げるということ、そして、逃げる道もおそらくないということなのです。

どんだけ絶望的な状況なのか…!?
今までさまざまな冒険ものの児童文学を読んで来ましたが、ここまで絶望的な状況はなかなかないです。

 

ボーボというおっとりしたねずみが場をやわらげ、フラグになりそうな島に伝わる不思議な歌を聞きます。

イカサマという、サイコロ賭博をやっている渡世人風のねずみは、なんとなくガンダムのカイさんみたいです。
たいへん昭和風ですが、斜に構えていてなかなか、かっこいいです。

 

 

 

 

ここで第二部に入りました。

 

甲板での夜明けのシーンが鮮烈です。朝焼けを初めてみるガンバ、その美しさに目を奪われます。

 

まだリーダーに慣れないガンバを、ガクシャの知識とヨイショのたくみなサポートが支えます。ガンバは徐々にリーダーらしくなっていきます。
(ヨイショは、どうして名前がヨイショなんだろうかと思っていましたが、ガンバのことをヨイショするからヨイショなんだとわかりました。)

 

島についてねずみたちがリヤカーに乗って、馬をひっぱたき、カーチェイスのような逃走劇を演じたり、とにかく面白いです。

 

途中の「オイボレ」という年寄り…。

不思議なネズミです。よろよろとしてオイボレなのに、途中で彼が指摘することはすべてあたります。
まるで、この島もイタチからの逃れ方も知っているような...?

 

ん?と思います。

 

イタチの回し者とかではないだろうな?と思っていたら、ねずみの一人が作中で同じことを言及して「それはない。ひどい」みたいな会話がありました。
なので、スパイなどではないようです。 

 

!!

 

これは、忠太が島について説明している時に気になる記述があったはず!!
ページを巻き戻して読み返します。

 

トキです。
忠太のおじさんで、以前先見のめいを働かせ、一刻も早くこの島から逃げることを提言してひとり別行動を取ったネズミです。多分死んでいるだろう、と書かれています。

読みかけたときに、「こういうキャラって実は生きていて…などというフラグだったりするんだよな~」と思っていました。

きっとこいつはトキだ!

 

島のモデル、最初は沖縄かな?と思いました。

風を防ぐために石垣があり、椎の木が植えてある...。
あとがきによれば、八丈島のようでした。

 

ノロイに家族を殺されたツブリたちが憎しみに燃えて、(勘違いで)ねずみたちを脅すシーンが怖いです。

最初は姿が見えないのでで...出たぁ~!!と思いました。
これを超えるノロイってどんなのだろう。

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ガンバの冒険(1975TV版.Amazonプライム)

頑張り者のネズミ・ガンバは、相棒のボーボと一緒に、海を一目見ようと港町までやってくる。そこで出会った子ネズミの忠太が、自分たちの島の仲間を助けて欲しいと求めてきた。力自慢のヨイショや博学のガクシャといったネズミ仲間とともに、大海原へ乗り出すことを決意する。だが、目的の島には脅威の白イタチ・ノロイが待ち構える。小さなネズミ7匹が繰り広げる波乱に満ちた大冒険。他に類を見ない表現にドキドキハラハラの連続だ。(C)斎藤惇夫岩波書店・TMS

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

ちいさなきいろいかさ 100かいだてのいえ ゴインキョとチーズどろぼう
ドリトル先生アフリカゆき ロビンソン・クルーソー 小公子
ふしぎなオルガン ウエズレーの国 さっちゃんのまほうのて

 

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大人が読む児童書「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」 1 ノロイの恐怖

 大人が読む児童書。
積ん読・解消計画★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

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>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

大人が読む児童書

 

冒険者たち ガンバと15ひきの仲間

斎藤 惇夫 (著), 薮内 正幸 (イラスト)

イタチと戦う島ネズミを助けに,ガンバと15ひきの仲間は、船で夢見が島に向いました。しかし、白毛ノロイがひきいる、どうもうなイタチの群れに追いつめられ、海岸の岩山で最後の決戦の時をむかえます。

 

実はこのお話、名前は知っていて紹介もしたかったのですが、読んだことがありませんでした。
そして、1975年のテレビ版「ガンバの冒険」も見たことがありませんでした。

 

だんな「おまえ、ノロイも知らないの!?」

わたしはテレビは禁止されて育った世代なのです~~。
(母が「アニメ・漫画=悪」世代のどストライクです)

 

だんなが、「ノロイ」の恐怖について語ってくれました。

ノロイは怖い。
・あれはトラウマ
・いまだにイタチに対して恐怖がある。
ノロイほど恐ろしいものはない。
ノロイは恐怖。どこまでも追いかけてくる
ノロイからは逃れられない。
・大きさがはんぱない。何十倍どころか何百倍もでかい。
・夢に出る。
・うなされるほど怖い。

 

要は「怖い」以外のことは一言も語ってないのですが、私の反応に納得がいかないらしく、検索してきて見せに来ました。

「ほら!ほら!だってこれだよ!?ほらノロイ!」

それで見せられたのがこれです 

f:id:WhichBook:20200606011407j:plain

まだあります。

f:id:WhichBook:20200606011410j:plain


こ…怖ぁ~!!!
なんじゃこりゃ!これは怖いわ!!

 

「本当に怖いんだよ!!ノロイは!!」

 

検索してみると、アニメ史上最強・最悪・最凶、などと書かれており...。
そのものすごさを語っています。

こんなサイトもありました。

www.excite.co.jp

 

美しき最強のトラウマ…。
闇のカリスマ…。
大きさもゴジラ並…。

字づらからして並々ならぬノロイに対する情熱を感じます。
最早怖いを通り越してリスペクト…というより教祖様のようです。

 

これはひとまず、読んでみねばなるまい。 
AmazonプライムにTV版もあったのですが、やはりここは読まねばなりません!

 

というわけで、長々しい説明を付けましたが、ガンバの冒険を読んでみたいと思い購入してきました。 

もう、40年たった今でも棚に並び続けていますし、間違いがないことはわかっていますのでしっかり本屋で購入です。

 

さて、どうか…。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

冒頭はこんな感じではじまりました。

ドブネズミのガンバは、台所の床下の貯蔵穴に住んでいました。長さ一間、幅・深さ半間のその貯蔵穴はコンクリートでつくられており清潔で、そのうえ、周囲には一尺四方の窓が四つあいており、風通しも申し分ありませんでした。

 

…今の、映像文化になれきった子供たちには、敷居が高いかもしれない綿密な描写です。

 

しかし、文章は平易でたいへん読みやすいです。 
漢字も多く緻密な描写なのですが、はっきりしているので逆に想像しやすいです。

 

ガンバはこの街のすみかで幸せに暮らしているのですが、こんな所が目につきました。

つまり、ガンバは静かな時に思い出されるようなことは、まだ何一つとしてしたことがなかったのです。(略)することがないので、くり返し、くり返し、このすみかはすばらしいとか、自分よりも強いやつは近所にはいない、ということだけを考えていました。

 

今どきの子供っぽいです。
これは非常に子どもを見ている目線として共感できました。

俺TUEEEの自己満足の(子どもの)世界です。

 (一応、俺TUEEEの説明リンクを置いておきます。)

どうでもいいですが、

それは六月の末のむし暑い夜のことでした。

というのも、今の季節にあっています。(まだ月末ではありませんが…)

 

そこにマンプクという太ったネズミ仲間がやってきて、ガンバを海へとさそいます。

気乗りのしないガンバです。
ええ~?ひとりで行けばぁ~?おれはここでたいくつなんてしてないよ。
という感じのガンバに、マンプクが反論します。

おまえの言葉は、まるで若いころ、散々あちこちを冒険してきたやつが、隠居して、孫でも集めていうことだ。おまえなんか海はおろか、何一つ知ってやしないじゃないか!そんなおまえが、でまかせにしろ大きくて広いものなんて口にするなよ、おわらいだぜ。だいたい、夢見るってことと、海みるってことは、もともとは同じ言葉なんだぜ。どぶ川と海をまちがえんなよ。

若いくせに、現状に満足して動こうとしないガンバを、マンプクの激しいことばが揺り動かします。

 

だいたい、夢見るってことと、海みるってことは、もともとは同じ言葉なんだぜ。

う~ん、いいせりふです!

 

こうして、物語にはすうっと入っていけました。
序盤からなにしろ、普通以上に面白いです。

 

これは、古い物語を読んでいるとたまに感じることなのですが、現代のサラサラっとした感覚的な描写とちがって、実に緻密です。

港の描写なんて、ものすごいです。

物揚げ場のむこうの小舟だまりには、鉛色に沈んだ海の上に、小さい船が三十隻あまり、それに白いパイロット船、タグボートが三隻ずつ並んでいました。その小舟だまりの右手に、桟橋がぐっとのびていました。桟橋の両側には、大きな客船と貨物船が横づけされていましたが…

と、この調子です。

(これは一部だけで、実際この三倍ぐらいあります)

 

子どもだからといって、いっさい手を抜かない描写です。
しっかり、「場面をきちんと文字で表現すること」を意識している文章です。

これをしっかりと読み込んだらものすごーく語彙力がつきそうです。
(でもわからないなりに、さらっと物語に引きずられて読むのもそれはそれでいいと思います)

 

なんとなく、感覚でわかるだろう、というような感じの甘えがいっさいありません。
きりっとしたかっこいい文です。

冒頭で「長さ一間、幅・深さ半間」なんて出てきた時には、どうしようかと思いましたが…それもまた、ご愛敬です。
「一間て何だろ?」と思ったら、ググレカスと言ってやればよい、とさえ思います。

 

ガンバとマンプクは慣れない港で、「ガクシャ」というネズミと行き合います。

この名前の付け方、非常にわかりやすいです。 

 

ちょっと引用が多すぎたのでこのあたりでやめておきますが、さすがガクシャなだけあって、おとなでもちょっと、というようないかにも教授や博士が使いそうな賢そうな知識がバーッとご披露されます。

 

彼のあとについて入った港街の(ネズミの)酒場?たまり場?で、この「ガンバと15ひきの仲間」という、15ひきほとんどの仲間が登場します。

 

15ひきです。

 

多っ!!

しかし、これが混乱してしまうことはありませんでした。

ちょっとあとで、15ひきの仲間の名前がご披露されますが、この港街の騒ぎの中でしっかりと一匹いっぴきキャラづけされ、ほとんどが頭に入っていました。

ガクシャ、ヨイショ、イカサマ、バレット、イダテン、シジン、オイボレ、ボーボあたりはしっかり印象づけられていました。


(ちょっとカリック、ジャンプ、テノール、バス、アナホリあたりがあやしかったですが、名前でだいたいわかります)

 

 

このねずみたちのバカ騒ぎ(ラム酒を一気飲みしたりします)の中に、傷だらけの忠太というネズミがやってきました。生々しい血がしたたる描写がすごいです。

 

ここでいきなり、漢字名称登場です!
助けをもとめてきたネズミと、助けに行くネズミとの区別をしっかりと付ける、心にくい工夫です。

 

出ました。ノロイの名前。

 

急にあたりが静まり返ります。

あれほど元気だったヨイショも、天を仰いでひとことも口をききません。

怖いです。

 

忠太の説明が非常に的確です。
簡潔・明瞭・筋が通っていて完璧です。

忠太のいた島は、数千のネズミが繁栄していましたが、イタチのノロイ一族によって殺され、百匹程度という所にまで追い詰められているのです。

 

ガクシャは助けを拒否しました。ヨイショも、その場にいたすべてのネズミたちも、助けの手に声を上げよう、手を上げようとはしません。

 

…読めば読むほど怖そうです。

ガンバは、そんなネズミたちの前でひと演説ぶちます。

島の仲間はなんだい!死んでもらいましょうってことか?黙れ!イタチを知ってるとか、何とか、でっかい顔すんなよ!今いったとおり、おれはいく!

ガンバ、かっこいいです。

しかし残されたのはガンバと忠太、二匹だけでした...。

二匹は島目指して船に乗ります。

忠太は、助けを得られなかったことを無理からぬことと考えているようです。
それぐらい当たり前のこと。

 

だってノロイだから。

 

ガンバが行くと言ってくれただけで救われた、どうぞ帰ってくださいと言う忠太。
なんだかここはすごく日本的だなと私は個人的に思いました。

気持ちだけあげたって、何にもならないじゃないか!無理してへんなこというなよ。

台詞がとてもかっこいいです。

 

 

 

さて導入部分を割と詳細にご紹介してきましたが、ざっくり言うとガンバの演説に感動した仲間たちが船にこっそり乗り込んでおり、とりあえずはリーダーを選びます。

ガンバが責任をとって選ばれ、それから作戦タイムです。

地図をかき、もう一度詳しく状況の説明を忠太から聞き取りします。イタチたちは、闇夜に紛れて一匹ずつさらい、決して生かしては返さないため、イタチの被害は奇妙な行方不明からはじまったようです。(怖いです)

 

 

正直いって、もうメモったり書いたり引用したりしてるのがめんどくさくなってきました。

それぐらい面白くて、続きが読みたいです。

 

名作の「序盤をいかに攻略するか」は本読みにとっては大きな課題です。

 

そして、序盤攻略のあとに待ちきれないほど面白い世界が待っているのだということを、読ませようとする方も意識して、教えてあげないといけないです。

序盤は読み聞かせするなり、話し合いながら一緒に読むなりして、お子さんにそのあとのすばらしき物語の世界に連れて行ってあげて欲しいなと思います。

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ガンバの冒険(1975TV版.Amazonプライム)

頑張り者のネズミ・ガンバは、相棒のボーボと一緒に、海を一目見ようと港町までやってくる。そこで出会った子ネズミの忠太が、自分たちの島の仲間を助けて欲しいと求めてきた。力自慢のヨイショや博学のガクシャといったネズミ仲間とともに、大海原へ乗り出すことを決意する。だが、目的の島には脅威の白イタチ・ノロイが待ち構える。小さなネズミ7匹が繰り広げる波乱に満ちた大冒険。他に類を見ない表現にドキドキハラハラの連続だ。(C)斎藤惇夫岩波書店・TMS

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

王への手紙 (上) 天国を出ていく チョコレート戦争
もう ぬげない 世界むかし話集6ロシア・西スラブ編 ロッタちゃんと じてんしゃ
ぞうのたまごのたまごやき はれときどきぶた にんじんばたけの パピプペポ

 

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今日の一冊「百まいのドレス」

今日、ご紹介するのは、かなりしっかりしたページ数の多い、「本型の絵本」です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

百まいのドレス

エレナ エスティス (著), ルイス スロボドキン (イラスト),

石井 桃子 (翻訳)

「百まいのドレス」を持っていると言い張る、まずしいポーランド移民の女の子ワンダ。人気者で活発なペギーが先頭に立って、みんなでワンダをからかいます。ペギーの親友マデラインは、よくないことだと感じながら、だまって見ていました…。どんなところでも、どんな人にも起こりうる差別の問題を、むずかしい言葉を使わずにみごとに描いた、アメリカの名作。ロングセラー『百まいのきもの』が50年ぶりに生まれかわりました。(「BOOK」データベースより)

 

「岩波の子どもの本」シリーズは本当に名作ぞろいでした。

これもその中の一冊です。以前は「百枚のきもの」という名前でした。
少し訳にも手が入り、復刊されました!

 

さてこの本、読み聞かせするには長いです。長すぎです。
「子どもの本シリーズ」は、ピンキリで字が多かったり少なかったりなのですが、これは字もわりとぎっちりです。

 

読みきかせをしていたら、途中で投げ出すレベルです。

 

なんだか不思議な物語です。

 

少し地味で、暗いのではないかな~と思うお話なのですが、なぜか惹きつけられて、何度も読んでしまいます。
主人公の女の子、マデラインも、あれこれといつまでも一人であれこれ考えてしまうタイプです。

 

きょう、月曜日、ワンダ・ぺトロンスキーは、学校へきていませんでした。

 

という一文からお話ははじまります。

 

子どもが読んでいく限り、いったいこの子どもたちがどこに住んでいるのかもよくわからないままです。

 

ワンダはいつも古ぼけた同じ服を着ています。
住んでいるのも貧民街のようですし、席もはみ出し者の固められるところにあって、お友達もいません。

 

ある日ワンダは、あるタイミングで「あたし、うちに、百まい、ドレス持ってるわ」と言います。
周囲の女子はびっくり!いつも古い同じ服を着ているのに?
それがからかいの始まりでした。

 

序盤に、「リンカーンゲティスバーグの演説をあんしょうしているところでした」があり、この物語がアメリカのものであることがわかります。

これは子どもは自分で読んでいるかぎり、わからないです。
なんとなくどこともしれない西洋で起きた不思議なお話です。

 

でありながら、この子どもたちの間で起きていること、なんとなく教室でもはみ出している外国人の子、恰好も古ぼけており、話し方もおかしい、友達もいない。ワンダ・ぺトロンスキーという「変な名前」。

 

この西洋のどこともしれない出来事が、実際に教室で起きているのと同じ出来事であると、子どもたちは直感的にわかります。

 

終盤になると、ワンダがポーランド人であったことがわかり、かつ「からかわれないように大きな街に引っ越す」という父親の手紙の記述が出てきます。
これは、アメリカの保守的な、比較的小さな田舎町で起きた出来事のようだと、おとな目線では知られます。

 

主人公マデラインのお友達のペギー、ことあるごとにワンダのことを「百まいのドレス」ネタでからかいます。
「ドレスがあるんでしょ?」「ドレスあるの?」
からかうことは習慣になってしまい、誰も止める人はいません。

 

ワンダはからかわれるだけのことをしている、と子どもたちは思っています。
おかしな恰好で奇妙な言葉、いつも同じ古い服を着ているなら、嘘なんてつかなければいいのに。

 

そういう認識です。

 

そして、物語は、ワンダ・ぺトロンスキーが学校に来ていなかった、という一文からはじまります。

 

このお話に、「いじめ」という単語はほぼ出てきません。

 なんとなく女性グループのいやらしさを描いているようで、それほど、どぎつくデフォルメされていません。

 

からかいの首謀者である、マデラインの友達、ペギーも、「いじめられている子がいればかばい、動物がひどいめにあわされるのを見て泣く子」です。

 

からかう女子の中にも、わかりやすい悪役はいないのです。
そういうのが、ほんとうは一般的なんじゃないかなと思います。

 

マデラインはペギーのからかいにひとり悩みます。
というのも、マデライン自身もそれほど裕福ではなく、服はおさがりであったりするからです。
からかうのをやめてくれたらいいのになあ、とマディは思います。

 

このお話のすぐれている所は、とても写実的なことです。
丁寧に、しっかりと子どもたちの心理をそのままに描いています。

 

百まいのドレスごっこは、こんなにしてはじまったのでした。
ほんとにだしぬけに、おもいがけないことからはじまって、だれもかれも、ひとりでに、そのなかへひきずりこまれてしまったのです。ですから、もしだれかが、マディ―のように、この遊びをいやだと思っても、どうすることもできなかったでしょう。

 

それでいながら、見開きのページを使って、はっきりとはしていないぼんやりとしたパステル調の絵によって、教室の壁一面に貼られたワンダの絵を見たときの衝撃──。

胸を打つものがあります。 

 

 

読み終わった子どもさんが言いあっていました。

「嘘じゃなかった。あったんだよね心に。イメージの服があったんだよ」

「この子、ぜったいデザイナーになるよ。空想ってほんとにすばらしいね」

「空想は楽しいね。その服を着てぴかぴかの大広間を踊ってるのを想像するのが楽しかったんじゃないかな」

「最後にもらった手紙がまたいいね」

 

ワンダは最後に、みんなに手紙を送ります。

それがまた、ちっとも暗くありません。

 

ワンダのお父さんからの手紙のように、受け入れてくれなかった恨み節のようなものはなくて、どちらかといえばこちらの学校を恋しがっているようでした。


あの「ドレスもってるの?」「百枚、ずらっとならべてあるの」という会話、それは投げかけるほうはからかいであり、かるいイジリのようなものであったのでしたが、ワンダはむしろコミュニケーションとして捉えていたようでした。

 

なぜなら、嘘ではなかった、本当だったのです。 

たんすの中にあったドレス、とは、この百枚以上の「絵」であったと思われます。

 

「きっと、ワンダはこの子にはこんな服が似合うなって想像してたんだろうね。そして家に帰って描いていたのかもしれない。心でつながってたんだね」

 

ペギーもワンダがいなくなった時には気にします。

マデラインがあれこれ思い悩み、もう二度とこんなことがないようにしよう...、謝りたい…という気持ちが、読んでいるこちらの胸にしっとりと入ってきます。
そしてワンダがいじめとしてだけとらえてはいなかったという「許し」を得たとき、子どもたちの「百まいのドレスごっこ」は優しい思い出へと変化を遂げます。

 

とても美しい、繊細な物語です。

 

「いじめはだめだ」「からかいはだめだ」と百回、言葉で言うよりも、この物語を読むほうがずっとその意味が入って来ると思われます。

 

ロングセラーであるのも納得の一冊です。

 

 

◇ 

 

 

「岩波の子どもの本」シリーズは、「こどものとも」の絵本よりも少し字も増えてストーリーも複雑になり、文学的な内容も多くて非常に非常にいい感じでした。

 

この頃は、「こどものとも」→「子どもの本シリーズ」→「少年文庫」といった、本、読書につながるきれいなラインがありました。

 

今、あの頃に読んだお話を探して購入し、子どもに与える方も多いと思います。
このあたりの本がもう少し…充実して欲しいなあと思うことがあります。

 

 

 

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日本のむかしばなし 床下の小人たち ふしぎなたいこ
かいじゅうたちのいるところ かあちゃん取扱説明書 ゴインキョとチーズどろぼう
ウエズレーの国 ツバメ号とアマゾン号(上) こども論語

 

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今日の一冊「宝島」

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

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>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

図書館がはじまったので、満を持してあれこれ紹介したいと思…って…いたのです……が、まだ行けていません。

月初でもあるし、テレワークの影響ががっつり来ています!
6月は1日から仕事でしたので、一週間出社するともうぐったりです。
もっとゆっくり、日常に戻してほしいです…。

 

というわけで、ぼうけんの旅に出たいです。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

宝島

R.L.スティーヴンスン (著),

海保 眞夫 (翻訳)

ジム少年は,トレローニさんや医者のリヴィシー先生とともに,海賊フリント船長がうめた莫大な財宝を探しに出帆する.ぶきみな1本足の海賊シルヴァーの陰謀にまきこまれ,はげしい戦いが始まる….手に汗にぎる海洋冒険小説の名作.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

宝島 (10歳までに読みたい世界名作)

ロバート・ルイス スティーヴンソン (著),

横山 洋子 (監修), 館尾 冽 (イラスト), 吉上 恭太 (翻訳)

 

 

ティーブンソンの「宝島」は、とてもさまざまなバージョンが出ています。
というのも、原作はなかなかにものすごく硬派なのです!!

 

長いですし、描写もたいへん細かいです。
抄訳で子ども用に出しているのもわかります。

 

筋が面白いので、抄訳でも十分に楽しめます。
それにこの「10歳までシリーズ」の中でも「宝島」の絵柄はなかなか、合っていると思っているのですが、どうでしょうか?

 

さて硬派な原作「宝島」ですが、その魅力...特に特筆すべきはやはり、シルバー船長です!

この一筋縄ではいかない悪党、しかも、悪いだけではない悪党の魅力は素晴らしいです。

 

 

とにかく、シルバー船長からいかに逃げるか、そしていかに裏をかくか。

主人公のジムはきりっとしていて、なかなかかっこよいです!
なので、シルバー船長もちょっと一目置くというか、可愛がるというか、目をかけるというか、そういう風を見せます。

 

シルバー船長は、自分が取り仕切っている仲間の荒くれ者の悪党の海賊どもよりも、仇敵であるジム少年の方が好きなようです。


この気持ちは何となくわかります。
(わかるんかーい!)

  

とはいえ、改心したりだとか、結局仲間になるなんてことは一切ありません。
シルバー船長は結局、悪党は悪党なのです。

 

人間らしい心、ユーモラスさ、そして情のようなもの。
それと残忍な、恐ろしい悪党な部分が交じり合って、一筋縄ではいかない人間の複雑さをあらわしています。

 

もちろん抄訳を選んであげるのも良いですが、ここはひとつ、大人が原作の「宝島」を読んでみるのも良いと思います。

 

青空文庫の翻訳はたいへん古いことばで訳されており、苦労はしますが、なかなか味があります。

そして、原作はグーテンベルクで無料公開されています。

 

 

青空文庫

www.aozora.gr.jp

 

グーテンベルク

www.gutenberg.org

 

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

 

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子どもの本だな【広告】

せいめいのれきし だるまちゃんとてんぐちゃん かんどうのめいさくえほん
モモ アクビちゃんゆめであそびましょ! ちびっこカムのぼうけん
アンデルセン童話集 Mad about Madeline: The Complete Tales (英語) 子うさぎましろのお話

 

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今日の一冊「やかまし村の子どもたち」

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

あつ森ではなくて、とび森の方の「どうぶつの森」 をしていた時、うちの村の名前は「やかまし村」でした。

 

子どもたちが遊びに来て、わたしのデータを見るといつも大笑いして
「やかまし村!」
「やかまし村って何?」
「何その名前!」
とにぎやかにしていてくれたことを思い出します。

 

 

リンドグレーンの「やかまし村」シリーズ三部作は、トンデモくそがき少女「ロッタちゃん」マッドパワー超人「長くつしたのピッピ」のような、「行くぜド派手にな!」というような派手さはないです。

 

(予断ですが、リンドグレーンは「屋根の上のカールソン」もすんごいド派手にやらかします)

 

しかしこの「やかまし村」ごく普通の田舎の村の、ごく普通の子どもたちの日々のたわむれが、まったりと描かれています。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

やかまし村の子どもたち

アストリッド・リンドグレーン (著),

イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村には、家が3軒きり、子どもは男の子と女の子が3人ずつ、ぜんぶで6人しかいません。でも、たいくつすることなんてありません。ひみつの手紙をやりとりしたり、かくれ小屋をつくったり、毎日楽しいことがいっぱい!小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

しかし、そこはさすがにリンドグレーン
この「単なる日常」を実に楽しく、面白く描いていますし、たまに腹を抱えてしまうような出来事が起きるのです。

大塚雄三さんのユーモラスな訳は、この面白さを遺憾なく発揮する名訳です。

(最近、新訳でも出ているのですが、残念ながら未読です💦またチェックしてみたいと思います)

 

主人公はリーサ。7~8歳の女の子です。

皆でお世話をしている、優しい穏やかなおじいさん、体中を粉だらけにして作るしょうが入りクッキー。

村の子どもは6人です。ちょうどよく男子三人、女子三人、そこに弟や妹たちがいます。

ここでもやはり女の子は、「まったく男ってのは…」という感じですし、それは今の教室の中でもまったく変わりません。

 

四季の流れと、美しい自然と、日常の中でたまに巻き起こる面白いことが、実にゆったりと描かれます。

 

 

「やかまし村」はシリーズもので三冊なのですが、わたしは、この三冊の中からランダムで、まず面白い所だけをピックアップして読んであげました。

 

というのも、まったりとすすむ子どもたちの日常のお話なので、特に最初から読まないと話の筋が分からないということもないのです。

ただ、このまったりとした優しい日常の中で、腹を抱えて笑ってしまう所があります。

子どもも、面白かったな、ということを思い出してこの「いかにも文庫文庫した本」を手にとってくれますし、ぱらぱらめくって面白かったところを探すうちに、他のページも読んでくれたりするものです。

活字や、物語の楽しさに慣れていってもらうにはとてもよい一冊です。

 

私がピックアップしたのは

 

「やかまし村の子どもたち」

 9.男の子には秘密がまもれません

 

「やかまし村の春・夏・秋・冬」

 9.アンナとわたしのお買い物

 

「やかまし村はいつもにぎやか」

 5.オッレの歯をぬきました

 11.アンナとわたしは保母さんになる…かもしれません

 

あたりです。

特に、「お買い物」と「保母さんになる…」の2つは、ひっくり返って涙を流して笑ってしまうほど面白いです。

 

最初の方の牧歌的なのんびりした部分だけをちらっと見ただけではとてもわからない、途方もない面白さです。特に「保母さんになる…」は傑作です。

 

そこまで言うほどか!?

 

と思った方には、ぜひ手に取って読んでみて頂きたいです。

 

このような、本らしい本に少しずつなれていって欲しいです。

①読み聞かせ
②本人の好きな本を買ってあげるのと同時にこのような本も1割ちょっとまぜる
③本人の好みを見極める

その三つを同時進行しながら、本を読む、買う、ということになれていってもらいたいです。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

やかまし村の春・夏・秋・冬

アストリッド リンドグレーン (著),

イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚勇三 (訳)

かまし村はスエーデンの小さな農村。クリスマスにはショウガ入りクッキーを焼き、復活祭には卵パーティーで大もりあがり!夏休みには宝物をさがしに湖の島へ。子どもたちの四季おりおりの遊びやくらしを、いきいきと描きます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

やかまし村はいつもにぎやか

アストリッド リンドグレーン (著),

イロン・ヴィークランド (イラスト),大塚勇三(訳)

かまし村の子どもたちは、楽しいことを見つける天才!リーサが子ヒツジを学校へ連れていったり、みんなでオッレの歯をぬく作戦をたてたり、宝箱をめぐって男の子と女の子がかけひきをしたり…陽気な話がつづきます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロッタちゃんと じてんしゃ

アストリッド=リンドグレーン (著),

イロン=ヴィークランド (イラスト), やまむろ しずか (翻訳)

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

長くつ下のピッピ

アストリッド・リンドグレーン (著),

桜井 誠 (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

あしながおじさん」にヒントを得て,作者リンドグレーンの小さい娘が,「ねえ,長くつ下のピッピって女の子のお話を作って」と母に頼んだ.そこで生れたのがこの世界一つよい少女の物語だった.自由ほんぽうに生きるピッピに,子どもは自分の夢の理想像を発見し,大人は愛さずにはいられない野育ちの永遠な少女を見出す.

 

 

 

ロッタちゃんのひっこし

アストリッド=リンドグレーン (著),

イロン=ヴィークランド (イラスト), 山室 静 (翻訳)

いやな夢を見て朝から機嫌の悪いロッタちゃんは、お隣りの物置へ引っこします。幼児の心理をとらえ、いきいきと描く幼年童話。

 

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Christmas in Noisy Village (Picture Puffin Books) (英語) ペーパーバック - 1981/10/29 Astrid Lindgren (著), Florence Lamborn (翻訳), Ilon Wikland (イラスト)

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

バレエシューズ シャーロットのおくりもの 片耳の大シカ
ぞうのたまごのたまごやき かあちゃん取扱説明書 風をつむぐ少年
かいじゅうたちのいるところ 長くつ下のピッピ 世界むかし話集6ロシア・西スラブ編

 

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今日の一冊「小さなスプーンおばさん」

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

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>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

小さなスプーンおばさん

アルフ・プリョイセン (著), 大塚 勇三 (翻訳),

ビョールン・ベルイ (イラスト)

小さな片いなかの平凡なおばさんが、とつぜん小さくなったり、またもとの大きさにもどったりするところからまきおこる、笑いと空想にみちた物語です。

 

 

大変残念ながら、Amazonプライムの方では現在視聴は出来ないようですが、一応登録されてはいました。

歌もよく、大変良質のアニメでした。

 

スプーンおばさん

スプーンおばさんは、とっても元気なおばあさん。でも、ほかの人とちょっと違うところがありました。 それは、突然スプーンと同じくらいの大きさになってしまうこと。 そんなスプーンおばさんが、動物たちの助けも借りて、大冒険を繰り広げます。(C)学研教育アイ・シー・ティー

 

 

このスプーンおばさんのアニメを知っている子など全くいないかもしれない時代になってしまいましたが、原作の「スプーンおばさん」はまだ売られています!

 

そして、児童書としても、「本型になっていて、しかもかなりページの多い児童書」の中では、格段に読みやすい一冊です。

 

本型の本に慣れてもらうために、ぜひおすすめしたい一冊です。

子供向けの本なのに、おばさんが主人公というところが面白いです。

 

だんなさんは「ごていしゅ」です。

もう、「亭主」という言葉を使うことも少なくなったかもしれませんが、この本はごていしゅでいいのです。

 

こどもたち、読んでいると自分がおばさんになってしまいます。
これが面白いところです。

 

おばさんは子供のために書かれた、子供たちが主人公の物語顔負けの不思議なぼうけんをたくさんします。

そうです。おばさんだってぼうけんするのです!!

(なぞの力説)

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

オンネリとアンネリのふゆ 西遊記 ゴインキョとチーズどろぼう
やかまし村の春・夏・秋・冬 ばばばあちゃんのマフラー しずくの首飾り
ぼくがぼくであること 少女イス 地下の国へ おとうさんの庭

 

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今日の一冊「バムとケロのにちようび」

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

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>今日の一冊 軽くご紹介

 

 久しぶりに見た、ミスタードーナツに人だかりができていました。

ドーナツを見るといつもこの絵本を思い出します。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

バムとケロのにちようび

島田 ゆか (著)

犬のバムとかえるのケロは雨の日よう日に何をしたでしょう。ケロは外でビチャビチャどろんこ遊び。バムはお部屋をきれいに片づけて、お菓子をいっぱい作って本を読もうと思ったけれど…。開くたびに新しい発見がある愉快な本。(「MARC」データベースより)

 

今日は日曜日ですし、みんな大好きバムケロの一冊です。
バムケロはどれも好きですが、特にこの一冊が大好きです。

 

「絵の強い絵本」の筆頭株です。

 

ゆったりしたバム(性別はさっぱりわかりません)が、頑張ってお掃除しても、ケロちゃんに一瞬でどろどろにされます。

 

でも雨のどろんこの中で自由に遊んでいるケロちゃんのそれは可愛いこと!
怒る気持ちなんてまったくなくなってしまいます。

 

ケロちゃんをごしごしお風呂で洗うその楽しそうなこと!
育児の大変さは明らかなのですが、この絵本を開くだけで、その大変さがすうっと楽しさに変化していく…。

 

大鍋に投げ込んでいく、豪快にドーナツを揚げるシーンは最高です。

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

本へのとびら―宮崎 駿(著) こんとあき 完訳 オズの魔法使い
ひみつの花園 シンデレラ迷宮 ホビットの冒険〈上〉
とぶ船〈上〉 (岩波少年文庫) (日本語) 単行本 - 2006/1/17 おおきな木 白いりゅう黒いりゅう

 

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映画の世界から、「メアリー・ポピンズ」の哲学の世界へ

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

風にのってきたメアリー・ポピンズ

P.L. トラヴァース (著), メアリー・シェパード (イラスト), 林 容吉 (翻訳)

東風の吹く日に,こうもり傘につかまって,空からバンクス家にやってきた,ちょっと風変わりな保母の物語.彼女が語るお話は,子どもたちをふしぎな冒険の世界へと導きます.ユーモアと笑いのかげに人生の深みをのぞかせているこの作品は,『ピーター・パン』や『クマのプーさん』とならぶ,空想物語の代表作です。

 

 

ディズニーで映画化されています。名作です。


わたしはこのジュリー・アンドリュース版のハリウッド映画が大・大・大好きなのですが、原作を先に読んだことのある方なら、映画には違和感を覚えるかもしれません。 

 

メリーポピンズ (Amazon プライム字幕版)

ウォルト・ディズニー製作による傑作ミュージカル。やんちゃな子供たちの元に、風に乗ってやって来た不思議な家庭教師メリー・ポピンズ。優しくて美人で、おまけに魔法まで使えるメリーに、子供たちは大喜び。ところが彼らのパパは型破りな彼女を快く思わず……。メリー・ポピンズを演じたジュリー・アンドリュースがアカデミー主演女優賞を獲得。また同歌曲賞を受賞した「チム・チム・チェリー」をはじめ、物語を彩る名曲の数々も魅力。

 

 最近、続編も作成されました。

 

メリー・ポピンズ リターンズ (Amazon プライム字幕版)

舞台はロンドンーミステリアスで美しい魔法使いのメリー・ポピンズが、母を亡くし、窮地に陥った家族の元に空から舞い降りた。エレガントでマナーに厳しい彼女の上から目線の言動と美しくも型破りな魔法によって、家族は再び希望を取り戻し始める。幸せを運ぶ魔法使いメリー・ポピンズがディズニー史上最高のハッピーを届ける、極上のミュージカル映画が誕生!

 

 

 

 世界的に一番有名なナースであるメアリー・ポピンズは、二度の映画化に表現されたようないつも笑顔😊の楽しく明るい女性…💖では…

まったく、ありません!!!

 

映画を見たあとにぜひ原作を!とよく書かれているのですが…。

 

メアリー・ポピンズを読んで、お子さんたちがこの世界一有名なナースを好きになるかどうかはわかりません。

とても厳格で、いつも恐ろしい目で子どもたちをにらみつけ、プライドが高く、うぬぼれ屋

非常にとっつきにくい人物です。

 

 

しかし、作中の子供たちはメアリー・ポピンズが大好きです。

常にメアリー・アゲアゲです。

 

そして、その厳格で生真面目一辺倒、決して面白みのある人物ではなさそうなメアリー・ポピンズの周囲に、これでもかというほどに不思議な事が起き、ドタバタの喜劇が展開される。 

真面目なメアリーさんとドタバタのコントラストが、この作品の不思議な魅力となっています。

 

帰ってきたメアリー・ポピンズ

P.L.トラヴァース (著), メアリー・シェパード (イラスト), 林 容吉 (翻訳)

メアリー・ポピンズが西風にのってバンクス家を去ってしまってから,子どもたちは彼女の帰ってくる日を心待ちにしていた.ある日,公園でタコあげをしていると,糸の先になつかしい彼女の姿が現れた.ふだんはきびしいナース(保母)のミス・ポピンズだが,彼女が語る物語は,子どもたちを不思議な冒険へとみちびいてゆく

 

 

実際に、もっとも面白いのはこの二作目 「帰ってきたメアリー・ポピンズ」の方ではないでしょうか。
最近映画化されたのも、こちらが下敷きになっています!

 

一作目よりも起きる出来事が面白く、悪い子になるのも女子のターンなので、女子の心は共感を呼び起こしやすいと思われます。

 

ちょっと真面目に…

メアリー・ポピンズがなぜ、これほどまで指示され、名作の名前をほしいままにしているのか。 

それは、この作品の根底に流れる、子供を子供とだけ区別しない、万人に語り掛ける哲学的な問いかけがあります。

 

不思議な世界にいざなわれ、描かれる夜の動物園の世界

その中で、作中の子供たちは

「食べるものと食べられるものがなぜ、一緒になって(メアリーの)誕生日を祝っているのか」 

という質問を動物たちの王、キング・コブラに投げかけます。

 

キング・コブラは答えます。

「今日のこの日には、すべての生き物が平等となるのだ」と。

そして、こんな風に続けます。 

「それに、つまるところ、(中略)たべることも、たべられることも、しょせん、おなじことであるかもしれない。(中略)わたくしどもはすべて、おなじものでつくられているのです。いいですか、わたくしたちはジャングルで、あなたがたは町で、できていてもですよ。おなじ物質がわたくしどもを、つくりあげているのです。──頭の上の木も、足のしたの石も、鳥も、けものも、星も、わたくしたちはみんな、かわりはないのです。すべて、おなじところにむかって、動いているのです。お子さんよ、わたくしのことを忘れてしまうことがあっても、このことだけはおぼえておかれるがよい」

 

この会話は、動物たちの巨大な鎖の輪となって揺れ動き、子どもたちは夢とうつつの境を経て、ベッドの中の眠りに戻っていきます。

この美しい一幕を、私は自分が読んだ時から大人になるまで、忘れたことはありません。

 

この作品を普遍たらしめている理由の一つに、宗教的な要素を含んでいない所があります。

さまざまな地域があり、宗教的な文化基盤もそれぞれであるのに、この作品はほとんどその違いを感じさせません。

宗教的な理解でもなく、難し気な説明でもなく、夢の中の一幕として、何かとても大切なこと、人として忘れてはならないことを、この作品はすべての読者に向かって投げかけているのです。

 

さいごに、英語の原作版の同箇所を引用して終わりにしたいと思います。

日本語訳も大変すぐれていますが、非常に美しい英語で書かれていますので、英語のテキストとして読むにも適しています。

まさに全方向において素晴らしい名作と呼ばれるにふさわしい作品です。

 

it may be that to eat and to be eaten are tha same thing in the end. My wisdom tells me that this is probably so. We are all made of the same stuff, remeber, we of the Jungle, you of the City. The same substance composes us - the tree overhead, the stone beneath us, the bird, the beast, the star - we are all one, all moving to the same end.

 

 

 

Mary Poppins: The Original Story (Mary Poppins series Book 1) (English Edition) Kindle版 P. L. Travers (著) 形式: Kindle版

 

 

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大きい1年生と 小さな2年生 ダーシェンカ まぼろしの小さい犬
さっちゃんのまほうのて からすのパンやさん 世界むかし話集6ロシア・西スラブ編
おめでたこぶた たのしい川べ 野の白鳥

 

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