~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 4 おとなとして耳が痛い

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

チポリーノの冒険
ジャンニ・ロダーリ (著), ヴラジーミル・スチェーエフ (イラスト), 関口 英子 (翻訳)

ここは野菜とくだものたちの暮らす国。玉ねぎ一家の長男坊チポリーノが、無実の罪で牢屋に入れられてしまった父チポローネを救いだそうと大活躍。仲間たちと力をあわせて、国をおさめているわがままなレモン大公やトマト騎士とたたかいます。語りの名手ロダーリの書いた明るくゆかいな冒険物語を、歯切れのよい新訳で。

 

 

大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 1 えらそうにするのはあほだから

大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 2 最悪の敵トマト騎士

大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 3 軍師さくらん坊やに一顧の礼

 

 

何だかどうにも、今のままだと
イタリアの野菜たちの権力闘争
といった複雑な内容と政治のお話のようで、うまく面白さを伝えることができなくてもどかしいです。

 

確かに、三国志に例えるなら、最高権力者のレモン大公は董卓で、トマト騎士は曹操っぽいです。
まんまです。

 

…って、だから違う、そうじゃない、そうじゃないんだー!という所を伝えたいのですけど…。

 

読み返してみると、こどもの頃に夢中になって読んでいたよりも、はるかに耳が痛いです。

 

というのも、その董卓曹操的な支配階級のやさいたちの言動。
ありえない行動に、ありえない思考回路。

 

実にユーモラスに、おもしろおかしいのですけど、ここが、おとなになってからだと、非常な皮肉をこめて描かれていることが、今更ながらにわかりました。

 

滑稽でありながらも、あきらめないし、執念深くて、残酷です。

 

毎日の生活の中でも、Twitterでも、ネットニュースでも、日々見聞きしているムカつくことを、やさい・どうぶつたちを通して、面白おかしく描く筆の冴えはすごいなと感嘆します。

 

 

このお話は、くだもの・やさい・むし・どうぶつたちが登場していますが、ちょっとどういうキャラクター構成なのか、列挙してみようと思いました。

 

既得権益を持つ支配階級

 

レモン大公(董卓)およびレモン兵たち
ドーナツ閣下

 サクランボ公爵夫人(大奥さま・若奥さまの二人)
トマト騎士(曹操。サクランボ公爵夫人宅の家令)

エンドウ豆弁護士(支配階級に媚びながらも、反政府軍に一時加わったりする、複雑な人物)
オレンジ男爵(大奧さまのいとこ)
ミカン小公爵(若奧さまのいとこ)
アメリカニンジン先生(家庭教師)
番犬マスチーノ

 

反政府軍

 

チポリーノ(タマネギ・総大将)
チポローネ(チポリーノの父で投獄の身・チポリーノの反政府運動の原動力)
うらなりカボチャのおじいさん(この人の家が革命運動のきっかけであり、火種)
ブドウ親方(靴屋
ナシノ木ナシ男教授
ニラ山ニラ吉どん
モグラおばさん
インゲンおやじ
クモの郵便配達夫とその親戚、ナナツハン

 

支配階級側だが、反政府側

 

サクラン坊や
イチ子(サクランボ公爵夫人宅のメイド)

 

その他(敬称・名前略)

 

ムカデ、カボ子、インゲン、コケモモ、カブ子、ほしキノコ博士、アザミ博士、クリ博士、ネズミ大将と軍隊、ネコ、ニンジン探偵、トマト坊、ジャガ子、クマ、ゾウ、アザラシ、サルなどなど。

 

 

お話は、

 

・チポリーノの父の逮捕
・トマト騎士とのガチンコ対決
・チポリーノの仲間の逮捕と脱獄
・サクラン坊やとチポリーノ、運命の出会い
・トマト騎士、エンドウ豆弁護士の投獄と顛末
・逮捕する側とされる側の逃走劇
・チポリーノたち、サクランボ伯爵夫人たちのお城を占領
・戦闘。反政府軍の敗北、チポリーノ投獄
・ザ・脱・獄・計・画!
・密書の配達にまつわるクモの冒険
大脱走
・革命
・その後

 

という風に続いていきます。

 

こうしてみると、殺伐としたお話のようなのですが、全部がいちいち、ゆかいな描写で満ち満ちています。

 

中でも、残酷ながらも、レモン大公のあんぽんたん加減がかなりすごくて、いざと言う時によく、わりとあほな決断を下して、どちらかというとチポリーノたちの有利に働きます。

敵の愚かさはこちらに有利!
というわけです。

 

なので、ラスボスにも関わらず、何となくレモン大公は最後まで憎みきれないという不思議さです。

 

トマト騎士と違って…。

 

 

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フランクリンとルナ、本のなかへ どんぐりむらのぱんやさん ものすごくおおきなプリンのうえで
わたしのワンピース 宝島 はじめてのおこづかい
くらやみの谷の小人たち どろぼう がっこう ちびっこカムのぼうけん

 

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閑話 おとなの本と子どもの本

今日もだめな感じの閑話です。

 

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>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 

 

まったく頭が回っていなくてすみません。
今日も閑話です。

 

大河ドラマ麒麟がくる」のラストは、私の予想は、本能寺で光秀と信長相討ちです。

 

 

支離滅裂ですが、結局、Kindleガラシャ系の本は
三浦綾子司馬遼太郎芥川龍之介・吉川栄治
4作品読んでみました。

 

三浦綾子キリスト教に対する描写が説得力がありますし、読み物としてまとまっていて完璧だったと思います。
司馬遼太郎は…なんだか生々しい感じでした。
どちらかというと、夫の細川忠興の常軌を逸した嫉妬の方が主な感じです。でも、ガラシャの美しさに対する描写は(序盤だけですが)抜群です。どんだけ美人なんだよと思います。
芥川龍之介は、キツかったと言われるガラシャの性格を一番正確に描写してると思います。ラストシーンが鮮烈です。
吉川栄治は一番バランスが取れていると思いました。

 

ガラシャの本なら三浦綾子が一番おすすめで、妹子にも読んでみてもらいたいです。
こうしてみると、やはり絵になる題材なんですね。

 

こういう所から、歴史小説に幅が広がってもらえたらいいなあ。

 

 

大人の本と子どもの本の線引きというのは何なのかなあと考えてました。

 

本は本で、代わりはない!と言いたいところなのですが、やっぱりどこかに線引きのようなものがあるような気がしています。

 

そんなことを考えたのは、アーサー・ランサムの「ツバメの谷」でおとなが自分たちの空想の世界に踏み込んできたときに「ティティが一瞬、いやな気持ちがした」と書かれているのを読んだときでした。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

ツバメの谷(上)

アーサー・ランサム (著), 神宮 輝夫 (翻訳)

ツバメ号とアマゾン号』の冒険から一年、ウォーカー家の4人きょうだいは、ふたたび湖で帆船を走らせますが、ツバメ号が突風にあおられ、暗礁にぶつかって沈んでしまいます。船を失った探険家たちは、新たにみつけた「ツバメの谷」でキャンプをすることに。アマゾン海賊姉妹とともに、夏休みの冒険に乗り出します。

 

 

 

ティティは、ピーター・ダックという老練な船乗りを空想で作り上げ、4人兄弟姉妹の中で共有しています。
その事に対して、保護者であり、危険がないか子どもたちを見守っているフリント船長が、言及したのです。

 

「ピーター・ダックかい?」と。
そこで、ティティは一瞬、いやな気持ちがしたのです。
いくら仲間だとはいっても、フリント船長はおとなであって、おとなには入って欲しくない領域なんだと。

 

ここの描写を読んだとき、どきっとするとともに、ランサムは本当に子どものことがよくわかっているなと思いました。

 

子ども時代に空想に遊んだ、あの神聖な時間を記憶している人なら誰でも、この感覚はわかってもらえるのではないかなと思います。

 

やはり、児童書を一緒に楽しむ上でも、どこかで、そのこと(こちらはおとなで、踏み込んではいけない部分がある)を、忘れない配慮は、どこかで必要なのかもしれないなあと思いました。

 

 

 

 

 

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にじいろのさかな チムききいっぱつ ソクラテスの弁明・クリトン
グレイ・ラビットのおはなし はてしない物語 こえどまつり
クリスマス・キャロル 算数病院事件 ぐるんぱのようちえん

 

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閑話 麒麟がくるの最終回が気になりすぎて

閑話です。

 

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なんだか大好きな「チポリーノの冒険」 の紹介に身が入らなくて、魅力を十分に紹介できてない気がしてます。

 

それというのもたぶん、大河ドラマ麒麟がくる」に夢中になりすぎていて、最終回待ちが気になって気になって気になって仕方ないからかもしれません💦

 

「チポリーノの冒険」をちょっと置いて、閑話で今どハマりしている明智光秀細川ガラシャ夫人の本についてちょろっとご紹介しておきます。

 

前からうちの家は一家総出で明智光秀が好きという(変わった!?)家なのですが、妹子はガラシャ夫人が大好きで、特にガラシャの辞世の句が大好きです。

 

「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」

 

残念ながら、どうやら後世の創作らしいということですが、妹子をがっかりさせないために黙ってるのですが、妹子はいったいどこでこの句を知ったんだろうか?とずっと疑問に思ってました。

私のように戦国無双シリーズにハマったわけでもないし…。

 

 

すると妹子、「一番最初は、漫画を本にしたやつで読んだんだよ!」と言います。

 

妹子「『12歳。』っていう漫画だよ」

 

ああ~、ちゃおの漫画で妹子の大好きなやつだ。
チャラチャラした恋愛もの。

 

妹子「それのノベライズにね、ガラシャの歌が書いてあったんだよ。これだよ!これこれ!」 

 

小学館ジュニア文庫 12歳。~だけど、すきだから~
辻みゆき (著), まいた菜穂 (著, イラスト)

 

どうやら、告白するときに玉砕覚悟、というところで出ていたらしいです。

 

妹子「それでね、ガラシャって誰だろう?って伝記を読んでね、すごい人だなあ!って好きになったんだよ!ずっと閉じ込められてたんだよね?」

 

わたし「うんうん」 

 

細川ガラシャ - Wikipedia

 

妹子「おっとが、ガラシャが好きすぎて誰か別の人がガラシャを見てただけで殺したんでしょ!?」

 

そんなことまで知ってるのか…。
(これも後世の創作っぽいですが、だまってました)

 

わたしがガラシャを好きだったのは、芥川龍之介の「糸女覚え書」がとても印象的だったからなのですが(芥川って長々と話を続けるよりも、短編の中にギュッと短く凝縮されててすごくいいと思います)、三浦綾子の「細川ガラシャ夫人」ずいぶん昔に読んだきり、忘れているな~と思って読み始めたら、ハマってしまいました。

 

今や、毎日「忠興」「ガラシャ」「光秀」とか検索してる毎日です。

 

というわけで、今日は閑話ですみません。

 

でも、妹子が『12歳。』のノベライズで細川ガラシャに興味をもったのは、とてもいいな~と思いました。

 

何がきっかけになるかわからないので、漫画作品にもたくさんたくさん、昔のよい作品や知識へのきっかけを入れて欲しいなあ!と思いました。(…無理やり感…)

 

 

 

細川ガラシャ夫人
三浦 綾子 (著)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

糸女覚え書
芥川 竜之介 (著)  Kindle版

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

朱なる十字架
永井 路子 (著)

 

 

 

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長くつ下のピッピ クマのプーさん Anniversary Edition こわれた腕環―ゲド戦記〈2〉
ロビンソン・クルーソー チョコレート戦争 ちいさいモモちゃん
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大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 3 軍師さくらん坊やに一顧の礼

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

チポリーノの冒険
ジャンニ・ロダーリ (著), ヴラジーミル・スチェーエフ (イラスト), 関口 英子 (翻訳)

ここは野菜とくだものたちの暮らす国。玉ねぎ一家の長男坊チポリーノが、無実の罪で牢屋に入れられてしまった父チポローネを救いだそうと大活躍。仲間たちと力をあわせて、国をおさめているわがままなレモン大公やトマト騎士とたたかいます。語りの名手ロダーリの書いた明るくゆかいな冒険物語を、歯切れのよい新訳で。

 

 

大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 1 えらそうにするのはあほだから

大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 2 最悪の敵トマト騎士

 

 

チポリーノの生涯の盟友であり参謀、孔明であり張良であり黒田官兵衛であるサクラン坊や。

 

この坊やは、私の大のお気に入りです♡

 

私は、旧訳の「サクラン坊や」という訳が大好きだったので、ここだけは新訳の不満なところです(笑)
(どうでもいいこだわりです)

 

イケメンで博学で努力家。

(…イケメンかどうかはちょっと人の好みが別れると思いますが)、サクラン坊やは何より、根性があります。

 

さくらん坊やは、かなり毛並みのよいお育ちです。

 

あのトマト騎士があーだーこーだ言ってる、「ご主人をなくされたサクランボ伯爵夫人」たちの甥っ子です。

 

しかし、サクランボ伯爵夫人たちは、オレンジ男爵ミカン小公爵というろくでもないたかり屋の親戚のおかげで、気が休まるときがありません。

 

このオレンジ男爵とミカン小公爵のろくでもなさはものすごく、無神経な顔をして、ありとあらゆるものをサクランボ伯爵夫人たち(ふたご!?)からむしりとっていきます。

 

そのストレスを、この伯爵夫人たちはすべて錯乱坊…じゃなかった(何だこの変換)、さくらん坊やにぶつけます。

 

大人の男であるミカンやオレンジたちには、サクランボ伯爵夫人たちは強く出られないのですけど、弱い立場の子どもである坊やには、強くあたることができるのです💢

 

坊やに勉強を強要し、がり勉させた挙句にいっさいの余暇を与えない、というひどさです。

 

今読んでいていも、すごくムカつく描写です!

 

坊やは良い子ですので、極限までがんばるのですけど、よい成績をとったからといって、ほめてももらえません!!

 

勉強をすれば、もっとしろと叱られ、
本を読めば、本がいたむからやめろと叱られ、
勉強しすぎて頭痛がしてくると、医者代がもったいないと叱られ


これは一種の精神的虐待です。

 

前に書いた記事でも、少し紹介しましたけど、最悪です。

「チポリーノのぼうけん」 生きて泣いて笑う悪役 - 「本好きは作るもの」~珠玉の児童書~

 

 

結果、さくらん坊やは現状に対する不満をため込み、よくないおともだち(チポリーノ)と交わることによって、共和主義思想に染まってしまい、反体制派の参謀として、なくてはならない立場を演じることになるわけです。

 

このさくらん坊やが勉強させられるところは、身につまされる表現です。

 

家庭教師はアメリカニンジン先生というのですが、最悪です!

 

今回は、アメリカニンジン先生の最悪さを旧訳(杉浦明平さん訳)からですが、引用します。

 

昆虫の観察をしようとすればこうです。

 

「ハエにみとれているような子どもに厳罰ですぞ!もののはじまりというものは、必ずこうなのです。ハエだけではすみません、つぎには、クモを見ることになり、そのつぎはネコ、そのつぎはありったけの動物……というぐあいで、しまいには、本を読むこともお忘れになりますぞ。学問しないものは、りっぱな子どもにはなれません。りっぱな子どもになれないものは、りっぱな人間になれません。そしてりっぱな人間でないものは、牢屋にはいるのですぞ。サクラン坊や、もしも牢屋へはいるのがおいやだったら、こんなハエをみているのをおやめなさい」

 

絵を描こうとすればこうです。

 

「絵などをかいて時間をむだにするような子どもは厳罰ですぞ!そんなことでえらい人になれると言うのですか?まずまずペンキ屋になるくらいがさきのやまですよ。つまり、きたないぼろを着た人間で、昼も夜もぐるぐるかけずりまわって壁を汚し、あげくのはては、身分相応のことですが、牢屋にはいるのですぞ」

 

とにかく邪魔しかしません。

 

無性にイライラします。

 

しかし、おとなこそ、かえりみて反省しなければならないかもしれません…。

 

子供に勉強させようとするときに、「将来にわたってどのように利益があるのか」ということを説いてやらせようとする。

これはとても大人がやりがちなことで、そしてそれは、もしかすると子供の芽を摘んでしまうことになるかもしれないことだと思いました…。(自己批判!)

 

 

 

続きます。

 

 

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魔女モティ スプーンおばさんのぼうけん かえりみち
スパゲッティがたべたいよう ものすごくおおきなプリンのうえで ママはかいぞく
ねずみのいもほり 魔女の宅急便 どんぐりむらシリーズ既7巻

 

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大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 2 最悪の敵トマト騎士

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

チポリーノの冒険
ジャンニ・ロダーリ (著), ヴラジーミル・スチェーエフ (イラスト), 関口 英子 (翻訳)

ここは野菜とくだものたちの暮らす国。玉ねぎ一家の長男坊チポリーノが、無実の罪で牢屋に入れられてしまった父チポローネを救いだそうと大活躍。仲間たちと力をあわせて、国をおさめているわがままなレモン大公やトマト騎士とたたかいます。語りの名手ロダーリの書いた明るくゆかいな冒険物語を、歯切れのよい新訳で。

 

 

大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 1 えらそうにするのはあほだから

 

 

読んだら読んだで、面白くて続き、続き!と夢中になってしまいました。

 

トマト騎士とガチンコ対決したチポリーノですが、理由は、逮捕されたチポローネお父さんが「勉強しろ」と言ったからです。

 

「だって、ぼくは本をもってないし、本を買うお金だってないもの!」
「そんなことは、問題じゃない。ただ一つのもの、つまり悪者のことを勉強してごらん。だれかとてもいばっているひとに出会ったら、しっかりその男のことを研究してみるがいい」

 

悪者のことを研究しろと言われて、最初に会ったのがトマト騎士だったわけですが、このトマト騎士こそ、チポリーノの宿命のライバル、ラスボスです。

 

最悪の悪役、トマト騎士。

 

卑怯で、ずる賢くて、高圧的で、プライドが高くて、お育ちがよく、口がうまくて、恫喝と泣き言を使い分け、どことなく愛嬌があって、政治力は抜群です。

 

顔がちょっと、現存する有力政治家にとても似ている気がすると前から思っているのですけど気のせいでしょうか。

 

f:id:WhichBook:20210202122644j:plain

 

レモン大公は最高権力者ですがあほです。
ちょっと同情すべきところもありますが、サクランボ伯爵夫人たちもあんぽんたんです。

 

自分たちが生きているだけで常に誰かから何かを搾取して生活していることを知ろうともしない無神経さを持っています。

 

 

あさてまず、トマト騎士が何をしでかしたのかというと、うらなりカボチャのおじいさんの家を取り上げようとしました。

 

この家、爪に火をともすようにして、一生の間に一枚一枚、レンガをためてせっかく作った犬小屋ほどの小さな小さな家なのです!

 

たった百八個のレンガをためるのに、どれほどの苦労を重ねたか…ユーモラスに語られてます。
どちらかというと、かなり笑えるエピソードなのですが、この苦労の産物を取り上げられるとなるとこれは、話が別です!

 

おとなとして読んだとき、ここに非常に複雑な感情をいだきました。

 

トマト騎士は、うらなりカボチャのおじいさんに退去を命じますが、この理由はサクランボ伯爵夫人の敷地内だからという理由です。
う~~~ん。

 

これは退去してもらうしかない…のかなあ…。
現代の法律に照らし合わせても…。

 

それとも借地権代を払わないといけないんだろうか。

 

トマト騎士は、大事に大事に一生をかけてためたレンガでつくった家をとりあげて、番犬を置こうとしてます。

 

どうやら、「番犬を置くのにちょうどいい小屋だぞ」と思ったのが先で、あれこれと難癖をつけて追っ払おうとしてるらしいです。

 

借地権代のかわりに差押をかける、と考えれば、ギリ理由がなくもないのかな?
こども六法読み直そうかしら…。

 

こいつの言うことは何から何まで全部間違ってる!お前が悪い!と言うことができない、何とももどかしい思いがあります。

 

うらなりカボチャのおじいさんにとっては、一生をかけてためた全財産です。
非道なことに間違いはありません!そんなことが正しくて良いはずがない!なのに…。
 

 

とりあえずは、たまねぎの皮をむくことでトマト騎士を泣かして、チポリーノはこの敵を追い払いました。
しかしこの家は、ずっと争いの種になりつづけます。

 

トマト騎士、犬を連れて来て無理矢理に追い出す

チポリーノが知恵をはたらかせ犬を排除

みんなでおじいさんの家を隠す

トマト騎士、村の住人たち全員逮捕。

 

こんなちっちゃい家ごとき、どうしてそんなに執着するのかよくわからなーい!

 

けど、何というか、行政や権力者というのは、隅々まで権威をいきわたらせるためなのか何なのかよくわかりませんが…。

 

そんなことよりもっとほかにたくさんしなきゃいけないことあるだろぉ!?

 

ということをほったらかして、本当にどーーーーでもいい、ちっちゃなこと、それも、弱い者から巻き上げるようなことに相当すうるようなことを
がんこに諦めずにいつまでも熱中したりしますよね。

 

まあ、信長が欲しがった松永久秀の平蜘蛛の釜とまではいきませんけど、何かとにかく、搾取することにばかり熱中しすぎてるのを見ること、よくあります。

 

なのでいっそうムカつくというか…。
野菜や果物の話なのですけど、理不尽さと絶妙さが鼻についてしかたあありません。

 

f:id:WhichBook:20210202122707j:plain

やっぱり似ている…。

 

 

この、住民たちがとばっちりをくらって全員逮捕されたあたりで出て来るのが…、
チポリーノの生涯の盟友であり参謀、孔明であり張良であり黒田官兵衛であるサクラン坊やです!

 

 

続きます。

  

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大人が読む児童書「チポリーノの冒険」 1 えらそうにするのはあほだから

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

チポリーノの冒険 (岩波少年文庫) (日本語) 単行本(ソフトカバー) - 2010/10/16 ジャンニ・ロダーリ (著), ヴラジーミル・スチェーエフ (イラスト), 関口 英子 (翻訳)

ここは野菜とくだものたちの暮らす国。玉ねぎ一家の長男坊チポリーノが、無実の罪で牢屋に入れられてしまった父チポローネを救いだそうと大活躍。仲間たちと力をあわせて、国をおさめているわがままなレモン大公やトマト騎士とたたかいます。語りの名手ロダーリの書いた明るくゆかいな冒険物語を、歯切れのよい新訳で。

 

 

 

 

「チポリーノの冒険」、以前、とんでもなく適当な紹介をした後に、何気なく開いてみたらそれはそれは壮大な物語でした。

 

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ふざけた紹介のままにしていてはいけないな~と思っていたので、「チポリーノの冒険」をもういちど読み直してみることにしました。

 

本当は「しろいりゅう くろいりゅう」にするつもりだったのですが、出した途端にあっという間に妹子に持っていかれてしまいました。

 

さて、このチポリーノの冒険ですが、岩波少年文庫の中でも、かなり長いお話です。
ですけど、一冊にまとめられていて、要は上と下にわかれていません。

 

字も小さくて密です。
内容も密です。
登場人物もめちゃめちゃ多いです。

 

しかしみんな物凄くキャラ立ちしているのと、ユーモラスなのと、ストーリーが濃いので、途中でつまずくようなところがありません。
気になって気になって、続きを読んでしまわずにはいられない本です。

 

だいたいにおいて、いくら名作名作と言われていても、昔の本は描写が長く、ちょっとここはさすがに退屈かなあ、などと思う場所はあるものなんですが。この本はそこがないのがすごいです。

 

あれこれ言ってても始まらないので読み始めてみます。

 

 

開いてみるとすぐに、二十九章にも及ぶ長い目次があります。

 

加えて、「まえがき」に当たる、「チポリーノが、日本の子どもさんたちにごあいさつ」、エピローグ(割と長い)、その後に歌と楽譜、とても詳しいあとがきと、実質的には33章ぐらいに及ぶ超大作です。

 

この目次ですけど、最近ラノベなどで流行りの、内容をほとんど書いちゃっている長~いタイトルです。
時代先取りです。

 

 

f:id:WhichBook:20210201120808j:plain

 

読み手に内容を知らせるという意味では、決してばかにできない長~~~いタイトルです。
突然トラックにはねられて異世界で有力者の悪役令嬢のライバルの恋人役の妹に生まれ変わってスライムと一緒に勇者になった!
(これ、前もやった気がするな…)

 

題名はともかく、このスタイルの「内容を書いちゃってる長いもくじ」は、何章にも及ぶ超大作の海外の名作にもよくみられます。
Wikiかどこかで、歴史あることが書かれてたような気もしますけど、忘れました!

 

このお話も、その伝統にのっとっているんだと思います。

 

途中まで読んで放置していても、もくじをみれば大体のことが思い出せるという、たいへん便利なつくりになっています。

 

またこの絵が素晴らしいです。
ヴラジーミル・スチェエーヴァさんというかたです。
(名前からしてロシア系でしょうか?)
動きが会って、表情が豊かで、大好きでした。

 

f:id:WhichBook:20210201120831j:plain

 

これは兄助君のいたずら書きです…。

 

今持っているのは、新版になる前の、杉浦明平さんの訳なのですごく恨んでいるのですが、子供の頃だったので仕方がありません。

 

何となく、子どもがこういうことをしちゃいたくなってしまう魅力を持っている挿し絵です。

 

いい機会なので、この紹介を書くのを機会に買い替えることにしようと思います。

 

 

正直な話、このお話を全部これまでのようにくわしく紹介していくと、いったいどのくらい長大な記事になるのか検討もつかないです。
それぐらい、すべてのエピソードに思い入れがあるし、おもしろいです。

 

何となく全体をお話するのも難しいです。
大筋の、だいたいこうなるんだろうな~という展開はすべて裏切られ、裏切り者が続出しますし、敵に味方がおり、状況はよくなったかと思えば悪く成り、二転三転…。
そんな大作を、無理なく、楽しく、子どもたちに伝えます。

 

名前のとおり、野菜・果物、虫たちが登場人物です。
大筋は、以前ご紹介したとおりの
レモン大公の専制君主制を革命によってぶったおす
という話です。


たまねぎ小僧のチポリーノくんが、さくらんぼと手をとりあって、支配階級をぶったおします。支配階級はレモン、トマトです。
どこまでできるかわかりませんが、もくじを追いながら説明しつつ、再読して行こうかと思います。

 

 

第一章 チポローネが、レモン大公の足をふみつけます。

 

チポローネは、チポリーノのおとうさんです。
タマネギ一族のチポリーノは、(一応、この話の中では)貧困層よりの庶民、ということになってます。
う~ん、何か、身につまされます…。

 

チポリーノたちの住んでいる町に、専制君主のレモン大公がやってきて、町はパレードに沸きかえります。

 

このパレードの光景を見る限り、このレモン大公のおさめる国、支配階級は威張っていますし理不尽ですが、一般人の生活は特にものすごく陰惨としてギスギスしているわけでもなく、そこそこ秩序を保ってみな暮らしているようです。

 

しかし、支配階級は反体制に対して神経をとがらせています。
チポローネはあまりの群集の密状態の中で、ぎゅーっと押された結果、レモン大公の足をぎゅーっと踏んでしまい、逮捕されてしまいます。

 

終身刑になってしまったお父さんに義憤を感じたチポリーノ、とりあえず運試しに旅に出ます。

 

この章では、そこまでレモン大公が専横にふるまう理由
あほだから
ということが描かれてます。 

 

この、「まったく何も悪いことをしてないのに、唐突に終身刑にされちゃったチポローネおとうさんを助け出す」ことが、チポリーノの行動の大きな理由となっています。

 

 

 

第二章 トマト騎士が、チポリーノのために、生まれてはじめて泣かされます。

 

出たよ、トマト騎士。
チポリーノとトマト騎士がバッチバチです。
肩でどつきながらオラオラァ!とやってる感じです。

 

このラウンドは、トマト騎士がチポリーノの髪の毛をむしった=チポリーノはたまねぎなので、
たまねぎの皮をむいた=トマト騎士大泣き
で、チポリーノに軍配です。

 

 

つづきます。 

 

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子どもの本だな【広告】

チムひとりぼっち どんなにきみがすきだかあててごらん 子鹿物語
ドリトル先生アフリカゆき 名探偵カッレ 城跡の謎 あさになったのでまどをあけますよ
せいめいのれきし 100万回生きたねこ うみぼうやとうみぼうず

 

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閑話 本屋さんで「こども六法」をねだってるお子さんを見ました

閑話です。

 

風来のシレンをやってたので、まったく何もしていませんでした。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

本屋で小さな、小学校一年生ぐらいのお子さんが、本棚をじーーーっと凝視してます。

そして、決然としてお母さんの所に持って行っていました。

 

「これがいい!これ買って!」 

 

こども六法
山崎 聡一郎 (著)

いじめ、虐待に悩んでいるきみへ。法律はみんなを守るためにある。知っていれば大人に悩みを伝えて解決してもらうのに役立つよ!きみを強くする法律の本。(「BOOK」データベースより)

  

お母さんはというと…。

なんだかうさん臭そうな顔してます。

あまり買いたくなさそうです。
というか、本当に読むのぉ~?という顔してます。

 

しかし、このお子さん、ゆずりません。
断固としてます。

 

「これ面白かった。学校にあったの。学校で読んで、すごく面白かったから買って!!!」

 

妹子「えらい子だ。あれはいい本」

わたし「シーー黙って!!!!!」

 

妹子も兄助も大好きで、何度も読み返している本なのですが、厳密に言うと絵本でもないし児童書でもない。

 

強いて言えば子ども用ビジネス書…?
事典のたぐい…?

 

何にせよ、必須の一冊であることは確かです。

 

前に、すごくふわっと、短く紹介しました。

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これは主に、子どもはみんな、ムカつく相手に対して、先生がアテにならないとき
いーけないんだ、いーけないんだ、警察に言ってやろ!
と言ってやるために読んでいます。

 

そういう動機で読み始めることが多いです。
法律の知識というものが、武器になってるわけです。

 

しかし、読んでいくうちに…そして、年がたつに連れて、だんだん、
あれっ?
自分のあの行動はセーフかな?
と思って読みはじめます。(…のようです)

 

妹子も

「現行犯逮捕は誰でもできるんだって!学校のおとこ全員たいほだ~!」 

 

と言ってたのが、ちょっと暗い顔をして現れて
「おかねのコピーははんざいなんだって…。どうしよう」

 

はい?????
おかねのコピー?????

 

どういうこと!!???

 

妹子「絵にお札を書いて切って遊んでたんだけど、だめなんだよね…わたし逮捕される?」

わたし「されない(即答)」 

 

それはコピーじゃないから。
誰がどう見てもお金だって思わないから。

 

でも、遊びでやってても、今や家の中にあるプリンターで気軽にスキャンできちゃったりしますから(いや、やったとしても誰もそれをお金とは思わないでしょうけど…)

いけないんだよというのを知るのはよいことだと思いました。

 

 

と、とにかく、子ども小六法は面白いしためになる!

 

というお話です。今日は。

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

マイマイとナイナイ ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 鉢かづき
マチルダは小さな大天才 おめでたこぶた 身がわり王子と大どろぼう
おかあさんは魔女 チベットのものいう鳥 森は生きている

 

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今日の一冊「小さなお城」

今日、ご紹介するのは、かなりしっかりしたページ数の多い、「本型の絵本」です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

小さなお城
サムイル マルシャーク (著), ユーリー ワスネツォフ (イラスト), 片岡 みい子 (翻訳)

カエルのケロロとネズミのチュッチュ、それに金色とさかのオンドリと灰色ハリネズミ―4ひきの動物が小さなお城で楽しくくらしています。そこにオオカミとキツネとクマがやってきます。さぁ、たいへん!小さな動物たちは知恵をしぼり、力をあわせて、悪い動物たちに立ち向かいます。

 

 

「森は生きている」の、サムエル・マルシャークの絵本です。

 

絵本…絵本?

 

けっこう厚くて読み応えあります。

 

実は私の持っている方は、☟こちらのバージョンの「ちいさいおしろ」で、とても古い本で残念ながらもう取り扱いされていません。

 

でも、イラストはかの有名な滝平二郎さんです!

  

ちいさいおしろ
サムイル・マルシャーク (著), 滝平 二郎 (イラスト), 西郷 竹彦 (翻訳)

 

 「モチモチの木」「花さき山」で有名なかたです。

日本的な版画が多かった(と思われる)滝平二郎さんですが、このロシアの物語のイラスト、この絵が本当にすばらしくて、大好きでした。

 

つくりも面白くて、冒頭は、まるで、したきりすずめのようないじわるじいさんと、ほんわかじいさんの会話からはじまります。

 

マルシャークは、戯曲の形式なので、このお話でもそうです。

あとがきには、紙人形劇のつくりかた、演じ方も書かれていて、ご家庭でもどうぞと書かれています。

 

 

このいじわるじいさんとほんわかじいさん、見かけはじいさんなのですけど、よく会話を観察してみると、特にいじわる爺さんは、意地と見栄をはっただけの、子どもの会話です。

 

「ちいさいおしろ」の中身の本編は、いじわるじいさんが悪役を、ほんわかじいさんが善役を演じることが示唆されます。

 

 

 

お話は、ちいさなおしろをかえるが見つけるところからはじまります。

 

かえるが小さいおしろを見つけ、そこにねずみが現れて、一緒に住むことになります。 

絵がとてもすばらしいのです!

f:id:WhichBook:20210130100046j:plain

 今となっては、この本は宝物です。

 

 「森は生きている」と同じく、何度も翻訳され、再話され続けているのですが、今、手に入れられるのはこちらの本だと思います。

 

 

 

カエルはケロロ、ネズミはチュッチュという名前になっています💖

可愛いです。

  

私の持っている版は、ぴょん子とちゅう子です(笑)
時代を感じます…。 

 

おんどりとはりねずみが仲間に加わりました。

 

むぎをつき、パンをこね、門番ははりねずみ。
おんどりはというと、歌を歌ってます。

 

一見、役立たずに見えますけど、やはりエンタメ部門は大切なんです。

 

 

悪役は、くま、きつね、おおかみです。

 

f:id:WhichBook:20210130101044j:plain

妹子「こわっ!!!このくま、目が正気じゃないよ!」

 

f:id:WhichBook:20210130101129j:plain

 

う~~ん、確かに。

 

 

しかし、おしろは小さいけれど堅固でした。

 

くまがやられ、おおかみがやられ、最後に残ったのはきつねです。

 

f:id:WhichBook:20210130101236j:plain

 

女の子!!

 

この「悪いきつね」、スカートをはいてます。

 

おんどりに言葉たくみに近づき…。
甘いささやきで、おんどりをほめ殺して、自尊心をくすぐり…

悪女のきつねなのです。

 

 

敬虔なロシアのギリシャ正教の影響あってか、勧善懲悪がとてもしっかりしていて、でもいっさいの宗教くささを感じさせません。

 

「自然」と「動物たち」に誰よりも心がよりそっている。
そこがマルシャークのいいところだと思います。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

マルシャーク、片岡みい子さんの翻訳で、「ねこのいえ」というのがありました。
とても読んでみたいです!!

 

 

ねこのいえ
サムイル・マルシャーク文 (著), ユーリー・ワスネツォフ絵  (著), 片岡 みい子 (翻訳)

ネコねえさんのお屋敷はどこの家よりも立派です。ところがたいへん大火事に。たすけてくれたのは貧しい子ネコたち。みんなで家を建てることになりました。力を合わせ、いっしょに建てよう!家族全員、四人そろって、新しい家を建てましょう。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「森は生きている」は、一度記事にしてみたことがありますので、ご紹介します。

 

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森は生きている
サムイル マルシャーク (著),  湯浅 芳子 (翻訳)

気まぐれな女王が真冬に4月の花マツユキソウをほしいといいだし、国じゅう大さわぎ。継母の言いつけで吹雪の森に分け入った少女は12の月の精たちに出会います。有名な児童劇。

 

 

 

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イヌと友だちのバイオリン ぼくは王さま ニャーンといったのはだーれ
新編 世界むかし話集(6)ロシア・西スラブ編 小川未明童話集 こども論語
マリールイズいえでする ヤクーバとライオン 勇気 春がきたよ、ムーミントロール

 

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今日の一冊「ババヤガーのしろいとり」

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

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>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

ババヤガーのしろいとり
内田莉莎子 (著), 佐藤忠良 (イラスト)

希少本、絶版でしたがリクエストにより1998年特製版として復活しましたが今では手に入らないようです。彫刻家の佐藤忠良さんのイラストです。ハードカバー

 

どの本にしようかとめくっていて「ババヤガーのしろいとり」を見つけました。

 

この本大好きだったな~!
懐かしくなって取り出しました。

 

こどものとも」は名作が多くて、よく復刊されていますけど、この本はどうだろう。

 

そう思って、Amazonで検索してみる前に、Yahooの検索窓に「ババヤガー」、と入れますと、それだけですぐに、「白い鳥」「しろいとり」と候補が出てきました。
やはり私だけではなく、探してる人がいるんだなと思いました。

 

1998年にいちど、特製版として復活しているようです。
残念ながら、また絶版になっているらしく中古しか出回っていませんが、中古市場ではさかんにやり取りされています。
本当に素晴らしい絵本です。

 

こうして古い本を探していると、2000年代あたりに、さかんに復刊・復刻されています。
それから20年もたつのですから、そろそろまた復刊の時期ではないのでしょうか?

 

間違いなく、記憶に残る本だと思います。

 

 

ババヤガーはロシアのやまんばです。

 

やまんば、やまうば、おにばば、色んな言い方がありますが、山に住んでいるぼろぼろの姿をしたおそろしい老婆、という点では変わりありません。
主に人食いですが、やさしいやまんばもたくさんいます。

 

(どうでもいいですが、昔ギャルの間でヤマンバスタイルというのが流行ったとき、その名前に「山姥」を使うのが気に食わなくてしかたなかったです。もう、その言い方を覚えてる人もそうはいませんよね)

 

ロシアのババヤガー、「ババ」、という音が、「婆」とぶっているところが面白いです。

このお話のババヤガーは、恐ろしい方です。

 

この前から、「くわずにょうぼう」の鬼婆とか、ババヤガーとか、グレートマザーっぽい昔話ばかり拾っているような気がしますけど、迫力満点でこわおもしろいのでOKということにします。

 

お話の大筋は、今となっては、よくあるモチーフの話だとわかるのですけれども、このお話の特徴はやはりこの佐藤忠良さんの絵です。

 

素晴らしいです。

 

「おおきなかぶ」で有名なかたですが、私はおおきなかぶよりもとにかくこの「しろいとり」の方が断然好きでした。

 

この絵が、うちだりさこさんの見事な語りと一体となって、一度読むと、やみつきになります。

 

 

マーシャとワーニゃは姉弟です。
お父さんとお母さんがいない間マーシャは弟のお世話を頼まれました

 

おくらおねえさんとはいっても、そこはマーシャも子ども。
ちょっと弟をほったらかして、友達の所へ遊びに行っている間に、ワーニャはさらわれてしまいます。

 

何にさらわれたかというと「まっしろなとり」です。

 

この鳥ですが、どこからどう見ても明らかに白鳥です。

 

 

その目つき、顔つきの意地悪そうなこと!
悪役の白鳥、というのは珍しいです。

白鳥の湖でも、悪役は黒鳥になりますし、一般的には、はかなくて綺麗で美しい鳥というイメージです。

 

しかし、こいつらは白鳥のままの姿で、ババヤガーの手先であり、手足です。

 

この悪い白鳥たち、たくさんいます。
昔は意識していなかったんですけど、今数えてみると七羽です。
その数もなんとなく、神秘的…。

 

マーシャは、弟を探してしろいとりたちを、どこまでも追いかけていきます

 

途中で「ペチカ」「りんごの木」「ミルクの川」「ハリネズミ」に助けてもらいます。

 

 助けてもらう代わりに、マーシャはペチカを掃除するし、リンゴの木は実を落として軽くしてあげるし、とにかくはたらきます。
ちょっと目を離したことで、大変な労力を使うことになったわけです。

 

リンゴの木のあかあかとした実のいろの素晴らしさ。
黒々と建つペチカの大きながっしりとした頼もしさ。

 

ババヤガーの家に行けば、天井からはあの意地悪そうな白鳥の悪い顔がのぞいていますし、窓からのぞくババヤガーの頭もこわいです。

 

でも、弟のワーニャは入り口で遊んでいますので、絵からして何となく、ギリセーフで連れ出せそう感があるといいますか、その匙加減が絶妙です。

 

ことばの響きも美しいです。

 

ペチカ!ペチカ!おしえてよ。しろいとりはどっちへとんでいったかしら?

 

りんごのき、りんごのき、おねがい、わたしたちをたすけて!

 

ババヤガーに命令されて、追っかけてくる、しろいとりの恐ろしいこと!
普通の白鳥の大きさなのですが、ワーニャを背中に乗せて飛んでいるところといい、ころされかねないすごさがあります。

 

それでも、特にこの話を読んだからといって白鳥に怖いイメージがつくこともなくいられるのは、やっぱり絵の魅力です。

 

恐ろしいのですが、なんとなくやわらかく牧歌的で、しかもりんごの木、ミルクの川、はりねずみやペチカの絵が素晴らしく魅力的なので、そちらに対する憧れの方が大きく、全体的に美しいイメージしか残りません。

 

最後にもらうお土産のかわいさはたまりません。
(マーシャはマトリョーシカをもらってほおずりしています)

 

お友達にも教えて、一緒に読んでもらって、あちこち隠れてしろいとり遊びをやりました。
やはり、最後の最後に頼りになるペチカの頑丈さは頼もしい限りです。

 

  

 「おおきなかぶ」を探していたら…「ゆきむすめ」を見つけました!

 

そして、その説明には

『おおきなかぶ』のコンビによるロシアの昔話絵本。

と書かれているではありませんか!

 

これこれ!こっち!
この「ババヤガー」も、「おおきなかぶ」コンビなんですよ~。

 

是非復刊してほしい一冊です。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

ゆきむすめ
内田 莉莎子 (著), 佐藤 忠良 (イラスト)

子どものいないおじいさんとおばあさんが、ある冬、雪で女の子を作ると突然動きだしました。おじいさんとおばあさんは大喜びして娘としてかわいがります。でも、春がきても、娘は家の中に閉じこもって外では遊びたがりません。やがて夏になり、娘はおじいさんやおばあさんにすすめられて、女の子たちと森に遊びに出かけますが……。『おおきなかぶ』のコンビによるロシアの昔話絵本。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

おおきなかぶ
A.トルストイ (著), 佐藤 忠良 (イラスト), 内田 莉莎子 (翻訳)

おじいさんが植えたかぶが、甘くて元気のよいとてつもなく大きなかぶになりました。おじいさんは、「うんとこしょどっこいしょ」とかけ声をかけてかぶを抜こうとしますが、かぶは抜けません。おじいさんはおばあさんを呼んできて一緒にかぶを抜こうとしますが、かぶは抜けません。おばあさんは孫を呼び、孫は犬を呼び、犬は猫を呼んできますが、それでもかぶは抜けません。とうとう猫はねずみを呼んできますが……。力強いロシアの昔話が絵本になりました。

 

 

 

 

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魔女のむすこたち みどりのゆび ラチとらいおん
科学と科学者のはなし―寺田寅彦 みんなうんち ちいさいモモちゃん
めっきらもっきら どおんどん あおい目のこねこ 名探偵カッレとスパイ団

 

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大人が読む児童書「算数の先生」 4 読了 もう勘弁して

大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

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>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

算数の先生 (ちくま学芸文庫) 文庫 - 2011/1/8 国元 東九郎 (著)

7164は3で割りきれます!この数は4つの数字からできていて、その7、1、6、4をたすと18になります。18は3で割りきれますから、この7164は3で割りきれるのです。睦子さんはふし目がちに、しかし自信ある口調で説明した。それから先生は倍数・約数について説明を加えた。5年生の算数は新任の若い岡本先生で、計算競争や図形を描いたりして教室は活気づいていく。教師だった著者が、読み物ふうにつづる算数との出会いの物語。素数、分数、最大公約数などから数列、面積、ピタゴラスの定理などの高いレベルまでを取り上げた世評に名高い算数学習書。

 

 

大人が読む児童書「算数の先生」 1 57年前+35年前の本に震撼

大人が読む児童書「算数の先生」 2 昭和3年=ほぼ大正時代

大人が読む児童書「算数の先生」 3 華麗なる大正女子のガチバトル

 

 

みんな大好き大正時代!

 

最初は「算術の話」という名前だったようです。

羽織とハカマ姿だったのを、普通の服装に変え、言葉使いをあらためたと書かれています。

 

きのうご紹介した女子のガチで殴り合う算数バトロワは、 それぞれの女子たちが5~8問ずつ出し合っていますので、あの調子の難易度★★★★★の問題が所せましと暴れまわっています。

 

羽織とハカマで、お上品にオホホな会話で、謙遜したり、持ち上げたりしながら算数の問題で殴り合う…。

 

私は完全に大正時代のイメージが崩壊しました。

 

 

 

この本で出ている教科単元、驚くべきことに今とほとんど変わりありません。

 

もくじから拾ってご紹介してみます。

 

命数法と記数法
数字の起源
計算の簡便法
端数の処理(おふろの入浴料から)
基数の倍数(手品のたねから)
約分(融通をきかせよ)
百までの素数(山また山)
分数と少数(おとうさんの診察)
最大公約数と最小公倍数(手ぬぐいの長さなどから)

 

アルキメデスの話などをはさみながら──

 

等差数列と等比数列
長方形の面積・単位
三角形の合同と作図(ターレスの話から)
ピタゴラスの定理とその応用
直角座標(金がめのありか)

 

ほぼほぼ、現代の算数の内容を網羅しながら、そこにまつわる逸話をはさみつつ、身近な問題で解いていく、という流れです。

 

「おふろの入浴料」や「手ぬぐいの長さ」が、身近かどうか、という問題は別としてです。

 

銭湯の入浴料なのですが、この本ではおとな20円、子ども10円です。
もともとの「算術の先生」では、おとな5銭、子ども4銭だそうです。
キロメートルも、一里二里の「里」単位だったようです。

 

何しろ、58年前+35年前ですから…。
編集委員の方ですら、あとがきで
「優等生ばかり出てくるのが気になりますが」と書いています。

 

 

昭和3年当時、作者の国元東九郎さんは、学習院小学校の先生であったとのことです。

 

当時の学習院小学校といえば、憶測ですけど、きっと良家の子女ばかりを集めてたんでしょうね!
原本は、ものすごく丁寧でお上品な言葉遣いしていたので、私からみて丁寧すぎると感じる「算数の先生」ですら、かなり手なおしをしてあるようです。

 

もとはいったい、どんなだったのだろう…。

 

すごく見て見たいです。

 

しかし、こうして一度、言葉づかいをあらため、現代向き(昭和の現代向きですが)になおした甲斐あって、こうして令和の世の中でもまだ売られているんだと思いました。

 

両家の子女が通うということは、鬼滅で大人気の大正時代で、もしかしたら輝利哉(キリヤ)さまも通ってたかもしれません。

 

妹子と考察してみましたが、鬼滅の中でこの学校に通っていそうなのは、輝利哉(キリヤ)さまとその姉妹しか思いつきませんでした。

 

大正ものであることを全面に押し出し、緑と黒の市松模様柄のポップをつけて、リアル大正時代の教室がここに!とかやって売り出すとか…。

 

兄助「ろくでもないことしか思いつかない」

 

 

最期にまためくっていたら、ちょっとコロナっぽい話が出てきました。

 

伝染病のおそろしさを、校医さんから講和を受けるとのことです。

 

チフス菌を朝に一つ口の中に入れ、それが15分ごとに細胞分裂したとすると、夜になったらどうなるか、というような話です。
ここから、曽呂利 新左衛門のねずみ算の逸話に発展します。

 

曽呂利新左衛門 - Wikipedia

 

へーそうなんだ、ねずみ算ってすごいね。
倍倍で増えていくとそんなに増えるんだ~

 

…で、終わりませんでした。

 

等比数列・等差数列などの話に発展です。


初項をa、末項をbであらわし、項数をnであらわすなんて話になってきています。

 

挙句の果てに、ガウスの逸話、1から40までの自然数の和を聞いて、10歳で即座に求めたという話まで飛び出しました。

 

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無理無理無理無理。
もう無理。勘弁して。

 

かつての自分もそうでしたが、この本はあまりにも内容が濃いので、全部普通に読み終えるのは全く無理です。


真面目にやるならば、一つの話につき一週間~ひと月ぐらいかけて、じっくりやっていくのが本当は理想なんだと思います。

 

はっ! 

ということは、奴(兄助)は、するする~と読み終えたに見せかけて、ななめ読………。

 

 

兄助のおかげで、久しぶりに開いてみましたが、予想以上に面白かったです。

 

そして、今も売られているということを知れてとても良かったし、紹介できて良かったです。

 

古い本ばかりだけだと何なので、算数の本で評判のよい「数学物語

また、自分が読んでみて面白かったけど、てんで意味はわからないし子供も読まないけど(何が言いたいんだ…)、雰囲気が面白かった「xはたの(も)しい」を紹介しておきます。

 

さいごの文章が、なんだか感慨深かったです。
この本とともに、この紹介を〆るのにもぴったりだと思いました。

 

「さきにもいったように、たゆまぬこん気さえあれば、数学は簡易なしくみで勉強できるのが、なによりの強味です。
諸君はわかい。時代は進歩した。心がけしだいで、いくらでものびられますよ。たとい大学まで進学できない人にも、良い参考書がつぎつぎと出版される、テレビ講座ができる、講習会や研究会がある……独学の機関がしだいに整備されてきましたから。」
岡本先生は、やがて巣だつ幾十の少年たちをなぐさめ励まされた。

 

そうだよなあ、時代は進歩しました。
YouTubeに、デジタル授業…。

 

(あとで考えたら、「テレビ講座」っていうのは、絶対に復刊時に付け加えたんだろうなと思いました)

 

ネタとしても若干、しちめんどくさい算数の話に、ここまでお付き合い頂いてありがとうございましたー!

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

数学物語 (角川ソフィア文庫)
矢野 健太郎 (著)

動物には数がわかるのか? 人類の祖先はどのように数を数えていたのか? バビロニアでの数字誕生からパスカルニュートンなど大数学者の功績まで、数学の発展のドラマとその楽しさを伝えるロングセラー。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

xはたの(も)しい: 魚から無限に至る、数学再発見の旅
スティーヴン ストロガッツ (著), 冨永 星 (翻訳)

数学なんて苦手だ、と学校であきらめた人はたくさんおいででしょうが、大人になって、あれはこういうことをするための道具だったのか、とか、こんなことがわかるから数学者の人は喜んでいたんだね! などとふと腑に落ちたときに、数学熱に取りつかれる人も少なくありません。数学ってなんて楽しく、そして頼もしいモノだったのか、と。 何か値打ちのあるものを手に入れそびれた気がしていて、再挑戦してみたいあなたのために、数学の深さと魅力を数学界の「中の人」が親しげに語る、こんな本はいかがでしょう。現役数学者で『SYNC』『ふたりの微積分』といったベストセラー解説書の著者でもあるストロガッツ先生が贈る、数学エッセイ。

 

 

 

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ドン・キホーテ しょうぼうじどうしゃじぷた チムとルーシーとかいぞく
キツネ山の夏休み ジェイン・エア チムききいっぱつ
しずかなおはなし ジャリおじさん (日本傑作絵本シリーズ) (日本語) 大型本 - 1994/11/20 大竹 伸朗 (著, イラスト) こんとあき

 

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大人が読む児童書「算数の先生」 3 華麗なる大正女子のガチバトル

大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

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>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

算数の先生 (ちくま学芸文庫) 文庫 - 2011/1/8 国元 東九郎 (著)

7164は3で割りきれます!この数は4つの数字からできていて、その7、1、6、4をたすと18になります。18は3で割りきれますから、この7164は3で割りきれるのです。睦子さんはふし目がちに、しかし自信ある口調で説明した。それから先生は倍数・約数について説明を加えた。5年生の算数は新任の若い岡本先生で、計算競争や図形を描いたりして教室は活気づいていく。教師だった著者が、読み物ふうにつづる算数との出会いの物語。素数、分数、最大公約数などから数列、面積、ピタゴラスの定理などの高いレベルまでを取り上げた世評に名高い算数学習書。

 

 

大人が読む児童書「算数の先生」 1 57年前+35年前の本に震撼

大人が読む児童書「算数の先生」 2 昭和3年=ほぼ大正時代

 

 

この学校では、女子と男子は別クラスで分けられています。
時代を感じます。

 

昭和3年といえば、ほぼ大正時代と変わりないと言ってもいいので、記事の題名も大正女子にしちゃいました。

 

この女子ターンが、面白いです。

 

・学級委員の優等生、長谷川寿恵子。(すえことよみます)
・内気だけど、たまに寿恵子さんを出し抜く内田睦子。
・そつのない川村春子。
・ダークホース瀬島よし子。

 

などなどの面々です。

 

女子ターンと男子ターン、順番に展開するのですが、昭和3年の時代が、女子は学問など必要ない!なんて、誰か本当に言ってたんだろうか?というような内容です。

 

そして男子よりも、女子は何となくライバル心が強く緊張感があります。

 

私がすごく面白いと思い、熱中していた、女子教室ターンについて、話してみたいと思います。

 

 

長谷川すえ子VS内田睦子

 

女子の教室の中でも長谷川すえこさん、(寿恵子は読めないのでひらがなにしちゃいました)教科書を全部暗記してすらすら言えたりと、半端ない秀才です。

 

長谷川すえ子さんはこんな感じの女子です。

 

先生「地球から太陽までの平均距離は一億四千九百五十万キロメートル、とありませんでしたか。」
長谷川「はい、『かりに1時間200kmの速さでとぶ飛行機にのっていったとしても、太陽に到着するまでには八十六年かかる。』とありました。」
さすがは学級委員の長谷川さん、文章を暗記している。

 

いや~、すごいわ。秀才!
自他ともにライバル(多分)なのは、川村春子さんで、暗算がとても早いです。

 

この女子の教室である日、先生が暗算の問題を出しました。

 48×25
暗算が前提なので、やっかいです。

 

おとななので、「あー、なるほどね」と思うでしょうけど、みな熱心に暗算します。

 

内田睦子さんという子が、手を上げます。

 

睦子さんはそくざにたって、
「1200です。」
と答えた。先生は涼しく、
「そのとおり!」
とおっしゃった。先生は、お気に召した答えがあると、よく『そのとおり』とおっしゃるくせがある。この『そのとおり』を浴びせられることは、わたしたち生徒仲間の光栄なのである。そして、わたしはそのレコード・ホールダーなのだ。それなのに、きょうはちがいもちがい、格段の差で、睦子さんに『そのとおり』の栄冠をうばわれてしまった。

 

わたしは、そのレコード・ホールダーなのだ。(笑)

今読んでもすごいです、長谷川すえ子…。末恐ろしいわ…(笑)
この一話は、すえ子さんの手記という形をとっています。

 

わたしはこういっても、けっしてお友だちの栄誉をそねむあさはかな、いやな考えは少しもないつもりである。ただその差のあまりにもはなはだしかったのに、われながらあきれてしまったのだ。

 

いやいやいやいや(笑)

 

結局、「25をかけるかわりに、百倍して4でわりました」ということなのですけど、この流れ、このやりとりが実におもしろいです。

 

 

成績優秀女子軍団VS瀬島よし子

 

約分のお話です。
普通の約分の問題のなかに、ひょこっと一つだけ、156/390というのが入っています。(すみません、390分の156のつもりです

 

これを多くのものは2で約し、それから3で約し、26/65を答えにした。ひどいものは、2で約しただけの78/195ですましていたが、これはお話にならない。

 

お話にならないとか、厳しいです。

 

ところが瀬島さんひとりだけが、2/5という簡単な答えを出した。一同はこのかわった答えにドキンとしたが、じぶんたちの仲間が多いのをたのみにし、それに瀬島さんの日ごろ のできばえからみて、失礼にもまさかというような顔をしていた。ところが意外!まったく意外。先生はこの大勢には目もくれず、「そのとおり」と、さっと軍配を瀬島さんにあげられた。
さあ、さわぎである。英子さん、睦子さん、すえ子さんなどは、とんびに油揚げをさらわれたかっこうで、そのあわてぶりったらない。しかし、26を2でわると13。この13で65がきれいにわり切れる。だから26/65にはたしかにまだ13という約数があったわけ、無念ともくやしいとも。ああ、この一題だけ問題に出されたのなら、こんな不覚はとらなかったものを。

 

いや~~~(笑)

色々、突っ込みどころ満載なのですが、秀才女子グループの鼻をあかしたこの(普段の出来からしてまさかと思われていた)瀬島さんのような子が出て来ると、ちょっと気持ちがいいです。

 

ここから、話は「エラストテネスのふるい」法にうつり、素数に対して、細かく説明がされています。

 

 

成績優秀女子軍団のバトルロワイアル

 

夏休みに、この算数がよくおできになる女子軍団は(書き方に悪意があるようですが気のせいです)お互いに算数の問題を作って交換しあいます。

 

そんな子供がいるかー!!!


と言うのは置いておいて、この問題、めちゃくちゃ難易度高いです。

 

トップバッターはやはり長谷川すえ子。
期待を裏切らないすえ子さんです。

 

「かたつむり問題」というのを出してます。
100m走で、弟に2m勝った兄に、二回目は2m下がってもらったというものです。

 

次は川村春子。
「力のないわたしが...」「このあいだのお約束がうらめしく...」

 

出たよ。
女子の謙遜合戦。

 

今も昔も変わらないな。

さて...問題はというと

 

地球から太陽まで、 およそ一億五千二百万キロメートル。「いまかりに、時速三六00キロメートルの飛行機で行ったとしても、太陽に到着するには約五年かかる。」と書いてあります。もちろんおおよそのことですが、これがまちがっていないことを、計算でしめしてください。

 

ガチだ。
出す問題がガチすぎる。
斧で殺しにかかってる。
アルキメデスエウレカネタをご披露するおまけつき。

 

 

次、瀬島よし子
「文章のおじょうずなのに感心しました」「長谷川さん、えらい問題をお出しになったものですね」

 

今度は女子の必殺・ほめ殺し作戦だ!

☟瀬島さんの問題♡

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これかよ!!!
本気やん!
本気で全員倒しにかかっとるやん!

 

 

ラストを飾るのは暗算の速さには定評のある石田英子。

「フカだ、フカだ!」
という船長のけたたましい声がひびきわたった。フカは砲手の子の後方84メートルの所に追いすがって、秒速7.2メートルでせまっている。
これにたいして、砲手の子のはやさはわずかにその九分の二。まごまごしていると、かわいいわが子はおそろしいフカの餌じきとならねばならぬ。もはや一刻のゆうよもできぬ。砲手はいまから何秒のあいだにフカを射とめてしまわねばならないか。

 

状況が過酷すぎて問題が頭に入ってこない。

 

 

 

 

つづきます。

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロウソクの科学 世界一の先生が教える超おもしろい理科 (角川つばさ文庫) (日本語) 新書 - 2017/5/15 ファラデー (原著), 平野累次/冒険企画局 (著), 上地 優歩 (イラスト)

理科が好きになる、たのしい実験の本!――これを読めば、きっと化学を好きになる――ノーベル化学賞受賞・吉野彰博士(旭化成名誉フェロー)推薦!

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロウソクの科学 (角川文庫) (日本語) 文庫 - 2012/5/27 ファラデー (著), 三石 巌 (翻訳)

日本のノーベル賞受賞者2名が、ともに小学生のときに読んで、その後の進路に大きな影響を与えた、と語った本として話題化した一冊!

 

 

 

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でんせつの きょだいあんまんを はこべ めのまどあけろ 人形の家
王への手紙 朝びらき丸東の海へ 小さなきかんしゃ
ふしぎな銀の木 3びきのかわいいオオカミ ぶたたぬききつねねこ

 

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大人が読む児童書「算数の先生」 2 昭和3年=ほぼ大正時代

大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

算数の先生

国元 東九郎 (著)

7164は3で割りきれます!この数は4つの数字からできていて、その7、1、6、4をたすと18になります。18は3で割りきれますから、この7164は3で割りきれるのです。睦子さんはふし目がちに、しかし自信ある口調で説明した。それから先生は倍数・約数について説明を加えた。5年生の算数は新任の若い岡本先生で、計算競争や図形を描いたりして教室は活気づいていく。教師だった著者が、読み物ふうにつづる算数との出会いの物語。素数、分数、最大公約数などから数列、面積、ピタゴラスの定理などの高いレベルまでを取り上げた世評に名高い算数学習書。

 

 

大人が読む児童書「算数の先生」 1 57年前+35年前の本に震撼

 

このお話は、舞台となる学校に、新任の先生がやって来たところからはじまります。

 

名前は岡本先生。
若くてイケメンです。
(希望的観測)

 

表紙の絵からお察し下さい。
ちょっと額が広いように感じますけど、実際に開いてみた挿し絵では、まったくそんなことありません。

 

手足もすらっとしていて、上着を脱ぎ、ネクタイをしめて腕まくりをした所、すごくスマートに見えます。
もスポーツも万能ということになっています。

 

そして、新任の先生とは思えないほど教え方がこなれています。
(そこはお話なので…)

 

理想化されたスーパー先生です。

 

校長先生の意向により、単独で算数の教科のみを受け持つことになったようです。
受け持つのは小学校6年生ぐらいだと思いますが、はっきりと書かれてはいません。
教科によれば、たぶん6年生です。

 

子供たちはそれぞれ、あとがきでも指摘されている通り、優等生ぞろいのいい子ちゃんたちなのですが、割とキャラが立っていて、個性豊かな面々です。

 

新任の先生が来ると聞いた教室の子どもたち

 

・「心得顔で」新情報をキャッチし披露する「世才に長けた杉野くん」
・算数が苦手なので弱音を吐く「案外気の良い本田くん」
・この情報を確認しに、いち早く時間割を調べる「すばしこい伊藤くん」

 

まあ何せ、古い本なので表現は古いのですが、面白いのでぐいぐい読めます。

 

 

岡本先生が現れます。

 

この先生の第一の特徴は、授業を飽きさせないことです。
(お話なので…)

 

パターンがいくつかあります。

 

・おもしろい、算数にちなんだたとえ話をする。
・いきなり計算問題をさせる。
・算数の歴史を語る

 

この「いきなり計算問題をさせる」では、何かしらの「簡単に出来るはずの問題」をひっかけとして出しておき、「あーわかってないんだな~誰かわかる人いないのかな~」というような感じで煽り立てます。

 

…もっと丁寧な言い方でです。

 

さらに、タイムを計って競わせながら、そのひっかけ問題について教えるという感じで、かなり子どもたち、目を吊り上げて煽られて盛り上がります。

 

 

たとえ話とは、ねずみ算で秀吉を煙に巻く曽呂利新左衛門だとかです。
最初にご披露するのは、すもうの谷風という力士と、丸山応挙という画家の交流です。

 

いきなりすもうの力士の話が出てきて
岡本先生「諸君はみんな、すもうが好きでしょう」

 

いやいやいや…。

 

と思うのですが、この本、令和の読み方として一番ただしいのは、ネタとして読むことだと思います。

 

しかしこの最初に出てくる「谷風という力士と、画家の丸山応挙の交流」のお話は、小話としてけっこう印象的で面白いです。

 

横綱の力士、谷川は、丸山応挙に一幅の絵を頼むのですが、三ヶ月の期限を過ぎてもまだ出来ない、まだ出来ないと、三年の月日が過ぎてしまいます。
三年後にやっと出来上がったのは、たった一張りの弓がさびしく描いてあるだけでした──。

 

驚く谷川ですが、応挙は説明をします。
ただの弓の絵と侮ったが、その弓のつる、まっすぐな一本の線を描くのに(2メートルぐらいあるそうです)、描いては消し、描いてはやめ、毎日弓の弦を引き続けて、いつしか三年の月日が経っていた、というものです。
ふすまの向こうにはびっしりと弓の絵が折り重なっていた…。

 

また、谷川が横綱となるための箇所など,、なかなか感動的です。

 

わずか一本の弦――とはいえ、二メートルにもおよぶ一直線、定木を使わず、恩賜の感激をいっきにひっぱる筆のさえ、これはじつに至難なわざに相違ありますまい。三年の月日が、この弦一本についやされました。応挙にこの誠意、この努力あってこそ、円山派の開祖として、後世に非凡の名をうたわれたのでありましょう。

いまわたしは、谷風の努力には一言もふれませんでしたが、一粒選りの天下の力士五十人をむこうにまわして、ひとりのこらずうち負かしたその天晴の腕前、土俵の上の勝負を見ただけでは、力ある身だ、あたりまえと思われるでしょうが、その体力、その技量は、けっして一朝一夕にきたえられたのではありません。十九の年にすもうの道にはいってから、寒風肌を裂く厳冬の朝、熱気惰眠を催す酷暑の夕、一日もたゆみなく土にまみれてけいこにはげみ、相手のないときは柱にぶつかって四肢をきたえた、汗とあぶらの継晶でなくてなんでしょう。

算数はむずかしいにはちがいない。が、わたしたちがこれからしらべる問題は、まさか応挙が二メートルいっきに引きとおしたあの苦心のものではありますまい。雨の日、風の日、たゆまぬ努力をつづけたら、横綱にはなれなくても、ある程度までにはたっすることができるでしょう。

 

努力の大切さを、美しい言葉のリズムで語ってしています。

 

言葉が古臭いだけに、とてもリズム感があって、読んでいても気持ちが良いです。
冒頭のすもうの説明もこんな感じです。

 

あのすもうの世界で、はじめて横綱になったのは谷風梶之助(たにかぜかじのすけ)。天明元年大阪の春場所で、晴天十日、五十人の力士をひとりのこらず負かしたという、古今無双の大力士であります。身長一メートル九十一、体重百六十キロ、天覧ずもうにはまれの弓をいただいて、とうじ谷風といえば、天下にだれひとり知らぬ者もない盛名があったものです。

 

リズムがあるので、何となくその音楽的な流れに引きずられて次々に読んでいく、とでも言えばいいでしょうか。

 

昔の講談話もきっとこうだったんだろうな(きいたことないですけど)と思わせます。

 

 

最初に計算問題を出された子どもたち、深呼吸をさせられます。

 

ちゃめな森川くんさえ、おしゃべりの余裕もなく、ただ先生につられて呼吸している。三回目の呼吸が終わろうとしたとたん、先生は「はい。」とおっしゃったので、一同はさっと表を出して計算に取りかかる。
一秒、二秒──ひっそりとして声がない。かがやくひとみ。熱する耳、走る鉛筆。

 

「兄助、ここ、ええ~って思わなかった?」
「熱する耳、走る鉛筆はあるかもしれんけど、かがやくひとみはないわ」

 

もう、全篇がすべてネタです。
ネタ満載です。

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

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大人が読む児童書「算数の先生」 1 57年前+35年前の本に震撼

大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

算数の先生 (ちくま学芸文庫) 文庫 - 2011/1/8 国元 東九郎 (著)

7164は3で割りきれます!この数は4つの数字からできていて、その7、1、6、4をたすと18になります。18は3で割りきれますから、この7164は3で割りきれるのです。睦子さんはふし目がちに、しかし自信ある口調で説明した。それから先生は倍数・約数について説明を加えた。5年生の算数は新任の若い岡本先生で、計算競争や図形を描いたりして教室は活気づいていく。教師だった著者が、読み物ふうにつづる算数との出会いの物語。素数、分数、最大公約数などから数列、面積、ピタゴラスの定理などの高いレベルまでを取り上げた世評に名高い算数学習書。

 

母が妹と楽しく読書だ本だとキャッキャとやっているのを、兄助(妹子の兄)くんは一体どう見ているのだろうか。

 

とはいっても、もう高校生。
反抗期になってから長いです。

 

昔は渡す本はみな、何も言わずにすらすらと読んでくれたものでした。
長い本も絵本も、素直~に受け取ってくれて、「どうだった?」と聞けば「面白かった」とだけ…。

 

比較的、無口な子なので、「...」となっていた時には、面白くなかった、自分の好みではない、というときです。 

この子がおもしろいと言ったら、本当に面白いです。

 

水のように流れて行って、残っている形跡が、あるのか、ないのか…。
不安です。
反抗期、妹子も来るのだろうなあ…。

 

でも、本ずきか、そうでないかはやっぱり個人差があるので、圧をあまり与えないようにしたい。
しかし、ある程度プレッシャーはかけたい。
ジレンマです。

 

ときどき、妙なことがあります。
引き抜いた覚えのない本が、兄助の机の上に乗っていたり、棚から抜かれた形跡があったりします。
(直近だと「大事なことはみーんなねこに教わった」「ホビットの冒険」でした)

 

こっそり読んでくれているのだろうか。
直接に聞くと否定するし…。

 

机の上にはずっと
ガンダムで英語を身につける本」「十二大戦」「妹さえいればいい」
のラインナップが変わらないままだし...。

 

 

兄助はPCでゲームをよくやっています。
Steamというソフトで、古い懐かしいゲームもたくさん登録されているので、お父さんもやりはじめました。

 

そして、携帯の音声チャット(Discord)で連絡を取りながらゲームをすすめます。
連絡はスマホ、ゲームはPC。

 

これは、コロナ前からそうでしたので、コロナ禍においても、まったくストレスを感じさせません。

 

デジタルネイティブという感じです…。

 

 

だがしかし、うちはPCにガチガチにロックをかけているので、兄助くんはゲーム時間を延ばして欲しいときには申告しに来ます。
メールで許可もできるのですが、直接許可した方が早いのでやってきます。

 

そして大抵、何か引き換えになっているのが恒例です。

 

悪魔の取り引きみたいに、「一時間、解除して欲しければ」…「なにか」を提供するのです。

 

引き換えにする「なにか」は、兄助が自分で考えて言ってくるときもありますし、私が提案するときもあります。
(コインランドリーに行ってもらうとかです)

 

すごく久しぶりに本にしてみました。
「本を1冊、読んでもらおうか」

 

どの本かは自分で選べますが、未読のものという条件つきです。
絵本NG、というか、持っている絵本で読んでいないのはないはずです。

 

兄助は、ドリトル先生(アフリカゆきです)を読んで
「犬が神」
とか面白いことを言ってくれるので、岩波系にして欲しいんだけどなあ~。
( ジップのことですね、アフリカ行きでは活躍しますもんね)

 

今でも名作だ、と言いはるのは
「はらぺこたまごがさらわれた」「火のくつと風のサンダル」などでしょうか。

 

持ってきました。

 

「じゃあこれ」

 

さ、「算数の先生」!?

 

とても古い古い本です。

 

自分が愛着があるので取っていましたが、文体も古いし、説教くささもあるし、今どきの子どもには向かないのではないかと思い、兄助にも妹子にも、積極的におすすめしようとしませんでした。

 

でも、私はとても好きでした。

 

またしても、するする~と読み終えて、ほったらかしにしているのですが、わたしもめくってみました。
古いよなあ。
「どうだった?」と聞いても、「ふつう」「まあまあ」という返事。
もう今の子たちにはアレだろうなあ。

 

と思って、今度は何となく検索してみました。

 

新刊で売られているっ…!!!

 

これは、けっこうな衝撃でした。

 

この本、生き残っているのか。
そうかそうか。

 

今は算数本といえば、ドラえもんの計算教室とか、コナン君の算数とか、そういう子どもたちに身近なキャラクターを使ってのものばかりかと思っていました。

 

あとがきによると、この本、すごいです。

 

「少年少女科学名著全集」といって、1964年(昭和39年)、ビートルズが来日するよりも前に初版発行の中の一冊なのです。
昭和39年と言えば、2021年の今からは、57年前です!


あとがきによると、編集委員のかたが、これを編纂するときに、57年前の当時、さらに35年も前に、自分が読んだ本を忘れられなくて入れた、と書かれているのです!!

 

それも、編集委員のかた(奥田教久さんです)が、
「さすがに古いよな~」「自分だけが思い入れがあるだけだろう」
と思っていたところ、別の編集委員のかたもこの本のことを言いだして、それで入れることになった。
古い言葉はかなり手を入れた。

 

などなど、描かれています。

 

そして、いまの令和の世の中でも、新刊で売られている…。
すごい!

 

というわけで、前置きが長くなってしまいましたが、読み返しつつ、また再読シリーズやっていきたいと思います。

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロウソクの科学 世界一の先生が教える超おもしろい理科

ファラデー (原著), 平野累次/冒険企画局 (著), 上地 優歩 (イラスト)

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロウソクの科学

ファラデー (著), 三石 巌 (翻訳)

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船乗りクプクプの冒険 はてしない物語 第九軍団のワシ
雨月物語 嵐が丘 ちいさなきいろいかさ

 

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今日の一冊「くわずにょうぼう」 コスト削減、人件費削減を家庭に持ち込む落とし穴

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

くわずにょうぼう
稲田 和子 (著), 赤羽 末吉 (イラスト)

欲張り男のところに、よく働くが飯を食わない美しい女がやってきて女房になりました。最初は喜んだ男でしたが、ある日、蔵の米がごっそり減っているので、隠れて見ていると、女房は男の留守に米を炊き握り飯を作ると、髪をほどいて頭のてっぺんの大きな口から食べてしまいました。女の正体が鬼婆だったことを知た男は、鬼婆にとらえられ……。赤羽末吉の絵によるスリリングな昔話の絵本。

 

 

今日はどれにしようかなあ。

 

妹子「これ、良かったよ」

 

どれどれ。
くわずにょうぼうか!

 

わたし「こわいこわいこわい。この後めっちゃよもぎを詰んだわ。道端で」

 

子どもたちに、ペニーワイズは人気(人気?)ですけど、現実の世に「おにばば」は今もいます。
ほら、後ろを向いたら…。

 

般若のお面、あれです。

 

 

これは「こどものとも」の中でも相当の名作です。
絵がものすごいです。
迫力満点で、ホラー感満載です。

 

日本もののホラーというのはどこか、わたしたちの心の奥底に語りかけるらしく、バイオハザードで倒すゾンビや、漫画で人気な美しい耽美な吸血鬼ものとはまったく違う、真に迫った怖さがあります。

 

 

お話は、よくばりおとこが「よっくはたらいて、めしをくわない」にょうぼうが欲しいと、山でひとりごとを言ったところからはじまります。

 

後ろからついてくる人影…。

 

だれかしらんが あとから ついてくるんだと。
 ぴた ぴた ぴた  ぴた ぴた ぴた

 

ここからして怖いので、読み聞かせのときは子どもたちは釘付けです。

 

米を食わないといううつくしいむすめを、にょうぼうを迎えたよくばりおとこ。

 

倉の米が増えるどころかごっそり減っているので、よくばりおとこは物陰に潜んで見守ります。

 

「ああ、よくばりおとこが いっちゃった。どれ したくすべえか」
にょうぼうは くらのこめだわらをどっこいしょと だしてきて、おおきな おおきな かまのなかに こめを ざぁーっと うつしこんだ。
そして、じゃぎ じゃぎ じゃぎ じゃぎ といで、
かまのしたを ぼん ぼんと たくんだと。

 

このとき、読み聞かせのときに、
「ああ、よくばりおとこが いっちゃった」
を、ほっとして羽をのばすおくさんのように…。
「どれ したくすべえか」
を、声色を変えて、さてこれから悪いことをするぞ、というような悪女っぽい声で読むと、子どもたち…

 

ふっと、わたしの顔を見るんです。

 

鬼ばばは、こっちじゃないわい!!

 

 

こどものとき、自分としてはまず最初に疑問だったのは、なぜそうまでしてご飯を食べないお嫁さんをありがたがるのか?ということです。

 

その良さの意味が分かりませんでした。

 

もう一つ、結婚して女房を持ったのに、やっぱり一人がいいからとかいうふわっとした理由で、そんなに簡単に結婚生活を、はいさようなら、終わりです、なんて出来るのかということでした。

 

この男性は、あらゆる面で突っ込みどころ満載なので、ひどい目にあうのはある程度仕方ないことと思うのですが...。

 

大人になってから、一体どういうことだったのか、何となく意味がわかりました。

 

このお話は「うまい話には裏がある」という以上の意味を含んでいます。

 

そもそも、この男はなぜ奥さんが食べないことを望むのでしょうか?

 

ケチなだんなさんは、あちこちにたくさんいます。
奥さんがこれを買いたい、あれを買いたいと言っても、必要ない、もったいない、いらないなどと言う男性です。

 

あからさまに反対はしないまでも、「それ本当に必要なの?」とか何とか言って、嫌な顔をする。

 

「女性の奥さんに全部家計を任せて文句を言わないのが夫婦の円満の秘訣☆」
などと言うやんわりとした言い方では、全くこのプレッシャーを表現することはできません。

 

どうやらこのケチなだんなさんがた、資産を増やすことにばかり傾倒するあまり、奥さんも自分が経営する会社の従業員の一人ぐらいに捉えているらしいです。

 

利益を出すためにコストを削る。
そのために人件費を削減することばかり考えているというような思考回路です。

 

人生のパートナーをこのような観点からしか見られない。
この物語の中でどんどん減っていく倉の米俵のがらんとした様子は、このよくばりおとこの心の貧しさを暗示しているようです。

 

(こんな風に昔話って読むんですよね違いましたっけ)

 

 

うつくしいにょうぼうから、たちまち正体を現したおにばば。
それはそれは、すさまじい怖さです。

 

めくりながら、その怖さを堪能します。

 

めくれば、突然、絵が見開きの大まわしになって、そのたびにくわずにょうぼうは自在に変化します。

 

迫力のある美人が、唐突に大鬼のような太い腕のマッチョになったり、走る必要がある時には妙に細く風のようになりますし、怒った時の顔といったらそりゃあもう…。
(ブルブルガクガク)

 

ここからのホラーゲーム展開があまりにも恐ろしいので、よくばりの是非が云々よりも、脱出できたときは本当にほっとします。

 

しかし、見開きいっぱい使って細い風のようになり、すさまじいスピードでおいかけてくる、おにばば…。
ヒィッ、怖いーっ!!

 

正体を現してからの食わず女房があまりにも怖いので、ここからは見ている方もホラーゲームの主人公になります。

 

何とかして逃れる術は無いものかと、共感してハラハラと見守ることになります。
共感するうちに、よくばりおとこのよくばりは、何となく自分と一体化してきます。

 

なんだこいつ。
よくばりで最低だわ。
という以上に、いつしか自分の中にひそむよくばりへの反省と戒めになります…。
よくばり、よくなかったわ…という心になります。

 

この世の中にはよくばりおくさんももちろん、いますからね(笑)
ほどほどにです(笑)
(これは自分に言ってます)

 

声に出して読んでみるとわかりますが、
じゃぎ じゃぎ じゃぎ じゃぎ
ぼん ぼんと
しっとり しっとり おもたいわい

 

言葉のリズムがすばらしいです。
とても読み聞かせにむいています。

 

赤羽末吉さんの絵と、稲田和子さんのことばが完璧にマッチした、名作です。

 

 

 

 

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大人が読む児童書「町かどのジム」 4 詩の心、世界の美しさ

大人が読む児童書。
「再読★児童書編」です。


この記事はネタバレもしていくことになりますので、未読の方はご注意ください。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 

町かどのジム
エリノア ファージョン (著), エドワード アーディゾーニ (イラスト), 松岡 享子 (翻訳)

デリーが物心ついてからというもの、ジムはいつでも街角のポストのそばに座っています。むかし船乗りだったジムは、デリーにいろんな場所の話をしてくれます…。1965年学研刊の名作をアーディゾーニの挿絵で。

 

 

大人が読む児童書「町かどのジム」 1 ねことベーコン(のベーコン)

大人が読む児童書「町かどのジム」 2 ねことベーコン(のねこ)

大人が読む児童書「町かどのジム」 3 リアルポパイ系ジムの挿し絵の衝撃

 

 

ベーコンとねこの終わった後は、どれをとっても素敵なお話なのですが、あまり紹介しすぎるのもアレなので、さらっと注目ポイント(独断と偏見で)をお話します。

 

もくじ:

デリーとジム
男の子のパイ
みどり色の子ネコ
ありあまり島
ペンギンのフリップ
九ばんめの波
月を見はる星
大海ヘビ
チンマパンジーとポリマロイ
ジムのたんじょう日

 

 

「月を見はる星」

 

実際のお話の面白さよりも、個人的な執着や、この本にまつわる体験のようなものばかり書いてきてしまったような気がするので、本来の本の紹介に戻りたいと思います。

 

「月を見はる星」は、「町かどのジム」の中でも屈指の神秘的なお話です。

 

これは、ジムが海で体験したお話ではなくて、ジムが伝え聞いた昔話、という形式のお話です。

 

夜空を見上げたとき、月の横に、明るい星があるのを見たことはないでしょうか?

 

これを書くために検索しても、「月の横」と検索窓に入力しただけで、ずらずらと「月の横にある明るい星は何か」という履歴が出てきたので、みなさん「月の横に明るい星があるな」というのは共通認識なんだと思います。

 

天文学的には、どれと決まっているわけではなく、その時どきによって、火星であったり金星であったり、木星であったりするらしいです。
いま知りました。残念!

 

ファージョンはこれに素敵な物語をつけてくれています。

 

ファージョンの作品の特徴は、途中に入っている、詩の美しさです。

 

その美しい詩を、見事な日本語に訳されているのが石井桃子さんです。

 

ファージョンはほとんどが石井桃子さんの訳なのですけど、この「町かどのジム」を訳されたのは、松岡享子さんです。

 

こちらの訳も負けずおとらずすばらしく、うまく言えないですがが、クセがなく、日本語のリズムをとても大切にされています。

 

この「月を見はる星」の詩の訳が実にみごとです。

 

天に浮かぶ土星は邪悪で欲が深く、常に何か盗み取るものはないかと周囲を見張っていました。

 

美しいベルトに7つの月まで手にいれて、ある日土星は地球の月に目をとめます。

 

土星は流れ星に命じて、月をそそのかすような歌を歌わせます。

 

月よ、かがやく小道をとおって
天のおとうさま土星のところへおゆき
そうすれば、おまえは、
七人のおねえさんといっしょに、
くるくるまわりながら
光の輪をつくるでしょう。
夜になっても、ひとりぽっちじゃなく、
とうさま土星のまわりでおどる、
七人のおねえさんと声をあわせて、
うつくしい歌をうたったり、
銀色のもようをつくったりできるのですよ。

 

流れ星は燃え尽きてしまいますが、月は激しく心を揺り動かされます。

 

月が逃れようともがくので、「かあさん地球」は身震いをします。
月が離れれば、地球はばらばらになってしまう…。

 

地球はガリレオ・ガリレイに助けを求めます。
(なんだか、ガリレオが、弘法大師の伝説になった空海感ありますが…。偉人はいつでも、伝説化されちゃうものなのでしょうね)

 

ガリレオは流れ星の燃えかすを拾います。
そこには空文字であの詩がしっかりと刻まれていました。

 

ガリレオは、太陽に助けを求めます。

 

月が目を覚ますと、わずかに離れた位置はもとに戻っており、小さな星がそばに光っていました。

 

月は、わがままで無鉄砲な小娘のようなキャラです。(かわいいです)

 

小さな星に「とまれ!」と命令されて、
どーして止まらなくちゃいけないの?知ったこっちゃないし、七人のおねえさんたちと歌ったり踊ったりしたい!
「プリプリして言う」というところが、女の子っぽいです。

 

七人のおねえさまというのは、プレアデスの姉妹を思わせます。

 

身をよじって、去ろうとするたびに、地球は震えます。
「とまれ!」と叫ぶ、小さい星。

 

太陽に強い力を与えられているので、月もどうすることもできません。
(小さいのに強い強制力を持つこの星が、かっこよかったです)

危険な土星、わがままでかわいい月、流れ星に刻まれた詩、強い命令の力と、どれもとても魅力的なお話でした。

 

 

「大海ヘビ」は、虹のねっこにある宝物について、あこがれをかきたてました。
そしてジムが心からやさしいです。本当に優しい人です…。

「誰も愛してくれない」すすり泣く大海ヘビを、こころゆくまで撫でてあげるのですが、だんだん疲れてきます。
でも撫で続けます。

皆が慕うのもわかります。そういうお話です。

 

(またしても余談ですが、例の英語版のゴリゴリにマッチョなジムは、どれだけ撫でても疲れ知らずでありそうな筋肉でした。でもフィリップさんはここのエピソードが好きだったらしく、詳細までカラフルに塗っていました。大海ヘビも迫力満点です...)

 

「チンマパンジーとポリマロイ」は、この中で一番笑えるお話です!

この「チンマパンジーは誤植ではありません。

 

読んだことがある方なら、このチンマパンジーグヮグヮグヮのキーワードで大笑いしてくれるはず...。

子どもの頃、バナナを食べるときはしばらく「グヮグヮグヮ」と言うのがクセになっていました。

 

 

何か、挿し絵について色々言いましたが、英語版の本は、「ムギと王さま」からも何篇か抜粋して追加されています。
そちらの妖精やお嬢さまが出てくるお話の方は、とても綺麗でロマンチックな絵でした。(念のため)

子どもの本にとって、絵は大事だなと思いました。

 

今にして思えば、この三芳悌吉さんの絵のバージョンの「町かどのジム」はたいへん貴重だと思いました。
 

この三芳悌吉さんの挿絵バージョンの本、奇跡的にカバーが残っていました。

 

あんな子どもの頃から、あれほど読み返したのに...。
大事にしていたのと、それとやはり、カバーといえども、装丁がかなりしっかりしているのです。

 

このカバーに、当時の書評が載っています。

 

朝日新聞評:八才のデリー少年に、八十才の船乗りあがりのジム老人が物語る一連のホラ話を中心に、その語られる町かどのふんいきや、少年と老人のあたたかい心のふれあいが、いきいきと描かれている。

 

東京新聞評:現実と夢が巧みに組みあわされ、物語の奇抜さ、夢の大きな中に、あたたかい愛情が流れていいる。こどもの愛を育てることは創造の力を育てることに通じるが、幼児からおとなまで楽しめる。

 

朝日新聞ひどいです。ほら話なんてやめたげて~。

 

夢が壊れます。
わたし「大人ってこういう無神経な単語で夢を壊していくんだよね...。ほら話なんて。ホームレスだって本当はそんな書き方したくなかったわ!」
妹子「自分で書いておいて何言ってんの!?」

 

東京新聞はばっちりな書評です。
まさに、言いたいことをこの短い文章の中に組み込んで、完璧に表現しています。

 

 

ファージョンの作品は、世界のすべては美しい、と思えるのが特徴です。
美しさというのは、なかなか感想を表現できません。難しいです。

 

言葉にできないような、静けさ、あたたかさ、美しさ、ほのかなあこがれ、言葉に出来ないもの…。

 

 

 「ヒナギク野のマーティン・ピピン」の冒頭に飾られている詩を一度ご紹介しましたが、このような世界です。

 

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そういった、美しい文章、情景、また心に彩られながら聞く物語です。

 

ぜひ、読んでみていただきたいと思います😊

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ムギと王さま
エリナー・ファージョン (著), エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

幼い日,本のぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短篇集

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

銀のシギ
エリナー・ファージョン (著), E・H・シェパード (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

気だてはいいが食いしんぼうの粉屋の娘ドルが、小鬼のたくらみで王さまの妃になりました。妹のポルが銀のシギの助けを借りて、姉の危機を救います。素材は昔話の「トム・ティット・トット

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

リンゴ畑のマーティン・ピピン
エリナー・ファージョン (著), リチャード・ケネディ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

恋人から引き離されてリンゴ畑の井戸屋形にとじこめられている少女ギリアンを,6人の娘たちが牢番として見張っています.陽気な旅の歌い手マーティン・ピピンは,美しく幻想的な6つの恋物語をくりひろげて娘たちの心を奪い,首尾よく牢屋のかぎを手に入れます.ファージョンが作家としての地位を確立した傑作

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ヒナギク野のマーティン・ピピン
エリナー・ファージョン (著), 石井 桃子 (翻訳)

ファージョン作品集5巻。

 

 

 

 

 

 

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