~珠玉の児童書~

~珠玉の児童書の世界~

学校で塾で、読解力を身に付けるには本を読め、と言われる。ではいったい、どの本を読めばいいのか?日本が、世界が誇る珠玉の児童書の数々をご紹介。

今日の一冊「おそばのくきはなぜあかい」 極限まで考え尽くされたシンプルな文章の美しさ

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

おそばのくきはなぜあかい―にほんむかしばなし
石井 桃子 (著), 初山 滋 (イラスト)

語りつがれた日本の民話の中から《なぜ》のおはなし3つ.「おそばのくきはなぜあかい」「おししのくびはなぜあかい」「うみのみずはなぜからい」.初山滋氏の美しい幻想的な画面が子どもの夢を広げます

 

 

むかし、「岩波の子どもの本」には、ひとつひとつ、ちゃんとカバーがついていて、その折り返しのところに説明が書いてあったり、「本のおねがい」というのが載っていました。

 

わたしは本です!

「絵本です」じゃなくて「本です」というところが良かったです。

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1.よむまえには手をあらってね!
2.ぺーじをおらないでね!
3.ふせるのはいやだよ!
4.つばきをつけないこと!
5.ほうりだしたらいたいいたい!
6.ではみなさんおやすみなさい!

 

ページを開くたびにこれが目に付きます。
絵も可愛いので、興味をひかれてじっくり見ていました。

 

本は大事に扱わないといけない。
大切なものなんだ、ということを自然に身につけてもらいたいと、当時の絵本を作る人たちが願っていたんだなと思います。

 

 

開いた表紙の裏が、もう見事なカラーです。
そしてこの本の特徴はやはり、初山滋さんの素晴らしい絵にあります。
このデフォルメされた線と、普通の絵の混合で描かれた表現は、いちど見ると忘れられません。

 

内容は古来の日本むかしばなしです。

 

単なる昔話とあなどってはいけなくて、ネットでもたくさん昔ばなしを載せていたり、子供用のものもあふれていますが、やはり極限まで考え尽くされたシンプルな文章というのは、すでにそれだけで芸術です。

 

いま、むかしばなしや民話は、ネットで読めるからというお母さん、けっこういらっしゃるのですが、やっぱりぜんぜん違います。

 

むかしばなしだからこそ、筋だけではなくて、この計算しつくされた美しい日本語のリズムというものを、意識して大事にして行きたいものです。

 

 

3つ、お話が入っていて、起原を問う、「由来譚」と呼ばれる系統の昔話です。

 

・おそばのくきはなぜあかい
・おししのくびはなぜあかい
・うみのみずはなぜからい

 

最初に「おそばのくきはなぜあかい」
現代において、おそばの茎が赤いということ知っている人はそう多くないでしょう。

 

ふゆの ある さむい 日の ことでした。おおきな かわの そばで、おそばと むぎが はなしを していました。

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こんな線で表現された絵なのに、どちらがおそばでどちらがむぎか、はっきりとわかります。

 

おそばはちょっと洒落ています。
服に器に盛ったご飯のような絵が書いてあって手に花を持っています。

 

こうやって話している、2人でもないし2匹でもないし……何て言ったらいいかわかりませんが、つまりおそばとむぎのところに、年取ったおじいさんがやってきて川の橋を探しているといいます。

 

しろい ひげを むねまで たらした たいへん としとった おじいさんが つえを ついて

 

なかなか石井桃子さんはスパルタです。

おさない子どもが読みやすいよう、語句と語句の間をスペースをつけて、ひらがななのでますが、文章そのものは、「しろいひげを胸まで垂らしたたいへんとしとった」と、形容詞がすごくたくさんついています。

困っているけど、仙人っぽい、偉そうなおじいさんだなということがちゃんと伝わってきます。

 

この前の嵐で流れてしまった橋。
風が強く波が立っている川

 

おじいさん、この二人でも二匹でもない、つまりおそばとむぎに、自分をおぶって向こう岸までつれていってくれないかと聞きます。

 

「いやだよ」と、むぎはすぐにいいました。
「こんな さむい 日に、かわに はいったら、しんで しまうよ」

 

しかしお蕎麦はうなずきました。

 

ここのシーン、ものすごくシュールです。

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よく動物や植物が人に混じってあれをしてこれをしたなどと、「由来譚」にはよく出てきますが、この絵は本当に植物がおじいさんを背負ってやってるんだなという感じがします。

 

このときお蕎麦は、したくをする、と言って「きもののすそをたかくひきあげて」います。
4ページ、見開き2ページいっぱい使い切って、頑張るおそば。
渡り終えた時には冷たい水の中で足が真っ赤になっていました。

 

このおじいさんはなんと穀物の神様でした。
国々をまわって様子見て歩いているとのことです。

 

おまえは ふゆの さむさも おそれない わかものだ。みも しらない わたしに しんせつを つくしてくれた。

 

おそばは夏のお日様のもとでそだち、不親切な寒がりのムギは冬の寒さを我慢しなければならないことになってしまいました。

 

 

「おししのくびはなぜあかい」


内容については説明はしませんが、特徴があるのがこの言葉遣いです。
「おしし」とはなんぞ
ということです。

 

てんじく という くにに、たいへん げんきものの おさるが すんでいました。

 

てんじく。おさる。
語感がおもしろいので覚えてしまいます。
動物がいっぱい出てきて眠そうなキツネやくしゃみをするたぬきなど、とてもかわいいです。

 

これがおししです。

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なぜこれをライオンと書かないのか、なぜ「おしし」なのか。
最後まで読めばわかります。

 

実にユーモラスで奇想天外な話ですが、それにこの絵が輪ををかけてシュールの空気を醸し出しています。

 

 

「うみのみずはなぜからい」

 

すごく有名なお話です。

 

シンプルなもとのお話を、イメージを全く崩さないまま、それなりに長めのお話になっています。

 

この話は有名なので、再話されているものはたくさんありますが、シンプルな文章の美しさ、表現のこまやかさ、この見事さにかなう「うみのみずはなぜからい」のお話は、今まで見たことがありません。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ふしぎなたいこ―にほんむかしばなし
石井 桃子 (著)

日本のなつかしい昔ばなしの中から,「ふしぎなたいこ」「かえるのえんそく」「にげたにおうさん」の3つのお話をえらびました.たっぷりとした墨の線を使った,清水崑氏の大らかな絵が楽しい絵本.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

こねこのぴっち
ハンス・フィッシャー (著), 石井 桃子 (翻訳)

リゼットおばあさんの家に住んでいる子ねこのぴっちは、ほかのきょうだいたちとはちがうことをして遊びたいと思いました。ところが、アヒルのまねをして池で泳ごうとして、おぼれてしまいます。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

こねこのぴっち (大型絵本)
ハンス・フィッシャー (著, イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

長いあいだ小型版で親しまれてきた、人気者のかわいい子ねこのぴっちが、迫力ある美しい大型絵本にうまれかわりました。読みきかせにもぴったりの大きい画面で、動物たちの表情をお楽しみください。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

かもさんおとおり
ロバート・マックロスキー (著, イラスト), わたなべ しげお (翻訳)

かもの一家が、川から公園へ引越しです。かもたちは1列になって町の中を歩き出しました。さあ、たいへん! おまわりさんは自動車をとめて交通整理。パトカーまで出動です。

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

はるかな国の兄弟 マーシャとくま そらいろのたね
ムギと王さま―本の小べや はなのすきなうし はる・なつ・あき・ふゆ
少女パレアナ こども孫子の兵法 アンデルセン童話集

 

 

大人が読む児童書「ムギと王さま」4 支配もせず、支配もされず、所有せず、所有されず。

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

ムギと王さま
エリナー・ファージョン (著),
エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

幼い日,本のぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短篇集

 

大人が読む児童書「ムギと王さま」1 理想的な読書垢にとっての環境とは

2 ツンがなくデレもない。媚びてないのでもなくサバサバでもない属性とは。

3 時間のむだはカネのむだ。その価値観を覆したのは、たった一つの笑顔とことば

 

「ムギと王さま」の中で一番好きなのはやはり「パニュキス」。

特別な作品です。

 

2018年に、もう削除してしまいましたが別ブログの記事でUPしていたのですが、それも12月31日でした。

 

 

山岸涼子が短編でファージョンをモデルにした話を書いていて、私以外にもこの話が好きな人がいたのかと思い、とても嬉しく思いました。

こちらの自薦短編集に入っていますが、今はもう絶版で、古本しか出回っていないようです。
シュリンクス・パーン (文春文庫)  山岸 凉子 (著)

主にギリシャ神話をもとにした話が入っており、どれも繊細な絵が非常に美しいです。
今後の、電子書籍化に期待します。

 

しかし、この山岸凉子版「パニュキス」

 

石井桃子さん訳の「ムギと王さま」の中の一篇の「パニュキス」がもとになっているのですが、これ言及している、ネットでのブログなり、記事なりへの記述がまったく見つけられず……。

 

山岸涼子さんの漫画で言及されるアンドレ・シェニエのパニュキスの訳文は、石井桃子さんの訳そのままです。

 

もしかして、エリナー・ファージョンの「パニュキス」の翻案であることを知らない人がたくさんいるのではないか?と思いました。

 

石井桃子さんがあとがきで書かれていますが、「パニュキス」を入れずに出版した版で、原作を読んだと思われる複数の人から「なぜ入れないのか」とおたよりが届いたとのこと。

入れることが出来てよかったと書かれています。

 

そしておそらくは、翻案された山岸涼子さんにとってもそうだと思います。

 

「パニュキス」はどこか特別な物語です。

 

 

山岸涼子さんの「パニュキス」は、その美しい繊細な絵でエリナー・ファージョンの人生を下敷きにしながら、兄ハリーに対する少し特殊な愛情の加味を加えて、最終的に愛する人とめぐり合えたという結末にしてあります。

 

実際のファージョンは、愛する人もいたようですが、一生打ち明けることはなく、生涯独身を貫いたと伝記に書かれていました。

 

山岸涼子さんの「パニュキス」を読んだ時には、作者に対するわたしの想像を補完してもらえたようでとても嬉しかったのですが、それにしてもやはり「パニュキス」と言う作品にはどこか、翻案やオマージュ作品が超えることのできない、原作の持つ強い力が存在します。

 

自分の作品の中では恋愛が成就して、成熟しておとなとなり、幸せになって欲しいという心すら届かないほど、特別に強い力が。

 

 

この作品「パニュキス」は、フランスの詩人、アンドレ・シェニエの詩をもとにしています。
シェニエは、フランス革命の時代の詩人で、恐怖政治が終わる三日前に断頭台に消えています。(ウィキペディアより)

アンドレ・シェニエ - Wikipedia

 

この作品も、このシェニエの詩からはじまっています。

 

「ひよこのるる」さんに教えて頂いたのですが、アンドレ・シェニエのパニュキスの詩の原文がウィキにUPされていました。

 

また、Gutenbergにも公開されていました。

(フランス語です。)

www.gutenberg.org

 

 

フランス語、日本語、英語の「パニュキス」の詩を並べてみます。

 

石井桃子さん訳

ファージョンはこの詩を、フランスに行ったときに買い求めた本の中に見つけたと書かれていたので、おそらくはファージョン自身がシェニエの詩を訳したのかと推察されます。

ああ、パニュキス、きみは、ぼくをすきにならずにいられない!
おなじところに住む、ぼくたちは、おなじ年。
ごらん、ぼくは、こんなに大きい!
きのう、ぼくは、ぼくの小ヤギのわきに立った。
ポリュデウケースとアテーネの名にかけて、ぼくはいう、
小ヤギの角のさきは、ぼくの髪の毛にとどかなかった!
ぼくは、木の実で、青い青いカブト虫を入れる箱を、きみにつくってやった。
その箱のうらがわには、とてもやわらかいヒッジの毛を入れた。
けさ、海べの水たまりで、ぼくは、きれいな貝を見つけた。
それに、ぼくらは土を入れ、花を植えよう。そうだ、植えよう。
ぼくは、小さな木の皮を池にうかべて、船隊の動くところを見せてあげるよ。
家の新人はおとなしい。だから、夕方、きみを犬の背にのせ、
ぼくが先に立ち、そのしずかな馬をひいて、家にちゃんとつれてかえってあげるよ。

 

ファージョン「The Little Bookroom」より、英語原文

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Gutenbergより、「PANNYCHIS」の部分

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Gutenbergのテキストを、Google先生に読み上げてもらったら、「パニュキス」を「パニュスィー」と発音していました。
ずいぶん違うイメージです。

 

Gutenbergにある、アンドレ・シェニエの詩には、何と続きがありました!
もし興味のあるかたは、ぜひ見て読んでみてください。

 

 

パニュキスは5歳の女の子。

 

ちいちゃい妖精じみた子どもで、はだは、白いきぬのよう。手足は、花のくきのようにやさしく、うす金色の髪の毛は、とてもやわらかくて、風が吹くと、光のすじのように頭のまわりにもつれました。

 

パニュキスのいとこ、キュモンは、パニュキスが大好きで、とても大事にしています。

 

キュモンは何とかして、パニュキスを独占しようとし、あらゆる害から守ろうとして苦心します。
しかし、肝心のパニュキスはまったくそんなキュモンの気持ちには無頓着なのでした。

 

これは少し独占欲とは違う気がします。

 

山岸凉子が描いたような、純粋であろとするあまりお互いの黄金を削り取ろうとするという種類のものではなくて、自然界に存在する美しさ、目にし耳にする、奇跡のような瞬間を自分の中に取り込み、発露しようとする詩人の、創作欲のようなもの。
と感じました。

 

しかし、パニュキスは所有できるような対象ではありませんでした。

 

パニュキスの心は、自由でした。パニュキスは、世界にむかって大きな声で笑いました。生きることは、喜びでした。何ものも、手ににぎりしめはしませんでしたが、パニュキスは、すべてのものをもっていました。

 

支配もせず、支配もされず、所有せず、所有されず。
パニュキスは、世界に存在する美しさそのものです。
一体化しており、分けることはできない。

 

今は、パニュキスがいなくなるのをおそれる気持ちが、よくわかります。
大切なものを失うおそれ、不安です。

 

キュモンの心配をよそに、パニュキスはいとこの手を振り払って消え、笑い声と「もっとたのしそうに!」というこだまのような声だけが残るのでした。

 

 

最初はパニュキスが消えてしまったすべてをおそれ、憎んだキュモンでしたが、時間がたつにすれ、次第におそれを忘れて、ふたたび世界を愛することができるようになりました。

 

でも、キュモンは、妻にも、子どもにも、まだ話したことがありません。人生には、よくそうしたことがおこるものですが、生きることが、あまりにも重荷になったとき、世のさまざまなものの美しさが、空や草や、木や岩や、湖や海や、光や闇のなかから、とつぜん、キュモンの上にせまってきて、パニュキスの笑い声が、かの女が、じぶんの手をふりはらったときとおなじくらいはっきりきこえ、かの女の声が、天から、地から、「もっとたのしそうに!もっとたのしそうに!」と、よびかけることのあるのを。

 

...But he never told even his wife and children that often, when life seemed too heavy to be borne, as life so often does, the beauty of things rushed in upon him unawares, from the sky and the grass, the trees and the rocks, the fresh water and the salt, the light and the dark, and he heard as clear as in the moment when she broke from him the lovely laugh of Pannychis, and heard her call to him from heaven and earth, 'Look happy! look happy!'

 

 

パニュキスがキュモンに語りかけた「もっとたのしそうに!」ということばは、常に私を支え続けてきてくれました。

 

今回、「ムギと王さま」を読み返してみて、忘れかけている大切なことを取り戻せたような気がしました。

 

他にも、「ねんねこはおどる」「サン・フェアリー・アン」「ガラスのクジャク」「レモン色の子犬」「モモの木をたすけた女の子」「天国を出ていく」

 

どれも大好きなお話ばかりです。

特に、名前を冠している「ムギと王さま」をぜひ読んでみてもらいたいです。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

The Little Bookroom (English Edition)
英語版 Eleanor Farjeon (著), Edward Ardizzone (イラスト)

A girl sits in a dusty room, crammed to the rafters with books. Sunlight dances on the covers, between which are stories of magical worlds and faraway places, lands of princesses, kings, giants, and real children too. Eleanor Farjeon was that girl, who was so enchanted by her little bookroom that she recreated it by writing this wonderful collection of short stories

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

シュリンクス・パーン (文春文庫―ビジュアル版) 文庫 – 1997/6/10 山岸 凉子 (著)

ギリシャ神話の妖精シュリンクスに恋をしたパーンは山羊の耳と脚を持つ牧神。妖精の可憐と牧神の奔放を融合させて新たに山岸神話を創造した表題作ほか、怪しの世界を描く四篇を収録。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする
エリナー ファージョン (著), シャーロット ヴォーク (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

少女エルシー・ピドックは,妖精になわとびの秘術を習い,誰にも負けない名手になった.長い時が経ったある日,この村をおそった危機に,おばあさんのエルシーが立ち向かう.有名なお話が美しい絵本に.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

リンゴ畑のマーティン・ピピン
エリナー・ファージョン (著), リチャード・ケネディ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

恋人から引き離されてリンゴ畑の井戸屋形にとじこめられている少女ギリアンを,6人の娘たちが牢番として見張っています.陽気な旅の歌い手マーティン・ピピンは,美しく幻想的な6つの恋物語をくりひろげて娘たちの心を奪い,首尾よく牢屋のかぎを手に入れます.ファージョンが作家としての地位を確立した傑作

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

リンゴ畑のマーティン・ピピン
エリナー・ファージョン (著), リチャード・ケネディ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

恋人から引き離されてリンゴ畑の井戸屋形にとじこめられている少女ギリアンを,6人の娘たちが牢番として見張っています.陽気な旅の歌い手マーティン・ピピンは,美しく幻想的な6つの恋物語をくりひろげて娘たちの心を奪い,首尾よく牢屋のかぎを手に入れます.ファージョンが作家としての地位を確立した傑作

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

銀のシギ
エリナー・ファージョン (著), E・H・シェパード (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

気だてはいいが食いしんぼうの粉屋の娘ドルが、小鬼のたくらみで王さまの妃になりました。妹のポルが銀のシギの助けを借りて、姉の危機を救います。素材は昔話の「トム・ティット・トット

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

町かどのジム
エリノア ファージョン (著), エドワード アーディゾーニ (イラスト), 松岡 享子 (翻訳)

デリーが物心ついてからというもの、ジムはいつでも街角のポストのそばに座っています。むかし船乗りだったジムは、デリーにいろんな場所の話をしてくれます…。1965年学研刊の名作をアーディゾーニの挿絵で。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

マローンおばさん
エレノア・ファージョン (著), エドワード アーディゾーニ (イラスト), 阿部 公子 (翻訳), 茨木 啓子 (翻訳)

森のそばで、ひとり貧しく暮らしていたマローンおばさんのもとに、すずめや、ねこや、きつねたちが訪れ、おばさんは、貧しい中から彼らに必ず何かを分け与えた。読み継がれる有名な詩を邦訳して紹介する。

 

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

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子どもの本だな【広告】

おかあさんだいすき 花さき山 トマシーナ
まほうつかいのむすめ チロヌップのきつね もこ もこもこ
ふたりのロッテ 新訳 少女ポリアンナ バンビ

 

 

大人が読む児童書「ムギと王さま」3 時間のむだはカネのむだ。その価値観を覆したのは、たった一つの笑顔とことば

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

ムギと王さま
エリナー・ファージョン (著),
エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

幼い日,本のぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短篇集

 

 

大人が読む児童書「ムギと王さま」1 理想的な読書垢にとっての環境とは

2 ツンがなくデレもない。媚びてないのでもなくサバサバでもない属性とは。

 

「しんせつな地主さん」
ちゃんと紹介することができるか不安なのですが、できる限りやってみたいと思います。

 

このお話は、ガリガリのケチなしみったれのロクでもない、金持ちだけど血の涙もない最悪の地主 「ロバート・チャードン」が、怠けるという理由で「作男」ウィリアム・ストウを追い出す場面から始まります。

 

kotobank.jp



「おれの時間をむだにするやつは、おれの金をむだにする」
との言い分で、もうどう考えても同情の余地のない最悪の人種です。

 

この男からひどい目に会わされなかったものは1人もないと言ってもいい、というほどひどい人間です。

 

いかにこの男のやり口が汚いかというのは非常に詳しく書かれてます。

ブラック企業もいいところで最低賃金で時間ギリギリまでこき使い、寄付系のものは全部一切拒否です。

金貸しもしているしこの男をよく言う者は1人もいませんでした……とのことなのですが、この追い出された男。
一瞬だけ捨て台詞を吐きます

「おめえやおめえの身内が、おらに何かたのむことになってみろ……」

 

このチャードンには身内がいなかったのです。
でも別にそんなこと全く気にした事もなかったのですが、この「身内」という一言が、どこかで彼の心に刺さったのでした。

 

このあたりの描写もまたとても美しいのです。
こんなに嫌な男なのに。

 

もし、そのことばが、ときには頭のなかで、よせてはかえす波の頂きにうちあげられた小石のようにうかぶことがなかったら、チャードンは、ボーンマーケットの家畜市にいったときも、ジェイン・フラワーの顔に目をとめなかったでしょう。

 

彼は生まれてはじめて、お金に換えることができないものを欲しいと思いました。

 

一般的に予想通りのお約束の展開としてこのまま行くなら、無慈悲な金持ちの男が貧乏な娘を無理やり嫁にするとかそういう展開だと思います。

 

しかし、このチャードンが目を止めたジェイン・フラワーは、あまりにも純粋で無垢な女性でした。

 

彼女は、最初から最後までチャードンのことを「親切な人間だ」と頭から信じて疑いもしません。

 

「How kind you are!」
というのがその言葉なのですが、チャードンがこんな言葉をかけられるのは、生まれて初めてのことでした。

お金に換えることができないものを欲しいと思ったことも初めてなら、自分のことを親切だという扱いをされたのも初めてだったのです。

 

心からの笑顔を浮かべ、喜んでチャードンの妻になったジェイン・フラワー。
しかし残念ながら、幸せな結婚生活はたったの11ヶ月しか続きませんでした。

 

出産の際に亡くなってしまったのです。
子供は女の子で、やはりジェインと名付けられました。

 

 

この娘がすくすくと育って最初に自分のお父さんのことを「いいおとう」「しんせつ」と呼んだとき、チャードンはその一言を聞くために、あらゆることをする子ようになります。

 

本当はほんの少しのちょっとしたそのあたりの花を摘んでくるだとか、赤い実のなった木の葉を渡すだとか、そんなことからはじまって、ついには、以前なら絶対にしなかったような「しんせつ」をするようになっていきました。

 

このちいさなむすめ「ちいジェイン」のために、チャードンは何でもしてやります。

 

最初に、お金を落として泣いている女の子に、(ちいジェインに言われて)たったの1ペニーをやるという、その行動がいかに大きいものであったか、書かれています。

 

いままでのきまりが、ここでまた一つ、うちくだかれました。なぜなら、金というものは、人にやるために、ためるものではないではありませんか?

 

また別の日には、ホームレスが彼から食べ物や服をもらい、学校の遠足にも寄付をしました。

 

チイジェインは、あらゆる子供たちから好かれましたが、「それはこの子が金持ちの子だからではありませんでした。」

 

誰からも愛されるチイジェインが、村の家々に入りするようになると、あらゆる窮乏をおとうさんに伝えるようになります。


チャードンは、そのすべてを補填してやるようになっていきます。

 

 

彼は娘の将来の財産であるということをよく知っていましたから、本当は出したくなかったのです。
この無駄な(とこれまで思っていた)出費を、今までの生き方に反して出すこと、この行動そのものが、家計というよりも、彼自身を内部から苦しめるようになりました。

 

「人間は、じぶんの子どもを、第一に考えにゃいかんのじゃないか?チイジェインの将来を、安全にしておかにゃいかんのじゃないか?」

 

しかし今まで、この母親のジェイン、またむすめのチイジェインを喜ばせようとする生き方は、「彼の頭に──あるいは心に──きてしまった」ので、もう変えることはできなくなっていました。

 

心配のあまり彼は次第に体を壊して行きます。

 

でもそれを誰にも言わず、不安そうな顔をしたまま、彼は際限なく人に与え続けました。

 

彼の財産と貯金が減っていく行けば行くほど、村はどんどん豊かになっていきました。
ついにチャードンは、持ち家も、店も持ち株もすべて売り払い、小さな小屋で住むような生活になります。

(この時期に、孤児院は、チイジェインが孤児になったときののためか、莫大な寄付金を受け取っています)

 

 

しかしこうなって初めて、彼の心からはついに心配が拭い去られました。

 

もういまでは、チイジェインのためにしがみつくべき一ペニーの金もありません。そこで、チイジェインの将来を思いやるとき、神にたよるほかないのだということを、チャードンはさとりました。そうさとったとき、人間の心は苦しみからすくわれます。

 

貧乏になったふたりの生活は素朴ですが楽しいものでした。

 

村の人々は、みんな二人の世話を焼きたがり、名前で呼ぶようになりました。

そして一年たって、チャードンが死んだとき……。
チイジェインほど貧しい境遇に置かれた子どもはいないのだということが、村のみんなに知れ渡るのでした──。

 

最初に孤児院という単語が出た時、烈火のごとく怒りだしたのは、ウィリアム・ストウでした。

この人は、冒頭でいちばん最初に、チャードンに追い出されたエピソードを持つ作男です。

 

「ボッブ・チャードンのむすめを、孤児院にやるんだと?」と、ウィルはさけびました。「いいや、おらのむすめも孤児院にいくようになるまで、チイジェインはやらねえ!チイジェインは、おらの家へやってきたんだ。これからも、このまま、いていいんだ。そんなことは、二度と考えたくねえな」

 

あらゆる人がチイジェインを引き取るといって聞きません。
すべての家が、チャードンに何らかの世話になっていました。
あれもしてくれた、これもしてくれた……、と、思い出さない家は一軒もありませんでした。

 

そして、誰ひとりゆずらなかったので、五十二軒の家が、みんなでチイジェインの面倒を見ることになりました。

 

チイジェインはうれしそうに、一けんから一けんへとうつって歩き、どの家にいっても、じぶんのおとうちゃんが、世界じゅうで一ばんしんせつな人として、うわさされるのをききました。

 

 

あらためて読んで心が洗われる気持ちでした。

 

キリスト教圏のお話を読んでいると、「聖書に書かれている」と書いてるのを読むことがありますが、
お金持ちが天国に入るのは最も難しい、とか、神の国にすべてを寄付しなさい、などなどのことばがあります。


でもそれは組織を維持するために宗教団体が壷を売るみたいに、利益を吸いあげようとする言葉なのではなくて、(そういう風に、現実ではなっているのでしょうが)聖書の言いたいこと、その究極の意味は、この話に凝縮されていると思います。

 

努力をしなくなるから、甘えてしまうから。

政府がするセーフティネットですら、そんな風に考えられがちです。

食い物にされている慈善事業や、上から目線で施しをすると言う考え方そのものに潜む優越思想のような危険だってあります。

 

このお話は、これほど、聖書のことばを体現しているような物語でありながら、宗教色が薄いのも特徴です。

 

このお話は、金持ちで無慈悲な男が、ふと気まぐれで「この人にだけは、いい人だと思われたい」というたった1つの見栄から始まりました。

大事なのは、チャードンがその見栄を、ついには命をかけ、全財産をかけて、貫き通したところにあります。

 

あくまで人としての生活の中のお話であることで、よりいっそうその行動の意味が純化されて読み手の心に届きます。

 

チャードンのいわば転身、所業を悔い改めたのは、「神様にそう言われたから」でないのです。

 

寄付や施しというものは、貧乏人には甘えのもとであり、金持ちにとっては偽善であって、このお話はひとつの理想的に過ぎる話であって現実ではないと。

そんな風に思う心を越えた所にある物語です。

 

けれども、つまりは、チャードンは、村全体をチイジェインに残したのだと、いえるかもしれません。村じゅうのどの屋根も、どの炉ばたも、みなチイジェインのものだったのですから。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

The Little Bookroom (English Edition)
英語版 Eleanor Farjeon (著), Edward Ardizzone (イラスト)

A girl sits in a dusty room, crammed to the rafters with books. Sunlight dances on the covers, between which are stories of magical worlds and faraway places, lands of princesses, kings, giants, and real children too. Eleanor Farjeon was that girl, who was so enchanted by her little bookroom that she recreated it by writing this wonderful collection of short stories

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

マローンおばさん
エレノア・ファージョン (著), エドワード アーディゾーニ (イラスト), 阿部 公子 (翻訳), 茨木 啓子 (翻訳)

森のそばで、ひとり貧しく暮らしていたマローンおばさんのもとに、すずめや、ねこや、きつねたちが訪れ、おばさんは、貧しい中から彼らに必ず何かを分け与えた。読み継がれる有名な詩を邦訳して紹介する。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

リンゴ畑のマーティン・ピピン
エリナー ファージョン (著), リチャード・ケネディ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

恋人から引き離されてリンゴ畑の井戸屋形にとじこめられている少女ギリアンを,6人の娘たちが牢番として見張っています.陽気な旅の歌い手マーティン・ピピンは,美しく幻想的な6つの恋物語をくりひろげて娘たちの心を奪い,首尾よく牢屋のかぎを手に入れます.ファージョンが作家としての地位を確立した傑作

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ヒナギク野のマーティン・ピピン
エリナー・ファージョン (著), イズベル;ジョン・モートン=セイル (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ファージョン作品集5巻。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

銀のシギ
エリナー・ファージョン (著), E・H・シェパード (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

気だてはいいが食いしんぼうの粉屋の娘ドルが、小鬼のたくらみで王さまの妃になりました。妹のポルが銀のシギの助けを借りて、姉の危機を救います。素材は昔話の「トム・ティット・トット

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

町かどのジム
エリノア ファージョン (著), エドワード アーディゾーニ (イラスト), 松岡 享子 (翻訳)

デリーが物心ついてからというもの、ジムはいつでも街角のポストのそばに座っています。むかし船乗りだったジムは、デリーにいろんな場所の話をしてくれます…。1965年学研刊の名作をアーディゾーニの挿絵で。

 

 

 

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

【e-hon】 ─ ネットで予約、本屋さんで受け取れる e-hon サービスで本屋さんを応援しよう📚️

 

 

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子どもの本だな【広告】

ちびゴリラのちびちび スプーンおばさんのぼうけん にじいろのさかな
うみぼうやとうみぼうず 小公女セイラ ~リトルプリンセス 小さい魔女
学校では教えてくれない大切なこと 10 4こうねんのぼく トムは真夜中の庭で

 

 

大人が読む児童書「ムギと王さま」2 ツンがなくデレもない。媚びてないのでもなくサバサバでもない属性とは。

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

ムギと王さま
エリナー・ファージョン (著),
エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

幼い日,本のぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短篇集

 

 

大人が読む児童書「ムギと王さま」1 理想的な読書垢にとっての環境とは

 

27つの短編集「ムギと王さま」の中から、「西ノ森」をご紹介します。

 

題名の原題は「WESTWOODS」。
「ノ」をはさんで使っている所が最高だといつも思っています。
ファージョンの「ムギと王さま」の中で比較的ロマンチックな作品です。

 

王様とメイドさんの物語で、ロマンチックではあるんですが、恋物語という感じではありません。

 

「六月の草の野のよりも かぐわしく
月を見まもる ひとつ星
よりも美しい あなたです。
わたしは わたしの草を思い、
わたしの星を夢みます。
けれども あなたがだれなのか
わたしには つゆほどもわからない。」

 

この詩を書いたのは、アクセク国の若い王様です。

アーディゾーニの絵がとてもすてきです!
原書だと、なお、雰囲気が出ています。

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「The Little Bookroom (English Edition)」  

 

詩を書いているとき、みなしごで孤児院で育った小間使いのシライナがドアを叩きます。

(はじめて気が付きましたけど、セリーナとも読めますね!でも「シライナ」が好きだなあ。)

 

今だったらメイドという言い方があまりにも浸透してしまったのでメイドっていう風に訳されてしまうのかな。
でもメイドっていう言葉って、 メイド喫茶とかを想像しちゃうじゃないですか。
そっちといっしょにしてほしくないんだな。
「小間使い」 がいいと私は思います。

 

 

実用的なことを尊ぶ国です。

王さまを王女さまと結婚させることは、大臣たちの仕事の一つであり、王女さまと結婚するのが、王さまの仕事の一つなのでした。

 

というのは、新旧関わらず歴史の中では当然です。
戦国時代にハマった今となっては、これ以上ないほどよくわかる話です。

 

さて王さまはぐずぐず言わずに、候補のリストを提出してもらいます。
「北山国」「南地国」「東沼国」
「西ノ森国」は、その国堺を超えた者はおらず、妖婆(witches)の住む場所だと噂されているということです。ふうむ。

 

オズの魔法使いは1900年の作品です。

ファージョンは、1916年に作家として認められたとのことなので、「西の悪い魔女」、また「東西南北四つの国」の漠然としたモチーフがオズの魔法使いから来ていた可能性も、ゼロではないなと思いました。

 

梨木香歩の名作「西の魔女が死んだ」も、なぜ「西」なのか?というと、これらの作品群のイメージがあることは間違いないです。

 

「西」にはいったい、何があるのだろう?
日本が「東」にこだわりがあるように、イギリスには「西」に思い入れがあるのでしょうか。

 

 

さてこの若いジョン王は、この西を除くみっつの国に王女様に会いに行く前に、禁じられた「西ノ森」に行ってみたくてたまらなくなりました。

 

王さまのお母さんである女王さまも、そうしたように、この国のすべての母親は、「西ノ森」への危険を信じ、危ないので絶対に行ってはいけないと言って聞かせていました。

 

この国と「西ノ森国」は、どこまで続くかわからないほど長い塀に隔てられています。

そしてそこには子供達がびっしりと取りついて、好奇心にさいなまれ、何とかしてのぞき見しようとスキをうかがっているのでした。

 

明日の支度をするために王様が部屋に帰ってみると、なんとシライナが自分の詩を読んでいます。

 

王さま、何らかの感想か何かを期待しているようなのですが、シライナは「お部屋はかたづいたようだわ」とあっさり出て行ってしまいました。

王さまはかんしゃくをおこして、詩を書いた紙をくしゃくしゃに丸めて、ゴミ箱に放り込んでしまいました。

あ~~あ。

 

 

この小間使いのシライナ、みなしごであるとか、メイドであるとかいう事を抜きにして、めちゃくちゃにそっけない人です。

返事も何だかとんちんかんだし、返事も超短いし、若い王さまのタイミングとして居心地の悪いところをいつも突いてきます。

 

例えば詩を書き終えた直後に呼びに来たり。
何か頼もうとすると大掃除しないといけないって言ったり。
勝手に人の詩を読んだり。
感想も言わずに出て行ったり。

 

今風に言えばツンデレと言いたいことなのですが、デレがないですし、ツンというのとも違います。

ぶっきらぼうで率直で、いわばまあ実用的。
ロマンチックなところなんてまるっきりありません。
媚びてないのとも違うし、サバサバとも違う。

 

ちょっと言い表せない魅力を持った女性です。

 

 

王さまは、「西ノ森」に無理やり踏み込みますが、家族がいたり、親から「西ノ森」に入るのを止められた人は誰1人入ろうとしません。

みなしごで、ひとり者の王さまだけが、塀をとびこえ、森のなかに馬を乗り入れていきました。

 

シライナと同じく、身分は違っても、この王さまも「みなしごでひとり者」なのです。

 

入ってみた「西ノ森」はがっかりするような景色が広がっていました。
使い物にはならない、ガラクタ、壊れたおもちゃのようなもの、

「やぶれた絵にこわれた人形、おもちゃのお茶道具のかけらにさびついたラッパ、古い鳥かごに色あせた花わ、ちぎれたリボンに、かけて使えなくなったビー玉」

 

成長の過程で、捨てなければならなかった、子供たちの小さい頃の思い出の品そのものです。

 

 

がっかりして戻ってきた王さま、さてここから王女さま探しに出発です。

 

それぞれの王女さまの前に立たされ、ローズセレモニーでバラ🌹を渡すか渡さないかみたいな儀式になるのですが、何ともうまくいきません。

 

「北山国」は、物音ひとつ立てない、氷のようにつめたい王女さま。
「南地国」は、眠そうでだるそうで、もったりした感じの王女さま。

 

「東沼国」がいちばんおもしろいです。
ガサガサした感じの国なのですが、唐突にすごく現代的です。
「短いスカートをはき、髪をふりみだしている若いむすめ」で、ホッケーのメンバーが1人足りないとのことで、王さまを馬から引きずりおろし、無理やりメンバーに加えて、ガチャガチャとしたスポーツに参加させられます。

 

「かみなりよりもさわがしく、
また塩よりもすさまじい。
人はそれぞれに生まれつくので、
あなたのせいではないけれど
ぼくのこのみはあなたとちがう」

 

なんて詩を目の前で詠んでしまった王さま。

 

東沼国の王女さまは「まあ、失礼しちゃうわ!」とわめいて、殴りかかろうとしてくるので、王さまはほうほうのていで逃げ出しました。

 

 

これらの王女さまに会いに行って、結婚を申し込むより先に、自分が断ってしまうという所業を繰り返しながら、自分の部屋に帰るたびに、そこにはシライナが待って迎えてくれます。

 

王さま、あの詩が大事なんだと思います。
あの詩があればうまくいくのだと。

 

どの国でも、何とか思い出そうとするのですが、口から出るのは「あなたでは嫌だ」みたいな感じの詩ばかりで、どうにもうまくいきません。

 

それであのごみばこに放り込んだ詩はどうなったのか知りたくて、シライナにそれとなく聞こうとするのですが、ごみ箱のことしか聞かないので、そっけない返事ばかり。
(読んだのだから)覚えてないかと言っても、忙しくてそんなの覚えていられないとの返事。

 

王さまはそのたびに怒ってしまいます。

 

 

詩がないから、うまくいかないんだと愚痴る王様。
何とシライナは、ポケットから取り出しました。
そんならそうと早くおっしゃればいいのに、とか言いながら。

 

かんかんになる王さまとのシライナとの押し問答。

 

「なんでそれを持っているのか」
☞「捨てたのはあなたでしょ」
「ゴミ箱にすてたって言ったじゃないか」
☞「そんなこと言ってない」
「何が書いてあるか覚えてないって言ったじゃないか」
☞「暗唱は苦手で本当に覚えてない」

 

確かに間違ったことは言ってません。
もうちょっと突っ込んで聞くとか正確に効くとかすればよかったのに……。

 

 

なぜ持ってたんだ?と聞く王様にシライナは手厳しいです。

「そんなこと、わたしのかってですわ。ほんとに、ごじぶんの作品をあんなふうになさるなんて。」と、シライナはてきびしい調子でいいました。「じぶんの書いたものをだいじにしない人なんか、何もする資格はありませんわ。」

 

言い合いはまだ続きます。

 

「君があの詩を好かないからすてたんだ」
☞「好かないなんていってない」

 

王さま「エッ……?(トゥンク……)」

 

確かに、シライナは無駄なことは何も言ってないのです。
さて、王さまはシライナをデートに誘い、シライナは「西ノ森国でなら」と答えます。

 

二人で訪れたとき、そこには前に見たときとは全く違う景色の「西ノ森」が広がっていました。

 

 

西ノ森の王女とは──。
そこで見たもの、かつて失われた、素晴らしいものとは───。

 

という展開になるのですが、何といってもこのお話は、
そこに至るまでの過程の、シライナのそっけなさ、ほかの王女様のすさまじいまでの微妙さ
……が面白いので、何度読んでも飽きない、大好きな作品です。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

オズの魔法使い
ライマン・フランク・ボーム (著), ウィリアム・W.デンスロウ (イラスト),渡辺 茂男 (翻訳)

竜巻きによってオズ大王の住む魔法の国に運ばれたドロシーは、かかしとブリキの樵と臆病なライオンと共に大冒険をします。完全復刻した124枚のデンスロウの挿絵をそえた決定版です。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

西の魔女が死んだ
梨木 香歩 (著)

中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。西の魔女ことママのママ、つまり大好きなおばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の肝心かなめは、何でも自分で決める、ということだった。喜びも希望も、もちろん幸せも……。その後のまいの物語「渡りの一日」併録。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

西の魔女が死んだ(映画)
Amazonプライム

中学に進んでまもない夏の初めに、学校へ行けなくなったまいは、森で暮らす“西の魔女”のもとで過ごすことに。西の魔女とはまいのママのママ、英国人である大好きなおばあちゃんから、「早寝早起き、食事をいっぱいとって、よく遊ぶ。そして、何でも自分で決めること」の大切さを教わる。まいは戸惑いながらも、料理、掃除、洗濯、庭づくり・・・と、毎日励んでいくが、実はその生活は、“魔女修行”の始まりだった――。 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

リンゴ畑のマーティン・ピピン
エリナー ファージョン (著), リチャード・ケネディ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

恋人から引き離されてリンゴ畑の井戸屋形にとじこめられている少女ギリアンを,6人の娘たちが牢番として見張っています.陽気な旅の歌い手マーティン・ピピンは,美しく幻想的な6つの恋物語をくりひろげて娘たちの心を奪い,首尾よく牢屋のかぎを手に入れます.ファージョンが作家としての地位を確立した傑作

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ヒナギク野のマーティン・ピピン
エリナー・ファージョン (著), イズベル;ジョン・モートン=セイル (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ファージョン作品集5巻。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

銀のシギ
エリナー・ファージョン (著), E・H・シェパード (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

気だてはいいが食いしんぼうの粉屋の娘ドルが、小鬼のたくらみで王さまの妃になりました。妹のポルが銀のシギの助けを借りて、姉の危機を救います。素材は昔話の「トム・ティット・トット

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

町かどのジム
エリノア ファージョン (著), エドワード アーディゾーニ (イラスト), 松岡 享子 (翻訳)

デリーが物心ついてからというもの、ジムはいつでも街角のポストのそばに座っています。むかし船乗りだったジムは、デリーにいろんな場所の話をしてくれます…。1965年学研刊の名作をアーディゾーニの挿絵で。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

マローンおばさん
エレノア・ファージョン (著), エドワード アーディゾーニ (イラスト), 阿部 公子 (翻訳), 茨木 啓子 (翻訳)

森のそばで、ひとり貧しく暮らしていたマローンおばさんのもとに、すずめや、ねこや、きつねたちが訪れ、おばさんは、貧しい中から彼らに必ず何かを分け与えた。読み継がれる有名な詩を邦訳して紹介する。

 

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

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子どもの本だな【広告】

マローンおばさん ギルガメシュ王ものがたり エルマーと16ぴきのりゅう
学校では教えてくれない大切なこと 12 ネットのルール どうぶつのこどもたち ちいさいモモちゃん(2) ルウのおうち
ふるやのもり 会いたくて会いたくて グレイ・ラビットのおはなし

 

 

大人が読む児童書「ムギと王さま」1 理想的な読書垢にとっての環境とは

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

ムギと王さま
エリナー・ファージョン (著),
エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

幼い日,本のぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短篇集

 

 

年内にどうしてもいちど、紹介しておきたいなと思ったのが、エリナー・ファージョンの作品です。
これまで、「町かどのジム」「マローンおばさん」の2作を紹介しました。

 

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「マローンおばさん」では、あとがきに
「子供の本を愛する人にとってファージョンの名は特別な意味を持っている」
と書かれていたことをご紹介しました。

 

日本の翻訳児童書の中で、ファージョンは、石井桃子という名前とともに不動の位置を保つ黄金の作品です。

 

「ムギと王さま」が、多分、ファージョン作品の中では最も有名ではないでしょうか。
あらゆる「児童書おすすめ」リストの中に、必ず入ってきます。

これは、短編集です。

 

岩波少年文庫では、現在は文庫の形で上下巻に分かれて発売されていますが、できればこのハードカバーの分厚いバージョン作品集を借りてみて、読んでいただきたいなと思います。

 

 

人が殴り殺せそうな厚さの、ずっしりとして重たい本なのですが、やはり読みやすいというのもありますし、「どっしりとした分厚い本を開いて、それが面白い」という感覚を、お子さんがた、またご自分でも体験してみて欲しいです。

 

どれも宝石のような 作品群です。
ファージョン作品は、イギリスでは教科書に使われるほどの美しい文章と呼ばれているそうです。

 

27編ある、この短編集の中から
「本の小部屋(作者まえがき)」
「西ノ森」
「しんせつな地主さん」
「パニュキス」
について、書いてみたいと思います。

 

 

短編集なので、子どもには読みやすい本です。

けれど、どちらかというと上級生向けではないかな…?
漢字も多く、もちろんルビはふられていますが、修辞が多くて、ことばの裏を読むような、意味がわかれば、ああそうだったのか、という箇所も多いです。

 

しかし、とても単純であっさりとしたお話も、もちろん随所にあります。

幼いお子さんが、開いてみてぱらぱらとめくって、ふと一か所に目がとまり、おもしろいのでその箇所ばかりを何度も読み、それから、前後のお話をためしてみて……という、そういう「本を読むという体験への導入」があればいいな、と思います。

 

 

「作者まえがき」

 

作者の子ども時代の「本のある生活」の一端を垣間見せてくれます。

 

本は食堂の壁ぎわをうずめ、そこからあふれ出て、母の居間や、さては、階段をのぼって寝室にまで流れこんでいました。本なしで生活するよりも、着物なしでいるほうが、自然にさえ思われました。そして、また本を読まないでいることは、たべないでいるのとおなじぐらい不自然に。

 

本ずきな人にとっては、これほど理想的な環境はないでしょう。
まさに、よくわかる話です。

 

ファージョンの文章が美しいと言われていますが、その一部をこの部分でお見せしてみたいと思います。

 

It would have been more natural to live without clothes than without books. As unnatural not to read as not to eat.

 

「本なしで生活するよりも、着物なしでいるほうが、自然にさえ思われました。そして、また本を読まないでいることは、たべないでいるのとおなじぐらい不自然に。」という箇所です。

 

この短い文章の中に、「would have been」とか「more than」とか、「as ~ as」などてんこもりです。

 

いきなりかよぉぉぉ!と思うような難易度の高さです。

この場合の「would have been」は、仮定法過去完了っぽく見えますが、仮定の意味を示す「if」とか「wish」とか「otherwise」などが入っておらず、過去の推量を示しています。(と思います)
「仮定法でない、過去完了のつかいかた☆」などの勉強に使える(……のではないか……)と思います。

 

本好きのお子さんなら、この文章を暗記することで、過去完了、比較級、to不定詞、などをたった一文でおぼえることができます☆

多分。

 

 

読書垢の人ならば、誰もが心に抱いている原風景。

というべき、本にあふれた理想的な生活を送っているファージョンなのですが、この小部屋は、ほかの部屋から余った本が流れ着いた場所でした。

 

食堂や書斎や子ども部屋の本には、選んで、整とんされたあとがありました。

 

この「本の小部屋」にあるのは、宝くじか掘り出し物かがらくたか、無秩序に積み上げられた本の山だった……。ということなのですが、ちょっとここで注目。

 

食堂にも本があるんだ~!すばらしい!
想像するだけで、本ずき、読書垢の人にとっては、夢のような場所です。

わたしも綺麗な写真は好きなので、よくInstagramはのぞくのですが、たまに
「本が足りない」
と思うときがあります。

 

景色に何かが足りないのです。
本はやっぱり、その内部に一つの世界を抱えているので、ただ映っているだけでも写真に、その奧に何かが潜んでいるような気配を持たせ、小宇宙のような深みが出ます。

 

 

あのほこりっぽい本の部屋のまどは、あけたことがありませんでした。そのガラスをとおして、夏の日は、すすけた光のたばになってさしこみ、金色のほこりが、光のなかでおどったり、キラキラしたりしました。

 

石井桃子さんの訳文が本当に美しいです。
「maid」をよく、「おとめ」と訳しているのも特徴です。
メイドさんの「maid」なのですが、古い意味で古語、文語、詩語では「むすめ」「少女」を意味します。

 

そこのまどから、わたくしは、じぶんの生きる世界や時代とはちがった、またベつの世界や時代をのぞきました。詩や散文、事実や夢に満ちている世界でした。その部屋には、古い劇や歴史や、古いロマンスがありました。迷信や、伝説や、またわたくしたちが「文学のこっとう品」とよぶものもありました。

 

That dusty bookroom, whose windows were never opened, through whose panes the summer sun struck a dingy shaft, where gold specks danced and shimmered, opened magic casements for me through which I looked out on other worlds and times than those I lived in: worlds filled with poetry and prose and fact and fantasy. There were old plays and histories, and old romances; superstitions, legends, and what are called the Curiosities of Literature.

 

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ちなみにファージョンはすでに版権が切れており、「リンゴ畑のマーティン・ピピン」はGutenbergで無料公開されています。

 

Martin Pippin in the Apple Orchard by Eleanor Farjeon - Free Ebook


また、詩やソネットの数々や、邦訳されていない「ジプシーとジンジャー」という作品も載っていますので、ファージョンが好きな方は必見です!

Gypsy and Ginger by Eleanor Farjeon - Free Ebook

 

 

 

妹子「え?これだけ?今日これで終わり?」
わたし「……………」

 

妹子、登場するだけでなく、よくわたしの書いた記事を「これおもしろかった」とか「これ読む」といって読んでくれるのですが(自分が登場するのもだいすきなので)、たまに文句つけてきます。

 

妹子「少なくない?もっと書くこといっぱいあるでしょ?こんなに文章きれいなのに!ぜんぜん魅力を伝えきれてないでしょ!」
わたし「もう、あなた自分でも別で書いてくれよ~~!!!」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ムギと王さま―本の小べや
エリナー ファージョン (著),
エドワード・アーディゾーニ (イラスト),石井 桃子 (翻訳)

幼い日,本のぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短篇集

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

天国を出ていく―本の小べや
エリナー・ファージョン (著),
エドワード・アーディゾーニ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

幼い日,本がぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短編集から,この巻には13編を収めます

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

マローンおばさん
エレノア・ファージョン (著),
エドワード アーディゾーニ (イラスト), 阿部 公子 (翻訳), 茨木 啓子 (翻訳)

森のそばで、ひとり貧しく暮らしていたマローンおばさんのもとに、すずめや、ねこや、きつねたちが訪れ、おばさんは、貧しい中から彼らに必ず何かを分け与えた。読み継がれる有名な詩を邦訳して紹介する。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

リンゴ畑のマーティン・ピピン
エリナー ファージョン (著),
リチャード・ケネディ (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

恋人から引き離されてリンゴ畑の井戸屋形にとじこめられている少女ギリアンを,6人の娘たちが牢番として見張っています.陽気な旅の歌い手マーティン・ピピンは,美しく幻想的な6つの恋物語をくりひろげて娘たちの心を奪い,首尾よく牢屋のかぎを手に入れます.ファージョンが作家としての地位を確立した傑作

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ヒナギク野のマーティン・ピピン
エリナー・ファージョン (著),
イズベル;ジョン・モートン=セイル (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ファージョン作品集5巻。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

銀のシギ
エリナー・ファージョン (著),
E・H・シェパード (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

気だてはいいが食いしんぼうの粉屋の娘ドルが、小鬼のたくらみで王さまの妃になりました。妹のポルが銀のシギの助けを借りて、姉の危機を救います。素材は昔話の「トム・ティット・トット

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

町かどのジム
エリノア ファージョン (著),
エドワード アーディゾーニ (イラスト), 松岡 享子 (翻訳)

デリーが物心ついてからというもの、ジムはいつでも街角のポストのそばに座っています。むかし船乗りだったジムは、デリーにいろんな場所の話をしてくれます…。1965年学研刊の名作をアーディゾーニの挿絵で。

 

 

 

 

 

 

 

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
http://www.gutenberg.org/ebooks/author/492

 

プロジェクト・グーテンベルクについて
Wikiの説明ページ

プロジェクト・グーテンベルク(Project Gutenberg、略称PG)は、著者の死後一定期間が経過し、(アメリ著作権法下で)著作権の切れた名作などの全文を電子化して、インターネット上で公開するという計画。1971年創始であり、最も歴史ある電子図書館

 

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子どもの本だな【広告】

新編 世界むかし話集 (全11巻) 少女ポリアンナ (10歳までに読みたい世界名作) とべバッタ
わかったさんのショートケーキ すてきな三にんぐみ ジオジオのパンやさん
ランサム・サーガ(全24冊セット) ヒナギク野のマーティン・ピピン おおきなかぶ

 

 

閑話 「マッチうりの女の子」 P丸様。ビジネス書。錯乱。そして、伝説へ…。

閑話です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

マッチうりの女の子
ハンス・クリスチャン アンデルセン (著),
スベン オットー (イラスト), 乾 侑美子 (翻訳)

身をきられるように寒く、暗い、雪の降りしきる街を一人の女の子が歩いていました。足ははだしで、すりきれたエプロンにはマッチの束を抱えて…。冬のデンマークの街の情感を背景に、格調高く描かれたオットーの絵本。

 

 

妹子「マッチ売りの少女、うちにあったよね」
わたし「うん。そこにあると思うよ」
妹子「あっ!そういえば、このおかあさんごじまんの赤い本にも入ってんじゃないの?入ってないはずないよね!?」
わたし「どうだったかなぁ~?」

 

赤い本とは、世界少年少女文学全集のことです。
割とちゃんとした小説ばかりを載せてるようなイメージがあるけどな?

……しっかり入ってた。

f:id:WhichBook:20211119141139j:plain


昭和28年発行です。1953年。

68年前か~。すごいな。

 

この赤い本に入っているアンデルセンの訳は平林広人さん。
初山 滋さんがイラストを担当された、この本の大畑 末吉さんバージョン「野の白鳥」は愛読していますが、こっちの赤本のアンデルセンはまだ読んでいませんでした。

 

「絵のない絵本」も入っているところがさすが!
川端康成大先生をはじめとする編集者のお歴々!(←ごじまん)

 

 

妹子「(開きながら)いやー、今日ね友達が、P丸様の動画でマッチ売りの少女があったっていうから、もとの話はちゃんともう一度読んどこ、と思ったんだよね」

 

P丸様とは、小学生に大人気のYouTuberです。(登録者数218万!)
若干、テンション高めで、兄助は好きではありませんが、妹子はだいすきです。

兄助「チッ!まーたくだらねえもん見やがってよ~小学生が!いいかそんなもん、高校生とかなったら、つまんなすぎて時間のむだなんだよ!」

わたし「まあまあ。マッチ売りの少女のオリジナルを読もうというんだから大目に見てやって」

 

妹子「あかちゃんみたいな子が読むようなみっじかい『マッチ売りの少女』じゃだめよねやっぱり」
わたし「絵本だとまとめられちゃってるよね。まあそれでも知らないよりはいいんだよ…………」

 

と、検索していると、こんなの出てきました。

 

f:id:WhichBook:20211119141435j:plain

 

わたし「………」
妹子「………」

 

「『マッチ売りの少女』はこうすればマッチが売れた!」神経伝達物質ドーパミンを使えば販売は急上昇!

 

妹子、大笑い!

 

妹子「えー読んでみたい!」
わたし「ちょうどkindleアンリミテッドの一カ月おためし期間中なんだよね……」

 

というわけで、kindleアンリミテッドで入手、サラッと読んでみたところ、なかなかよくできたビジネス本でした。

 

よくある「北極で氷を売る」を、マッチ売りの少女をもとにかみ砕いて説明しています。
その人が購入に到るまでの道筋をストーリー化、付随商品として存在するマッチの購買意欲をそそる、というような感じの……。

 

わたし「こんなマッチ売りの少女はいやだの典型例みたいなやつだな!」
妹子(大笑い)

 

 

妹子、世界少年少女文学全集の「マッチ売りの少女」を開いて読み始めました。
こちらでは、「マッチうりの女の子」という題名になっています。

 

物語を読むまでの道筋はどうあれ、P丸様といい、ビジネス書といい、こんなのを見ちゃったら、真面目にお話読んでても、途中で思い出して笑っちゃうじゃないかな?

 

読み終えた妹子、真顔です。
呆然としています。

 

妹子「え……………」
わたし「どうした」
妹子「すごい」
わたし「どうすごい?」
妹子「なんか……、なんか、すごい」
わたし「文章?きれい?」
妹子「すごい。すごいとしか言えない」

 

気になるーーー!!!

 

真顔ですごい、とだけ繰り返し、呆けた顔をしている妹子。
どんな感想よりも、こんな顔して「すごい」しか言わないというほうが、読みたくなるものだな。

 

 

十分後。

 

わたし「すごい」
妹子「だよね。すごい。もうなんか……ことばにならない」

 

P丸様もビジネス書もふっとぶ、「マッチ売りの少女」オリジナルの威力。
本物をナメていた。

 

貧困にあえぐ少女は、大晦日の夜に、新年を迎えることがなかった、そういう話なわけなのですが、そこに到る過程が、美しい文章と、リアルな描写とともに流れ込んで来ます。

 

おいしそうな料理の匂いが漂う通りで、足は裸足で紫色になり、体は冷え切っておなかはぺこぺこの少女。

 

それでも、家に帰ろうとしないのは、今日は誰もマッチを買ってくれなかった上に、帰ってもお父さんに殴られるだけだし、家にかえっても寒いことには変わりがないから。

 

これは、ビジネス書に従って手持ちの在庫が多少売れたからといって、解決する問題だとは思えません。
お父さんに搾取されて終わり、最終的に同じことになる気がします。

 

たった一本だけでも、指さきをあたためることができれば、と願って、路地の片隅に座りこみ、一本のマッチを束から抜き取る少女。

 

最初のマッチは、あたたかいストーブ、次のマッチは、おいしそうなお料理。

 

マッチはぱっともえあがって、あたりが明るくなりました。光がそばの壁を照らすと、みるみるうちに、その壁がすきとおって、ヴェールのようになりました。

 

何千本ものろうそくが、みどり色のもみの木の枝の上で、もえさかっていました。そして、商店の飾り窓に並んでいるような、美しい色とりどりの絵が、まるでおくりもののように、つるしてありました。

 

文章と翻訳の美しさにぶん殴られてる感じがします。

 

少女はおもわずそのほうへ高く両手をのばしました。──と、そのとたんに、ふっとマッチの火がきえてしまいました。たくさんのクリスマスのあかりは、高く高く、空へのぼっていき、とうとう明るい星になりました。そのうちの一つが、長い尾を空にひいて、とんでいくのが見えました。
「あっ!いま、だれかが死んだのだわ」


少女を誰よりもかわいがってくれていたおばあさんが、むかし少女に
「お星さまが落ちると、ひとりの人のたましいが、神さまのところへのぼっていくんだよ」
と教えたのでした。

 

マッチの光が、震える少女の手の中で、まぼろしを映し出す。


小さな炎が、色とりどりのろうそくの光に変わり、マッチの炎が消えると同時に、さっと高く空へ立ち昇って、星々のきらめきになり、その中から流れ星が落ちていく。

それは今まさに燃え尽きようとしている、ひとの命の輝き──。

わたし「す、すごい」
妹子「すごかった。文章が美しいとかいうレベルじゃなかった」

 

最後のマッチによるおばあさんの姿は、美しく、輝きに満ちていて、少女はその姿をひきとめようと残りのマッチをすってしまいます。

おばあさんは、少女を腕にかかえて、だきあげました。そして、ふたりは、よろこびいさんで、高く高く、どこまでも高くまいあがっていきました。もう寒いことも、おなかのすくことも、こわいこともありませんでした。ふたりは神さまのところへ召されていったのです。

 

少女はほほ笑みを浮かべて死んでいました。

 

この少女が、どんな美しいものを見たか、また、どんなに祝福されて、おばあさんといっしょに、楽しい新年を迎えたか、それを知っている人は、だれもいませんでした。

 

わたし「……………」
妹子「……………」

 

わたし「こ、この人は……この人は、何もわかってない!(この人=ビジネス書の作者)」
妹子「う、うん」

 

わたし「マッチを売ることの話をしてるんじゃないんだよ!この!少女は!たとえおおみそかの夜にひとりでこごえ死んでも!マッチ1本の炎の中に、すばらしいものをみたんだよ!」
妹子「…………」

 

わたし「それは!大好きだったおばあさんのやさしさであり!愛であり!たとえ!死んだとしても!そのおばあさんのもとに抱き取られて!今はおばあさんのもとに一つになれたんだよ!幸と不幸なんて、分けられるものじゃないんだよ!生きていれば必ず幸せなのか?金持ちになればそれが豊かなのか?

 

号泣。

 

わたし「こいつは!何もわかってない!そればかりか!マッチ売りの少女を二次利用して、自分がもうけようとしてるだけなんだよ~~~!」

 

突然の兄助「そうだよ、そんな奴らなんて、聞こえのいいことばっか言って、自分がもうけることばっかしか考えてねえんだからよ~(´;ω;`)ウゥゥ

 

妹子「ちょっとちょっと、ふ、二人とも、お、おちついて……(オロオロ)」

 

 

※追記:決してこのビジネス書(およびその作者)を貶める意図はなく、ビジネス書としてはたいへんよく書けている部類のものでしたので、マーケティングに興味のある方はどうぞ一読してもらえばよいと思います。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「マッチ売りの少女」はこうすればマッチが売れた!
山川 裕士 (著)

アンデルセン童話「マッチ売りの少女」はマッチが売れていれば、雪の中で死なずにすんだはずです。本書では「マッチ売りの少女」が神経伝達物質ドーパミンの働きを使って売り込んでいれば、たくさんマッチが売れていたであろう、そしてそれは現代の営業・販売にも共通する手法であることを分かりやすく紹介しています。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

完訳版 アンデルセン童話集 全7冊セット
アンデルセン (著), 大畑 末吉 (翻訳)

アンデルセン(一八〇五―七五)の童話は,決して口あたりよい砂糖菓子のようなものではない.「私が書いたものはほとんどが私自身の映像である」と『自伝』のなかで述べられているように,どんな空想的な話のなかにも,作者の生きた波瀾の人生の一片が封じこめられていて,おとなであれ子どもであれ,読む者の心を強くゆさぶる.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

アンデルセン童話集〈1〉
H.C. アンデルセン (著), 初山 滋 (イラスト), 大畑 末吉 (翻訳)

グリムの昔話とならんで世界中の子どもたちに親しまれているアンデルセン童話は,人生の縮図であるといわれます.1には,「おやゆび姫」「みにくいアヒルの子」「人魚姫」など,17編を収めます.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

アンデルセン童話集 (2) 野の白鳥
H.C. アンデルセン (著), 初山 滋 (イラスト), 大畑 末吉 (翻訳)

アンデルセンは,実生活の喜怒哀楽を美しい芸術に昇華させ,人間の真実を伝えます.2は,「野の白鳥」「マッチ売りの少女」「赤いくつ」「さやからとび出た五つのエンドウ豆」「雪の女王」など,16編.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

カラー版 ママおはなしよんで 幼子に聞かせたいおやすみまえの365話
千葉 幹夫 (著)

人気の画家たちの挿絵とともに、日本と世界の昔話・名作を、一日一話ずつ366話収録した、オールカラーの豪華絵本です。 定番の「桃太郎」「おむすびころりん」「白雪姫」「おおかみと七ひきのこぶた」といった昔話はもちろん、「やまたのおろち」「じゅげむ」などの神話や落語、「ハイジ」「ロビンフッド」などの名作やギリシア神話も多数収録しています。 主な特長は次になります。 ●504頁、オールカラー、上製本という、他書にはない圧倒的に豪華な体裁と内容。 ●毎日3分程度で読み聞かせできるお話を366話掲載。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―冬の巻
(小学館のお話シリーズ)

初版と新版は、表紙デザインが異なります。日本昔話、イソップ童話などが90話収録。毎日ちゃんと読み聞かせても三か月分あり、読み応え十分。挿絵はダイナミックかつ個性的で、家族の話題作りにもいかがでしょうか。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

新編 世界むかし話集(1)イギリス編 (現代教養文庫ライブラリー) Kindle版 山室静 (編集) 形式: Kindle版

ムーミン」やアンデルセン童話など、北欧・児童文学の研究・翻訳に生涯携わり、子供たちには夢を、大人にはやすらぎを与え続けた著者・山室静の世界むかし話集第1弾。
<イングランド>ネコの王さま/カメの遠足/最初のバナナ/三びきのクマ/ロンドン橋の上で/ジャックと豆の木/他8編
<コーンウォール>ベッチィ・ストーグの赤ちゃん/頭から下に向かって/他3編
<スコットランド>ヒース酒の秘密/詩人トマスの話/他5編
<ウェールズ>長すねグウィスの嘆き/他3編
<アイルランド>白いマス/笛吹きとプーカ/他9編

 

 

 

 

 

 

 

 

「プロジェクト・グーテンベルク」
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ミュウのいるいえ とっときのとっかえっこ 新編 世界むかし話集(4)フランス・南欧編
こんとあき キャベツくんのにちようび マザー・グース
こまったさんのスパゲティ) 花さき山 いちごばたけの ちいさなおばあさん

 

 

今日の一冊「たまごからうま」 ありえないことを指す言葉、展開もありえない。

今日、ご紹介するのは絵本です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

たまごからうま
織茂 恭子 (イラスト), 酒井 公子

ある日、男が市場へうまを買いにいきました。ところが、お金が足りなくてかわりに馬のたまごを買いました。さて、そのたまごから、かえったのは…? 次から次へと動物たちが登場する、奇想天外なベンガル地方の民話。

 

 

むかしばなしは世界のさまざまな地域に分布していて、似ているものから全く聞いたことがないものまで、実に色んなものがあります。

同じようなモチーフでも、やはりそれぞれの地域や文化によって彩りが違っていて、とても興味深いものです。

 

「たまごからうま」
これはベンガルの民話と言うことで珍しいなあと思って開きました。

 

 

「たまごからうま」というのはありえないことを指すらしいです。
あとがきに作者の酒井公子さんが書かれていますが、

 

20数年前、カルカッタ出身のインドの友人が「それはうそだ。ありえない。うまのたまごだよ。」というのを、面白いと思いました。「日本語では、おなじことをなんというのか?」ときかれたので、眉につばをつけてみせると大笑いされた思い出があります。(ベンガル地方では、いまも日常的に「それは、うまのたまごだ!」というそうです。

 

考えてみれば眉に唾をつけるっていうのもとても変わっています。

 

もともとの話ではジャッカルだったのを、きつねに変えたようですね。
こういう風に、文化や風俗を説明してくれているあとがきが大好きです。

 

 

いつも楽がしたいと考えているなまけもののダーという男。
名前もなんだか変わっています。

 

楽をしようと思って市場へうまを買いにきました。

 

市場の様子の絵がとても素敵です。
カラフルな服装の男性や女性が入り混じって、エキゾチックな露天でいろんなものが売られています。

 

うまは高くて買えないなと男が考えていると、なんだか怪しげな男が寄ってきました。
顔も怪しいですし、「特別にお安くしとくよ」なんてことも言ってます。

 

次のページを開けると男が「わたくしが詐欺師のロールモデルぐらいの、いかにも怪しげな顔で、ダーに持たせているのはものすごくでっかいカボチャです。

 

「これは、とくべつにあしのはやいうまのたまごだ」

 

なわけねーだろ
ふざけんな
ぶん殴るぞ

 

とはならず、ダーは喜んでかぼちゃを買って帰りました。
あ~あ。

 

 

ですが重いので、途中で道ばたにねころんで眠りこけてしまいました。

 

そこにやってきたのがきつねです。
うっかりかぼちゃにつまずいて、田んぼの中に蹴落としてしまいました。

 

…………。
ジャッカルならいいのかと言われるとそういうわけでもないですが、

 

絵的にあまりにもでっかいかぼちゃだったので、キツネがかぼちゃを跳ね飛ばすというよりは、かぼちゃがキツネを跳ね飛ばしそうな大きさなのですが、このかぼちゃはきっと、中身も薄くてすっからかんだったんですね。

 

 

逃げていくきつね。

 

起き上がったダーは、てっきりきつねが生まれたばかりの馬だと勘違いして、壮絶な追いかけっこが始まります。

 

もうめちゃくちゃですけど、夕日の中を真っ赤に照らされた田んぼと、雄大な光景の中を走って行くダーときつねの見開きの絵、素晴らしく美しいです。

 

狐は森に逃げ込んで、ダーはあとを追いかけます。

今度はさる、次はとらと、うまには形も大きさもかすりもしないような、どうしてそれを間違えるのか?というどうぶつたちを次々に追いかけて、みんなとんだ災難です。

 

とまあ、こうどうしようもない話なのです。
オチもあるようなないような……。

 

ただ、笑えることは確かです。
考えられないような無茶苦茶なことが次々に起きますから。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ガラスめだまときんのつののヤギ―ベラルーシ民話
スズキ コージ (イラスト), 田中 かな子 (翻訳)

おばあさんが大切に育てた麦をヤギが食べ散らしてしまいます。クマもオオカミもかなわなかったヤギを、なんと豆つぶほどのハチが見事に退治してしまいます。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

プンクマインチャ―ネパール民話
大塚 勇三 (著), 秋野 亥左牟 (イラスト)

継母に虐げられていた素直で優しいプンクが、山の牧場でおなかをすかして働いていると、キツネの頭とヤギの頭を合わせもつ不思議なヤギ、ドーン・チョーレチャが食べ物を出してくれました。それを知った継母はドーンを殺して食べてしまいます。プンクがその骨を集めて山の牧場に埋めると、そこから、おいしいまんじゅうがたくさんなる大きな木が生えてきました。そこに鬼の夫婦がやってきて……。ネパールの民話を力強く大胆に美しい絵で描きます。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

石のししのものがたり―チベットの民話による
大塚 勇三 秋野 亥左牟 

山の神である石の獅子の言いつけを守り、黄金を手に入れた正直者の弟と、欲張りすぎて罰を受けた兄。日本人にも親しみのあるストーリーが、雄大なスケールで描かれます。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

まいごのたまご
アレックス・ラティマー (著), 聞かせ屋。けいたろう (翻訳)

風に吹かれて巣からころがり落ちた、まいごの卵が、お母さんをさがしています。あたりにいた恐竜たちも心配して、たまごの親さがしに協力します。やがて、夕方になったとき、奇跡がおこり、たまごの親がだれなのかがわかりました!ようやくお母さんと再会できた、まいごのたまごは、翌朝、ぶじに孵ることができました。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

トラのじゅうたんになりたかったトラ
ジェラルド・ローズ (著, イラスト), ふしみ みさを (翻訳)

いいなあ。オレも、なかまにはいりたいなあ。やせこけたトラは、宮殿のひろまで楽しそうにごはんを食べている王さま一家が、うらやましくてたまりません。ある日、宮殿の庭にじゅうたんが干されているのを目にしたトラは、とんでもないことを思いつきます! ケイト・グリーナウェイ賞作家による、とびきりゆかいな絵本。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

むらの英雄 (エチオピアのむかしばなし)
渡辺茂男 (著), 西村繁男 (イラスト)

むかし、アディ・ニハァスという村の12人の男たちが、粉をひいてもらうために、マイ・エデガという町へ行った。 帰り道、一人が仲間を数えたが、自分を数えるのを忘れたので、11人しかいなかった。 「たいへんだ! 誰かがいないぞ! 」 …さてそれからどうなった?! 読み聞かせに楽しいエチオピアの昔話です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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三銃士 ミヒャエル・エンデが教えてくれたこと ジョニーのかたやきパン
ふくろのなかにはなにがある? ジル・バークレムの世界 のばらの村をたずねて ブレーメンのおんがくたい
卑弥呼 まぼろしの女王 マリールイズいえでする 若草物語

 

 

大人が読む児童書「くるみわり人形」4 読了 すべての争いのはじまり。それは……あぶら身。

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

くるみわり人形
北見 葉胡 (イラスト), E.T.A. ホフマン (著), 村山 早紀 (著)

クリスマスの日、マリーは、おくりものの中に、りっぱな服に身をつつんだ、くるみわり人形を見つけます。すっかり、このお人形が気に入ってしまうマリー。しかし、真夜中になると、家の中で音がきこえ、おどろきの光景を目にすることになります……!世界中で愛され読みつがれてきた名作に、現代の児童文学作家たちが新しい命をふきこんだ、ポプラ世界名作童話シリーズ。

 

 

今日の一冊「くるみ割り人形」クリスマスのホラー

大人が読む児童書「くるみわり人形」1 マルチパンのなぞ。

2 きらびやかさの中にひそむ不可思議な仕掛け

3 クリスマスの夜に起きる、人形とねずみの大戦争

 

典型的なクリスマスの物語といわれる「くるみ割り人形

 

クリスマスは過ぎてしまいましたが、しかしこのマリーちゃん。
気持ちわるいねずみの王様と思っちゃうの大戦争に巻き込まれたのは、まさにそのクリスマスの夜です。

 

そしてマリーのくるみ割りの物語はクリスマスに始まって、その後もずっと続いていきます。

 

なんとなくバレエ作品などでは、
「クリスマスの一夜の夢」
という扱いをされているような気がするのですが、全然そんなことはなく、クリスマスがこの不思議な物語の始まりだったのです。

 

 

ドロッセルマイエルさんが語る、くるみ割り人形の事情を語る「かたいくるみのおとぎ話」は三章にわたって続きます。

 

大筋を言ってしまうと
(古典的名作なので、もうネタバレも今更です)

 

・ピルリパート姫という姫が、ねずみのマウゼンリンクス夫人に呪われて醜くなってしまった。
・クラカトゥクのくるみという、かたいくるみを割って食べさせることが呪いを解く方法。
・これを命令されたのが「ドロッセルマイル」という、偶然にも同じ名前の男だった。☜え?
・「ドロッセルマイル」の甥っ子が、その役割を受けることになった。
・魔法を解く方法は、半分成功し、姫は元どおり美しくなったが、失敗した部分もあり、ドロッセルマイエルの甥っ子は、醜い姿になってしまった。

 

 

つまりあのくるみわり人形は、魔法をかけられた「偶然にも同じ名前のドロッセルマイエル」の甥っ子のなれの果ての姿のようなのです。

 

今度はこのくるみ割り人形の魔法を解かねばなりませんが、これは
「マウゼンリンクス夫人の孫の、七つの頭のむす子を、くるみ割り人形が自分の手で殺し、かつ、醜い姿にもかかわらずある上流婦人から愛されたとき」
だそうです。

 

あー読めたわ。
と思わないで、ぜひ抄訳でない完全版を読んでみてもらいたいと思います。
このお話は、細かい所に面白味があるのです!!

 

しかし多分バレエでもっとも見せ場であり、長いパートである、金平糖の踊りなどさまざまな踊りを妖精の国で披露するあの部分は、かなり終盤の1章程度に過ぎません。

 

 

妹子「あぶら身のところはやんないの?」
わたし「えーあそこ好きなの?」
妹子「だってあそこをやらなきゃ意味ないじゃん。紹介してよ」

 

確かにあぶら身のところは面白いからな。

 

というわけで、終盤の展開は、是非読んでもらいたいところですが、それとは別に、少し戻って、ドロッセルマイエルさんが話した「かたいくるみのおとぎ話」の中でも、ちょっと細かい部分のエピソードをご紹介したいと思います。

 

 

くるみわり人形が、もともと自分のせいでもなかった呪いを引き受けたのはピルリパート姫のためでした。


この姫が呪いを受けることになった訳があります。
例によって親戚を招待しなかったとかしたとかそういう話っぽくはあるのですが……。

 

つまりこういうことです。

 

王様(姫のお父さん)が、ある日大宴会を催しました。

そこでお妃様が自ら台所用のエプロンをかけて調理していたのですが、

 

いよいよ、あぶら身をさいころの形に切って、銀のあみの上で焼く、だいじなところになりました。

 

銀の網の上で焼いていいのかどうかとか、いろいろ突っ込みどころがありますが、多分ゴージャスさを演出したかったので銀になったんだろうなと思います。

 

王様の宮殿には、マウゼンリンクス夫人という、王さまと親類だと言い張っている「かまどの下に宮廷をかまえる」者(……?あきらかにねずみ)が住んでいました。

おきさきさまが、ちょっとだけ分けてもいいと行ったことが災いして、あぶら身はほとんど食べ尽くされてしまいました。

 

この「あぶら身」、「ちょうづめ」に入れるのですけど、おそらくは、というかほぼ間違いなくソーセージのことです。

 

王さま、この出来上がったソーセージを食べるのですが、その時の様子がこうです。

 

肝臓のちょうづめが出たとき、王さまはしだいしだいに顔色が青ざめ、天井に目を向け──かすかなため息を胸からもらして──どうやら、はげしいいたみで、胸をかきむしられるようにみえました。

 

王さま、顔を手でおおって、嘆いたり悲しんだりします。
みんなが看病するんですが、様子が治まる気配がありません。

何だ何だ。
いったいどうしたんだ。

 

深い、なんともいいようのない悲しみが、王さまの胸をせめさいなんでいるらしいのでした。

 

あれこれと薬をためし、力を尽くして看病した結果がこうです。

 

ようやく王さまは、いくらか正気にかえられたようすで、口ごもりながら、ほとんど聞きとれないくらいの声でこうおっしゃいました。
「あぶら身が少なすぎるよ。」

 

妹子「いやどんだけ~!あぶら身どんだけ~!」

 

この王様が嘆き悲しんでいる様子、およそ1ページにあたって、延々と続いています。
私も笑ってましたが、妹子もここは面白いと言って、腹を抱えて笑ったところでした。

 

食べ物の恨みは恐ろしく、 このあぶら身の恨みこそ、マウゼンリンクス夫人の一族と、ピルリパート姫のお父さんの王さまとの、長い戦いと魔法の応酬の原因となったのです!

 

 

この王さまも、肝心のピルリパート姫も、非常にわがままで自分勝手な人間です。

 

自分の呪いを解いてくれようとした若者なのに、醜くなると
「どこかへ連れて行って!見たくもない!」
と叫びます。

 

さてこうなってくると、先の大戦争でのマリーの 優しさが際立ってきます。

 

マリーに対して、ドロッセルマイエルさんはこんな風に言うのでした。

 

「くるみわりを助けてやれるのは、きみだけだ……おじさんではだめだ。しっかりがんばって、まごころをつくしてあげなさい。」

 

 

この有名な「くるみ割り人形

きっと、バレエを機会に存在を知って、読んでみたいと思うお子さんもきっといることと思います。

 

きらびやかで美しいクリスマスの贈り物の中で、マリーが不格好で醜いけれど、誠実であたたかいくるみ割りに目をとめる。

とても大事なことを示唆しているように思います。
人にとって大切なのは外見ではなくて、行動と誠実さで決まる、というようなことです。

 

たしかに「くるみわり人形」には、私が読んでいてもちょっと夜に読むのははばからられるような不気味さがあります。

 

それは決しておとぎ話の範疇を出るものではなく、かえってこのきらびやかなクリスマスを彩る効果を演出するものではあるのですが。

 

たくさんの子どもたちを、夢と幻想、また紙一重の所にあるホラー展開にさそい、怖がらせたり、どきどきさせたりしてくれることと思います。

ある時はロマンティックであり、ある時は大戦争の勇ましさであり、おとぎ話もあり、人間の醜さ、本当の真心とはいったい何なのか…。

 

児童書の古典。
間違いなく、名作中の名作の一冊です。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
ひかわ玲子 (著), 碧風羽 (その他)

クリスマス・イヴのパーティで、名づけ親のドロッセルマイヤーさんから、くるみ割り人形を送られた少女クララは、その夜、不思議な体験をする…「くるみ割り人形」。悪魔に呪いをかけられ、白鳥の姿に変えられてしまったオデット姫。夜の湖で出会ったジークフリート王子と恋に落ちるが…「白鳥の湖」。世界中で上演されている、チャイコフスキーの人気バレエ2作品が、ロマンチックなファンタジー小説に!【もくじ】はじめに/くるみ割り人形/白鳥の湖/解説 少女の夢のつまった世界(深沢美潮

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ラビリンス 魔王の迷宮 (字幕版)
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おとぎ話が大好きな少女サラは、泣き止まない幼い弟に腹を立て、愛読書"ラビリンス"に出てくる呪文を唱えてしまう。その瞬間、魔王ジャレスが本当に現れ、彼女の希望通り弟を連れ去ってしまう。慌てたサラは弟を取り戻す為、迷路を抜けてゴブリン・シティの城へ向かうが…。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

とぶ船
ヒルダ・ルイス (著), ノーラ・ラヴリン (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ピーターがある日、うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は、なんと魔法の「とぶ船」でした。ピーターたち4人きょうだいはこの船で、エジプトやウィリアム征服王時代のイギリス、北欧神話の世界にまで冒険旅行をします。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
ひかわ玲子 (著), 碧風羽 (その他)

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やかまし村の春・夏・秋・冬
アストリッド リンドグレーン (著), イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村はスエーデンの小さな農村。クリスマスにはショウガ入りクッキーを焼き、復活祭には卵パーティーで大もりあがり!夏休みには宝物をさがしに湖の島へ。子どもたちの四季おりおりの遊びやくらしを、いきいきと描きます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―冬の巻
(小学館のお話シリーズ)

初版と新版は、表紙デザインが異なります。日本昔話、イソップ童話などが90話収録。毎日ちゃんと読み聞かせても三か月分あり、読み応え十分。挿絵はダイナミックかつ個性的で、家族の話題作りにもいかがでしょうか。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

こうさぎのクリスマス
松野正子 (著), 荻 太郎 (イラスト)

両親がキツネに追われたまま帰ってこないので、兄ウサギのラビーと妹ウサギのルビーは、二人だけで暮らしていました。森で薪をひろいながら、他の家にはどこもクリスマスツリーが飾ってあるのを見て、ラビーはルビーに「うちにはサンタクロースなんかこないよ」といいます。でも二人はそっとお互いのためにクリスマスの贈り物を……。心にしみいるお話が柔らかなタッチで描かれます。(福音館https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=03-0249

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

子うさぎましろのお話
佐々木 たづ (著), 三好 碩也 (イラスト)

サンタクロースからもらったおかしを食べてしまった子うさぎのましろは、またほしくなってもらいにいくのですが……。

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

白雁物語(スノー・グース) ドリトル先生航海記 みつばちマーヤの冒険
ちいちゃんのかげおくり 新訳 長くつ下のピッピ くわずにょうぼう (こどものとも傑作集) (日本語) 単行本 - 1980/7/31 稲田 和子 (著), 赤羽 末吉 (イラスト)
パパ、お月さまとって! おやつがほーいどっさりほい ジャングル・ブック

 

 

大人が読む児童書「くるみわり人形」3 クリスマスの夜に起きる、人形とねずみの大戦争

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

くるみわり人形
北見 葉胡 (イラスト), E.T.A. ホフマン (著), 村山 早紀 (著)

クリスマスの日、マリーは、おくりものの中に、りっぱな服に身をつつんだ、くるみわり人形を見つけます。すっかり、このお人形が気に入ってしまうマリー。しかし、真夜中になると、家の中で音がきこえ、おどろきの光景を目にすることになります……!世界中で愛され読みつがれてきた名作に、現代の児童文学作家たちが新しい命をふきこんだ、ポプラ世界名作童話シリーズ。

 

 

今日の一冊「くるみ割り人形」クリスマスのホラー

大人が読む児童書「くるみわり人形」1 マルチパンのなぞ。

2 きらびやかさの中にひそむ不可思議な仕掛け

 

こわくなったマリーが見たのは、あの大きなふくろうが消え、代わりにドロッセルマイエルさんが、かけ時計の上に座り込んで、「黄いろい上着のすそを、つばさのようにたらしている」姿でした。

 

ドロッセルマイエルさんの不可思議な行動その2です。

 

普通に考えて、おとなの世界で一緒に話したり笑ったりしていた人がこんな所にいるはずがありません。

ですが、どことなく奇妙で薄気味の悪い、ドロッセルマイエルさん。
おとなもここにいるという不可思議が、夢と現実を曖昧にして、おそろしさを際立たせます。

 

あちこちのすきまから光るぎらぎらした目玉。
(まんま「ラビリンス」です)
それは、薄気味の悪い(ゴブリンではなくて)ねずみの姿でした。

 

およそ1ページにわたって暴れまわり、走り回るねずみの群れの最後に現れたのは…

 

──まあお聞きなさい。──マリーのすぐ足もとから、まるで、地獄の力でおしだされたかのように、砂や石灰や、こなごなになったれんががはねあがって、きらきらかがやく七つの王冠をかぶった七匹のねずみの頭が、ものすごい声で、ちゅうちゅう鳴きながら、床から出てきたのです。

 

こいつは、7ひきのねずみが出てきたのではなく、ギリシャ神話のヒドラのように、7つの首を持ち、それぞれに7つの王冠をかぶった、一匹の大ねずみでした。

ヒュドラー - Wikipedia

 

ねずみたちは、まっしぐらにおもちゃや絵本の入っている棚に向かって押し寄せます。

 

おもちゃの戸だなにはあかあかとあかりがともり、人形たちがかけまわり、迎え撃つ準備をしています。
そのリーダーになっているのは、なんとあのくるみ割り人形でした。

 

この、人形たちを率いて戦う、くるみわり人形が実に勇ましくてかっこいいです。

 

 

くるみ割り人形は、大きくて不格好ではありますけど、人形皆を率いた(ナポレオン的な)大将の役割です。

 

ちょっと面白いことに、ここであの、お人形のクララちゃんも動き出します。

そして、くるみ割り人形に対して
「病人なんだから、戦争になんて出かけないで、からだをやすめていてちょうだい。ここで皆の戦いを見ていましょう♡」
的なことを言ってやさしく口説きます。

 

そのとき、クララちゃんはくるみ割りの体を抱きしめているのですが、くるみわりはもがいて離れてしまいます。

でも、離れたら離れたでくるみわりは非常に礼儀正しく、片膝をついてお礼を言うのですが、このあたりのやりとりは、まさに宮廷でみる、騎士と貴婦人のやりとりのようです。

 

クララちゃん、どうしても戦いに行くというくるみわりに、自分の帯を取ってかけてやろうとします。
この「帯」は、サッシュと呼ばれる儀礼的なやつなんではないかと推測しています。

サッシュ - Wikipedia

 

いかにも、プロイセン王国時代の宮廷でありそうなやりとりをお人形でやってみせるという、おとぎ話です。

 

しかし、くるみ割り、介護を断ったばかりか、この帯まで拒否!

あくまで礼儀正しく、固辞したかわりに、くるみわりが自分の体にかけたのは、マリーがさきほど、包帯のように巻いてくれた飾り気のないリボンの方でした。

 

どうやら、この帯をかけるだのかけないののやりとり、騎士と貴婦人の愛のあかし♡のようなものを意味するようです。

くるみわりは、マリーのまごころを取って、あくまでクララちゃん(たぶん美人)のお人形の好意を断ったのでした。

 

 

戦いが始まるまでに、これらのけっこう詳細なやりとり。
それから7つの頭に王冠をいただくねずみの王様との大戦争に突入します。

 

・太鼓で急を知らせる。
・ラッパ手が合図を吹き鳴らす。
・マリーの兄、フリッツ君のおもちゃの兵隊たちが列を作る。
・大砲を砲兵たちが引き出してきてこんぺいとうを打ち込む。
・「こしょう菓子」も大砲のたまの役目。

 

ねずみとおもちゃたちとの大戦争はすさまじい勢いです。

 

こうしてみると、ホフマンが語り聞かせる形式のこの物語、実際の戦いの絵を見るような生き生きとした臨場感を当時の子供たちに与えただろうと思われます。

 

面白いことに、大戦争のめちゃくちゃの最中に、例のお人形のクララとゲルトルート(こちらも人形です)、走り回って泣きながら抱き合い、泣き崩れるという……。

役に立たない援軍もいます。
お人形やおもちゃたちを使って、リアルな大戦争をやってみせる夜の夢だとしても、芸がとても細かいのです。

 

 

主に、「くるみわり人形」はバレエで有名ですが、今回調べてみると、バレエになっているのは、「三銃士」「モンテ・クリスト伯」のデュマ父が翻案したものがもとなんですね。

くるみ割り人形 - Wikipedia

 

バレエでの戦いの場面は、第一幕第一場。
長大なくるみ割り人形の演目の中では、そこまで長いパートではないです。

 

 

しかし、おもちゃたちの負け色が濃くなってきました。

 

ついにくるみ割り(大将)が、敵軍(ねずみ)に囲まれ、どうしようもなくなったとき

 

くるみ割り「馬だ……馬だ……馬を持ってきてくれたら、王国を一つやるぞ。」

 

シェイクスピアだー!!

 

シェイクスピア「リチャード三世」の超有名なせりふです。
ホフマンもリチャード三世が好きだったのか。

何しろリチャード三世はこれで殺されてしまいますから、絶体絶命にこれほどふさわしいセリフはありません。

 

しかし、リチャード三世は(魅力的だけど)悪人の物語と頭から思い込んでいましたが、こうして、醜くはあるけれど、立派な英雄としてのくるみ割りがその台詞を言っているように、やっぱりリチャード三世は、決してネガティブなイメージだけではないのだろうなと思いました。

 

ホフマン、GJ!👍

 

このとき、敵の散兵がふたり、くるみわりの木でこしらえたマントをひっつかみました。そして、ねずみの王さまが勝ちほこって、七つののどをちゅうちゅう鳴らしながら、とびかかってきました。

 

ピンチなことに変わりはなかった。

 

わけのわからないうちに、気持ち悪いねずみの「おばけ」とくるみわり人形に率いられたおもちゃの大戦争を見守っていたマリー。

この絶体絶命に、もう黙っていられなくなり、手に持っていたスリッパを思いっきりねずみに投げつけます。

 

 

マリーが目覚めたとき、けがをしてベッドに寝かされていました。
「おもちゃの戸だなのガラスを腕で突き破って、腕を切って倒れていた」とのことです。

 

7歳のマリーは、一生懸命、ねずみの王さまとくるみ割り人形との戦いを大人たちに語りますが、当たり前ですがまったく相手にしてもらえません。

 

おとなパートの中で、相変わらず実に不思議な役割を果たすドロッセルマイエルさんですが、ここでもとても奇妙な言動をしておとなたちも、マリーも驚かせます。

おとなたちに対しては、何らおかしなところのない説明を行いながら、すべて知っているのではないか…。
何か、この騒動に深く関わっているのではないか。

 

わざと、知らないふりをしているだけなのではないか、そうではないのか、曖昧な言動です。

 

・病気のマリーの枕元で、奇妙な時計の歌を歌い、その中には「ねずみの王さま」「ふくろう」のキーワードが入っている。
・マリーは「七つの首をもつねずみ」とは一言も言っていないのに、「ねずみの王さまの14の目玉」と言う。
・「かたいくるみのおとぎ話」という、くるみわりがかけられた魔法についてのおとぎ話を聞かせてくれる

 

ドロッセルマイエルさんは、「あくまでただのおとぎ話だ」と言います。

 

しかし、それは明らかにあの大戦争がなぜ起こったかを明らかにする物語だったのでした。

 

 

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くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
ひかわ玲子 (著), 碧風羽 (その他)

クリスマス・イヴのパーティで、名づけ親のドロッセルマイヤーさんから、くるみ割り人形を送られた少女クララは、その夜、不思議な体験をする…「くるみ割り人形」。悪魔に呪いをかけられ、白鳥の姿に変えられてしまったオデット姫。夜の湖で出会ったジークフリート王子と恋に落ちるが…「白鳥の湖」。世界中で上演されている、チャイコフスキーの人気バレエ2作品が、ロマンチックなファンタジー小説に!【もくじ】はじめに/くるみ割り人形/白鳥の湖/解説 少女の夢のつまった世界(深沢美潮

 

 

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とぶ船
ヒルダ・ルイス (著), ノーラ・ラヴリン (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

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くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
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やかまし村の春・夏・秋・冬
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ママお話きかせて―冬の巻
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こうさぎのクリスマス
松野正子 (著), 荻 太郎 (イラスト)

両親がキツネに追われたまま帰ってこないので、兄ウサギのラビーと妹ウサギのルビーは、二人だけで暮らしていました。森で薪をひろいながら、他の家にはどこもクリスマスツリーが飾ってあるのを見て、ラビーはルビーに「うちにはサンタクロースなんかこないよ」といいます。でも二人はそっとお互いのためにクリスマスの贈り物を……。心にしみいるお話が柔らかなタッチで描かれます。(福音館https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=03-0249

 

 

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トムは真夜中の庭で くれよんのくろくんシリーズ 七つの人形の恋物語
ガンバとカワウソの冒険 ひっこしだいさくせん ともだちは海のにおい
バムとケロのにちようび 義経記 あめの ひの ピクニック

 

 

大人が読む児童書「くるみわり人形」2 きらびやかさの中にひそむ不可思議な仕掛け

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

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今日の一冊

 

くるみわり人形
北見 葉胡 (イラスト), E.T.A. ホフマン (著), 村山 早紀 (著)

クリスマスの日、マリーは、おくりものの中に、りっぱな服に身をつつんだ、くるみわり人形を見つけます。すっかり、このお人形が気に入ってしまうマリー。しかし、真夜中になると、家の中で音がきこえ、おどろきの光景を目にすることになります……!世界中で愛され読みつがれてきた名作に、現代の児童文学作家たちが新しい命をふきこんだ、ポプラ世界名作童話シリーズ。

 

 

今日の一冊「くるみ割り人形」クリスマスのホラー

大人が読む児童書「くるみわり人形」1 マルチパンのなぞ。

 

 

何ページにもわたって詳しく描写されている、すばらしい贈り物の数々。
また、クリスマスの飾りつけの数々。

これを、ここまで見事に、言葉だけで描写している作品というのは、ほかに例をみないほどです。

 

クリスマスツリーひとつとってもこうです。

 

部屋のまんなかのもみの木には、金のりんごや銀のりんごがたくさんなっており、また枝という枝からは、砂糖をふりかけたアメンドーや、色とりどりのボンボンや、そのほか、ありとあらゆるみごとなキャンデデーが、つぼみや花のように、ぶらさがっていました。
ですけれど、このふしぎな木を見て、何よりも美しいと思われたのは、そのほの暗い枝のかげに、星のようにきらきら光っている、たくさんの小さいあかりなのです。それから、内にも外にも光をはなちながら、さあどうぞ、花や実をつみ取ってくださいと、にこやかに子どもたちをまねいている木そのものです。

 

……などという文章が、これはほんのさわりだけなのですが、延々と続いています。

こういうのを読んでいると、(前に書いたような気もしますが)「美しいものを『美しい』という言葉以外であらわすことがじょうずな文章だ」などという修辞のおべんきょうのことばが、まったく意味のない事に思えてきます。

 

「みごとな」「美しい」「かわいらしい」満載ですが、ちっともいやになりません。

 

まるで目の前に、そのクリスマスツリーがあるかのようです。

 

 

フリッツは、いわゆるアンデルセンにもよく出てくる「スズの兵隊」系の一個大隊をもらって大喜びです。
これ、何となくわたしは、レゴやマインクラフト、またシミュレーションゲームを想像しました。

フリッツは、ドロッセルマイエルのおじさんが作ったぜんまい仕掛けの自動人形たちに文句をつけたりする、けっこう失礼なやつです。

妹(7歳)のおしゃべりにも、ツッコミばかり入れています。

 

昔はフリッツが大嫌いでしたが、今読んでみると、色とりどりの砂糖菓子のような描写の中に、この子がいるからこそ、ぴりっときいた薬味のように話がひきしまっているんだなと思うようになりました。

 

妹子「何だこいつ。大嫌い。しんじゃえ!」
わたし「…………言い過ぎ」

 

 

さて、このきらびやかで美しい贈り物の中で、マリーがひときわ気に入ったものがありました。
それが、どう考えても「美しい」とはとてもいいがたい、不格好な形をした、変な恰好のくるみわり人形です。

 

けっして、他の贈り物に比べて、美しいとは言えないのに、マリーはひとめで好きになってしまいます。

 

上記で説明したような、すばらしい描写で、このくるみ割り人形が「いかにすばらしくくるみをかみ砕けるか」というのが、およそ1ページほどもかけて語られます。


おかげで、妹子はすっかりくるみ割り人形が欲しくなって、Amazonで買え買えとうるさいです。

 

38CM伝統的な木製くるみ割り人形、くるみ割り人形の置物手描き、棚やテーブルのためのお祝いのクリスマスの装飾、カラフルな印刷された漫画のクルミの人形のクリスマスツリーの装飾

昔はそんなのカタログも何もなかったので、
今や、「ナッツクラッカー」と検索すれば見ることが出来るようになってしまった…。

 

わたし「いやいや妹子、お母さんも欲しいと思って調べたことがあるんだけどね、マジで無理だから。ほらこれ、このサーファー型のくるみ割り人形、くるみと一緒に写真に写ってるやつ」

サーファー型なんてあるのかよ…と思いつつも、ちょうどくるみの写真が一緒に映っていました。

 

わたし「見て。そもそもくるみが入らない感じでしょ?」
妹子「ほんとだ」

Clever Creations クリスマス サーファー くるみ割り人形 レッド サーフボード フェスティブ ビーチ サーフィン クリスマス デコレーション あらゆるコレクションに最適 棚やテーブルに最適 木100% 高さ10インチ


わたし「やってみたこともあるんだよ。はっきりいって、。くるみが入らない上に、全然くるみが噛み割れない。絶対にうちにある鉄のやつ使ったほうがいいって」

 

貝印 (KAI) くるみ&銀杏割り Kai House Select 本体:ステンレススチール 柄部:天然木 182×42×12mm DH-7249

↑こういう奴です。

 

 

みんながなごやかにくるみ割りをして楽しんでいるのを見たフリッツ、大きくて硬そうなくるみを、無理矢理に押し込んで、くるみ割り人形を壊してしまいます。

 

とつぜん──ぺきっ──ぺきっ──という音がしたかと思うと、くるみわりの口から小さい歯が三本落ちて、下あご全体がはずれて、ぐらぐらになってしまいました。

 

歯が三本落ちた。

 

間違いなく、このくるみ割りは、このサーファータイプの人形ではないです。
(だからなぜサーファー?)

 

歯が別々についています。
気になって、ドイツのAmazonまで見に行って調べてみましたが(Nussknackerだそうです)やはりありません。

変わり種で、長靴をはいた猫風のはありましたが、同じ感じです。

 

きっと、ドロッセルマイエルさんの作ったくるみ割り人形は特別製だったんだ。

 

 

しかし、フリッツはくるみ割りを壊したにも関わらず、謝りもしなければすまないと思いもしません。
逆に、完全に壊れたってかまわないから、くるみを割るまで使い倒してやると言い張ります。

 

マリーは泣きだして、くるみ割りを取って隠してしまいました。

 

このムカつくフリッツとマリーのけんかに、お父さん、お母さんおよび、ドロッセルマイエルさんも参加して、フリッツはお父さんに怒られます。
しかし、何とも不可解なことに、ドロッセルマイエルさんは、フリッツの味方をします。

 

このおじさん、実に不思議な人で、このお話のところどころ、重要な所で、何とも説明のつかない行動を取ります。
この、どう考えても褒められたものではないフリッツの行動のどこに味方する余地があるのか?

これは、まだ序盤の小さなフラグにすぎません。

 

しかし、

・出てくる全員が良い子良い子と、マリーを持ち上げないこと
・どう考えても不可解な、理屈の通らないドロッセルマイエルさんの随所にみられる行動
・フリッツのムカつく、いかにもやんちゃな男の子の言動
・周囲がきらびやかであればあるほど、くるみ割り人形のぶかっこうさが目立つ
・これから起きる不思議なホラー展開

 

という、これらが複雑にからみあって、ついには、この物語を、「決して忘れることができない」という次元にまで押し上げるという、効果をもたらしています。

 

矛盾、ナンセンスさが、精巧なからくり人形のように、計算され尽くして配置されています。

 

お話とは、整合性が取れているだけでは名作にはなれないのです。

 

 

壊れたくるみ割りを、大事に預かることになったマリー。

 

自分のお人形の「クララちゃん」に、まるで人間のように話しかけ、ベッドを傷付いたくるみ割り人形のために貸してくれないかと頼みます。

 

マリーがあまりにも大真面目に、くるみ割り人形を生きている、けがをした病人扱いしたり、お人形に向かって話しかけたりしますので、だんだん、どこからどこまでが子どもの遊びなのか、わからなくなってきます。

 

親たちがいなくなり、夜が近付くと、なお、その傾向が強くなります。

 

お人形のクララちゃんはだまってムッとしている様子。
だまってるのは当たり前なのですが、なんだか本当にクララが失礼な態度を取っているような気分になってきます。

マリーはクララを引き出して、ベッドをくるみわりに使わせてやり、自分のリボンを包帯のように巻いてやりました。

 

さて、マリーがベッドルームへ行こうとしたそのとき。

 

すると、そのとき──いいですか、お聞きなさい。──そのときです、ストーブのうしろとか、いすのうしろとか、戸だなのかげとか、そこらじゅうから、かすかに──かすかに、ひそひそと、ささやく声や、がさごそという音が、聞こえてきたのです。

 

時計が時を打つことができずにもだえ、うなりをあげます。
大きな金色のふくろうが、時計を包むように止まって、こんな風にささやきました。

 

「おい、時計たち、時計たち、みんなそうっとうなるんだぞ……ねずみの王さまは耳がさといからな……ぷるぷる……ぷむぷむ。さあうたえ、むかしの歌をうたって聞かせろ……ぷるぷる……ぷむぷむ。小さな鐘よ、鳴りだせ鳴りだせ、じきにあいつはおだぶつだあ。」

 

この様子、デビッド・ボウイの名作映画「ラビリンス」に似ているな。

 

ゴブリンたちがのぞき、ささやきあい、ふくろうが飛ぶ。
そっくりです。

 

ラビリンス 魔王の迷宮 (字幕版)

 

「ラビリンス」を作った人たちも、もしかすると「くるみわり人形」の原作から、ヒントを得ていたかもしれません。

 

こんな風に、何か名作が何かのオマージュを取り入れているのを発見したり、連想をして思い出すのも、楽しいです。

 

物語は最高潮で不気味な予感がします。
ここが、4章「おばけ」です。

 

 

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くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
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とぶ船
ヒルダ・ルイス (著), ノーラ・ラヴリン (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ピーターがある日、うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は、なんと魔法の「とぶ船」でした。ピーターたち4人きょうだいはこの船で、エジプトやウィリアム征服王時代のイギリス、北欧神話の世界にまで冒険旅行をします。

 

 

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くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
ひかわ玲子 (著), 碧風羽 (その他)

クリスマス・イヴのパーティで、名づけ親のドロッセルマイヤーさんから、くるみ割り人形を送られた少女クララは、その夜、不思議な体験をする…「くるみ割り人形」。悪魔に呪いをかけられ、白鳥の姿に変えられてしまったオデット姫。夜の湖で出会ったジークフリート王子と恋に落ちるが…「白鳥の湖」。世界中で上演されている、チャイコフスキーの人気バレエ2作品が、ロマンチックなファンタジー小説に!【もくじ】はじめに/くるみ割り人形/白鳥の湖/解説 少女の夢のつまった世界(深沢美潮

 

 

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こうさぎのクリスマス
松野正子 (著), 荻 太郎 (イラスト)

両親がキツネに追われたまま帰ってこないので、兄ウサギのラビーと妹ウサギのルビーは、二人だけで暮らしていました。森で薪をひろいながら、他の家にはどこもクリスマスツリーが飾ってあるのを見て、ラビーはルビーに「うちにはサンタクロースなんかこないよ」といいます。でも二人はそっとお互いのためにクリスマスの贈り物を……。心にしみいるお話が柔らかなタッチで描かれます。(福音館https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=03-0249

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

子うさぎましろのお話
佐々木 たづ (著), 三好 碩也 (イラスト)

サンタクロースからもらったおかしを食べてしまった子うさぎのましろは、またほしくなってもらいにいくのですが……。

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

子鹿物語 マルコヴァルドさんの四季 少女ポリアンナ
三びきのこねこ そらいろのたね エラと『眠れる森の美女』
シナの五にんきょうだい 宝島 あなたってほんとにしあわせね!

 

 

大人が読む児童書「くるみわり人形」1 マルチパンのなぞ。

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

くるみわり人形
北見 葉胡 (イラスト), E.T.A. ホフマン (著), 村山 早紀 (著)

クリスマスの日、マリーは、おくりものの中に、りっぱな服に身をつつんだ、くるみわり人形を見つけます。すっかり、このお人形が気に入ってしまうマリー。しかし、真夜中になると、家の中で音がきこえ、おどろきの光景を目にすることになります……!世界中で愛され読みつがれてきた名作に、現代の児童文学作家たちが新しい命をふきこんだ、ポプラ世界名作童話シリーズ。

 

 

クリスマス前の定番ということで、「くるみ割り人形」にしようかな。
なんとなく以前適当な紹介になってしまったような気がして心が残っていました。

 

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ホラーだと言って紹介しましたが、どうホラーなのか、そしてホラーでない部分についても、もう一度読みながら、きちんとご紹介してみたいなと思いました。

私の持っているのは石丸静雄さん訳です。

 

例のごとく、目次を書いてみます。
全部で14章です。

 

1.クリスマスの前夜
2.おくりもの
3.マリーのお気に入り
4.おばけ
5.たたかい
6.病気
7.かたいくるみのおとぎ話
8.かたいくるみのおとぎ話のつづき
9.かたいくるみのおとぎ話のおわり
10.おじと甥
11.勝利
12.人形の国
13.都
14.おしまい

 

「クリスマスの前夜~病気」までが主人公マリーのお話です。

 

3章ある「かたいくるみのおとぎ話」は、マリーが聞かされる、くるみ割り人形の昔話になります。
そこからは…むにゃむにゃ(ネタバレ回避…)…。

 

この4章めの「4.おばけ」の所が、もっともホラー臭が強い所です。
題名がストレートに「おばけ」ですし。

 

作者のホフマン(1776年~1822年)は、後期ロマン派を代表する幻想文学の鬼才とwikipedia先生には書かれています。

 

E.T.A.ホフマン - Wikipedia

 

 

冒頭にきらびやかに描写される、この主人公のマリー(7歳)のおうちなのですが、なんとも輝かしいドイツのクリスマスです。
それも若干、貴族的なにおいのする「良家のお嬢さんのおうち」という感じです。

 

シュタールバウム家。
主人公のお父さんは、衛生顧問官ということになってるんですけどこの衛生顧問官ってなんだ?

 

調べてみると作者ホフマンは、プロイセン王国の時代です。

 

検索していると、「16世紀ドイツにおける『官吏』としての顧問官の誕生」などと書かれている記事(pdfの論文のようです)も見つけましたので、王様に仕えている国家公務員ぐらいの感覚だと思います。

 

この プロイセン時代のシュタールバウム家の子供たち、マリーとフリッツ。
残念ながらお兄ちゃんのフリッツは、最初はともかく、後からはあまり出てきません。
主人公はマリーです。

 

上にもひとり、おねえさまのルイーゼというのがいらっしゃるんですが、このおねえさまはほぼお母さんみたいな扱いで、あまり話には関わってきません。

 

やっぱり昔の話を読んでると、いろんな立場の大人が周りにいっぱいいて、嫌な人もいればお母さん代わりをするようなおねえさんもいたりします。

乳母みたいな立場で、おばあちゃん並みに散々甘やかしたり世話を焼いたりする人がいます。

また、お料理をする立場の女中さんよりも立場が強そうな、女性コックさんのようなお手伝いさんがいたりして、いろんなものを作ってくれたりします。

これらのたくさんの人々が、子どもたちを、気にしたり世話をしたり、お説教したりして、たくさんの人に見守られている感じが強いです。

(基本的に安定した経済状況の家庭の話ではあります)

 

 

このシュタールバウム家と仲良しのお付き合いをしている、フリッツやマリーの名付け親、ドロッセルマイエルさん

ホフマンはふざけて描写したのかも知れませんけど、随分変わった人です。

 

背はひくく、やせこけて、顔はしわだらけで、右の目のあるところには大きな黒い「こうやく」をぺったりとはりつけていて、かみの毛は一本もありませんでした。

こうやく?

dictionary.goo.ne.jp

この「右の目のあるところにこうやくを貼り付けている」というのがちょっとピンと来ない感じだったのですが、塗り薬を片目に貼っている、ということ…?

 

何となく、独眼竜の眼帯みたいなイメージで良いのでしょうか。

 

独眼竜だとカッコよすぎるな。

 

このドロッセルマイエルは、ホフマンが自分を投影していそうな気もします。

 

ドロッセルマイルさんは上席判事ということですが、ホフマン本人も法律家の家系に生まれた司法官(裁判官)です。

このお話を描いた頃(1816年)には、ベルリンの大審院の判事をしていたということなので、まさにドロッセルマイルのおじさんです。

 

「世界少年少女文学全集15ドイツ編2」のあとがきによれば

ホフマンはそのころ、友人のヒッチヒという人の家によく遊びに行きました。そしてその家のふたりの子どもを、たいそう可愛がっていました。おもちゃをこしらえてやったりおどけたことをしてみせたり、おもしろいくるみわりのお話をして聞かせたりする上席判事ドロッセルマイルこそは作者のホフマンその人と考えてもいいでしょう。(石丸静雄)

 

 

最初は子どもたちは、クリスマスの準備をしているはずの部屋には、決して入ってはいけないと厳しく言われ、暗がりでじっと我慢して待っています。

 

我慢が最高潮に達した時、さっと扉が開かれて、見事に飾りつけをした大広間や、中の間が目の前に広がります。

 

その様子は、文章を読んでいても、まさに舞台の幕が上がる様子そっくりで、これをバレエ作品にしたのは、実によくわかる話です。
ぴったりです。

 

その色とりどりのすばらしさ、おいしそうさ!
もらったプレゼントの見事さや、奇妙なドロッセルマイエルさんが持ってくるおみやげの珍しさが、筆を尽くして語られています。

 

 

キラキラしたクリスマスの描写を読みながら、なぜ最近、「くるみわり人形」を強く思い出すことになったのか、そのきっかけを思い出しました。


マジパンです!

 

前回紹介した「飛ぶ船」で、「マジパン」が出てきたのですが、調べているとマジパンはマルチパンと同じであるということが判明していました。

 

マルチパン……マルチパン、どこかで聞いたぞ?と首をひねっていて、思い出したのが「くるみわり人形」でした。

 

まだ冒頭の部分、どんなものをクリスマスにもらえるのだろうか?
この入ってはいけない扉の向こうはどんななのだろうか、と、マリーとフリッツが話しているシーンでした。

 

ドロッセルマイエルのおじさんは、いつだったか、あたしに、きれいなお庭のことを話してくだすったわ。そのお庭には、大きなお池があって、金の首飾りをつけた、とてもきれいな白鳥が、たくさんおよぎまわっていて、それはそれは、かわいい歌をうたうのよ。すると、そのうち、ひとりの女の子が、お庭からお池のほとりにやってきて、白鳥たちを呼びよせて、おいしいマルチパンをやるんですって。」
「白鳥が、マルチパンなんか食べるもんか。」
フリッツは、いくらかあらっぽく、ことばをはさみました。

 

実にかわいらしい7歳の女の子のおしゃべりなのですが、お兄ちゃんのフリッツがくだらないとばかりに一蹴してるのもまた、ちょっと子どもらしくて笑えます。

 

この「くるみわり人形」には頻繁に出てきます。頻出単語です。
マルチパンとはなんぞ、というのが長年の疑問でした。

 

マジパンのことだったのかー!!

 

…つづきます。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
ひかわ玲子 (著), 碧風羽 (その他)

クリスマス・イヴのパーティで、名づけ親のドロッセルマイヤーさんから、くるみ割り人形を送られた少女クララは、その夜、不思議な体験をする…「くるみ割り人形」。悪魔に呪いをかけられ、白鳥の姿に変えられてしまったオデット姫。夜の湖で出会ったジークフリート王子と恋に落ちるが…「白鳥の湖」。世界中で上演されている、チャイコフスキーの人気バレエ2作品が、ロマンチックなファンタジー小説に!【もくじ】はじめに/くるみ割り人形/白鳥の湖/解説 少女の夢のつまった世界(深沢美潮

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロッタちゃんとクリスマスツリー
アストリッド=リンドグレーン (著), イロン=ヴィークランド (イラスト), やまむろ しずか (翻訳)

明日は、楽しいクリスマスイブ。けれども、ロッタちゃんの家では、まだクリスマスツリーにするモミの木が手にはいりません。嘆き悲しんでばかりいるお兄さんたちを残してロッタちゃんは雪の町へ飛び出していきます。行動的な女の子を生き生きと描いたリンドグレーンの絵本。絵は彼女とのコンビが多いヴィークランドです。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

とぶ船
ヒルダ・ルイス (著), ノーラ・ラヴリン (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ピーターがある日、うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は、なんと魔法の「とぶ船」でした。ピーターたち4人きょうだいはこの船で、エジプトやウィリアム征服王時代のイギリス、北欧神話の世界にまで冒険旅行をします。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

くるみ割り人形 白鳥の湖 バレエ名作物語 (集英社みらい文庫)
ひかわ玲子 (著), 碧風羽 (その他)

クリスマス・イヴのパーティで、名づけ親のドロッセルマイヤーさんから、くるみ割り人形を送られた少女クララは、その夜、不思議な体験をする…「くるみ割り人形」。悪魔に呪いをかけられ、白鳥の姿に変えられてしまったオデット姫。夜の湖で出会ったジークフリート王子と恋に落ちるが…「白鳥の湖」。世界中で上演されている、チャイコフスキーの人気バレエ2作品が、ロマンチックなファンタジー小説に!【もくじ】はじめに/くるみ割り人形/白鳥の湖/解説 少女の夢のつまった世界(深沢美潮

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

やかまし村の春・夏・秋・冬
アストリッド リンドグレーン (著), イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村はスエーデンの小さな農村。クリスマスにはショウガ入りクッキーを焼き、復活祭には卵パーティーで大もりあがり!夏休みには宝物をさがしに湖の島へ。子どもたちの四季おりおりの遊びやくらしを、いきいきと描きます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―冬の巻
(小学館のお話シリーズ)

初版と新版は、表紙デザインが異なります。日本昔話、イソップ童話などが90話収録。毎日ちゃんと読み聞かせても三か月分あり、読み応え十分。挿絵はダイナミックかつ個性的で、家族の話題作りにもいかがでしょうか。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

こうさぎのクリスマス
松野正子 (著), 荻 太郎 (イラスト)

両親がキツネに追われたまま帰ってこないので、兄ウサギのラビーと妹ウサギのルビーは、二人だけで暮らしていました。森で薪をひろいながら、他の家にはどこもクリスマスツリーが飾ってあるのを見て、ラビーはルビーに「うちにはサンタクロースなんかこないよ」といいます。でも二人はそっとお互いのためにクリスマスの贈り物を……。心にしみいるお話が柔らかなタッチで描かれます。(福音館https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=03-0249

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

子うさぎましろのお話
佐々木 たづ (著), 三好 碩也 (イラスト)

サンタクロースからもらったおかしを食べてしまった子うさぎのましろは、またほしくなってもらいにいくのですが……。

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

長ぐつをはいたねこ たんじょうび 名探偵カッレとスパイ団
みどりのゆび 100かいだてのいえ Pitschi
どうぶつのこどもたち エルマーとりゅう ババヤガーのしろいとり

 

 

大人が読む児童書「やかまし村の春・夏・秋・冬」2 読了 お腹を抱えて笑ってしまう「はじめてじゃないおつかい」

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

やかまし村の春・夏・秋・冬
アストリッド リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村はスエーデンの小さな農村。クリスマスにはショウガ入りクッキーを焼き、復活祭には卵パーティーで大もりあがり!夏休みには宝物をさがしに湖の島へ。子どもたちの四季おりおりの遊びやくらしを、いきいきと描きます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

今日の一冊「やかまし村の子どもたち」

大人が読む児童書「やかまし村の春・夏・秋・冬」1 クリスマスからはじまる物語。のどかな日常系

 

以前ご紹介したとき、このようなちょっと分厚い、文字ばかりの本を子どもになじんでもらうため、「読み聞かせで面白い章だけを読んできかせる」と書きました。

 

この本は、冒頭からクリスマスでクッキーを焼くというすてきな所からはじまっているので、そういうことはしなくても読んでくれるのですが、やっぱりこの本の中にも、特別に面白く、お腹を抱えて笑ってしまう章があります。

 

「春・夏・秋・冬」では、「9章 アンナとわたしのお買い物」がそれにあたります。

 

11章の「オッレの妹が生まれました」も面白いのですが、やはりこの7章に敵う章はありません。

どんな感じなのか?
この捧腹絶倒な巻を、ちょっとご紹介してみたいと思います。

 

 

アンナとわたし(リーサ)は、ふたりとも、お母さんにお買い物をいいつかって、連れだってお買い物に行きます。

 

お買い物をするお店は、やかまし村から離れた所にある「大村」という、学校もある少し大きな村にあるのですが、かなりの距離があります。

なので、お買い物をする品も、たくさん種類があって大変なのです。

 

お母さんは、メモを渡そうとしましたが、えんぴつがすぐには見つかりません。
アンナもリーサも、「覚えていくから大丈夫」と言って出かけました。

 

リーサのお買い物:
 イースト200g
 ショウガを1袋
 針を1袋
 イワシのかんづめ1かん
 甘いアーモンドを100g
 酢を1びん
 一番上等なあぶりソーセージ1つ

アンナのお買い物:
 石けん
 黒パン1つつみ
 コーヒー500g
 角砂糖1kg、ゴムバンド2m、一番上等なあぶりソーセージ1つ

 

針を一袋。
そんなに、なくすものなんだろうか…?

二人とも、「いちばん上等なあぶりソーセージ」が入っているところがみそです。

 

アンナのおじいさんに追加のお買い物を頼まれました。

 

氷砂糖すこし、しょうのうの塗り薬

 

さらに、オッレのお母さんからも追加でおつかいを頼まれます。

 

四十番の白糸を1まき、ヴァニラ入り砂糖を1かん、いちばん上等なあぶりソーセージ

 

お母さんたちはみんな、あぶりソーセージを買いたがりますね。
みんなだいすき、あぶりソーセージというのは、スモークソーセージなんでしょうか?
美味しそうです…。

 

このお買い物、けっこう重たくなると思うのですが……。

アンナの方が重そうです。
石けんに、コーヒー500g、それに砂糖が1キロ!

 

ヴァニラ入り砂糖というのもちょっと気になりました。
味がすでについている砂糖ということですね。

 

 

女子二人でお買い物、歌を歌いながら、楽しい気分で上機嫌です。
この歌う歌が傑作です。

 

あぶりソーセージについて歌うのですが、ゆったりした節回しで歌ったり、明るい元気で調子で歌ったり、それを組み合わせたりして歌います。

 

しかし、けっきょく、わたしたちがきめたのは、とってもかなしくて、それでも、はじめからおわりまですばらしくうつくしい節まわしでした。その節は、きいてると泣きたくなるくらい、かなしくて、すてきでした。
「ほんとに、あぶりソーセージって、かなしいものねえ!」
アンナがそういってるとき、やっとわたしたちは、お店につきました。

 

既にここだけで十分に笑えるのですが、ここからが大変です。
これだけ頼まれて、忘れものをしないはずがありません。

 

最初の忘れ物:イース

 

この忘れ物をしたかもしれない品を探すのに、アンナとリーサは、
「かごにはいってる包みを、ぜんぶ手でおしてみはじめました。」

 

この探し方、めっちゃわかる~!と思いました。
ビニール袋の上からでも、「おしてみはじめる」ことありますから。

 

どうやら、ひとつひとつすべてきちんと包みとしてくるんであるようです。

 

いやいやながら二人は戻って、(そのたびにお店のおじさんは「すっぱいドロップ」をくれます)また帰ろうとします。
いつも、「分かれ道のところ」で二人は気が付きます。

 

二回目に気が付いた忘れ物:おじいさんのしょうのうのぬり薬

 

また二人はいやいやながら戻って、おじさんに笑われながらすっぱいドロップをもらい、忘れ物を購入します。

 

三回目。

 

さて、もういっぺん、あの分かれ道にきたとき、アンナは、すごくこわそうな顔をしました。その顔つきといったら、ほんとにかわいそうなくらいでした。

 

三度めに気付いた忘れ物:お砂糖

 

二人とも、分かれ道のところが鬼門だということに気が付きました。
なので、走って通ることにします。
名案だとわたしも思いました。

 

二人は走って分かれ道を通り抜け、いい気分になりました。
そして、きた時と同じように、歌い始めます。

 

『いちばん、いちばん、上等な、あぶりソーセージ、ひとつだよ……』

 

二人は立ち止まりました。
あぶりソーセージを買い忘れてしまったのです!

 

いや、さすがにもうこれは帰ってもいいだろう!
というところですが、あぶりソーセージは、アンナのお母さんと、リーサのお母さんと、オッレのおかあさん、全員が頼んだ品なのです!

 

これはさすがに、買いに戻らないわけにはいかない……。

 

わたしたちは、道のわきにすわりこんだまま、ながいこと、口もききませんでした。やがて、アンナがいいました。
「あぶりソーセージなんてもの、だれもつくろうとおもわなきゃいいんだわ。……」

 

このあたりで、もう妹子もわたしも涙が出るほど笑っているのですが、この雑な紹介のままだと、面白さが10分の1ぐらいになってるのが実に残念です。

 

 

何気ない日常って、こんなにも楽しくて面白いものだっただろうか?
ひとつひとつの買い物の品や、行き来する道のりが、こんなにも輝いていただろうか?
この本を読んでいると、そんな風に感じられます。

 

ずいぶん昔の(昭和期の)「むかし話集」なのですが、「ママお話きかせて―冬の巻」という本のあとがきに、こんな風に書かれていました。

ところで、テレビや映画からも、情操をやしない知識を得ることはできます。しかし、自分の意思をつたえるのには、ことばをもってします。テレビや映画は視覚が主となっていますから、ことばでする表現のほうは多分に省略されます。それにくらべて、おはなしは、すべてをことばでする劇です。しぜんと多くことばをおぼえ、そして、また、意志を表現する方法をまなびとることができるのです。外国語をならうことも必要ですが、そのまえに、まず、祖国のことばが、正しく美しくつかえるよう、心がけることがたいせつだと思います。


西山敏夫さんの書かれたあとがきでした。

 

 

いまはYouTubeといい、Twitterでもインスタでも、動画があふれている時代ですから、何となく、「文章だけでものごとを描写する」ということが、薄れかけているように思います。

本もまた、会話ばかりが多く、挿し絵が多くなっています。

 

でも、絵がなければ子どもは読まない、と思い込んではいないかな?と思います。
また、詩的で繊細な文章だけに頼りすぎてはいないだろうか。

 

もっと骨太に。
もっと、単純に。
もっとわかりやすく、もっと明るく楽しく。

 

正確に美しく、楽しくすばらしく、「文章だけで」その状況を、空気を、景色を、描写すること。
それを読むことこそ、読書の最大の楽しみであり、よいと言われる効果なのではないだろうか?

 

そのことばがたくさんわたしたちの中、子どもたちのなかに流れ込んできて、よく言われる「想像力」だけではない、表現する力を培ってくれるのではないか。

 

そんな風に感じることができる、すばらしい訳にめぐまれたリンドグレーンの名作です。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

やかまし村の子どもたち
アストリッド・リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村には、家が3軒きり、子どもは男の子と女の子が3人ずつ、ぜんぶで6人しかいません。でも、たいくつすることなんてありません。ひみつの手紙をやりとりしたり、かくれ小屋をつくったり、毎日楽しいことがいっぱい!小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

やかまし村はいつもにぎやか
アストリッド リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村の子どもたちは、楽しいことを見つける天才!リーサが子ヒツジを学校へ連れていったり、みんなでオッレの歯をぬく作戦をたてたり、宝箱をめぐって男の子と女の子がかけひきをしたり…陽気な話がつづきます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロッタちゃんとクリスマスツリー
アストリッド=リンドグレーン (著), イロン=ヴィークランド (イラスト), やまむろ しずか (翻訳)

明日は、楽しいクリスマスイブ。けれども、ロッタちゃんの家では、まだクリスマスツリーにするモミの木が手にはいりません。嘆き悲しんでばかりいるお兄さんたちを残してロッタちゃんは雪の町へ飛び出していきます。行動的な女の子を生き生きと描いたリンドグレーンの絵本。絵は彼女とのコンビが多いヴィークランドです。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

長くつ下のピッピ
アストリッド・リンドグレーン (著), 桜井 誠 (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

あしながおじさん」にヒントを得て,作者リンドグレーンの小さい娘が,「ねえ,長くつ下のピッピって女の子のお話を作って」と母に頼んだ.そこで生れたのがこの世界一つよい少女の物語だった.自由ほんぽうに生きるピッピに,子どもは自分の夢の理想像を発見し,大人は愛さずにはいられない野育ちの永遠な少女を見出す.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―冬の巻
(小学館のお話シリーズ)

初版と新版は、表紙デザインが異なります。日本昔話、イソップ童話などが90話収録。毎日ちゃんと読み聞かせても三か月分あり、読み応え十分。挿絵はダイナミックかつ個性的で、家族の話題作りにもいかがでしょうか。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―春の巻
(小学館のお話シリーズ)

みつばちマーヤ、桃太郎さん、一寸法師など花の季節にふさわしいお話を収録。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて―夏の巻
(小学館のお話シリーズ)

はだかの王さま、七夕さま、人魚姫など夏の夕べに心なごむお話がせいぞろい。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ママお話きかせて 秋の巻
(小学館のお話シリーズ)

虫の音楽会、かぐや姫、月とうさぎなど静かな秋の夜長に最適なお話を紹介。

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

はじめてのおつかい いないいないばあ シンデレラ ミステリー
まぼろしの小さい犬 太陽の東・月の西―北欧伝説 雨月物語
トム・ソーヤーの冒険 どうぶつのこどもたち どうぶつ会議

 

 

大人が読む児童書「やかまし村の春・夏・秋・冬」1 クリスマスからはじまる物語。のどかな日常系

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

やかまし村の春・夏・秋・冬
アストリッド リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村はスエーデンの小さな農村。クリスマスにはショウガ入りクッキーを焼き、復活祭には卵パーティーで大もりあがり!夏休みには宝物をさがしに湖の島へ。子どもたちの四季おりおりの遊びやくらしを、いきいきと描きます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

クリスマスが近づいていますね。
以前、サラッとご紹介したやかまし村。

 

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うちの「どうぶつの森」は、「どう森」も「あつ森」もどちらも、妹子は「やかまし村」という名前をつけていました。

 

「長くつ下のピッピ」を描いたリンドグレーンが作者なので、これはもう間違いがない一冊です。

 

リンドグレーンの作品群は
「長くつ下のピッピ」や、「ロッタちゃん」のように、とんでもないめちゃくちゃが起こるもの。
「ミオよわたしのミオ」「はるかな国の兄弟」のようなファンタジー作品
などなどがありますが、この「やかまし村」シリーズはいわば日常系
ただひたすら、子どもたちの毎日を描いているものです。

 

北欧の農村、それも村にたった三軒というのどかな生活で、 主人公の「わたし」(リーサ)を含めた6人の子供たちが毎日、元気にゆかいに過ごしています。

 

とにかく面白い。
やっぱりこれは大塚雄三さんの翻訳が面白いんです。
食べ物も非常に美味しそうです。

 

そんな「やかまし村」シリーズの中でも、この「やかまし村の春・夏・秋・冬」は、 冒頭がクリスマスから始まります。

 

クリスマスの後に、春が来て……雨が降って、という風に続いていくので、クリスマスの後も、 楽しいプレゼントをもらえる イベントが終わってしまった、みたいなしんみりした気持ちにはなりません。

 

 

6人の子供たち。
ラッセ、ボッセ、「わたし(リーサ)」、オッレ、ブリッタ、アンナ。

 

ラッセ、ボッセ、「わたし(リーサ)」は三人きょうだいです。
ブリッタとアンナは姉妹です。
オッレだけがひとりっこ。でも、このお話の中でいもうとが生まれます。

 

お話の始まりからして、いかにもクリスマス~!な、すてきな冒頭です。

 

ほかのところではクリスマスがいつはじまるのか、わたしは、しりません。でも、このやかまし村にクリスマスがやってくるのは、わたしたちがショウガ入りクッキーを焼く日なんです。この日は、クリスマス・イブとおんなじくらい、たのしい日です。ラッセとボッセとわたしとは、クッキー用のこね粉を、めいめい、たっぷり一山ずつもらい、そのこね粉をつかって、すきなようにクッキーを焼けるのです。

 

クリスマスはクッキー作りから!

妹子「いつも、どうして子猫を使ってクッキーを焼くのかすごく不思議だったんだよ」
わたし「子猫……!!」

 

たしかに、「こね粉」というのを使っているのを見たことも聞いたこともありません。
でもこれが日本語の特徴ですが目で見てひらがなと漢字の混じっているこの「こね粉」とみれば言いたいことはわかります。

 

妹子「自分で読んでみて初めて分かったんだよ。ああ!子猫じゃなかったんだー!!って」

 

逆に今まで、どういう想像をしていたんだ。

自分なりに子猫を使ってクッキーを作ると言うのを想像してみましたが、全く思い浮かびませんでした。
あしがたをつけてもらって、肉球型のクッキーを焼くとかなのかな?

 

 

次の日はクリスマスツリーを切る日。
ミルクを運ぶ大きな馬ぞリを持って行きます。

 

それから、クリスマス・ツリーの飾りつけをするのですが、ここで「わたし(リーサ)」をはじめとしたラッセとボッセの3人きょうだいは、
クリスマス・ツリー用にとっておいた赤いりんご
・干しぶどうと木の実を入れた紙のかご
・ショウガ入りクッキー
…を、クリスマスツリーに吊るします。

 

「ショウガ入りクッキー」と書かれているのが、また美味しそうでいいのです。

今ならさしずめ、問題なく「ジンジャー・ブレッド」と訳されるのでしょうが、私にとってはいつまでも「ショウガ入りクッキー」です。人の形をしていることも知りませんでした。

 

しかしここでリーサたちはいろんな型を使っています。
「いちばんいいのはブタのかっこうをした型です」
と書かれています。
人型でなければならないというわけではなさそうです。

 

 

クリスマスツリーにクッキーを吊るすのを、今まで何度か、実行したことがあります。
しかしこれはなかなか難しいことでした。

 

まず吊るすための穴をあらかじめ、あけておかなければなりません。
後で開けようと思っても至難の業です。

 

うちはサブレ生地にジンジャーパウダーを申し訳程度に香り付けで使ったものなので、糸を通した針で突き刺すとあっという間に壊れてしまいます。

 

もちろん、穴を開けてから焼いても焼くあいだに生地が広がってとけて、穴は潰れてしまっていますが、それでも無いよりましです。

 

兄助も妹子も、実はあまりクリスマスツリーや飾りつけには興味を持たない子たちなのですが、さすがにこのクッキーを吊るすのは大人気で(というよりもそこだけが大人気で)、他の飾りには目もくれずに目をギラつかせていました。

 

そして、どんどんなくなっていきます。

実際のクリスマスの日には、もうクッキーはほぼないという状態です。
まあこれは仕方ないのかもしれません。
目の前におやつがぶら下がっていたら、食べてしまいますよね……。
さあ食べてくださいと言わんばかりですもんね。

 

仕事にクリスマスは関係ないので、毎年いつもやれるわけではありませんでしたが、クッキーをつるすのは長年の憧れでした。
自分が子供の時には、きっぱりと却下されていたので、自分がやりたいようにやれるのは楽しいです。
はっきり言って子供のためというより完全に自分のためです。

 

自己満足!

 

うちのレシピです。

やわらかバター100g
粉砂糖70gふわっとするまで。
卵黄L1個とバニラエッセンス。
薄力粉200g。
ビニール袋に入れ30分冷やす。打ち粉は充分に。
型抜く。
余熱170度。10~15分。

 

 

クリスマスの後には、みんなでそり遊びをします。

 

お父さんたちがやってきて、そりを横から取ってしまいました。
家が三つしかない村の三人のお父さんたちが、仲良くひとつのそりに並んですべって遊んで、名前で呼び合っています。

多分この三人のおとうさんたちは、この村で生まれ育った仲良しなのでしょうね。

 

しがらみがいろいろあり、自由にするわけにもいかず、心から楽しいとは言えないこともある年越しです。

 

でもこのやかまし村を読んでいると、自分が好きなようにすればいい、こうしなければいけないなんて言うことはない。

そしていつもどおりの冬の過ごし方だって、心ひとつで楽しく過ごせるんじゃないか。だんだんそんな気持ちになってきます。

 

純粋に、クリスマスって楽しいものだった。
だってリーサたちがあまりにも楽しそうなので。

 

大好きなやかまし村シリーズの1冊です。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

やかまし村の子どもたち
アストリッド・リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村には、家が3軒きり、子どもは男の子と女の子が3人ずつ、ぜんぶで6人しかいません。でも、たいくつすることなんてありません。ひみつの手紙をやりとりしたり、かくれ小屋をつくったり、毎日楽しいことがいっぱい!小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

やかまし村はいつもにぎやか
アストリッド リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

かまし村の子どもたちは、楽しいことを見つける天才!リーサが子ヒツジを学校へ連れていったり、みんなでオッレの歯をぬく作戦をたてたり、宝箱をめぐって男の子と女の子がかけひきをしたり…陽気な話がつづきます。小学3・4年以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロッタちゃんとクリスマスツリー
アストリッド=リンドグレーン (著),
イロン=ヴィークランド (イラスト), やまむろ しずか (翻訳)

明日は、楽しいクリスマスイブ。けれども、ロッタちゃんの家では、まだクリスマスツリーにするモミの木が手にはいりません。嘆き悲しんでばかりいるお兄さんたちを残してロッタちゃんは雪の町へ飛び出していきます。行動的な女の子を生き生きと描いたリンドグレーンの絵本。絵は彼女とのコンビが多いヴィークランドです。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

長くつ下のピッピ
アストリッド・リンドグレーン (著), 桜井 誠 (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

あしながおじさん」にヒントを得て,作者リンドグレーンの小さい娘が,「ねえ,長くつ下のピッピって女の子のお話を作って」と母に頼んだ.そこで生れたのがこの世界一つよい少女の物語だった.自由ほんぽうに生きるピッピに,子どもは自分の夢の理想像を発見し,大人は愛さずにはいられない野育ちの永遠な少女を見出す.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

名探偵カッレくん
アストリッド・リンドグレーン (著),
エーヴァ・ラウレル (イラスト), 尾崎 義 (翻訳)

名探偵を夢見るカッレくんは、ある日エイナルおじさんの怪しい行動に第六巻を働かせ、捜査を始めます。宝石窃盗団に迫ったカッレくんは、仲良しのアンデス、エーヴァ・ロッタとともにお城の地下室に閉じこめられてしまいますが…。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ミオよわたしのミオ
アストリッド リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト),大塚 勇三 (翻訳)

ストックホルムの町で,もらわれっ子としてつらい日々を送っていた少年ボッセは,ある夜,父の王がまつという「はるかな国」へ迷い込みます.王子ミオとなった少年は,白馬ミラミとともに,ざんこくな騎士カトーと戦うため,不吉な魔法の城へむかいます….北欧民話の味をいかした,美しく感動的な空想物語.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

はるかな国の兄弟
アストリッド・リンドグレーン (著),
イロン・ヴィークランド (イラスト), 大塚 勇三 (翻訳)

ヨナタンとカールの兄弟は,楽しい生活を期待しながら,はるかな国ナンギヤラにやってきた.しかし,2人を待ちうけていたのは….怪物カトラをあやつり村人を苦しめている黒の騎士テンギルを倒そうと,2人は戦う決心をする.生と死,愛と憎しみ,正と邪との戦いを織り込みながら,勇敢な兄弟の姿を叙事詩風に描いた作品.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

さすらいの孤児ラスムス
アストリッド リンドグレーン (著),
エーリック・パルムクヴィスト (イラスト), 尾崎 義 (翻訳)

孤児院をぬけだした9歳の少年ラスムスは,陽気な風来坊のオスカルにであい,街角でアコーディオンをかなでながらの旅にでる.凶悪な強盗犯をつかまえて大手柄をたてたラスムスは,やがて金持ちの夫婦にもらわれることになったが….リンドグレーンは,この人間愛あふれる作品を書いて国際アンデルセン賞に輝いた.

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

タランとリールの城 日本奥地紀行 チムひとりぼっち
王さまになった羊飼い ウルスリのすず くいしんぼうのあおむしくん
宝島 北欧の挿絵とおとぎ話の世界 流れのほとり

 

 

大人が読む児童書「黒ねこのおきゃくさま」 ねこの絵選手権優勝の盾を贈呈したい。

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

黒ねこのおきゃくさま
ルース エインズワース (著), 山内 ふじ江 (イラスト),  荒 このみ (翻訳)

冬の嵐の晩、貧しいひとり暮らしのおじいさんのもとに、一ぴきの黒ねこがやってきました。やせ細り、びしょぬれになってふるえている黒ねこを哀れに思ったおじいさんは、わずかばかりのミルクとパンを全て与え、さらにはとっておきの羊の肉までやってしまいます。そればかりか、残っていたまきをすべてだんろにくべて、黒ねこをあたためてやるのでした。そして翌朝、奇跡はおこりました……。

 

 

ルース・エインズワースの、絵本と本の中間といったハードカバーの本です。

 

あんまり猫がかわいいので。
あまりにもこの絵がかわいいので。

 

手に取ってから、しばらく話よりも、あまりの絵のかわいさにじっと見とれてしまいました。

 

 

海外の人って、猫を書くのそんなに上手じゃないような気がします。

ごく少数の例外を除いて、そのリアルな例外も、どちらかというと目のキツさもきちんと写生してますし、でなければトムとジェリーのトムみたいな感じです。

 

これは、すごい。
猫のかわいさが、わかっていすぎる。

 

と思って見てみたら挿し絵は、山内ふじ江さん。
日本人だったー!

 

日本人は、世界に類のないねこずきで、浮世絵にもねこの絵がたくさん残っていると聞きますが、(ちょっと真偽はわかりません)この挿絵を描いたかたは、相当に猫の絵の名手です。

ほんとうに猫です。

 

 

絵がかわいいという話はここまでにして、このお話です。

 

貧しいおじいさんが1人暮らしをしています。
孤独な独居暮らし。
寒くて年を取って体が弱っています。しかもお金もありません。
人生はつらい。

 

しかしおじいさんは今日は土用の晩であることを思い出しました。

 

おじいさんは、思い出して、にっこりしました。すると、やせこけたつちいろの顔が、まるで、しなびたリンゴの皮のように、しわくちゃになりました。

 

一週間に一度だけ、肉のごちそうと、寝る前にミルクにひたしたパンを食べるのだそうです。

 

なんて素敵な表現でしょうか。
さすがルース・エインズワース。(ねこと、作者の名前で選びました)

 

「ミルクにひたしたパンは、体をとってもあたたかくしてくれるそれで、ようくねむれるんだ」

 

こ、これは……。

 

先に猫の絵を見ちゃってるので、読めたなという感じはします。
先に見なきゃ良かったような、見てもあんまり変わらないような、とにかく可愛いとしか感じません。

 

扉の向こうで鳴き声がします。雨風のひどい日です。
聞き違いではありません。またなきごえが聞こえました

 

おじいさんは痩せた黒猫を招き入れました。
このびしょ濡れの様子!タオルにくるまれた様子!

 

(猫の絵のことばかり書いてますが、おじいさんの様子、貧しいながらも整った家の中の様子、暖炉の火など、とてもすばらしいです)

 

おじいさんはミルクをやり最後に残っていた分のパンもちぎってひたして、すべてあげてしまいます。

 

猫は舌なめずりをしながらあちらこちらを物色し、今度はどうやら肉に気がつきました。
おじいさんこれも、全部猫にやってしまいました。

 

 

さらに今度は食器棚に残っている骨です。
おじいさんせめて骨くらい取っておいて後でだしをとってスープを作ろうと思って撮っていたものです。

 

猫にやってしまうんだろうなとは思っていましたが、ちょっと予想外に何もかもしゃぶり尽くされたというか、ここまですべてあげてしまうと、何とも言えない気持ちになります。

 

猫はもうひもじそうな骨と皮ばかりの猫ではありません。
ちょっと不思議な感じがします。

 

毛はやわらかく、ふさふさになり、ひげはぴんとはって、りっぱになりました。しっぽはふくらみ、さっきの二倍になっていました。…?

 

わずか一食、食べたばかりでこんなになるものだろうか。

 

 

今度は薪です。
震えている猫を温めるため、おじいさんあるだけの薪を残らず全部、使ってしまいました。

 

おじいさんは、とてもしあわせでした。まきがぱちぱちもえて、時計がかちかちなって、おきゃくさまは、のどをごろごろならしています。なんて心地がいいんだろう。なんてしずかな気持ちだろう。なんて心がいっぱいなんだろう。おじいさんは、おなかがぺこぺこだったのも、すっかり忘れてしまいました。

 

すべてがなくなったはずなのにこの満たされた気持ち。
おじいさんは寝床に入って、なくなったもののことはもう考えないことにしました。
読んでいるこちらまで満たされます。

 

朝起きて、外は雪で覆われています。
食べるものもなく、薪ももうないおじいさん。

 

猫は外に出ようとする仕草を見せます。

 

 

黒猫は堂々と外に出て行き、その姿はまるで女王さまのように立派に見えました。

 

ここで猫はふりかえり、
「なぜわたしをおいだして、とびらをしめてしまわなかったのですか?」
と人間のように尋ねます。

 

確かにこの猫は、何か不思議な妖精か何かです。
猫が去って行った後も、雪の上に足跡はありませんでした。

 

おじいさんが戻ってみると、ミルクがたっぷりとありパンもあり肉もあり、薪もなぜか、山のようにありました。

この家に、二度と食べ物も薪も、尽きることはありませんでした。

 

 

不思議な物語です。

 

昔話風の仕立てにしてありますが、これは小さな小説です。
分かち合うことの喜び幸福、心の豊かさを描いています。

 

しかし何にもまして猫があまりにも可愛いです。
でも可愛いだけじゃなくて神秘的なところがまた良い。

 

最後に外へ去っていく猫はこちらが「愛してお世話してあげる」存在ではありませんでした。

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

こすずめのぼうけん
ルース・エインズワース (著), 堀内 誠一 (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

子スズメはお母さんから飛び方を教わりました。羽根をぱたぱたやっているとちゃんと空中にういているので、子スズメはおもしろくなってどんどん遠くまで飛んでいきました。そのうちに羽根が痛くなったので休もうと思いましたが、ようやく見つけた巣にはカラスやヤマバトやフクロウがいて、中に入れてもらえません。やがてあたりは暗くなって……。骨格のしっかりした物語絵本です。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

しおちゃんとこしょうちゃん
ルース・エインズワース (著), 河本祥子 (イラスト, 翻訳)

まっ白な毛のしおちゃんと、白に灰色の混じるこしょうちゃんは双子の子猫、何をするのも一緒です。ある日、どちらが高いところに登れるか競争をして、庭の木のてっぺんから、下りられなくなってしまいました。鳥や飛行機に鳴いて助けを求めても、だれも来てくれません。でも夜になると、お母さんが迎えにきてくれました。お話の名手・エインズワースによる、張り合う子猫たちのおかしさとお母さん猫のあたたかみが感じられる作品。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ちいさな ろば
ルース エインズワース (著), 酒井 信義 (イラスト), Ruth Ainsworth (原著), 石井 桃子 (翻訳)

ちいさなろばは、昼間遊ぶときも夜眠るときもひとりぼっちです。クリスマスイブにプレゼントを配る手伝いをしたろばに、サンタクロースは、「あしたの朝、なにかがおまえを待ってるよ」と言います。クリスマスの朝、ちいさなろばを待っていたものは……。『こすずめのぼうけん』『黒ねこのおきゃくさま』など、子どもの心をとらえるお話の名手、エインズワースの原作が、格調高い訳文と絵で、美しい絵本になりました。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ねこのお客 (岩波少年文庫(1055)―かめのシェルオーバーのお話 1)
ルース・エインズワース (著), 河本 祥子 (翻訳)

キャンディおくさんの家で暮らしている牛や犬,ねこなどの動物たちは,ある朝庭でカメを見つけて大騒ぎ.いったいどこから,どうやってやってきたのでしょう.じつはこのカメは,長い時間をかけて,ゆっくりゆっくり世界をまわりながら,たくさんの物語を集めてきたのです.カメはその中から,こわい話ふしぎな話を語ります.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

きかんしゃ ホブ・ノブ
ルース・エインズワース (著), 安徳 瑛 (イラスト), 上條 由美子 (翻訳)

赤い機関車ホブ・ノブは、こひつじ、いぬ、ねこ、あひる、めんどり、しちめんちょうを乗せて、遊園地へ向かいます。途中、真っ暗なトンネルに近づくと、動物たちは怖がって大騒ぎになりました。ホブ・ノブはトンネルの中で汽笛を鳴らし、明るい火の粉をたくさんはきだして、みんなを安心させます。そしてホブ・ノブと動物たちは、遊園地で楽しく過ごしました。繰り返しのきいた簡潔なストーリーが、幼い子どもの心を満たします。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

こねこのぴっち
ハンス・フィッシャー (著), 石井 桃子 (翻訳)

リゼットおばあさんの家に住んでいる子ねこのぴっちは、ほかのきょうだいたちとはちがうことをして遊びたいと思いました。ところが、アヒルのまねをして池で泳ごうとして、おぼれてしまいます。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

こねこのぴっち (大型絵本)
ハンス・フィッシャー (著, イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

長いあいだ小型版で親しまれてきた、人気者のかわいい子ねこのぴっちが、迫力ある美しい大型絵本にうまれかわりました。読みきかせにもぴったりの大きい画面で、動物たちの表情をお楽しみください。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

Pitschi
Hans Fischer (著)

リゼットおばあさんの家に住んでいる子ねこのぴっちは、他の兄弟たちとは違った遊びをしようと思いました。アヒルの真似をして池で泳ごうとしますが…。

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

新編 世界むかし話集(5)東欧・古代編 時の旅人 北極のムーシカミーシカ
もしもしおかあさん ガリバー旅行記 ぼくは王さま
ヤナギ通りのおばけやしき たんじょうび 新編 世界むかし話集(9)アフリカ編

 

 

大人が読む児童書「とぶ船」5 読了 けじめをつける、物語を終わらせるということ

今日、ご紹介するのは児童書です。

 

>力をこめた紹介記事☆超絶☆名作

>今日の一冊 軽くご紹介

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

今日の一冊

 

とぶ船
ヒルダ・ルイス (著), ノーラ・ラヴリン (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ピーターがある日、うす暗い小さな店で手に入れた古い小船は、なんと魔法の「とぶ船」でした。ピーターたち4人きょうだいはこの船で、エジプトやウィリアム征服王時代のイギリス、北欧神話の世界にまで冒険旅行をします。

 

 

大人が読む児童書「とぶ船」 児童書は世界へのとびら

2 古い、うすぐらい小道のうすぐらい店に魔法は待っている

3 あのトトロに影響?病気のお母さんのエピソード

4 ノルマン・コンクエスト時代のイギリス。なじみの薄い歴史を生き生きと

 

下巻では、お話が

・エジプトの発掘現場へGO!
古代エジプトへGO!

と推移します。

 

みんな大好き、エジプトへ!

 

前回の記事で話題にしましたが、作者がこのお話を書く前、ハワード・カーターがツタンカーメン王の墓を発見しました。

当時、別にその時代の人間じゃなかった私もハワード・カーターに大興奮だったので、きっといまの子どもたちだって大興奮してくれるはず。

 

山岸凉子の「ツタンカーメン」は、カーターをかっこよく書いてくれるだけじゃなくて、地道でリアルな発掘の様子を描いていて、とてもイイ!です。

 

 

四人は、「ハワード・カーターに話を聞いたらこんな感じかな♡」というノリのテンションで、今まさにエジプトを発掘中の考古学者の所にとぶ船で飛んでいき、話を聞いてお食事を一緒にとって、素敵な一日を過ごします。

 

そこで聞いた、気になる情報…!
が、次の古代エジプトへGO!」のきっかけとなるものでした。

 

時代背景をご紹介します。

 

四人兄弟姉妹が行った「古代エジプト」とはどの時代なのか?

 

エジプトの長い長い歴史には、初期王国、古王国、中王国、新王国とあって、人気のツタンカーメン、トトメス、ハトシェプスト、ラムセスあたりはみな、新王国です。
情報も、古い時代に比べて豊富だからなのでしょうね。

新王朝はBC1570~1000。

 

四人が行ったのは、BC2000~の中王国。

ツタンカーメン時代よりも500年ほど前のアメン・エム・ハト一世の時代です。

アメンエムハト1世 - Wikipedia

 

ここで4人は実在している人物を元にしていそうな王子をとぶ船で助けるのですが…。
・なんとなく、ハワードカーターっぽい考古学者
・苦境に落ちた古代エジプトの王子

 

これはやはり、ハワード・カーターに会いに行って、ツタンカーメンを「とぶ船」で助けられたならなあ…!というロマン、空想のようなものを感じます。

 

医者であったり、シェフであったりする現代の人物が、時空を越えて突然、戦国時代や幕末に現れ、坂本龍馬や信長に関わるのと、基本おなじです。

 

 

次のエピソードは、この「とぶ船」の中でも特に好きなお話です。

ウィリアム征服王の時代からマチルダが現代にやってきます!

 

このエピソードはマチルダが本当に可愛く大好きなので前回の登場回ともに夢中になれるところです。

 

大切な友達が夏休みに遊びに来た、ひと夏の大切な記憶、というモチーフは、よく児童書でも絵本でも用いられています。

それが、時空を越えて、中世イングランドのノルマン人の少女がひとときだけ、現代に遊びに来る。

 

現代人が未来へ行って遊ぶのでもなくて
古代へ行ってあれこれ見聞きするのでもなくて
中世イングランドの少女が、今の(当時の)イギリスにやってきて、あれこれと体験をする。

 

なぜかわかりませんが、読んでいるこちらはどうしてかマチルダの気持ちがよくわかり、マチルダに感情移入して読んでしまいます。

 

日本という異国の立場から、イギリスの(当時の)子どもたちの生活を見ているからなのかもしれません。
そのキラキラした喜び、好奇心、夢中になる心。
子供は順応性が高いです。

 

たとえ時代はちがっても、あの頃生きている人々は、おなじなのだ…!
と、感じられる、とてもすばらしいエピソードです。

 

 

最後はロビン・フッド

 

薔薇戦争よりも300年ほど前の時代、中世イギリスの十字軍時代の義賊ということになっています。
伝説上の人物です。
いま、ロビン・フッドを知っている日本の子どもはいるのかな?
名前も聞いたことないのではないでしょうか?
わたしが子どもの頃は、割とお話も出ていたのですが、最近はほとんど見かけない気がします。

 

定期的に映画にもなっているみたいですが、史実上の人物ではないからかな。

 

 

ロビン・フッドを最後に、物語は幕引きに入ります。

 

「とぶ船」を名作としていて、何よりもすばらしいのが、その終わり方です。
上巻で、北欧神話の国に行った時から、漠然と予見されていたことでした。

 

神秘の世界、魔法の世界は、ある一時期だけに訪れるもので、そしていつかは卒業しなければならないものであること。

中世イングランドの少女マチルダも、最後は背を向けて帰っていきました。
それぞれの時代で、生きて行かねばなりません、との言葉を残して。

 

終わり方が、実に潔いのです!

楽しければ楽しいほど、すばらしい体験であったからこそ、幕引きをしっかりと閉じ、終わらせねばなりません。
夏休みは、いつまでも休みのままではいられない。

 

終わりが必ず、来るのです。

 

「はてしない物語」の記事の時にも、少し書いたことですが、名作だな、と思う作品に必ずある、この「空想の世界からきちんと読者を吐き出す」「幕を引く」という終わり方。

 

これは、子どもたちにとって本当に大切です。
けじめをつける、というのは勇気がいることです。

 

こちらも魅入られ、すばらしいと思っているからこそ、このけじめに対するきっぱりとした態度は、尊敬の心を生みます。

 

だからこそ、見守り、寄り添いながらも、最終的には別れをうながす大人の態度は、とても大事なことだと思います。
一緒になって遊んでもいいわけですけども、やはり監督者としての心を忘れてはならない。

 

そして、最後に子どもたちが自らの手でいさぎよくこの話を終わらせたことによって叶えられたことがあります。
「心からの望み」が何だったのか。

 

それは、本来は忘れさられるはずだった「とぶ船」の記憶を、いつまでも持ち続けていられることではなかったか、とそんな風に考えました。

 

 

 

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 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

The Ship That Flew (English Edition)
Kindle版 英語版 Hilda Lewis (著), Beebliome Books (編集)

The model Viking ship lay in the window of a little old shop in an unfamiliar back street, and Peter, on his way to the dentist, lost his heart to it at once. It cost him all the money in hist pocket, including the fare home. That was how he came to take the way along the beach which led him into grave danger, but also opened his eyes to the magic properties of the little ship in his hand—the ship that flew.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ツタンカーメン (全4巻)
山岸凉子(著)

「我は汝を王と成さしめる者なり」。1903年エジプト。封印されたファラオの墓発掘に挑むハワード・カーターはテントの中で枕元に立つ金のサンダルを履いた男から不思議な言葉をかけられた。彼の人生をかけた挑戦が、始まりを告げる。ツタンカーメンの王墓発掘を描く冒険歴史ミステリー。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

信長のシェフ
西村ミツル (著) , 梶川卓郎 (イラスト)

現代の料理人・ケン。彼が目を覚ますとそこは戦国時代だった。京で評判の料理の噂を聞きつけた信長は、強引にケンを自分の料理人にするが…!?戦と料理が織りなす前代未聞の戦国グルメ絵巻!コラム&レシピ「戦国めし」も必見!

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

JIN―仁― (全13巻)
村上もとか (著)

南方仁は東都大学附属病院に勤める脳外科医である。ある日、彼が頭部裂傷の緊急手術を執刀した患者が、病院を脱走しようとする。患者と揉みあう内に仁はなんと幕末の1862年にタイムスリップしてしまった。電気も消毒薬も抗生物質もない世界で、医師南方仁の戦いが始まる。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロビン・フッドのゆかいな冒険
ハワード パイル (著), 村山 知義 (翻訳), 村山 亜土 (翻訳)

伝説の英雄ロビン・フッドは,シャーウッドの森に住むイギリス一の弓の名手.悪政に反抗し,しいたげられた人びとのために戦ったロビンと彼の仲間たちの冒険を生き生きと描く.(解説=神宮輝夫)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

ロビン・フッド(字幕版)
Amazonプライム

すべての人のため、一つの愛のため、そして正義を守るため、法をも破り、男は闘った--。 No Rating (C) 1991 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

砂の妖精
イーディス ネズビット (著), H R ミラー (イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

ロンドンから田舎に移り住んだ子どもたち4人。彼らは砂の中に棲んでいるサミアドという不思議な妖精に出会います。その魔法の力で空を飛んだり、巨人になったり…愉快な冒険物語。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

時の旅人
アリソン アトリー (著), 松野 正子 (翻訳)

病気療養のため、母方の古い農場にやってきたペネロピーは、ふとしたことから16世紀の荘園に迷い込む。王位継承権をめぐる歴史上の大事件にまきこまれた少女の、時をこえた冒険。中学以上。(「BOOK」データベースより)

 

 

 

 

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子どもの本だな【広告】

やさしいライオン ジャッキーのパンやさん しずくのぼうけん
かちかち山 おとうさんの庭 ニャーンといったのはだーれ
おんがくかいのよる―5ひきのすてきなねずみ とけいのほん1 フランクリンとルナ、本のなかへ